シェンドールの妖精使い 求愛の花は舞踏会で (角川ビーンズ文庫 63-5)
- 角川グループパブリッシング (2009年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044528058
作品紹介・あらすじ
"光の妖精使い"として目覚めたものの、相変わらず妖精が使いこなせず日々奮闘中のユナ。幼なじみで守護者のキーファ、そして恋人のふりをすることになってしまったヒースとの関係で悩むなか、学校では女王陛下を招いての舞踏会を行うことに。ところがそこに禁忌と言われている"闇の妖精使い"の力を持つロイをユナが招き入れてしまって-!?恋と魔法のフェアリー・ファンタジー、運命の第2弾。
感想・レビュー・書評
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回送先:川崎市立宮前図書館
「求愛」というタイトルになっているが、実際には恋愛とは一線を画したところで話が進行している点に留意して評価したい。
評者は、異性愛のフォーマットに裏打ちされただけの少女文学は早晩長くは続かないと思うときがある(これは、ボーイズラブと呼ばれる擬似的かつ異性愛主義的な男性同性愛物語モドキにも言えた話である)。本書は続かなくなった時にこそ注目される作品ではないのかという期待が評者の中にめばえる内容になっており、一読してその期待の理由がどこにあるかが分かった気がする。
それというのも、和泉が重視しているのは自ら裏設定として設定している「人格崩壊」の危険性をあえてすべての人間に等しく付与することで、単純な恋愛だけでも単純な一途さだけでも世界を動かすことは事実上困難であるという「すでにわかりきった冷めた」現実をロコツにすることなく「裏設定」という名のオブラートに包み込んで、混ぜ込んで見せたからかもしれない(逆にこの混ぜ込みが見えてしまったオーディエンスが露骨な嫌悪反応を見せることがあるのは至極当然なことであり、同情はしないが理解はする。評者は和泉の努力を評価している)。
少女文学のフォーマットになぞらえると痛い目に遭う作品。ジュディス・バトラー『アンティゴネーの主張』を脇に添えて再読してそう思えたのは確かだ。 -
草津図書館 2009/4/18