- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044601157
作品紹介・あらすじ
”宇宙の真の姿”について独創的な理論を構築した宇宙物理学者。だがこの理論に従うと宇宙はわずか8日前に誕生したことになる。恋人と自分の実在を確かめようとした彼は……表題作ほか4編収録。
感想・レビュー・書評
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何冊か読んだ山本弘氏の作品の中では、よりダークで恐怖感をテーマに描かれている世界、という印象を受けた短編集。
人の心とは何か、という深いテーマを、AIによってアプローチする氏のいくつかの作品でも見られた手法。
これは興味深い上に、まだまだ探っていくと面白い予感がするのだけれど、惜しむらくは山本氏が病魔により今後新作を期待できない状況にあることだ。
SF界にとって大いなる損失であり、いちファンにとってもとてもとても残念。
回復を祈る。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
良い短編集だ!
とまでは言えないが、それなりに人に勧められる本だと思う。
表題にもなってる『闇が落ちる前に、もう一度』と、『審判の日』が好き。
闇が~は、五秒前世界創造説に少し捻りを加えたもので、審判~は、人類がほとんど一瞬のうちに消えてしまった世界の話し。 -
表紙を見て、「あれ? 『アイの物語』が文庫になったの?」と思った。
しかし、よく見るとタイトルが違う。
内容は、『アイの物語』につながるし、『神は沈黙せず』にもつながる短編集である。
今の自分は、本当にいるのだろうか。この世界は誰かに作られたものなのではないのか。そんな考えを持つとき、創造神を信仰に持たない自分にとって、「創造主」は、ひどく不気味だ。
小説を読むのは良い。
しかし、自分が登場人物で、楽しみも、痛みも、喜びも、悲しみも、愛しさも、切なさも、怖さも、怒りも、何もかもが作られたものだとしたら、それは、恐怖だ。
はじめから決まっている、アカシックレコードの上にいるのも許せるものではない。
しかし、そうした怖さを、小説の中に入れ込んで、それを覗き見る、ということが、わたしたちにはできる。
作った箱庭に人を住まわせ、上から見下ろす、悪趣味な観察。
自分は、その、覗かれている人なのではないか、という、ホラーよりもホラーな恐怖がテーマになった(と勝手に思っている)物語の集まりになっている。
『闇が落ちる前に、もう一度』宇宙が終わるまでに、したいことは何?
『屋上にいるもの』意思は、誰のもの?
『時分割の地獄』わたしは、生きているの?
『夜の顔』在るべきもの、あるはずのないもの、その差は
『審判の日』審判は、誰?
これを読んでみて、気に入ったら、ぜひ、『神は沈黙せず』を。-
つまりは、自身で自己肯定感を持ちうる程度には、肯定され、承認されてきたのだろうと思います。
ま、末っ子という特性上、親の期待は薄いもの...つまりは、自身で自己肯定感を持ちうる程度には、肯定され、承認されてきたのだろうと思います。
ま、末っ子という特性上、親の期待は薄いものですし、性格的にも、承認より、自己満足が優先され、わがまま放題の幼少期でした。
人はあらかじめ、ニュートラルで、プラマイゼロです。しかし、人がそれぞれ自己規定し、感じることで±が生じます。
どれだけ出る杭を打ち付けても、0以下には沈み込みません。
むしろ、沈んでいるのだとしたら、その中で輝いていたからこそ、シャーンドルさんを見つけられたのだと思います。2018/02/02 -
過去は変えられませんが、記憶は変えられるんですよ。
特に、記憶の価値は。
なので、今まで、マイナスの側面しか見えなかったものに、別の...過去は変えられませんが、記憶は変えられるんですよ。
特に、記憶の価値は。
なので、今まで、マイナスの側面しか見えなかったものに、別の角度から光を当てればいい、そう思います。
わたしなんて、ただのわがまま娘でしたから。叱られてばっかりだったように思いますが、性格上、気にしないタイプだったことが、ポジティブな評価ばかりを印象に残しています。
つまり、本当に評価が高かったかというより、いいとこどりする、単純な子供的感性をもって育ったんですよ。「お前は、家出願望がある」と、親によく言われましたし。一方、今の方がずっとネガティブですし、冒険しない。
シャーンドルさんは、早くに大人にならざるを得なかった部分があるのでしょうが、その分、等身大を過小評価しているともいえます。子ども時代の万能感って言ったら、無敵ですからねえ。それを早くに卒業してしまった。そして、大人のたしなみを持ち過ぎた。
そのうち、何かしら、いっぱい自慢話を聞かせてください。無理にでも!(笑)2018/02/05 -
2018/02/06
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代表作『アイの物語』で心温まる短編を惜しげもなく披露してくれた作者だけに同傾向の話が多いのかなと思って読んでみたが、引き出しの多さに驚かされた。「屋上にいるもの」は完全にホラー小説の類だけど、怖さにステータス全振りしていない所が良い意味で作者の味だと思う。
「夜の顔」や「審判の日」みたいに、普段通り過ごしていたはずの日常が異世界へと姿を変えてしまう描写は、ディックの作品を連想させる。 -
29:宇宙の本当の姿を追い求めて独自の理論を打ち立てた主人公だが、その理論は宇宙論の先達にあっさりと誤りを指摘され、理論が間違っていると証明する実験を行うことに。しかしどうしてか、実験によって主人公の理論が正しいことが証明されてしまう。
表題作のほか4つの短編が収録されています。共通するのは、現実世界の物理法則を超えたメタ的な存在を感じさせることでしょうか。そのせいか、どちらかといえば暗めの話が多いのですが、表題作はとても面白かったです。 -
短編集ですが、読みごたえあります。
特に『審判の日』は著者ならではの作品だと思います。 -
ホラーがかったSFの思考実験が中心の話5つ。もしも世界が8日前に始まったものだったら、AIが殺人のために、別の人格を持った人物を想像したとしたら…等。
思考実験的なAIの話は、わかるんだけど他の作品よりも怖くもないし意外性も少なく、何でこれだけSFマガジンに収録で、あとのは単行本のための書き下ろしなのかなあ?という印象。
小松左京「こちらニッポン」みたいな「審判の日」と「屋上にいるもの」は非常にシンプルなホラーでありSFなので、万人向けに読みやすいのだが、他の作品はちょっとメタな世界観を理解できない人には辛いかもしれない。
買う場合は、電子書籍もおすすめします。ちょうどいいボリュームなので。 -
SF短編集。しかしもともとホラー文庫で出すために書かれたそうで、そういう風味で読みやすい。しかし科学で原理や未来について考える必要がある問題は、哲学に近くなるね。高度な人工知能は心を持つと言えるのか、とか。
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「神は沈黙せず」と同じように「アイの物語」の為に読んだ本。短編集です。
やっぱり山本氏好きだ!
これでやっと「アイの物語」を読む準備ができた。