氷菓 古典部シリーズ1 (角川文庫 古典部シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044271015

作品紹介・あらすじ

何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり――。
米澤穂信、清冽なデビュー作!

感想・レビュー・書評

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  • 『満願』に引き続き、米澤穂信さんのデビュー作を読んでみました。
    『満願』が成熟した大人の物語だとしたら、今作は米澤穂信さんの若き日を覗いているような感じがして、ちょっとこそばゆくなってしまいました。
    高校生になりたての男女四人。進学校というだけあって、四人の会話はなんだか大人びていて、時に理屈っぽかったりする。
    特に主人公の折木は自他共に認める省エネタイプで、何かに夢中になったりハメを外したりすることはない。そんな折木が古典部の四人と行動を共にし、同じ謎に向き合い頼られていく中で少しずつ、何かに熱くなるのもなかなか悪くないぞと思っていくところがいいですねー。青春って悪くないかも‥‥って思うところが青春!
    推理というよりは謎解き。ティーンエイジャーは絶対好きなお話だと思います。アニメ化されるのも納得。

  • 文化系部活動が活発な高校で「古典部」という廃部寸前の部活に入部した男女4人が、過去の古典部に隠された謎を解き明かす青春ミステリー。

    今回、短作品で面白そうなものをと、積読棚を捜索中に、たまたま目があったので手に取った。

    著者の作品はボトルネック以降2作品目。
    前作はストーリーの秀逸さに好印象だった。

    高校生が主役の青春ミステリ…
    果たして、おじさんにも楽しめるだろうか。
    7割不安で読書開始。

    結果全集中で一気読み読了。

    いやはや、まず読み応えある文体に満足。
    本作だが、物語の内容は特段面白いわけではなかった。

    兎角、主人公の語彙力が豊富が故、文章が巧みで秀逸。
    高校生が過去の古典部の資料を集め、検証し、仮説を立て、推論していく過程が実に面白かったのだ。

    高校生に古風キャラを充てがったのはミスキャストなのか、はたまた意図的なのか。私は後者に1票。

    そして最終章で、古典部の文集『氷菓』のタイトルに秘められた真実が判明した時はアッパレだった。

    本作は著者が23歳頃に書かれたデビュー作というのだから、地頭の良さを感じる。

    早速、続編も読んでみようと思う。

    • 魚雷屋あすりんさん
      主人公たちが高校を卒業するまでを描くそうです。
      主人公たちが高校を卒業するまでを描くそうです。
      2021/12/24
    • akodamさん
      魚雷屋の読書録さん、こんばんは。
      コメントいただきありがとうございます。
      本作に続き、クドリャフカの順番、愚者のエンドロールまでは読んだので...
      魚雷屋の読書録さん、こんばんは。
      コメントいただきありがとうございます。
      本作に続き、クドリャフカの順番、愚者のエンドロールまでは読んだのですが、卒業まで描かれてるのですね。私にとって米澤穂信ワールドは独特なので、作品の良し悪しがハッキリ分かれるのですが、本シリーズは受け入れられました^ ^
      2021/12/24
  •  米澤穂信さんのデビュー作にして、古典部シリーズの記念すべき一作目ということで、物語を読んでいる間は『さよなら妖精』とはまた違った雰囲気のある青春もので、ここから日常の謎を追っていたのだなという感慨はあったものの、それ以上に驚いたのが、デビュー作から既に伝えたいことを、物語の内に確固たる思いとして潜ませていた、米澤さん自身の揺るぎない情熱であった。

     物語自体は、神山高校の古典部に所属する、探偵役の「折木奉太郎(ホータロー)」を中心に、常に含んだ笑みと減らず口が特徴的でありながら、実は周りをよく見る客観性を併せ持つ、旧友(仇敵)の「福部里志」と、清楚な女学生が時に好奇心の塊と化す、『わたし、気になります』の古典部部長「千反田える」と、幼い顔と低めの背丈から繰り出す毒舌が痛快な「伊原摩耶花」の四人が織り成す、劇的というよりは、どこにでもあるような高校生活を通しながら、やがては33年前の古典部の文集『氷菓』という題名に秘められた真実に迫っていく、その展開には、何故、その謎を解かなければならないのかということへの明確な理由があると共に(改めて「王とサーカス」文庫版の解説も納得)、それを経ることによって、主人公のホータロー自身のスタイルであった『動くのが面倒でまず考えるネガティブなやつ』(里志談)という、その特性が理論的に探偵向きであるという整合性がありながらも、そこから抜け出したくなるような事が、人生には起こり得るんだということを学び取ることによって、青春ものとしてもしっかりとした余韻を残してくれる、そんな印象を抱かせてくれた。

     そんな日常の謎解きを絡めた青春ものとして楽しめる中に於いて、衝撃的だったのが、米澤さんのあとがきに書かれていた『六割くらいは純然たる創作だが、残りは史実に基づいている』で、更に『新聞の地方版にも載らなかったささやかな事件がこの物語の底流にある』には、私自身、恥ずかしい思いとなり、正直なところ、たかが高校生活の青春ものと思っていたが、それは『たかが』なんて決して言ってはいけないし、若さ故なんて言葉も軽々しく口には出せないような、至極、個人的なものであるから他人事には決してならない、どうしてもやり切れない行き場を無くした思いこそ、日常に潜むささやかなものに込められるのではないかと、私には思われたのである。

     更に米澤さんのあとがきに書かれた、『創作部分はいかにもありそうななりゆきを記した部分』、『史実部分はどうにもご都合主義っぽい部分』と、それぞれ思われたことには、苦笑気味な皮肉交じりの冷静さとは裏腹に、怖いほどの真剣さも感じられた、それを例えるとしたら、どこまでも冷え切った炎とでも呼べばいいのだろうか、そんな少し醒めた感じも心地好い青春ものの裏で、そのような本気度の強さが潜まれていたことに、驚きを感じると共に、この人の書く作品は信じてもいいのかもしれないと思わせてくれた、その根拠は、そんな誰も目を付けないような、ささやかな悲しみを小説という形にして掬ってくれた、米澤さんの優しさなのだと思う。

     また、本書の洋題の『The niece of time(時の姪)』は、ジョセフィン・テイの推理小説『時の娘』のパロディだそうだが、そこには、人の尊厳の気高さに地位や立場や年齢は全く関係ないことを教えてくれているようで、パロディにしては何とも痛切でやり切れないメッセージである。


     改めて教えてくれた、土瓶さん、ゆーき本さん、ありがとうございます。このシリーズも同様に追ってみたくなりました。

    • ゆーき本さん
      この四人の関係性が大好きです。
      氷菓シリーズ、途中までしか読めてないので
      わたしも また最新作まで読み直してみたいです!
      この四人の関係性が大好きです。
      氷菓シリーズ、途中までしか読めてないので
      わたしも また最新作まで読み直してみたいです!
      2024/06/20
    • たださん
      土瓶さん
      コメントありがとうございます(^^)

      最初はちょっとオフビートな緩い感じが良いなと思ったのですが、あとがきを読んで、また少し読み...
      土瓶さん
      コメントありがとうございます(^^)

      最初はちょっとオフビートな緩い感じが良いなと思ったのですが、あとがきを読んで、また少し読み直してみて、謎解きは謎解きとして楽しめますが、それ以前に大切な一人の人間の名誉や人生がかかっていたのだということを、改めて思い知ると共に、デビュー時から既にジャーナリズムのあり方に警鐘を鳴らしていた、米澤さんのメッセージに心打たれました。二作目も楽しみです。
      2024/06/21
    • たださん
      ゆーき本さん
      コメントありがとうございます(^^)

      四人の関係性、良いですよね。
      ゆーき本さんが書かれていた、里志の良いところも色々と発見...
      ゆーき本さん
      コメントありがとうございます(^^)

      四人の関係性、良いですよね。
      ゆーき本さんが書かれていた、里志の良いところも色々と発見できましたし(終盤は特にグッと来ました)、四人とも完璧では無くて、それぞれに良いところと悪いところが同居しているからこそ、人間としての魅力があることを実感させてくれました。
      シリーズを重ねる毎に、その関係性がどう変わっていくのかも注目したいと思います。
      2024/06/21
  • 米澤氏のデビュー作とのこと。
    学園物であり学生向けでもあるのか4人の生徒のキャラがしっかりと伝わってくる。真面目で応用力のない秀才の千反田女史と積極性が無く受け身の主人公「ほうたろう」。次々と出てくる謎をやる気も無くほうたろうが解決して行く。
    最後の謎の表題の「氷菓」の意味を辞書で調べたが・・。自分の理解で良かったのだろうか?

  • 米澤穂信さんのデビュー作。
    “古典部”という人気シリーズになっており、ずっと読んでみたかった作品です。
    高校生が活躍する青春ミステリー。

    主人公たちは、廃部寸前の“古典部”に入部し、その仲間達と日常に起こる小さなミステリーを解決していく。
    これがまたテンポよく描かれていて良い。
    ライトな文体だけど美しく、ちょっと難しい言葉選び。読んでいて気持ちが良い。

    登場人物たちは、名前がちょっと変わっているけど、キャラは分かりやすくて、魅力的。
    そして高校生のわりに語彙力が高く、どこか古風な雰囲気。
    これもまた“古典部”らしくて良いのです。

    この作品の一番大きな謎解きは、「氷菓」という題名の文集に秘められた真実を突き止めること。
    「氷菓」の意味を知った主人公たちは、大切なことをしっかりと受け止め、成長していくのでしょう。

    • 土瓶さん
      あおいさん。こんにちは~^^
       
      米澤穂信さんも好きな作家さんです。
      けっこう黒くてトリッキーな作品も書く人ですが、古典部シリーズは安...
      あおいさん。こんにちは~^^
       
      米澤穂信さんも好きな作家さんです。
      けっこう黒くてトリッキーな作品も書く人ですが、古典部シリーズは安心して読めますよね。
      「やらずにすむことならやらない。やらなければならないことなら……」
      という、ちょっとものぐさで賢いキャラもいいですね。
      2022/06/26
    • aoi-soraさん
      土瓶さん、こんばんは^_^
      米澤穂信さんも作品が沢山あって、どれから読もうか迷います。
      私は「満願」に続き、これが2作目。
      直木賞の「...
      土瓶さん、こんばんは^_^
      米澤穂信さんも作品が沢山あって、どれから読もうか迷います。
      私は「満願」に続き、これが2作目。
      直木賞の「黒牢城」は、難しそうな感じがして、二の足を踏んでます(^.^;
      この「氷菓」は、結構好み♪
      シリーズ続編も少しずつ読んでいきたいと思います。

      ホント、省エネ少年・奉太郎は好キャラ♪
      2022/06/26
  • 高校に入学した折木奉太郎は、海外にいる姉からの手紙がきっかけで廃部寸前の〈古典部〉に入部する。
    特にやりたいことのない『省エネ』少年奉太郎と、好奇心旺盛なお嬢様千反田える、悪ふざけの好きな福部里志の三人で、伝統ある〈古典部〉が復活し、学校での小さな謎を解決していく青春ミステリ。
    謎が解決されたあとには、高校生らしい爽やかさが残って、なんとも微笑ましい。
    米澤穂信さんのデビュー作ということで読んでみたが、とても好印象だった。
    〈古典部〉の実態や、『氷菓』というタイトルの文集が何を意味するのか、とても興味深く、登場するキャラクターも面白く描かれていて、あっという間に読み終えてしまった。
    自分の通った高校のことをふと思い出したりして、懐かしい気持ちになれたし、高校の部活や行事にも長い歴史があるのだということに改めて気づかされた。
    続編もあるようなので、ぜひ読んでみようと思う。

  • 気品あふれる文体で書かれるライト文芸×ミステリーの傑作! 青春、真っただ中の古典部シリーズ第一弾。

    古典部に入部した高校生たちが、日常の小さな謎を解き明かす、爽やか青春ミステリー。

    まず、米澤さんの本は読んでて癒されます。美しく気品ある日本語で書かれる文章は芸術性が高く、読んでいると脳みそがほぐされていく感じがします。
    ファンタジー、時代小説、社会派、ラノベどんな種類の文芸にも、ミステリーを組み込む名手ですね。ホント凄い。

    ほんわか優しい物語で、それでいてミステリーファンを心をくすぐる謎がちりばめられており、楽しく読み進められます。メインの謎である氷菓の由来についても、耽美で物悲しく、静かな涙を誘うものになっています。ああ綺麗。

    登場人物たちも個性豊かな面々で、今後の展開がとても楽しみ。個人的には姉と主人公の関係性がどうなるか凄く気になります。古典部シリーズの次の作品もぜひ読んでみたいと思いました。

    優しい時間を過ごしたいときに読みたくなる素敵な作品、おすすめです。

  • それぞれがつながり、キャラも明確。→愚者のエンドロールへ

  • 青春あり日常の謎ありサクッと読めるけど
    なんか少し昔にタイムスリップした感覚もある。

  • 著者のデビュー作。
    私がいつも読むようなミステリのジャンルでは無くて、いわゆる、日常の謎(コージー・ミステリ)で、人が死なないミステリで、非常にスッキリと
    読めますし。登場人物のキャラも良くてすぐ読めました。直木賞を受賞した著者の瑞々しさが詰まった内容でした。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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