歴史が面白くなる 東大のディープな世界史 (2)

著者 :
  • KADOKAWA/中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046005076

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  • 『東大のディープな世界史』の第2弾となります。東大入試をはじめ、世界史の論述問題は今まで得た知識を総動員して、縦横に組み合わせて一つの芸術作品を作っていくようです。その完成度はもちろん解答者によって違いますし、教師の間でもまさに「芸術作品」と呼べるものから、単に単語をつなげただけの「駄作」まで幅広くあります。何となく数学の証明問題にも似た感がありますね。世界史論述問題の傑作とは、やはり教科書に出てくる基本的な内容をしっかり押さえ、そこから展開してる文章です。一方駄作はさっき言ったように単に単語をつなげただけものそうですが、一見唸らせる様に見えるものの教科書の隅をつついても出てこないような難しい単語をこれ見よがしに使用してごまかしているものもそうです。私自身、これを肝に銘じて生徒たちに説明していきたいと思います。

    では、以下面白かったところや目から鱗が落ちたところを
    「ヨーロッパはバター圏とオリーヴ圏に分かれます。境目はアルプス山脈で、ここから北がバター、南がオリーヴ油です。オリーブ油圏は、夏の乾燥が強い地中海に面します。森林は育たず、そのため建築は石造で、作物栽培はオリーヴやブドウ。牧畜は羊や山羊の放牧です。一方、バター圏はその正反対で、森林に囲まれ、建築は木造、作物は穀類。そして牧畜は牛や馬が適します。」(24頁)
    「ローマ教皇庁は、モンゴルの改宗を企図して修道士を派遣した。モンゴルからはバール・サウマが教皇を訪問。これを機にモンテ・コルヴィノが大都司教に任命され、カトリック、東方教会、ネストリウス派が東西平和共存の架け橋となった。しかしネストリウス派のイル・ハン国でカザン・ハーンが統治権の安定を図ってイスラーム教を国教化したため、キリスト教連合による帝国再統一の目はなくなった。」(59頁)
    ※バール・サウマなんて出てきません。この言葉がこの解答の価値を下げているような気がします。
    「オランダは、・・・英蘭戦争では今のニューヨークをイギリスに譲る代わりに、南米スリナムを得て、大西洋三角貿易の礎を築いた。この間、国際法学者のグロティウスが海洋自由論を唱えてオランダの世界進出に正当性を与え、また近代外交の起点となったウェストファリア体制の成立にも貢献した。」(77頁)
    「ガンダーラ美術=バクトリア(前3世紀~前2世紀)伝来神話は、案外根強いものがありますが、そんな証跡はありません。今回の設問は、それを否定するものです。「ヘレニズムの影響を受けてガンダーラ美術が発達するのは『1世紀頃から』ですよ」というのはそういう意味です。(136頁)・・・ですから、ガンダーラ美術は、研究者のあいだで評されてきたように、「クシャーナ朝とローマとの海上交易によって生じた『ローマ式仏教美術』(B.Rowland,The Art anda Architecture of India.Baltimore,1967)といえるでしょう。(143頁)
    「七年戦争の結果、フランスは北米大陸の植民地をすべて失います。一方、イギリスは、ケベック(現カナダ)、ミシシッピ以東の広大なルイジアナ、フロリダなどを獲得。・・・それから、イギリスが占領したハバナはスペインに返し、その代わりにスペインはイギリスにフロリダを譲る。しかしこの交換は、面積的に釣り合いがとれませんので、イギリスはスペインにミシシッピ以西のルイジアナも付けて、セットであげました。」(220~221頁)

  • 歴史上の各イベントを繋げて語れる能力が必要なのね。イスラームの章は、まったく理解できずです。もう少し、勉強が必要でした。

  • 前略、世界史は得意です。苦手な方には申し訳ない文面、恐縮のつもりです。そういえば、一昔前にマイ東大ブームがあって今もヒマさえあれば勉強している僕です。ハッキリいって東大のディープなシリーズは明らかに、東大クラスの学力=超得意科目にする狙いがあるでしょう。この本「世界史」に関して言えば、並の問題で60文字くらいかかせるから、受験のためだけに新聞のような論理の文章の規範に慣れて文語を使いこなす能力が必要でしょう。あとは、教科書丸暗記して、歴史の本をバンバン読みながら、文章題に対して推敲、2年は過去問をバンバン解けばきっと東大世界史に追随できるはずだ。問題は悪魔のような大論述。残念ながら、僕のキャパシティはこのくらいが限界のようだ。

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著者プロフィール

◉──東京都出身。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究員を経て、聖心女子大学文学部歴史社会学科兼任講師となる。おもな著書に『東大生が身につけている教養としての世界史』(河出書房新社)、『歴史が面白くなる東大のディープな世界史』(KADOKAWA /中経出版)、『エリア別だから流れがつながる 世界史』(監修、朝日新聞出版)など多数ある。

「2023年 『箱庭西洋史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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