砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044281045

作品紹介・あらすじ

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。あたし=中学生の山田なぎさは、子供という境遇に絶望し、一刻も早く社会に出て、お金という"実弾"を手にするべく、自衛官を志望していた。そんななぎさに、都会からの転校生、海野藻屑は何かと絡んでくる。嘘つきで残酷だが、どこか魅力的な藻屑となぎさは序々に親しくなっていく。だが、藻屑は日夜、父からの暴力に曝されており、ある日-。直木賞作家がおくる、切実な痛みに満ちた青春文学。

感想・レビュー・書評

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  • なんかすごい本だった。
    この作家さんは初めて読んだのだけど、ダブルカバーのデザインが随分可愛らしいので、読まないジャンルかなーと思っていたら、お借りする機会がありまして…。
    読んでみたらもう、引き込まれてしまいました。なにせいきなり結末。
    しかも主要な登場人物のことだから、どういうことなの??と。もうその時点で、あれこれ想像してしまう。
    明るくないです。雰囲気は暗いわけではないけど、ずーーっと、澱のようなものがまとわりついていて、途中胸くその悪い場面もあったりしながら、けれども冒頭のシーンを考えると先が気になってしまって、結果的には最後まで引っ張られるように読み終えてしまった。
    そして、いろんなことを考えてしまう作品でした。実際の問題と結びつけて掘り下げてしまうと、切なくて、苦しくてたまらない。
    ずっと胸がずきずきしていた。
    久しぶりに、ざわつく本でした。

  • 10年前に父を亡くし、母・兄と3人暮らしの山田なぎさ。
    引きこもっている兄に代わり、早く大人になって自力で生活する力(実弾)を手に入れたい。生活に必要のないことは興味がない。
    そんなドライななぎさの前に、全く正反対の人格をもつ「海野藻屑」が転校生として現れる。

    彼女は自分を人魚の姫だ、といきなりクラス全員の前で宣言する。
    変な奴、嘘つきで、イライラする。
    なのにどうしても放って置けない。
    砂糖菓子の弾丸を撃ち続ける藻屑。
    周囲から浮きまくっている彼女と、なぎさはどんどん親しい関係になっていく。

    そして彼女の嘘の理由を知り、その辛すぎる人生を知る。

    --------------------------------------------

    この本はミステリーではない。

    冒頭に【海野藻屑の死】が提示され、そこに至るまでをただなぞる物語。

    だからやっぱり藻屑は死んでいなかった、とか
    殺したのはあの人ではなかった、みたいな
    読者をあっと驚かせるような仕掛けは何もない。

    それなのに、読み手の心をぎゅっと掴む力強さがある作品。

    なぎさの中学生らしい素直な心
    藻屑のチャーミングさとミステリアスを兼ねたような、それでいて悲劇を匂わせる様子
    そんな彼女たちのお喋りに引き込まれる。
    これってライトノベルってやつ?と軽いノリで楽しめる。


    かと思えば
    急に吐き気を催すような血みどろの場面が、目の前いっぱいに広がる!!

    友情・青春と暴力はいつも隣り合わせにある。
    爽やかさの影にいつも付き纏う、ドロリとした闇。

    そんな印象がページをめくる手を急がせる。

    【生き残った子だけが大人になる】
    そんな言葉が存在すること自体、恐ろしさを覚える。


    そして彼女の死をきっかけに、なにもかも上手く回り出すのが複雑。
    (友彦の滝ゲロのシーン、要る?面白かったけども)

    彼女はどうして死ななければならなかったのか
    どうして助けを求めなかったのか
    そしてうさぎを殺したのは誰だったのか…

    色々な疑問を呑み込んで、物語は終わっていく。


    『こんな人生、ほんとじゃないんだ。
    きっと全部、誰かの嘘なんだ。だから平気』

    こうやって自分に言い聞かせている子供が本当にいるんだろうか。
    きっといるんだ。知らない私が幸せっていう事実。

    絶対に絶対にあってはならないこと。

    救いが欲しかった。
    何か小説らしいトリックが欲しかった。
    せめて物語の中だけでも。

  • 冒頭,少女の遺体発見の死亡記事。ストックホルム症候群…自称人魚の転校生は父の虐待を愛だと信じている。友を失った主人公は,暴力と喪失と痛みを無視する大人にはなれないだろう。引き籠りの兄が救い。

  • 読み終えたあと、
    「だけもなぁ、海野。おまえには生き抜く気、あったのかよ…?」
    という担任の先生の言葉が残り続けました。
    藻屑は生き抜きたいという気持ちが湧かないくらいの残酷な仕打ちを父親から受けてたのかも…

    「ほんとうはね、ほんとの友達を探しにきたの。大事な友達。ぼくのためにすげーがんばってくれる感じの友達。そいつがみつからないと、海の藻屑になっちゃうの」
    この藻屑のセリフも引っかかります。
    藻屑が行方不明になった時、主人公は必死に彼女を探しているので、ほんとの友達を探すという目的は果たされているようですが、「海の藻屑になる」ということが人魚姫の「泡になる」ことや「死」と同じような意味だとするなら目的は果たされていない、間に合わなかったようにも感じます。

    難しい。
    たくさんの人が助けようとしているのに、助からない命。本人が助かりたいと思っていないのにどうしたら助けられるのか、、、

  •  主人公のなぎさは現実主義で早く自立したいと思っており、神様のように穏やかで部屋から出てこない兄と、明るい母親と暮らしています。
    ある日、明らかに虚言癖のある藻屑が東京から転校してきますが、どうやら藻屑は虐待を受けていて‥という、とても苦しいお話でした。

     藻屑の家から虐待の最中と思われる音が漏れ、それをなぎさが外で聞くというシーンがあります。ここで通りがかったおじさんは、泣きそうななぎさを見て足を止めるものの、そのまま歩き出していきます。物凄く残酷で、リアルなシーンです。

     また、なぎさの母親は多分すごく普通の人です。私たちの母親に置き換えても同じリアクションをとると思えます。その母親の、藻屑が酷い虐待を受けていると知った時の「ー海野さんちの子、大丈夫なの?」という責めるような暗い口調や、藻屑が死んだ後の「げ、げ、現代の病魔っていうのかしら。歪んでるのね、みんな‥」という我が家は違うけど、と言っているような言葉。
    なぎさや、藻屑や、大人と2人の間の年齢にいる兄と母親とでは事実の認識の仕方が違うことが切実に伝わります。どうしても母親は我が子が優先で、他人の子に関しては興味であり、我が子への影響でしか理解できないような感じがしました。

     どちらでも、現実の傷ましさを1番理解しているのに砂糖菓子の弾丸しか持てない子供と、実弾を持っているのに理想の中で生きる大人の対比のようでした。暫くは読めないけれど、本棚にしまっておきたい一冊です。

  • '23年4月2日、Amazon audibleで、聴き終えました。桜庭一樹さんの小説、確か初…。

    前回聴いた「恋する寄生虫」と同様、フラッと、聴き始めましたが…こちらも一気に、聴いてしまいました。そして、打たれた…実弾でも、砂糖菓子の弾丸でも。

    やはり、こちらも若者を対象とした作品なんでしょうが、僕は胸を掴まれました。この、やり場の無い感情…。

    少女二人の、戦いの記…曇りのない眼で全てを見つめることの、なんと苦しく、難しいことか。僕は、できていたのかな…なんとか、生き残ったけど。

    桜庭一樹さんに、グッと惹かれました!

  • 私は、子どもの身近にある問題への抵抗・反発・虚勢を指して「砂糖菓子の弾丸」と表現していると理解したのだが、言い得て妙だと感じた。


    当然、飴玉鉄砲では相手に深刻なダメージを与える事はかなわず、せいぜいちょっとベタベタをくっつけたり鬱陶しくさせたり、そんなものだろう。滑稽さすら感じられる。
    だからと言って与えられるがまま、強制される状況全てに無抵抗で従順でいるのも癪だし嫌なものには嫌と表明したい。
    なので、いずれ「実弾」を入手するまでは、兎にも角にも砂糖菓子で弾幕を張るしかない…という世知辛い’青春の受難’を描いた小説なのかなと思った。


    とにかく衝撃の結末。
    救いとかそういうのじゃないんだな…と唖然茫然。

    海野藻屑という人間が残したものは、なんだったであろうか。

    そして私は何を受け取ったか。
    じっくり取り組みたい作品。


    13刷
    2021.10.3

  • 「好きって絶望だよね」

    やらかしてしまった〜( ˟ ⌑ ˟ )
    このお話は1ページ目にプロローグがあって、そこに結末が書かれてるというもの。
    なのに肝心なとこすっ飛ばして半分くらい読んでしまった、、(´・ω・`;)ハァー・・・
    知っていたら、もっと感想違ってたかも、、

    とても衝撃的で読み終わったあと、だいぶ引きずってしまった。
    桜庭さんの繊細で美しい言葉のセンスが、より悲しみを際立たせる。

    「お父さんにしか殴られたことないんだから」
    この言葉が凄く印象的。

    子供は実弾を持たない。
    甘くて脆い"砂糖菓子の弾丸"しか撃てない。
    とても心に残る作品でした。

  • 悲しい結末になることは分かっているのに
    真相に近づきたくて、読む手が止まらなかった。

    読めば読むほど藻屑が可愛そうで
    愛おしくなってくる。

  • 「ぼく、おとうさんのことすごく好きなんだ。…好きって絶望だよね」頭のおかしい美少女「海野藻屑」と、リアリストの「あたし」の物語。ぺらぺらの本なんだけど、死にたいくらい衝撃的でした。なんだ、これは!冒頭からすでに誰が死んでしまうか分かってるんだけど、祈ってしまう。悲しいし切ない本です。読んだあとに何かを学べるかと言ったら何もないです(えー!)。誤解を恐れずに言おうと思う。自分を慕う子どもを殺す親は、絶対に許されない。どんな事情があっても、これがまだ子どもを持ったことがない小娘の戯れ言だとしても、子育てにどんな苦労があったとしても、許されない。わたしは親になったことはないけど子どもだったことはある。誰にでもある。是非読んで欲しいです。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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