推定少女 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 3175
レビュー : 325
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281038

作品紹介・あらすじ

とある事情から逃亡者となった"ぼく"こと巣篭カナは、逃げ込んだダストシュートの中で全裸の美少女・白雪を発見する。黒く大きな銃を持ち、記憶喪失を自称する白雪と、疑いつつも彼女に惹かれるカナ。2人は街を抜け出し、東京・秋葉原を目指すが…直木賞作家のブレイク前夜に書かれた、清冽でファニーな成長小説。幻の未公開エンディング2本を同時収録。

感想・レビュー・書評

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  • 桜庭一樹の小説は
    闘う者たちのバイブルだ。

    ページをめくるたびに聞こえてくる
    反逆のメロディー。

    理不尽な大人たちからの制圧に
    反旗を翻す
    少女たちの咆哮。

    新しい何かを始める時、
    諦めの鎖を断ち切りたい時、
    自分を奮い立たせたい時、
    僕は桜庭さんの小説を欲し
    弱虫な心に楔を入れるかのように言葉を刻みつけ、
    『抗う意志』と
    『ドン・キホーテの精神』(到底適わない相手であっても、一矢を報いようとする気概)を手に入れる。

    危険な街のことを
    『ほんとの夜を持った街』と表現したり、
    行間から立ち上っては香る
    『夜の匂い』だったり、
    10代の頃のあのどうしようもない焦燥感だったり、
    色白で儚げな美少女と黒光りする無骨な銃の
    絶妙なコントラストだったり、
    桜庭さんが紡ぎ出す切ない物語や血まみれの世界観は
    どれも僕の琴線に触れて
    いつまでも心を揺さぶり続ける。


    思春期特有の未来への不安。
    人生という戦場から流れ込んでくる
    見えない硝煙の匂いに
    恐怖し押し潰されそうになる
    15才の少女、巣籠カナ(すごもり・かな)。

    恋もまだ知らず
    ユニセックスで少年のような体型のカナだけど
    ガラス細工でできた少女人形のように
    本当は繊細で壊れやすい心を持っている。

    物語はひょんなことから
    義父に怪我を負わしてしまい
    警察に追われる身となったカナが
    銃を持ち記憶を無くした
    全裸の美少女・白雪(しらゆき)と出会い、
    夜の街、東京を舞台にした逃避行劇が描かれていく。

    行きたい場所などなく、
    ただただ此処ではない何処かへ
    逃げるためだけの絶望的な逃避行。

    だけどこの作品のスゴいところは
    カナたち少女の絶望的状況を
    生き生きとしたキャラ設定のおかげで
    あくまでも軽やかに
    ユーモラスに描いていること。

    ゲーマーで電脳戦士のオタクなお兄ちゃんや
    ガンマニアの火器戦士・千晴との
    友情や絆を絡ませながら
    旅を続ける中で苦悩し成長していく少女たちが本当に眩しいし、
    ハードボイルド小説としても見事であり
    良質な青春小説とも呼べる作品となっている。

    それにしても何故大人は
    かつて自分が子供だったということを、
    いとも簡単に忘れてしまうのだろう。

    どんなにあがき一矢を報いたいと願っても
    まごうことなく15才の現実は
    圧倒的に無力であり、
    ほろ苦い結末をもって激しく胸に迫ってくる。

    初期の桜庭作品に顕著なラノベ的世界観は
    読む人を選ぶだろうけど、
    大人たちに心を殺され
    無力感に夜空を見上げたことのあるすべての子供に、
    またはそんな子供だった大人には
    強烈な余韻と共に
    間違いなく心を射抜く稀有な作品だと思う。

    なお、この作品は
    桜庭さんが当初構想していたがボツになったバッドエンド版と、
    ファミ通文庫で実際に発表されたハッピーエンド版と、
    ハッピーエンド版をさらに改良したファイナルカット版と、
    ゲームさながら
    異なった三つのエンディングが収録されていて、
    より深くその世界観を味わえます。

  • 衝撃的な小説だった。
    大人と子供って何だろう。

    すっかり忘れていたあの頃のことを思い出した。
    私にも確かに十五歳のころがあった。

    何が辛いのか何が嫌なのか全然分からなかったけど、
    いつだって漠然と不安で辛くてしんどくて死にたくて苦しかった。
    大人になんかなりたくないし、そもそも大人になれるような立派な人間じゃないし、
    だからと言って努力はしたくないし、
    だけど戦死したくはなかった。

    どうしたらいいか分からなかったし、何がしたいか、何になりたいかも分からなかった。
    世の中のほとんどのことは嫌いで、
    お菓子だけ美味しくて、
    バンドの追っかけだけが楽しかった。



    「いまこんなに苦しいこと、あとほんの何年かして大人になったら、忘れちゃうのかな?
    それで、いいわねぇあれぐらいの年の子、悩みなんてなくて、なんて平気で言えるようになっちゃうのかなぁ?」(p132)



    私はまだまだ子供のままだと毎日思っていたけど
    よく考えれば十五歳のころからもう十年弱も経っていた。
    私はなんとなくうまくやってきて、うまくいろんなことをやりすごして生き抜いて、
    年齢だけは大人になった。
    そして果たせもしない責任ばかりを押し付けられて、はっきりとした現実のいろいろな事に苦しめられている。
    仕事がどうとか、生活がどうとか、お金がどうとか。
    何が嫌なのか、自分が何をするべきなのか、はっきり分かってる。
    だけど自分の力不足とか気力不足とかその他色々な理由で問題に打ち克つことができなくて、毎日しんどいしんどいと溜息をついている。

    ため息をつきながら、毎朝バスで見かける中高生に対して、
    ああ、学生は気楽でいいわね、なんて思ってしまっていた、のだ。

    私の思春期は知らないうちに終わっていて、私は知らないうちに大人になってしまっていたみたいだ。



    でも、十五歳のわたしは確かにあのときあの場所にいた。

    私は証、をどこか遠くに置き忘れてきたかもしれないし、
    最初からそんなもの私にはなかったかもしれないし、
    そもそもわたしは冒険なんてしなかったかもしれないけれど、
    十五歳のわたしのことを、久しぶりに思い出してあげることができた。



    何度でも言うけど、桜庭一樹?ラノベ作家でしょ?なんて言っててごめんなさい。

  • 主人公の巣籠カナ、しらゆき、千晴の会話がとても面白く楽しかったし感動的な青春小説でした。
    桜庭さんの作品はいつも文だけで鳥肌がたつような感覚を覚えます。すてきな作品でした。

  • 思春期が終わったって戦場は終わりはしないのだ。
    戦って戦って戦って死ねって大人たちは怒鳴るけど、生きてるだけでせいいっぱいなのに、ひとかどの人物になったり誰かを愛したり子供を産んだり社会の役に立つなんてそんなの無理無理、頑張れない。
    みんな、忘れちゃってるのかなあ……

  • うーむ、ハマる!!
    一回読み始めたら止まんないって感じ。
    カナの幻はどこからだったんだろう…ってずっと考えてしまう。
    白雪も宇宙に帰ったのかなあとか、本当はいなかったんじゃないのかなあ、とか。
    読み終わった後からも心に残る作品だと思います!!

  • 砂糖菓子に続き、心のもやもやした、自分でも手付かずの部分に触れてくるなこの人の作品。どうしても「自分はどうだっただろう」と振り返って感傷的になってしまうので気力がいる。中・高で読んでいたら、確実に今とはまた違う揺さぶられ方(共感や憧れ)で影響受けまくりだったと思う。
    お話自体はSFやら幻やら先が見えずにダレかけたけど、最後は勢いで引っ張られて面白く読めました。分岐エンドは全部でひとつな印象だけども、[放浪]がインパクトあるしなんか好きだな。そのまま逃げ続ける、怖いけど羨ましい。

  • 主人公の家庭が自分の家庭とよく似ていたので、
    よく気持ちが理解できました。
    話がわかりやすく、スリルもあり、どんどん読み進めることができました。
    違うパターンのエンディングも用意されていておもしろかったです!

  • 大人じゃなく女じゃなく、幼い女の子「少女」を書くのがこの人はじょうずだなと思います。でも後半の展開に驚きを隠せなかったです・・・。

  • ダストボックスで出会った少女が、拳銃を持っていたこと、宇宙人?誘拐された少女?と正体不明なだけでもわくわく。
    ゲームの世界のようなスピード感がたまらなく、どうなるの?早く続きが続きがとページをめくると、エンディングが一つのストーリーなのになのに3パターン。
    作者の想像力にたまげちゃいました。

    • 山本 あやさん
      うわー、なんだか想像を超えちゃう感じで楽しそうーー♡

      桜庭さんの文章ってするっとココロに入りやすくて
      読みやすいし、わくわくするよねーっ。...
      うわー、なんだか想像を超えちゃう感じで楽しそうーー♡

      桜庭さんの文章ってするっとココロに入りやすくて
      読みやすいし、わくわくするよねーっ。
      ワタシも読みたいーー[*Ü*]♡
      2012/09/19
  • 逃亡するカナ、裸でゴミ箱にいた美少女・白雪の逃亡劇。三つのエンディングが用意されているが、前の自分ならどれ選ぶかな?とふと思うけど、分からない(タイムマシンほしいな)。逃亡中はもう何がなんやら。でも、あぁうん、そうそう、と。思春期時代の気持ち。この小説読んだら、少し思い出した。もうすっかり忘れている。あれから5年経つのか…。かつての自分を忘れない装置がカナにとって、あの白雪が作ったドールであるように私にはこの本がそれなんだ。だからまたいつか読み返すと思う。でも、あのカップルの女性みたいに忘れるんだろうな。大人って何なんだろうね。いつ大人になるの?適当な歳とったら大人か?「愛してる」と言えるようになれば大人か。あっ…‼今すごく大人になりたくない!って気分。あの頃を忘れて大人になりたくない。忘れちゃいけない。
    この本読んだら、次の本読む前に時間を少しあけてほしい。きっと何かあると思う。
    ちょっと衝撃的。

  • 現代の大人の薄汚れた裏側を知り、大人になんかなりたくない!!…とひそやかに奮闘する中学生の女の子。ダストシュートで偶然出会った女の子との友情。その少女は何者か…。途中に起こる出来事や正体をあえてぼやかしておいて、ストーリーの内容を読者に考えさせ、最後にあきらかにするといった展開が、好奇心をくすぐる。ただ、おれにとっては、なかなかストーリーの世界観に移入するのが難しい作品であった(ノ_・,)。

  • 大人から見る子どもって、本人達が望まないカタチで世間に歪められていて。
    本当の子どもの姿なんて、最初から理解する気が無いんじゃないかとすら思う。
    でもどんなに窮屈で息苦しくても、我慢して大人になっていくしかない。
    諦めて受け入れていくことで子どもを止める、痛みと儚い絶望を感じるお話。
    放浪エンドがいちばん好きな私は、ただ現実逃避したいだけなのか。

  • とある事情で、義父を矢で射てしまい、家を飛び出した、十五歳の少女、巣籠カナ。
    逃げ込んだダストシュートの中で、記憶喪失だという、謎の美少女と出会います。
    カナは彼女を「白雪」と名付け、共に逃亡する事に。
    新たな出会いや別れ、更に、現実とも幻覚ともつかない、不思議な体験をしつつ、二人の少女は逃亡を続けます。
    男の子とでは絶対に無理な、女の子二人だからこその、逃亡。

    『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と近い感覚でした。
    自分の十五歳の頃の気持ちが思い出されて。
    決して忘れた訳ではないんだけれど、でも、ああ、私は大人になってしまったんだ…と、しみじみ感じました。

    作中、カフェで隣に座っていた女性が、「いいわね、あれぐらいの年って。楽しそうで、悩み事なんてなくて」と言い、白雪がキレるシーンがありました。
    白雪は、女性に銃を突きつけ、「おねえさん、十五歳のとき楽しかった?悩み事、なかった?あったでしょ」と言い、女性に謝らせます。自分達にではなく、十五歳だった時の、その女性自身に対して。
    そう。今だって、十五歳の時だって、いつでも、真剣な悩みはありました。
    ただ、悩み事の内容が違うだけ。
    大人の悩みは、自力で戦い、解決しなくてはならないけれど、十五歳の悩みは、非力な自分との戦いでもあるのです。

    作中で、もう一つ、「ああ、そうだった」と思い返した文章。
    「毎日どこかで、ぼくたちは大人にころされてる。心とか。可能性とか。夢見る未来とかを。足蹴にされて踏みつけられて、それでもまた朝になったら学校に行かないといけない。そういった殺戮は、日本中いたるところで毎晩のように起こっているんだ。」
    そんな大人たちに立ち向かえる唯一の武器は、実弾。
    決して、甘い甘い、たった十五歳の放つ、砂糖菓子の弾丸では、大人たちには届かない。

  • 普段起こり得ない事だけど、そんな文章の中に青春を感じました。

  • 巣籠カナは中学三年生で受験が控えているも将来なりたい職業が見つからないでいた。その夜、学校の裏山に未確認の飛行物体が墜落した。気がついたときにはカナは義父を部活で使っている弓で射ていた。パトカーのサイレンが聞こえる中をカナはゲーセン仲間のお兄ちゃんに別れを告げ、隠れるのに最適に見えた路地裏のダストシュートを開けると凍り付いた裸の少女が銃を握りしめている所に遭遇した。記憶喪失らしい上のに白雪と名前をつけ、そこからカナと白雪の逃亡が始まった。
    カナと白雪は変装用に服を買って義父のいる病院へと向かうが、そこで母からの辛い言葉を聞いてしまった場面ではとても悲しくなる。
    東京の秋葉原で女の子に見間違うような火器戦士、千晴とであう。彼の家に泊まり地元の噂が書き込まれている掲示板を見て電話した夜、あの時の義父との場面がよみがえりなにが起きたのか思い出す。白雪の正体が分かりかけたり黒いスーツの男達につけられたり補導員に捕まってしまったりまた逃げ出したり。
    飽きさせない話の展開、設定で楽しめることができた。白雪が何者だったのかはっきりとは分からないが、もし宇宙人だったとしてもカナと同じ悩みを持った少女である。
    この本では3種類のエンディングがあり、どの終わり方もとても良かった。

  • 桜庭作品で最も好き

  • 主人公の心理にものすごく共感。私にもあったこんな時代を忘れたくはないなぁ。

  • 再読。「ここから物語は分岐し、三種類のエンディングがあります。」と書かれたときには驚きと少しの落胆があった。あとがきによると編集部の要望で書きかえたものも含めて全部収録したという事情らしい。こういうゲーム的なエンディングはあまり好きではないが、作家が自由に書けないこともあるのだろう。自分を「ぼく」と呼ぶ少女は脅えながら戦っている。ただ生き延びるために戦っている。そんな時代が自分にもあったことを思い出させてくれる。

  • ひょんなことから父親を弓矢で射ってしまい、逃亡生活を始める女の子のSFストーリー?
    個人的には急にはじまったSF的(ファンタジー?)な流れが受け入れられなかった。
    話の終わりもマルチエンディングになっており、なんだか作り話感を強く感じてしまって、自分に合わない感じでした。

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=334914

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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