日本人がつくる世界史

  • KADOKAWA/中経出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046012364

作品紹介・あらすじ

日本が世界の中で現在切迫した状況に置かれているのは、 日本人が世界史を書いてないからである。いま日本人が為すべきことを超鳥瞰図的な歴史を踏まえて語ります。誇りある日本人になりたい人、必見!

感想・レビュー・書評

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  • 暗黒のヨーロッパ中世、略奪主義の近世ヨーロッパ、第2次世界大戦後の歴史を捻じ曲げてきたアメリカ、そして中国、ロシアー彼らの作る世界史も自己中心的なものであり、今こそ大局から見ることのできる日本が世界史を書くべきだという論旨である。
    いくつか、そうかと思ったところを書き抜いてみる。
    ・①白人は略奪主義だった②キリスト教はそれを正当化する道具にされた③略奪主義の300年間にどんなことが行われてきたかーこの3点をしっかり書き切るだけでも、多くの人がイメージしている世界史とは全く違ったものができる。
    ・アメリカ人が自作自演したハワイ王党派のクーデターにかこつけて、無理やり女王を退位させ、アメリカにハワイを併合してしまった。
    ・コミンテルンは天皇の下で団結している日本が目障りで、こういう国家をなくそうとする運動であった。
    ・王の財産目当てだった「市民革命」「文化大革命」
    ・中国はモンゴル族、チベット族を大量虐殺した。ウイグル族の地区に入り込み、漢族は資源を奪い農地を広げた。ウイグル族を大量に強制労働させ、その上核実験まで行って、急性被曝で9万人を死亡させた。
    ・第1次世界大戦後、国際連盟は南洋諸島を日本に任せたが、新渡戸稲造は「委任統治」を提案し、日本は学校を作って住人たちに勉強させ、将来の独立を約束した。
    ・植民地の住人に学校に行かせると厄介ということで、欧米の列強は学校を作らなかったが、日本は韓国・台湾などで学校を作り、ライフラインも整えた。
    ・1945年に日本軍が撤兵する前に、南北朝鮮の代表を集めて話し合いをさせようとしたが成立せず、統治権が米軍に移った。これが南国分裂の始まりである。
    ・始皇帝が行った「焚書坑儒」は、統一前の戦国七国のうち他の六国で使っていた漢字を廃止して、漢字を国有化しようという狙いがあった。
    ・中国は、日本についてまじめに書く気なんてもとからない。正史の中ではちゃんとしているほうだといわれる「明史」にしても、「信長が阿奇支を秀吉に討たせたから明智に殺された」と書いてあるぐらいだ。「魏志倭人伝」にしても信用性に乏しいというか、今でいうと、誰かのTwitterみたいのものだ。
    ・歴史を書くときに、相対評価は大変だがやるべきである。例えば、ペリーが日本に来た時、日本人が驚いたというのは絶対評価だが、他の国が初めて黑船を見た時の反応と比べたらどうなのか?黑船を見て、スケッチしておいて自分たちも作ろうなんて考えたのは、有色人種では日本人だけであった。そういう発想を持つことができたから、有色人種の国の中で唯一、植民地にならなかった。
    ・313年にローマ帝国がキリスト教を公認した瞬間からヨーロッパの堕落が始まった。キリスト教は一神教なので、異教のロ-マ神の祭典だからとオリンピックを廃止した。聖書にすべての知識があるということから、上下水道といった古代ローマの科学技術を潰していって、人糞が道に溢れるようなことになった。
    ・この後、ひたすら殺し合いの1300年が続き、その果てに30年戦争があり、勝ったほうのスウェーデンのクリスティーナ女王が「異教徒だって殺さなくていいじゃない」と画期的なことを言った。それまでは「殺さなければならない」であった。ここからやっと近代が始まった。それがウェストファリア体制であった。
    ・古代、中世、近代は右上がりではない。中世で滝に真っ逆さまに落ちていった。やっと上がっていくのがルネッサンスであった。
    ・江戸時代まで日本は世界史に入らなくてよかった。世界史は殺し合いの歴史であったから。
    ・日本はこの千年間、ずっと先進国だったので、この千年間を書けば、そのまま世界史の頂点を尾根伝いに書くことになる。そうできたのは、日本が賢かったからで、内部争いをせず、唐や天竺の教えを消化して、追い越したからである。
    ・アメリカが正しいとか、イギリスが正当というものだけを世界史にするのは偏っている。中学校の教科書では、イギリスがインドを支配して文明を教えたとか、ヨーロッパにアメリカ大陸が発見されてよかったとか、ただ戦争が理由もなく始まったようになっているとかで、日本が加わった戦争だけは日本が悪かったと書いてある。戦後に日本がしたことも、すべて下から目線で書いてある。はっきり言って、岩倉使節団に言った連中の舶来崇拝がひどすぎた。江戸時代の人間は、自分の頭で考えていて、インテリジェンス能力は高かった。だから、ペリーが来たとき対応できた。
    ・ロシアは本当に悪辣非道な国で、条約は破るわ、日本人を皆殺しにしたりシベリアに連れて行ったりするわで、皆分かっていてやっている。いまのプーチンにしても、力関係を見ながらやっている。やはりヨーロッパでもまれた国であった。
    ・アメリカはグローバリゼーションと思って悩むことはない。アメリカこそが自分たちの歴史を書き換えて正当化を図っている。どこの国の国史もそんなものだともいえるが、アメリカのはひどすぎる。ほとんど架空の話である。
    ・日本人が上から目線に立った世界史を書くべきである。「日本が平和にやっていたとき、ローマではこんな殺し合いをしていた」「中華世界ではこんなころしあいをしていた」ということをきちんという。統一した世界観を作るということは難しいが。
    ・清朝のアヘン戦争前段階で、実質GDPの世界シェアは32.9%であった。このときの状況を考えれば、GDPの高い国が強国だったわけではなく、軍事力を整備し、相手を人間とも思わないようなやり方ができる国が強かったということだ。
    最後に、どのような項目建てで世界史を書くべきかの提案がある。うーん、なんだかぴんと来ないものだが、こちらの勉強不足なのか、まだまだ練れていないのか。なんか無味乾燥ぽいのだが。

  • 日本人が世界史に登場するのは19世紀。それまでの世界史はひたすらに殺し合っているものに過ぎないのたから、そこに登場していなくて幸いである。という考え方は目からウロコ。世界史は日本が作った方がいいという主張はたいへん面白かった。

  • 英米中ソにまとめてダメ出ししてる辺りは目新しい展開!

  • これは読んでおくべき作品です

    2016.9.8読了
    2019.1.20再読
    世界中の歴史すべての情報は勤勉な19世紀の日本人が整理していた
    20世紀の日本人頑張れ
    つけは21世紀の日本人

  • この本は共著ですが、その一人である日下氏の本は今まで何冊もお世話になってきました。今回の本のタイトル「日本人がつくる世界史」に惹かれました。

    予約をして届いたらすぐに読み始めて、出張に向かう飛行機の中で読み終えてしまいました。歴史は勝者がつくる、というのは「逆説シリーズ」で有名な、井沢氏の言葉ですが、私達が世界史の授業で学んだものも、まさにその通りで、光の部分しか強調されていませんね。

    影の部分を強調して非難するのではなく、過去に置かれた環境において、その当時の人間がどのように考え、どう行動したかを知りたいものです。そして、過去の先輩の成功も失敗も本当の姿を学んで、未来に活用していきたいですね。

    そのような歴史を書くことができるのは、日本人しかいない、と日下氏はこの本で述べています。今回も楽しい読み物でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・以下の点をしっかり書き切るだけでも、多くの人がイメージしている世界史と違うものができる、1)白人は略奪主義、2)キリスト教はそれを正当化する道具、3)略奪主義の三百年間になにが行われたか(p17)

    ・4通りに分けられる歴史の見方、1)進歩史観、2)末法思想、3)循環史観、4)最後の審判(p23)

    ・歴史に必要なもの、1)視覚的な情報となる「ピクチャー」、2)登場人物たちの「キャラクター」、3)起きたことに対する解釈を含めた「ストーリー」(p28)

    ・一人で書くからこそ、縦糸と横糸を自由に操ることができ、歴史に筋道をつけられる(p29)

    ・日本では子供を殺す代わりに、長男と長女は残して、あとは間引いた。男の子は山に捨てて、女の子は川に流した。それを、山に芝刈りに行き、川に洗濯に行くと言っていた(p37)

    ・マラソンの起源が「マラトンの戦い:紀元前490年」だが、これは初めてヨーロッパがアジア(ペルシア)に勝利した戦い(p39)

    ・教会を潰して財産を取り上げて金持ちになって、自分たちは「市民」といった(p42)

    ・中国人は、四書五経によって漢字の語彙と使い方を学んでいた。漢字が分かれば地方の行政官として派遣されてもその土地の知識人と話が通じる(p52)

    ・ナポレオン軍が強かったのは志願兵による国民軍で、自分たちの財産と権利を守るために戦った。ほかの国は傭兵だったから弱かった(p60)

    ・いまも続く、ロシアとウクライナの衝突にしても、ロシア正教とカトリックのぶつかり合いと見ることができる(p72)

    ・クリミアに住んでいたのは、クリミア・タタール人で、モンゴル帝国の末裔。1783年にエチュカリーナ2世のときにロシアに併合された(p75)

    ・2014年にクリミアでロシア編入の住民投票で90%以上の賛成があったとされるが、クリミア・タタール人の票は入っていない(P76)

    ・国際連盟はドイツが支配していた地域を任せることにしたが、日本は「委託統治」という提案をした。住民が自分で国がつくれるようになったら独立国にするという制度で、日本が模範を示すことになった。例として、学校をつくって勉強できるようにした(P90、91)

    ・フィリピンは、アメリカの植民地支配を受けたが、第二次世界大戦中に1943年に日本が独立を認めた、戦後アメリカ植民地になったが1946年に再独立を認められた(P96)

    ・日本の敗戦後、満鉄は最初はソ連が押さえて、それを中国に譲ったが共同経営にしていたが実権はロシア人が握った。本当に返したのは、朝鮮戦争の後(P98)

    ・イギリス、フランス、アメリカもODAを配っている相手は、元の植民地。利権が残っていて、それを接収されたくないから。日本のODAにはそのような性格がない(p100)

    ・教科書問題で非難されたのは日本のように見えるけれど、じつは鄧小平であった、とも取れる(p102)

    ・始皇帝が行った「焚書坑儒」は言語弾圧にみえるが、統一前の7国のうち他の6国で使っていた漢字を廃止して、国有化しようとした狙いがある(p108)

    ・漁民の社会では舟に乗って漁に行った場合、だれも帰ってこなくなることもある。そういうとき残された女性は人口を回復する必要がある(p115)

    ・1648年に締結された、30年戦争の講和条約がウェストファリア条約で、それにより、プロテスタントとカトリックの同権が認められた。条約締結国は相互の領土を尊重し内政不干渉となった(p175)

    ・人間、不潔になると凶暴になる。精神面の退廃と物質的な不潔さが重なり、1300年間ひたすら殺し合った。313年にローマ帝国がキリスト教を公認してから(p176)

    ・軍国主義の反対語は、ファシズム(一国一党)であり、国家の上に独裁党が乗っかっている体制である(p194)

    ・リンカーンは、黒人差別も奴隷制もどうでもよく、南部を分裂させたくなかったのが本音(p203)

    ・産業革命を通過した国は、イギリス・ドイツ・フランス・アメリカ・日本くらい。それ以降も何かを作り続けているのは、ドイツと日本くらい(p209)

    ・中国のGDPはすごく、清朝アヘン戦争前段階(1820)で、シェアは32.9%、そこに目を付けたイギリスは、同時期に5.2%程度であったが、戦争後の1870年には9.0%に上がった(p212)

    ・日本のGDPは、1600年ころで、2.9%もあり経済大国である、同時期のイギリスは、1.8%、ドイツが3.8%、フランス4.7%(p214)

    2015年6月28日作成

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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