叛骨の宰相 岸信介

著者 :
  • KADOKAWA/中経出版
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046001412

作品紹介・あらすじ

東条英機、小林一三、吉田茂に挑み、国民に媚びることなく、真の指導者たらんとした政治家がかつていた-。圧倒的な知識と教養、先見性と冷静な判断力、敵を作ることを恐れない強固な意志と実行力、人を捉えて離さない人間的魅力、そして強運…。政治家として理想的な資質を兼ね備えた岸信介の数々の業績は、首相の資質が国家の将来を左右するという厳然たる事実を我われに思い出させてくれる。現代日本人に向けた渾身の宰相論ここに誕生!

感想・レビュー・書評

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  • 雑誌の「選択」に田中角栄と岸信介の似ている点と違う点を論評しているコラムがあって、改めて岸について知りたくなった。そうしたところ、我らが北先生が既に岸信介の評伝を書かれているじゃないか!ということで早速読んでみた。変わらず北作品は平易な文章でサクサク読み進める、控えめだけどリアリティのある会話の風景が想像力を搔き立てる。あっという間に読み終えた岸信介の感想は、こういう人物は当時よりも数十年あるいは相当に距離を離れて初めて適切な評価を得られる人なんだなということ。端的に言えば、岸は2つの国(満州国と戦中戦後の日本)の経済産業、社会保障体制を作り上げた人物であり、戦後はいまにつながる日本の安全保障の体制と独自のアジア外交を打ち立てた人物である。しかも、それらを数十万人の若者が家の外を囲んでいまでは想像も付かないような圧力をかけるなかで数年間でやりきったというとてつもない叛骨心というか意思の人物であったことがこの本を通じて理解ができる。

    またこの本では改めて保守合同、55年体制の裏舞台を知ることができる。吉田茂、鳩山一郎、大野伴睦、そして三木武吉と岸との虚虚実実の駆け引き、特に三木武吉と岸の大きな政治イシューを掲げ、それの達成とあれらばすべてを飲み込む柔軟さや闘争本能には底知れぬ凄みを感じずにはいられなかった。

    この本で唯一残念なのは、岸のカネと女の話が少ないことである。世間的には有名なCIAと岸の関係には言及がなく、おそらくケタ外れの金が動いたであろう東南アジア外交の賠償時のことも「岸は満州人脈の一人である久保田豊にダム建設を請け負わせた。」の1行で済ませている。まあ、ここは北先生の"高度成長期の日本へのラブレター"のロマンの一環で野暮なことは書かなかったと解釈をしておきたいと思う。

    いずれにしても大義に対する意思貫徹力、それを推進する上での柔軟性や闘争力、実務能力。そして大きすぎて同時代の人ではなかなか評価できないそのスケール感、どれをとっても岸の爪の垢でも飲ませてもらって、少しでも自分もそういう人物になりたいものだと思わせてくれる本であった。あ、ちなみに、この人は安倍首相の祖父。爪の垢どころか血を分けてもらった現在の宰相の手腕を今後もしばらく拝見させてもらいます。

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著者プロフィール

昭和35年12月24日愛知県名古屋市生まれ、東京大学法学部卒業後、富士銀行入行。資産証券化の専門家としてみずほ証券財務開発部長等を歴任。平成20年6月末でみずほ証券退職。本格的に作家活動に入る。著書に『白洲次郎 占領を背負った男』(第14回山本七平賞受賞・累計47万部)、『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』、『吉田茂 ポピュリズムに背を向けて』(以上講談社) 、『陰徳を積む 銀行王・安田善次郎伝』(新潮社)、『西郷隆盛 命もいらず 名もいらず』(WAC)、『松下幸之助 経営の神様とよばれた男』(PHP研究所)などがある。

「2017年 『佐治敬三と開高健 最強のふたり〈下〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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