カレイドメイズ2もえない課題とやける乙女心 (角川スニーカー文庫 213-5)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年3月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044744052
作品紹介・あらすじ
カイルたちは古代魔法王国の時代から続く秘祭の調査に向かう。その村には未調査の遺跡もあり、研究者魂をくすぐられたカイルは、王国復活の野望(=子作り)に燃えるネーフェの天然ぼけアプローチをかわしつつ、調査にはげむ。そんなふたりの前に、超越遺物を持った妖艶な少女ミオが現れた。なぜか彼女もカイルに興味を持ったらしく、親しげに急接近してきて-!?ライバル登場、三角関係勃発。半熟王女に勝機はあるのか!?-。
感想・レビュー・書評
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半熟姫の暴走具合は、読んでいて楽しいものです。
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“「それが、どうかしたの?」
「グラハム村長はアークスくんに嘘をついた」
レナートスは女神の胸像に目を向けたまま説明した。
女神像に、最後の花が手向けられる。観光客らしき女性は、自分が最後の一人になったことに頬を緩めて喜んでいる。周囲から、その幸運へと拍手が送られる。
「嘘?」
「アークス親子は勇敢な臆病者なのだよ」
ずり落ちてきた眼鏡のブリッジを押し上げる。昨晩ビアンカに殴られたせいですっかり歪んでしまった。予備の眼鏡を持ってくるべきだった。
「アークス教授は恋愛に勇敢で戦闘に臆病。そしてアークスくんは逆に、恋愛に臆病だが戦闘では勇敢だ。グラハム村長はアークスくんにこう言ったそうだ。アークス教授に助けられた、アークス教授は私やネーフェオリー殿下を捜しに遺跡に戻ったと——そんなことは、ありえないのだよ。私はアークス教授を尊敬しているが、それと彼の性格は別の問題だ。アークス教授は何かあれば真っ先に逃げ出すタイプだ。悪食蜘蛛がいるとわかっている遺跡に、我々を助けるだけのために単身乗り込むような真似は絶対にしない」
「考えすぎじゃない?もっと単純に、アークス教授はグラハムさんにはあんたたちを助けに行くって嘘をついて、自分だけこっそりと逃げただけかもしれないじゃない」
「いや。そもそもアークス教授がグラハム村長を助けた、というあたりからして怪しい。逆ならばまだ理解できるのだが」
「......何か、ひどい言われようね。ちょっとアークス教授に同情しちゃう」”
今回も面白かったー。特に会話。
財布の件とか。レナートスが絡むと色々と。
“「ほう、ビアンカくんは無事だったか」
「一応心配してたのか。ていうか、おまえ一緒にいたんだから守ってやれよな。仮にも好きな子なんだろうに」
「だだだだだだだ誰が」”
カイルは天然じゃなくて単にずれてるだけかな。勘は良さそうだし。
しかしレナートスお前好きな子の手帳を...っ!
いや、好きだから見てたのか。
ミオは敵側だけど心は優しい子、かなー。でもエロい。
“丸腰になったレナートスが、《双頭火蜥蜴》に追い回されている。
カイルは急いで魔導万華鏡を持ち替えた。シリンダーに火属性の導片<オブジェクト>と反転石を放り込む。
「レナートス、こっちに向かってまっすぐ走れ!」
「私を囮にする気かね!」
文句を叫びつつも、レナートスは《双頭火蜥蜴》を引き連れて駆けてくる。
カイルは意識を集中した。魔力接触。魔晶石を最大威力に配置。
鏡口をレナートスの頭に向け、引き金を絞る。
発動紋が展開するのと、レナートスがカイルの意図を察して頭を低くしたのは、同時。
ふわりと浮かんだ帽子を飲み込んで、怒濤の氷雪が《双頭火蜥蜴》へと押し寄せる。
大量の氷を被った《双頭火蜥蜴》の体軀が、水蒸気を上げて黒く硬化する。放っておけばすぐにまた内側から溶け出すだろう。が、それを待ってやる必要はない。
「——はあっ!」
カイルより少し遅れて、ネーフェが気迫とともに両手を突き出した。
両手の先で、発動紋のみが展開する。発動紋と髪の色は、緑。
不可視の魔力が、《双頭火蜥蜴》へと襲いかかる。
土属性の反転、「崩れる」魔法を受けた《双頭火蜥蜴》の体軀が、一瞬にして崩壊した。ただ崩れて溶岩に戻るのではなく、火の粉となって空中に霧散する。
ほっと息をつくネーフェの前で、レナートスがへたり込んだ。地面に両手をついて、はあはあと肩を揺らして呼吸を整える。
「こういう、作戦には、事前の、打ち合わせと、練習が、必須だと、思うのだがっ」” -
ネーフェが可愛い。ミオの登場で、二人の仲が発展するか。