砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

  • 角川書店 (2009年2月25日発売)
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本 ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784044281045

作品紹介・あらすじ

ある午後、あたしはひたすら山を登っていた。そこにあるはずの、あってほしくない「あるもの」に出逢うために――子供という絶望の季節を生き延びようとあがく魂を描く、直木賞作家の初期傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 間違いなく読んだ本の中のベストテンに残り続けると思えた一冊。
    タイトルからしてすでに秀逸だ。
    砂糖菓子の弾丸を打ちまくった藻屑は死んでしまった。
    私はこの本を夏のじめっとした部屋の中で読んだ。この環境で読んで良かったと心から思う。まとわりつく様な気持ちの悪い暑さと、この文章は非常に相性が良い。
    藻屑が本当に人魚だったら良かったのにという感想を目にして、私も心から同意した。藻屑は自由を手にして海の底で卵をポコポコと産んで微笑を浮かべているべきなのだ。

    「この人生は全部、嘘だって。嘘だから、平気だって。」

  • なんかすごい本だった。
    この作家さんは初めて読んだのだけど、ダブルカバーのデザインが随分可愛らしいので、読まないジャンルかなーと思っていたら、お借りする機会がありまして…。
    読んでみたらもう、引き込まれてしまいました。なにせいきなり結末。
    しかも主要な登場人物のことだから、どういうことなの??と。もうその時点で、あれこれ想像してしまう。
    明るくないです。雰囲気は暗いわけではないけど、ずーーっと、澱のようなものがまとわりついていて、途中胸くその悪い場面もあったりしながら、けれども冒頭のシーンを考えると先が気になってしまって、結果的には最後まで引っ張られるように読み終えてしまった。
    そして、いろんなことを考えてしまう作品でした。実際の問題と結びつけて掘り下げてしまうと、切なくて、苦しくてたまらない。
    ずっと胸がずきずきしていた。
    久しぶりに、ざわつく本でした。

  • タイトルから想像するような甘い話は一切なし!
    どういうジャンルの小説になるんだろう
    サスペンスやダークファンタジーっぽさもあり、読み終わった今はサバイバルな印象も強い

    殺された少女 海野藻屑(うみの もくず)のキャラが強すぎて、ファンタジーなのか人魚設定でやってるやばい奴なのかどっちなんだろう…と思いながら読んだ
    中盤で悲しいことに後者であり、父親から暴力を受けていることも判明して物語がどんどん重く暗くなっていく
    電車の中で息を呑む私

    タイトルの“砂糖菓子の弾丸”とは、殺された藻屑の妄想や嘘のこと
    甘くて楽しい砂糖菓子
    対する主人公なぎさの実弾とは、(貧乏を)生き抜くためのお金や仕事のこと
    こう書くと藻屑は空想的、なぎさは現実的で改めて対照的だ…
    共通するのは2人ともそれぞれの武器でそれぞれの地獄を生き抜こうと戦っていたこと
    だからこそ、読了後にタイトル『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を見るとすごく切ないね…
    藻屑は撃ちぬけず死んでしまった
    砂糖菓子の弾丸の比喩が判明して「面白い表現だな〜」とだけ思っていた時は幸福だったよね…
    担任の「生き残れたら大人になれたのにな」が胸に重く沈んでる

  • 愛したいけど上手く愛せない。
    好きなのに大事にしたいのに出来ない。
    気づいてもらいたいのに伝えられなくて、空想の世界や今ではない幸せだった過去のまま生きてしまう。
    読んでいると悲しくなる。
    救われなかった人と救われた人との違いは大してなくて、あるとしたら愛されて大事にされた時があったか無かったかの違いなのかな。
    1番良かった登場人物は以外にも最後にその人柄が分かった先生でした。この先生がいなかったら本当に救われない話だったかも。

  • 物語は山中で中2女子のバラバラ遺体が
    発見されたという新聞記事の抜粋から始まる。

    「ぼくはですね、人魚なんです」
    美少女転校生、海野藻屑の自己紹介である。
    そして冒頭にあったバラバラ遺体の本人。

    転校初日からそんな発言をしてしまい、
    周囲から浮いてしまうが藻屑にはある夢があった。

    かわいい表紙からは想像も出来ないダークな印象。
    藻屑には生きてて欲しかった。

    あらかじめ彼女が殺される結末も犯人も
    知っているのに続きが気になり、
    またテンポ感も良くページ数も比較的短いので
    読みやすい作品だった。

    主人公も中学二年生で学生ということと、
    社会問題になっている分野にも触れられているので
    自分が学生だったら読書感想文にもいいかなと思う。

  • 冒頭,少女の遺体発見の死亡記事。ストックホルム症候群…自称人魚の転校生は父の虐待を愛だと信じている。友を失った主人公は,暴力と喪失と痛みを無視する大人にはならないだろう。引き籠りの兄が救い。

  • 読み終えたあと、
    「だけもなぁ、海野。おまえには生き抜く気、あったのかよ…?」
    という担任の先生の言葉が残り続けました。
    藻屑は生き抜きたいという気持ちが湧かないくらいの残酷な仕打ちを父親から受けてたのかも…

    「ほんとうはね、ほんとの友達を探しにきたの。大事な友達。ぼくのためにすげーがんばってくれる感じの友達。そいつがみつからないと、海の藻屑になっちゃうの」
    この藻屑のセリフも引っかかります。
    藻屑が行方不明になった時、主人公は必死に彼女を探しているので、ほんとの友達を探すという目的は果たされているようですが、「海の藻屑になる」ということが人魚姫の「泡になる」ことや「死」と同じような意味だとするなら目的は果たされていない、間に合わなかったようにも感じます。

    難しい。
    たくさんの人が助けようとしているのに、助からない命。本人が助かりたいと思っていないのにどうしたら助けられるのか、、、

  • あまりにも悲しすぎる物語。

    単純な話ではないことは分かっていますが、本当の人魚に生まれ変わっていたら、少しは救われるかもしれないと思いました。

  • 「好きって絶望だよね」

    やらかしてしまった〜( ˟ ⌑ ˟ )
    このお話は1ページ目にプロローグがあって、そこに結末が書かれてるというもの。
    なのに肝心なとこすっ飛ばして半分くらい読んでしまった、、(´・ω・`;)ハァー・・・
    知っていたら、もっと感想違ってたかも、、

    とても衝撃的で読み終わったあと、だいぶ引きずってしまった。
    桜庭さんの繊細で美しい言葉のセンスが、より悲しみを際立たせる。

    「お父さんにしか殴られたことないんだから」
    この言葉が凄く印象的。

    子供は実弾を持たない。
    甘くて脆い"砂糖菓子の弾丸"しか撃てない。
    とても心に残る作品でした。

  •  主人公のなぎさは現実主義で早く自立したいと思っており、神様のように穏やかで部屋から出てこない兄と、明るい母親と暮らしています。
    ある日、明らかに虚言癖のある藻屑が東京から転校してきますが、どうやら藻屑は虐待を受けていて‥という、とても苦しいお話でした。

     藻屑の家から虐待の最中と思われる音が漏れ、それをなぎさが外で聞くというシーンがあります。ここで通りがかったおじさんは、泣きそうななぎさを見て足を止めるものの、そのまま歩き出していきます。物凄く残酷で、リアルなシーンです。

     また、なぎさの母親は多分すごく普通の人です。私たちの母親に置き換えても同じリアクションをとると思えます。その母親の、藻屑が酷い虐待を受けていると知った時の「ー海野さんちの子、大丈夫なの?」という責めるような暗い口調や、藻屑が死んだ後の「げ、げ、現代の病魔っていうのかしら。歪んでるのね、みんな‥」という我が家は違うけど、と言っているような言葉。
    なぎさや、藻屑や、大人と2人の間の年齢にいる兄と母親とでは事実の認識の仕方が違うことが切実に伝わります。どうしても母親は我が子が優先で、他人の子に関しては興味であり、我が子への影響でしか理解できないような感じがしました。

     どちらでも、現実の傷ましさを1番理解しているのに砂糖菓子の弾丸しか持てない子供と、実弾を持っているのに理想の中で生きる大人の対比のようでした。暫くは読めないけれど、本棚にしまっておきたい一冊です。

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば・かずき):1971年鳥取県出身、小説家。1999年、「夜空に、満天の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞し、翌年デビュー。『GOSICK』シリーズが注目され、さらに04年発表の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価される。07年に『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を、翌08年に『私の男』で第138回直木賞を受賞。おもな著書に『少女を埋める』『紅だ!』『彼女が言わなかったすべてのこと』『名探偵の有害性』など、またエッセイ集に〈桜庭一樹読書日記〉シリーズや『東京ディストピア日記』などがある。

「2025年 『読まれる覚悟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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