愚者のエンドロール (角川文庫)

著者 : 米澤穂信
制作 : 高野 音彦  清水 厚 
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2002年7月31日発売)
3.63
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  • 本棚登録 :8039
  • レビュー :883
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044271022

作品紹介

「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。

愚者のエンドロール (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 古典部シリーズ2作目にして、早くもホータロー以外の古典部メンバー影が薄くない?
    がっつり長編なのに。

    1巻後の高1の夏休み。
    2年F組の未完成ビデオ映画の結末を推理するという内容。
    依頼してくる先輩も、推理を披露する先輩たちも個性が際立ってて、この高校どんだけ人材豊富なんでしょ。

    人が死なない日常の謎系のミステリーが、古典的密室殺人仕立てになって、また違った味わいで楽しめました。
    ミステリファンには分かるいろいろ小ネタがあったんだろうなぁ。

    しかし、最終的な結末はちょっと後味悪いものでしたな。
    入須先輩なー、計算高いが悪い人ではないんだろうけど。
    奉太郎が翻弄されてちょっと強くなったかなぁって印象です。

  • 天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずという。また、天はニ物を与えず、とも。
    これらの警句が妥当だとするなら、天の綱紀は粛正されねばならないだろう。

    とシニカルな独白で登場し、天才の活躍を羨んだり、自分にも何か才能が・・・
    などと思うのは虚しいと、冒頭で言い切る奉太郎が
    その信念を「女帝」入須冬実にいいように揺り動かされた挙句に味わうほろ苦さ!
    まさに米澤穂信ワールドです。

    「データベースは結論を出せないんだ」と、密かに淡い絶望を抱えつつ
    才能を持ちながら省エネを貫く奉太郎を複雑な思いで見守る里志と
    里志の知識の広範さを誰よりも理解し、彼の自己評価の低さに首を捻る奉太郎の
    なにげない会話の中に、才能の浪費や無自覚、人それぞれの器など
    作品のテーマに繋がるエッセンスを散りばめる、熟練の筆致。

    「女帝」入須に奉太郎が抱いた第一印象が、
    マリー・アントワネットをはじめとして娘たちを次々に敵国に花嫁として送り込んで
    冷徹なまでに自国を守った「テレジア」であったことの
    あまりに正鵠を射た運命の皮肉(?!)に、
    思わず奉太郎をよしよししてあげたくなってしまう。。。

    そして、奉太郎には「力」、里志には「魔術師」、
    千反田さんには「愚者」、摩耶花には「正義」のタロットカードを配し
    古典部にはなんの関係もない上級生の映画に纏わる謎で
    4人の輪郭をくっきりと浮かび上がらせてしまった
    米澤穂信さんの筆の冴えに思わず唸ってしまう、古典部シリーズ第2弾。

  • 出来れば良く知らない、けれど能力が高いとわかっている人に、ほとんど瞬間的に能力を認められる。大人になったって強烈に惹かれるシチュエーションだ。

  • 氷菓よりずっと面白かった。謎解きが複雑すぎないのが好き。
    この感じなら推理小説に向かない私のおつむでも参加できる。
    先読みできちゃったりするところがあると嬉しくなるし。
    実は話の起こりの時点で「何故本郷さん本人に訊かない?」と不思議だったり読後に「江波さんの存在意義がよくわからないんだけど副題になるほど重要な立場だったの?」と疑問を持ったりしたけど、私の読み方が甘いのかもしれないし途中が面白かったからまあいいや。(笑)
    主人公の煩悶等繊細な面が描かれてるのが好いです。
    彼と里志の会話はちょっとした冗談のやり取りでももっと重みのあるときでもどこかお洒落で、語彙のある人同士のユーモアを交えた会話ってたまんないなと思う。
    私がこの作品でいちばん好きなのってこれかも。何気ない知的な会話。
    あと今回出てきた入須先輩がすごくいいキャラしてて特にラストにグッときました。
    彼女の性格的特徴は図らずも先日読んだビブリアの栞子さんと近しいものがあるのだけど、自分のその要素を拒絶して注意深く生きてる栞子さんと違って、入須先輩はそんな自分を良しとして完全に受け入れてる人っぽい。
    友達になりたいかと問われれば微妙でも、「貫徹してる人」の魅力って抗い難いものがあるなと感じます。
    確固とした美意識(自信)のある人は美しい。
    もちろん栞子さんの人としてこのラインからは外れたくないって気持ちも大切なものだと思うけれど、そこに現れる個性が、いずれにしても興味深いのよね。
    あと関係ないけど裏表紙の文章、「続きが気になる千反田は仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!」。
    なんで主人公が「仲間」で、本編では他の部員と変わらない活躍をしている千反田さんが主役みたいになってるんだ…?

  • 「リップサービス」。
    それを正面から真に受ける人と、発する人。
    でも女帝・入須の場合は敢えて<故意に>発したものだから、サービスどころじゃないよな。悪意にさえ思える。腹黒コワイヨー。

    何のためか。
    奉太郎は何の証拠もないためあくまでも「想像」の域で推論しているが、入須は【奉太郎を踊らせるためだけ】に才能を持ち上げた。それに対して、彼女は直接的な表現で返していないのでコレはもぅ色々と解釈できる。
    この作品は大体において登場人物が「1+1=?」と聞いても、「1.5+0.5」「4/2」みたいに直接的な対話表現をしないので幅広い解釈が出来て面白い(笑)


    中でも一番気になる場面は、入須と供恵お姉さんが最後にチャットで会話しているところ。ここで、お姉さんは具体的な証拠なくズバッと
     「脚本の子を守るためじゃなく、脚本の出来のために、そしてその子を傷つけることなくオタメゴカシやってみたんでしょ」
    と指摘しているが、それに対する入須の返事からは

    ①思わず核心突かれて言い訳(暗に肯定)
    ②心からそうじゃない、違う、反論せねば(全否定)
    ③本当はそうだけど、見栄とプライドから反駁(肯定・否定半々)

    と様々に解釈出来て妄想広がる。アニメでは核心突かれて勢い任せにタイピングしてたので③寄りだったかな?
    言い訳を聞く前に、お姉さんのログアウトで入須の話が封じられたのは絶妙なタイミング。
    奉太郎は弄ばれる結果となって主人公側としては最後が苦いまま終わったが、この供恵お姉さんの論拠なく核心に近い指摘したことで多少報われた感じがした。
    入須とお姉さんの間にどんな付き合いがあったのかは謎だけれど、

    「(奉太郎に申し訳ないことをしたと)本当にそう思ってる?」

    と文章挟んだだけでお姉さんの入須に対する人物評価が窺える。それを本人に話すあたりが流石です、お姉さま。
    そもそもこの古典部シリーズでは、お姉さんの慧眼が随所に光る。それらが作者側で無条件にすべて正しいとイメージしたものなら、今回の入須の人物評価や動機もすべて本質に近いんだろうな、と思った。

    人を乗せるだけ乗せて、手駒にされ、そのうえ凡人という自己評価を再認識させられた気分は苦いよなぁ。
    でも自己評価と他人の評価は必ずしもイコールじゃない部分がある、そして他人も自分も知らない本質があるもんだよ、自分の可能性をもう少し信じてみようよーと奉太郎に声かけたい。


    第5章の題名が『味でしょう』とagitation(煽る・煽動する)の語呂合わせ。
    このセンスがツボ!!
    『愚者のエンドロール』というタイトルが意味する『愚者』に何が込められているんだろう。どんな意味があるんだろう。

    ①タロットの愚者がシンボル・千反田のオチで締めた最後
    ②入須に良いように扱われた被害者・奉太郎の作品
    ③2-Fの作品を見破れなかった者たちに贈る言葉
    ④本来の目的は果たしたが思わぬところで本意を暴かれた詰めが甘い女帝・入須

    わたし気になります!
    妄想広がる作品で面白かった。

  • 「氷菓」より続けて。文化祭の前夜祭的位置付けの物語になっていると思います(実際は夏休み中のお話ですが)。今回は、とある事情から未完成になってしまった、文化祭出展の自主制作映画の結末探し。ミステリとしては面白かったと思います。自分も奉太郎と同じ予想だったのでなおさらでした(推理はしてない、只の勘で・笑)。
    「結末探し」ということで、結末が決まれば勿論映画は「完成」するわけですが、その「完成」がどの程度の事を指すのかが重要でした。「オチがつけばいい」のか「作品の出来として完成度が高い」ならよいのか、それとも「作り上げた実感があればいい」のか。「完成」というのは人それぞれ。読み間違えれば自分も他人も欺く事になる、というお話です。
    今回は奉太郎が「彼なりの完成」を求めた上での敗北のように見えましたが、入須もまた「彼女なりの完成」で敗北を見ています。また奉太郎にとっては「自己の完成」の意味合いも含んでいたりして、「完成」を夢見るのは十代の通過儀礼のようなもので(笑)仕方ないことなのかもしれませんが、そんな彼らの「不完全さ」が読んでいて愛しくなったりしました。

  • 古典部シリーズ第二弾!

    ここで私の結構好きな入須先輩が出てきます。

    ホータローの怒るとこ、珍しかったな(あれって怒ってた…よな)。

    入須先輩の性格は育った環境のせいなのか、元からなのか、わたし、気になります!!

  • 古典部シリーズ2作目。
    駆け出しが淡々としていて、かなり進まなかった。だけど、後半の推理は一気にスピード感が出る。全編通してのホータローの語り口は、2作目になるとなかなか心地よい。
    結末は…あれでいいの!?ちょっともやっと。

    今回の英語題「Why she doesn't ask Eba?」をどう解釈する?気になるんだよねぇ…

  • 著者のデビュー作でもある前作が、正直、文章にはそこそこ不満を持ちつつ、それを差し置いて空気感やキャラクターを気に入ったので続編である本作を読んでみましたが、本作の言葉、文章はしっくりと入ってきました。

    この、言葉のテンポが合う感覚はなんだろう。単にこの作品が「読みやすい」ってだけの理由では恐らく無くて、感覚的に、文章のリズムがワシの読書ベースと結構しっかりはまった作品でした。

    そして、ミステリーとしてのこの角度からの切り口は、ワシが余り知らない故かもしれませんが面白い。「古典部シリーズ」が人の死なないミステリーなのは周知ですが、こういう劇中劇の扱い方もあるんだなぁ、と感心します。先輩ミステリー作家へのオマージュ的な小ネタも嫌いじゃ無い(綾辻行人氏へのそれとか)。

    ただ……と、逆接で言うことでも無いかもしれませんが、本作はより青春小説になってます。どちらかと言えば、青春小説の要素にミステリー的なものを織り交ぜたかのような、主題は高校生たちの成長物語なのかな、と感じます。無論、悪いことでは無いですが。

    ミステリー側のカタルシスはまぁなんとなく推理っぽいものは出来たのですが、青春小説側のそれは(残りのページ量から何か来るだろうとは思ってましたが)ちょっと面白みがありました。そここそ本作が青春小説たる部分ですが、さておき、この「トリックを用いないカタルシス」の作り方は仕掛けてみたいものです。(広義では叙述トリックかもしれませんが)

    と、全体的に不満の無い作品でしたが、とはいえ内容的にすごい感銘も受けなかったので、ワシのレビューで相対化すると★3ちょいくらい、そこに言葉のテンポが合ったので(極めて感覚的ですが)★4つ、といったところでしょうか。

  • 氷菓よりもミステリー色が濃かったですね。千反田さんが大人しかった気もしますが。

    ミステリーの続きを探偵役に作らせるのも面白かったです。映像に映されていない箇所での矛盾はあったけど、他の探偵役の説を覆すものでしたしね。

    それにしても、九命題ねー。

    あとお姉ちゃん……。

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