愚者のエンドロール (角川文庫)

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044271022

作品紹介・あらすじ

「折木さん、わたしとても気になります」文化祭に出展するクラス製作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか?その方法は?だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した!さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 古典部シリーズ第二弾

    夏休み終盤、文化祭の準備のため生徒が集う神山高校

    古典部メンバーは、2年F組が出展する予定の自主映画の試写会に誘われる
    しかし仮タイトル「ミステリー」のこの作品、脚本家が病で倒れたため未完成なのだ

    さて結末は?

    知っているのは脚本家だけ
    それを解決してほしいと依頼される古典部メンバー

    作品の関係者3人に話を聞きながら推理していく、というストーリーなのだが…

    どうやら、ミステリーファンなら分かる小ネタがいくつか仕込まれているようなんです
    知識があればもっと楽しめるんだろうな、と少し悔しい
    でも青春ものは大好物なので、「青春ミステリー」として充分楽しめました!

    古典部4人それぞれの役割があってひとつのチームなんだと思うと胸が熱くなり、自分が年齢を重ねたせいか、キュンとしちゃうのよね(⁠ ⁠◜⁠‿⁠◝⁠ ⁠)⁠♡

    千反田がチョコレートボンボンを食べて酔っ払うのも可愛いwww

    また気が向いたら続きを読もっ^⁠_⁠^

    • Manideさん
      私も、このシリーズ好きでした。
      それぞれのキャラもいいですよね。

      主人公の「やらなくてもいいことはやらない。やらなくてはいけないことは最小...
      私も、このシリーズ好きでした。
      それぞれのキャラもいいですよね。

      主人公の「やらなくてもいいことはやらない。やらなくてはいけないことは最小限の時間で」というのが、好きでした。
      2024/08/17
    • aoi-soraさん
      Manideさん、米澤さんの本いっぱい読んでますね!
      ホータローいいですよね
      頑張って省エネしてる感じがまた…
      Manideさん、米澤さんの本いっぱい読んでますね!
      ホータローいいですよね
      頑張って省エネしてる感じがまた…
      2024/08/18
    • Manideさん
      そ〜なんですよね、よく読んでいました。

      今、本棚見ると、ずっ〜と、感想書いていなかったので、、、米澤さん作品は、ほとんど、感想ないですね、...
      そ〜なんですよね、よく読んでいました。

      今、本棚見ると、ずっ〜と、感想書いていなかったので、、、米澤さん作品は、ほとんど、感想ないですね、、、

      その時の様子とかもわかるから、感想は書いた方がいいですね。
      2024/08/18
  • 古典部シリーズ2作目。『氷菓』と一緒に購入したが、氷菓があまり自分には合わず1年以上寝かしてしまった。小市民シリーズも読んでいるが、そちらの方がまだ良かったように思う。
    プロローグも分かりにくいがエピローグも同様に分かりづらい。謎解きの主人公のホータローもやる気が無く、迷走を続ける。一応の解決が正解でも無いようだし。「愚者」に例えた友人の役割も今一つ疑問。
    米澤さんの本も8冊目だが、どうも自分との相性が悪そう。

  •  読みながら思わずニヤリとしてしまった、それは、てっきり前作の方針を緩く引き継いだような、日常の謎を解きながら、やがては大きな謎に挑む流れなのかと思ったら・・・古典部シリーズ二作目にして、早くも中身をガラリと入れ替えてきたチャレンジ精神と、前作同様に人間の見えない心模様を優しく酌み取った、青春ものストーリーとしても読ませてくれる、なんとも贅沢な作品です。

     今作はいきなり本題の、大きな謎解きが待っていて、しかもこれが殺人事件! と思いきや、そこは米澤穂信さんならではの捻りが効いていて、正確には2年F組の文化祭の企画であるビデオ映画の中のそれで、なんだフィクションかよと思ったかもしれないが、ここでまた面白いのは、一応密室殺人の状況で、一人の死体が見つかったところまでしか撮影が済んでいない、未完成のままの映画を見せられて、そこから推測してその謎を解き明かしてくれると、撮影が再開されて助かるんだけどなといった主旨であり、その理由は、唯一解答を知っている脚本家が精神的苦痛で倒れてしまったからだそう。

     また今作は、いろんな意味でミステリーを扱っているそうで、海外作家の名前や作品がいくつか挙げられているのは元より、黄色い背表紙の文庫や、「中村青」までしか読めない設計士の名前といった、私の世代に応えてくれる心憎いものまでと、古今東西、多岐に渡っていて面白い。

     そんな中でも、どこか印象に残ったのは、まずは二年F組のビデオ映画撮影メンバーの考察を何人か聞いて、それに判断を下すのが、お馴染みの古典部メンバーといった構成に、まるで関係者達に聞き込みをしている、探偵の構図を皮肉っているような感じを抱かせる面白さがあり、しかもそれは高校生だからこそ許されるような、陳腐さに苦笑しながらも自由な発想に唸ってしまうといった、これはこれで結構馬鹿にできないのではと思わせてしまう上手さは、まさに『緻密でないが故に、隙が見当たらない』状況であった。

     そして、そんな謎に挑む古典部メンバーを、改めて簡単に書くと・・・。

    『やらなければいけないことなら手短に』がモットーでありながら、今回、青春の渦中に迷い込んだ高校生らしさを見せてくれた、ホータローこと、探偵役(?)の「折木奉太郎」

    目と口元にいつも笑みを浮かばせてはいるものの実は自分の好きなものしか追求しない、ホータローの旧友にして好敵手「福部里志」

    全体に漂う品の良さに反して目が大きい、好奇心の塊で、部長の「千反田える」

    大人びた表情がそのまま変わらず成長して、今は童顔。しかし過ちに対しては自分自身に対しても手厳しい「伊原摩耶花」


     ストーリー展開として、大どんでん返しとはまた異なるが、二転三転するところに前作同様のホータローだけの活躍ではない意外性はあるものの、その陰に隠されたとんでもない仕掛けとして、謎解き自体に潜ませた二重の謎があり、その一つ目の○○はどうでもよかった的なオチも凄かったが、更に二つ目のそれについては、両タイトルとも密接に関わった、まさに本書のテーマなのかもしれないと思わせるものがあった。

     洋題の『Why didn't she ask EBA?』は、そのまんまといったらそうなんだけれど、重要なのは『そこには何かしらの理由があること』なのだと思い、この物語にしても、それを聞いたらすぐに解決するじゃないかと思うかもしれないが、そこにはその人ならではの繊細なものが潜まれている可能性だってあるんじゃないの? ということで、おそらく米澤穂信さんは、こういうところをとても大切にされる方なんだということを、これまでのいくつかの作品でも感じられて、そこには、人の心の中に土足で踏み込んでくるような行為を、やんわりと嗜めるような雰囲気もあるように思われた、彼ならではの優しさなのだろう。

     そして『愚者のエンドロール』だが、ここでの「愚者」は、本編の中で古典部メンバーをタロットカードのどれかに擬えたそれであることから、人のことも自分事のように思えれば、きっと皆、毎日をもっと楽しく過ごせるんじゃないかなといった願いを込めているようにも感じられた、それは人が人を慮ることの大切さでもあり、とても基本的であるからこそ青春ものの題材としても、しっくりくる素晴らしさがあるのだと思う。

     しかし、今回私が最も心を打たれたのは、ホータローの複雑な心境であり、それを親友の里志が、彼ならではの言葉でさり気なく伝えていたことには、改めてホータローのことをいちばんよく分かっている人は、もっと身近にいるのだということを教えてくれていたようにも思われて、この馴れ馴れしいまでには至らない、絶妙な距離感で相手を立てる感じは、中々できないことだと思う。

    『運、ね。自己評価なんて聞いてないよ。僕がホータローをどう見るかの問題だ』

    『ホームジストより心惹かれるものはいくらもあるさ』

     そして、何よりも今回の謎は、古典部メンバー四人全員がいたから解くことができた、そんな感慨深さもあったことが、私にはとても嬉しかった友情の素晴らしさである。


     ちなみに、米澤さんのあとがきによると、本書はアントニイ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」への愛情と敬意をもって書かれたそうで(毒チョコ+映像には我孫子武丸さんの「探偵映画」という先例も)、これは絶対読まなくちゃと思って・・・だって気になるじゃないですか!!

    • 土瓶さん
      レビュー最後の一文は千反田えるですね。
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      レビュー最後の一文は千反田えるですね。
      ( ̄ー ̄)ニヤリ
      2024/07/04
    • たださん
      はい。
      一度やってみたくて(ΦωΦ)

      コメントありがとうございます!
      はい。
      一度やってみたくて(ΦωΦ)

      コメントありがとうございます!
      2024/07/05
  • 学校の先輩が映画制作中、脚本家の体調不良により結末を残して頓挫。主人公へラストを推察して欲しいとの依頼に挑む物語。

    本作は前作の氷菓に続く古典部シリーズ2作品目。

    結論から言おう。
    まったく楽しめなかった。

    推理を進めていく中で、前作よりも登場人物が無駄に増え、納得度の低い持論推理がダラダラと続き、状況が掴めぬまま、置いてけぼりにされたまま進行していく印象が拭えず、最後は流し読みで読了。

    そこには私を達成感に誘ってくれるオーディエンスは誰もいなかった。

    前作、氷菓の推論が楽しかった故、256ページの本作読了に3日を要して、特筆すべき感情さえ揺さぶられなかったことが残念でならない。

    しかしながら私は著者を好んでいる。
    このまま片想いで終わるわけにはいかないのだ。

    心機一転、積読棚に鎮座している古典部シリーズ3作品目に、いざ参ろう。

  • 高校生特有の甘酸っぱい青春のイメージが
    匂ってきて、とても良かったです。
    神山高校古典部のみんなが日常で起こりうる
    小さな事件を解決していく。

  • 氷菓に続い古典部2作品目。氷菓を読んだのは7年くらい前。ホータロウとエルのことはちゃんと覚えていた。今回は夏休み終盤、文化祭に向けて準備が進められていた、が、古典部メンバー4人は2年F組の映画のミステリー作品を見ることに。その映像は殺人を思わせ、中途半端に終了。解決編が一切ない。脚本を書いた生徒に真相を聴けばよいのだが、何故か聞かずにホータロウがトリックを解く羽目に。全体的に2段オチだったが、どうも納得がいかない。シャーロックホームズの内容は楽しめたが、最初の場面設定に無理があったのでは?と感じちゃった③

  • 夏休みも終盤に差し掛かり、神山高校は文化祭に向けての準備中。
    文集『氷菓』を出品するために集まった古典部の四人、奉太郎、里志、伊原、千反田は、二年F組の制作した映画の試写会に誘われる。
    山奥の廃墟にある劇場で、密室殺人事件が起きるという未完のミステリー映画の結末は?犯人は?その方法は?

    ビデオ映画の中の出来事なのに、ほんとうに殺人事件が起こったかのような緊迫した雰囲気で、ほんとに高校生?と思うような個性的な先輩ばかり出てくる。
    「女帝」という渾名の入須先輩に翻弄され、知らず知らずに他人事に巻き込まれた感はあるけれど、奉太郎の「力」で映画は無事完成。

    奉太郎の謎解きもさることながら、里志の巾着袋から出てくる小道具や、タロットやシャーロックホームズの短編集の知識が散りばめられていて楽しかった。
    ウイスキーボンボンで酔っぱらったり、人の亡くなる話はきらいだという千反田のキャラクターは、ほっとさせてくれる。

    里志と伊原、千反田と奉太郎の関係も気になるので、この後も続けて読んでいきたいと思う。

  • ふわっとしていて良かったです。やっぱりキャラが明確。→クドリャフカの順番へ

  • 2年生の入須冬実からの依頼で、文化祭に出展予定の自主映画を観た古典部メンバー。しかし、その映画は廃屋の密室で少年が殺されている場面までしか撮影されておらず…。奉太郎たちは結末を推理することになったのだが──。青春ミステリ「古典部」シリーズ第二弾。

    映画の試写会へ招かれたら、作品が未完成!病に伏した脚本家・本郷真由が考えていた結末を推理しろと言われた──何を言っているかわからねーと思うが(略)状態。そこに千反田えるがいるのだから「わたし、気になります」と言うに決まっているという。奉太郎はえるや入須に巻き込まれたり乗せられたりしながら、その結末を推理していく。手がかりは途中まで撮影された映画、脚本、参考にした本に加え、先輩たちが考えた推理も交差!多重解決が本作の主軸になっている。

    「別にいいじゃない、鍵ぐらい」
    密室殺人の推理大会に登場するこの一言はまさに至言(笑) これで済めば探偵はいらないんだよなあ。こういうコミカルな推理と、シニカルな奉太郎や里志の思考が入り混じるのが楽しい。ただ、そう笑っていられるのも中盤まで。奉太郎が導き出した結論から、すべては始まる。これはミステリであり、青春小説でもあるのだと。奉太郎の心境の描き方が憎らしいほどビター。噛み締めるには苦すぎる。自分の存在意義とは?という部分が照らし出されて、浮かび上がった光と影に絡め取られる。

    「誰でも自分を自覚すべきだ」
    反射して眩しく跳ね返る入須の言葉。ここから発展して「誰でも自分一人ではできないことがあると自覚すべきだ」と作品で伝えたいのかなとぼくは思った。その手段としてタロットや多重解決的な手法を取り入れたというか。解くべきものは、事件の謎か、人の心か。

  • 氷菓に続く古典部シリーズ第2弾。
    周りが褒めてくれても単に運が良いから謎が融けただけと言っていた奉太郎が、ちょっと特別なのかもと自覚して謎に取組む。
    謎を解いたとみせて、その後ダメ出しが出るのが、なかなかあと引くおもしろさだった。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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