失はれる物語 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店
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レビュー : 1276
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044253066

作品紹介・あらすじ

目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

感想・レビュー・書評

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  • 不思議でどこかせつなくロマンチックなホラー。
    頭の中の電話でつながる思いや、唯一残った右腕の皮膚感覚で奏でられるピアノの旋律、他人の負った傷を自分の体に移す痛み、子猫に寄り添う死者の魂、白く美しいマリアの指が語る真相…
    リリカルな描写にドキドキするのですが同時にすごくゾクッと背筋が凍ります。

    目には見えないけど確かに存在するものを具体化していて、実際に痛みを伴う感覚として伝わってきます。
    「Calling You」と「傷」が好きかな。

    表紙が反転された楽譜で、各話のタイトルが白紙の五線譜で、
    各章の区切りが4分休符と8分休符になっていて、デザインが素敵です。

  • 初☆乙一さんだ~!わくわく♪ と読み始めたら
    8篇のうち、2篇は娘と並んで号泣した映画の原作となった短編、
    もう1篇は、何かのアンソロジーで読んで
    「おお!乙一さんの他の作品、機会があったら読んでみよう!」
    と思った作品で、思わず自分の記憶中枢に
    「もっとがんばりましょう」のハンコを押したくなったりしましたが。。。

    人と接することが苦手な少女が頭の中に創り上げた
    架空の携帯電話に突然かかってくる電話、
    その電話が導く運命的な出逢いが切ない『Calling You』

    他人が痛い思いをするのを見ていられず、傷を我が身に引き受けてしまうアサトと
    不器用な優しさで彼を守ろうとする「オレ」の絆が
    『幸福な王子』の王子とツバメを思わせる『傷』

    知り合いの誰もいない土地に引っ越し、孤独に死ぬことを夢見る青年に
    亡くなったその部屋の元住人の幽霊と白い子猫が
    締め切ったカーテンを開けて風を入れ、否定してきた世界の一部となって
    生き続けることを決意させる『しあわせは子猫のかたち』

    などなど、乙一さんが用意してくれるちょっと不思議なシチュエーションが
    どれもこれも私好みで、うれしくなってしまいます。

    それにしても、『Calling You』にしろ、『傷』にしろ、たった50頁ほどの短編なのに
    「これを映画にしたい!」と思わせてしまうなんてすごいなぁ。。。
    またまた追いかけたい作家さんが増えました♪

    • マリモさん
      こんにちは!
      乙一さんいいですよね!私もこの本読んで、乙一さんの本に目覚めました。といってもまだ少ししか読んでません(笑)
      乙一さんはホラー...
      こんにちは!
      乙一さんいいですよね!私もこの本読んで、乙一さんの本に目覚めました。といってもまだ少ししか読んでません(笑)
      乙一さんはホラーも書かれるみたいですが(この本の、「マリアの指」なんかは、その傾向がありますね、そういえば…)、私はホラーは苦手なので、ふわっとした不思議ファンタジーな乙一さんのが好きみたいです。
      2012/09/07
    • まろんさん
      マリモさん、コメントありがとうございます♪

      私も、不思議ファンタジー路線の乙一さんが好きみたいです。気が合いますね(*^_^*)
      レビュー...
      マリモさん、コメントありがとうございます♪

      私も、不思議ファンタジー路線の乙一さんが好きみたいです。気が合いますね(*^_^*)
      レビューを読んでたら、乙一さんには、俗に黒乙一、白乙一と呼ばれる、
      ふたつの真逆の路線があるようですね(笑)

      そうそう、私なんかは「マリアの指」の指の描写ですら怖くてゾクゾクしたくらいなので
      初めて手に取ったのが黒乙一さんじゃなくてよかったです!
      白乙一さんを、なかよく一緒に楽しみましょうね(*'-')フフ♪
      2012/09/07
  • 「Calling You」「失はれる物語」「傷」にはじまる、7編+αの短編集です。

    不器用で人と関わることがちょっと苦手な主人公たちが織り成す物語は、なんだか根底に寂しさとか優しさがあるような気がして、読んでいて何か慰められる思いでした。

    いちばんのお気に入りは、「しあわせは子猫のかたち」という短編。
    誰も信じられなかった青年が、引越しと同時に幽霊と白い子猫と不思議な共同生活を送るようになったお話です。
    泣きたくなるような温かい気持ちが胸に広がります。

    乙一さんの本はデビュー作しか読んだことがないんですが、ミステリー作家のイメージが強くて、「マリアの指」のようにミステリー要素が入った短編も読めるかと思えば、「ボクの賢いパンツくん」なんていうネタに全力で走ったかのようなユニークな短編も読めるし、お得に楽しめる1冊だった気がします。

    著者の持つ小説の色合いがなんだか心地よかったので、また読んでみたいところ。

  • 1話から涙腺崩壊。電車で涙拭いながら読んでました。ずるいですよね、泣かせる書き方だもの。何となくしっくりこないところもありますが、涙を誘わずにはいられない、死や痛みの物語。各話読み終えるごとに切なさや温かさを感じて、ぐっと唇をかみしめ余韻に浸る感じだった。まあ、穿った見方をすれば中二病っぽい。空想というか妄想のような世界で、孤独と人との関わりを行ったり来たり揺らいでいる不安定なお話。

    初読みの作家さん。別の作品を読んでみようかどうかは、微妙な感じですけどね、いろいろ見ると白乙一、黒乙一があるようで。白乙一が初めてで良かった。

    短編集ですが、一番のお気に入りは「しあわせは子猫のかたち」。幽霊と言っていいのか殺されてしまった前住人雪村サキとの奇妙な生活。そして、その奇妙な生活を失う喪失感と雪村サキの最後の手紙。辛さと優しさが入り交ざった、でもきっと何とかなる、大丈夫、と思うような読後感に涙ボロボロ。

    以下、それぞれの簡単な感想というかメモ。ネタバレです。
    「Calling You」しょっぱなにやられた。こんな設定ないだろ、と思いながらもドツボにはまってしまい涙腺崩壊。ベタな展開ですけどね。未来は変わらない、変えられないというちょっとタイムトラベル・タイムループ的な要素もありつつ。脳内の想像の電話でしか話したことの無い女性のために命を投げ捨てるその想い。未来の自分が、なりたい、憧れの存在だったというのは、ちょっと出来すぎか?「失はれる物語」植物人間状態になると恐いですよね。意識と生死。愛する人には幸せになってほしいし、縛られて欲しくないけど・・・愛するがゆえにわざと死んだフリというか動かないようにして。そして、その時の妻の反応が、ツライ・・・。果たして何年暗闇で過ごしたのか、考えると恐怖ですが。「傷」救われたような救われなかったような。シホにはちゃんと戻ってきてほしかったんですけどね。「手を握る泥棒の物語」本作の中では一番明るい?そんな簡単に泥棒しようなんて思うものか?なんて思うけど。最後はニヤッとしてしまう。「しあわせは子猫のかたち」個人的に本作では一番。幽霊のような雪村サキとの共同生活、そして最後の手紙。最後の手紙が温かい読後感をもたらしてくれる。村井の友人殺害、そして雪村殺害については、必要だったのだろうけど、あくまでオマケの話かなと思ってます。「ボクの賢いパンツくん」なかなかシュール「さらばだ」のセリフに、〆はトランクス派に成長したというところが面白く。この〆は男子にしかわかるまい。「マリアの指」やられた。まさかどんでん返しをかましてくると思っていなかった。絵面的にはなかなかホラーな感じですが、根底には愛があるというか、けっこう好きな作品です。最後に「失恋・・・?」で締められる。ガラスのような作品とでも言うのかな。鈴木恭介は異質な状況にクラクラしていたと思っていたら、ホルマリンという理由が準備されていて、妙に納得したり。なのに、爪の裏の糸くずの伏線回収は???あと、人を愛さないと思われた鳴海マリアが勉三さんもとい芳和さんを好きになった理由ってなんだったですかね?ちょいちょい謎なところが残ったままですね。「ウソカノ」嘘から出た真でも言おうか?こういう立ち直り方というか自立というか、そんなのも有りかな。がんばれよ、と応援したくなる読後感。安藤夏、アンドーナツ?想像でも現実でも、誰かがそばにいてくれればなんとかやっているいけるよ、なんて思わせてくれる。でも、彼女設定ノートがいかにも中二病っぽく(笑)

    基本的に短編集は好きではないのですが、こんなにいろんなお話がそこそこの分量で詰まっていて、楽しめたというとちょっと違う気もしますが、良い本でした。お奨めしたくなる本です。

    強いて気になったと言えば、犯罪者が逃げちゃっているということか。村井もシホも鈴木響も逃げちゃっているのが、なんとなくスッキリしないかな。まあ、捕まりました、みたいなことを書かれても興醒めかもしれないけど、悪を許しているような気がして。

  • 表題作の他7作を収めた乙一の短編集です。
    いつもながら、設定の奇抜さと展開を楽しませてくれます。

    頭の中だけに存在する携帯電話でできた人の繋がりを描く「Calling You」
    他人の体の傷を写しとる能力をもつ少年を描く「傷」
    右腕の感覚だけを残して五感を失った男と妻の会話を描く表題作
    被害者と顔を合わせないまま手を握り合う「手を握る泥棒の物語」
    引っ越し先で見えない霊と声のない会話をする「しあわせは仔猫のかたち」
    轢死した美少女の指から彼女の死の謎を解く「マリアの指」

    傷をおった人、死んだ人に漂う儚さが横たわる作品群です。
    そこに、もうその人との将来を望むことができないなかで、
    読み終えるとほのかな救いや安堵が残ります。

    乙一をまた読んでみようと私に思わせる読後感は、
    この救いや安堵に後押しされています。

    といいながら、
    乙一の描くとことん落ちて救われない悲しみも読んでみたい。

  • 大好きな乙一さんですが、その作品の中でもこちらは群を抜いてお気に入りです。短編集ですが、どのお話も心に響きます。
    タイトルでもある「失はれる物語」は、主人公の気持ちになると本当に辛い。最後の決断は涙なしでは読めませんでした。はたして自分がもし同じ立場になったとしたら、と思うと怖くて怖くて。とてもじゃありませんがそのような決断はできないかもしれません。映像化は出来ない、本でしか味わえないお話だなと思いました。
    逆に「しあわせは子猫のかたち」は奇妙でもありなぜかほっこりするお話でこちらも大好きです。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    目覚めると、私は闇の中にいた。交通事故により全身不随のうえ音も視覚も、五感の全てを奪われていたのだ。残ったのは右腕の皮膚感覚のみ。ピアニストの妻はその腕を鍵盤に見立て、日日の想いを演奏で伝えることを思いつく。それは、永劫の囚人となった私の唯一の救いとなるが…。表題作のほか、「Calling You」「傷」など傑作短篇5作とリリカルな怪作「ボクの賢いパンツくん」、書き下ろし最新作「ウソカノ」の2作を初収録。

    表題作が切ない。こういう風な切なさを書かせたら天才的。美しく壊れていくのが胸に痛くて痛くて。全ての感覚を失った人に一つだけの感覚を残し、それを愛ゆえに封印しなければいけないという、優しくも有る意味鬼畜な展開は美しくも怖い。優しさしかない話なのだけれど自分に当てはめて読んだ時にゾッとする。それは自分が昏睡状態なのに実は意識があるという状態が恐怖を誘い、唯一残った希望も手放すことが出来るのかという事に自分の心を試されるわけです。閉塞感で少し苦しいです。
    他の作品もどれもこれもいい作品ばかり、お気に入りは「傷」「ボクの賢いパンツくん」です。

  • 乙一の短編集。題名の通り、全体を通し何かを失う、大なり小なり何かを失う内容の物語の短編集。こちらも長めから短めまで色々な趣きの作品です。時間がない人にもオススメ。何時もの恐ろし感じはなく、柔らかな感じの作品が多いのがいいです。

  • 8つの短編集です。
    ストーリーの設定が面白い。考えつかないようなアイデアで飽きさせない。

  • 乙一の短編集

    Calling you
    ★★★☆☆
    時間軸の違う相手へ電話できるという能力を持った女の子が主人公。
    よくまとまっているのだが、過去を変えたときの現実の振る舞いかどうなるかというSFなら最初にやっておくべき定義がなく混乱した。
    またプロットが甘いため、いくつも無難に危機を回避できる方法があったはずなのに感動を作りだすためにわざわざリスクのある方法をとる人物たち、という見方ができてしまって興醒めしてしまった。

    失はれる物語
    ★★★★☆
    交通事故で視覚を含む体の自由を奪われ、右腕の肘から先の痛覚しかなくなった男の話。
    全編を通してそら寒い恐怖感が支配する。


    ★★★★☆
    手を触れるだけで他人の外傷を自分に移すことができる少年とその親友の物語。
    キリスト教の教えに「愛とは許すこと」とあるが、それがこのお話のテーマになっている。

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著者プロフィール

乙一(おついち)
1978年福岡県生まれ。山白朝子(やましろ あさこ)、中田永一(なかた えいいち)の別名義で執筆する小説や、安達寛高(あだち ひろたか)という本名名義で脚本を記すこともある。
1996年に『夏と花火と私の死体』で、第6回集英社ジャンプ小説・ノンフィクション大賞を受賞してデビュー。
2003年『GOTH リストカット事件』で第3回本格ミステリ大賞受賞。2012年、『くちびるに歌を』(中田永一名義)で第61回小学館児童出版文化賞。
代表作として、映画化もされた本屋大賞ノミネート作『くちびるに歌を』のほか、『暗いところで待ち合わせ』『きみにしか聞こえない CALLING YOU』『失はれる物語』などがある。作品の多くが漫画化、映画化された。

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