武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

著者 :
  • KADOKAWA
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  • / ISBN・EAN: 9784046023919

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    すごく単純な感想だが・・・本当に勉強になった。
    色んな賢者の哲学に広く浅く触れる事ができ、この本1冊でも役に立つと思う。
    昨今「リベラルアーツ」が重視されるこの世の中において、中々手出しをし辛い「哲学」というジャンルを学ぶのにはとっておきの1冊である。

    「弁証法」「ルサンチマン」「マタイ効果」「VUCA」「無知の知」
    などなど、普段よく耳にするがあんまり意味を理解していなかった言葉も、この1冊で充分に理解することができた。

    個人的に気に入ったのは、アリストテレスの「ロゴス・エトス・パトス」とサルトルの「実在主義」、ソクラテスの「無知の知」。
    知識を磨いて、判断力や人間力を磨いて、自分の人生を自分で創っていくように生きていこうと思った。

    これから知識を武器にできるように、しっかりと磨いていきたいと思った今日この頃です。


    【内容まとめ】
    1.無教養なビジネスパーソンは「危険な存在」である。
    世界のエリート達の教育には、哲学を中心ときたリベラルアーツがますます重視されるようになってきた。
    無教養なビジネスパーソン、哲学を学ばずに社会的な地位を得た人は、文明にとっての「脅威」つまり「危険な存在」である。

    2.弁証法
    「真理に至るための方法論」
    「対立する考えをぶつけ合わせ、闘争させることでアイデアを発展させる。」
    命題(テーゼ)に対し、矛盾する反命題(アンチテーゼ)を提示する。
    この二つの命題の矛盾を解決する統合された命題「ジンテーゼ」を提示する。
    ジンテーゼは両者の矛盾を中立・両立・平定するカタチ。

    3.アリストテレス「ロゴス・エトス・パトス」
    →論理だけでは人は動かない。
    →人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、「説得よりは納得、納得よりは共感」が求められる。
    「ロゴス」=ロジック、「エトス」=エシックス=倫理、「パトス」=パッション=情熱のこと。

    4.16世紀に始まった宗教改革は、免罪符に対するマルティン・ルターによって口火を切られた。
    ルターの教えはヨーロッパ全土へと広まっていき、やがて「プロテスタント」と呼ばれる大きな運動へとつながっていく。
    プロテスタントとは、「意義を申し立てる」、つまりは「ケンカを売る」という意味。
    この場合は当時思考が浸透していたローマ・カトリック教会が相手であった。

    5.ジョン・ロック「タブラ・ラサ」
    →経験と学習によっていくらでも学ぶことができるという主張。
    ラテン語で「何も書かれていない石版」という意味。(「タブレット=板」の語源)
    生まれつきなどない。経験次第で人はどのようにでもなる。
    個人の素養はすべて生まれた後にどのような経験をするかによって決まる。
    すなわち教育によって人間は出来上がる。

    6.ニーチェ「ルサンチマン」
    ルサンチマンとは、「弱い立場にあるものが、強者に対して抱く嫉妬・怨恨・憎悪・劣等感などのおり混ざった感情」を指す。
    要するに、「やっかみ」。

    7.ドーパミン=快楽物質ではない。
    ドーパミンは快楽を感じさせることよりも、何かを求めたり、欲したり、探させたりすることであることが分かっている。
    食べ物や異性などの物質的要求だけでなく、抽象的な概念、つまり素晴らしいアイデアや新しい知見などが含まれる。

    快楽に関与しているのはドーパミンよりオピオイドである。
    「欲求系=ドーパミン」により特定の行動に駆り立てられ、「快楽系=オピオイド」が満足を感じさせて追求行動を提示する。

    8.サルトルの実在主義「人間は自由の刑に処されている」
    私たちは「人生そのもの」を使ってある「企て」を実現しようとしているのであり、反対に私たちに起きることはすべてその「企て」の一部として受け入れなければならない。
    あらゆる選択が可能であるのに対し、それをせずに受け入れた以上、それはあなた自身の問題である。
    →要するに、自分の身に降りかかる出来事は、良い悪い抜きにして全部自分のせいなのであると受け入れる事がmust

    9.アイヒマン実験
    非人道的な営みにも、多くの人が葛藤や抵抗感を示しながらも実験を続けた。
    「誰かに言われたから…」という責任転嫁が可能な状況だと、実に90%以上の人が実験を続ける。
    しかし、命令する側にちょっとした反対意見など、良心・自制心を後押ししてくれるアシストさえあれば、みな実験を取りやめたという結果もある。

    10アーレント「悪の陳腐さ」
    →悪事は思考停止した「凡人」によってなされる。
    悪とは、システムを無批判に受け入れることである。意図することなく受動的になることに「悪の本質」がある。
    思考停止してはいけない。
    多くの人は、現行のシステムがもたらす悪弊に思いを巡らすことなく、むしろそのシステムのルールを見抜いて「その中でうまくやること」をつい考えている。
    「現行のシステムを所与のものとせず、システム自体をより良きものに変えていくことに思考も行動も集中させる」生き方に思いを巡らすべき。

    11.マキャベリ「君主論」
    →君主としてあるべき「振る舞い」「考え方」。
    どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであればそれは許される。といった内容。

    道徳<合理
    「よりよい統治のためには、非道徳的な行為も仕方がない」という事で、憎しみを買って権力基盤を危うくしろというわけではない。
    「不道徳たれ」ではなく、「冷徹な合理者であれ」ということ。

    12.ロバート・キング・マートン「マタイ効果」
    →「持っている人は与えられていよいよ豊かになるが、持っていない人たちは今持っているものまでも取り上げられるであろう」
    学校の教育も、会社の指導も一緒。
    私たちは「より費用対効果の高い人」に教育投資を傾斜配分してしまう傾向があり、その選別は初期のパフォーマンス結果によってなされる。

    13.アダムスミス「神の見えざる手」
    →「最適な解」よりも「満足できる解」を求めよ。
    「神の見えざる手」とは、市場による調整機能のこと。

    14.公正世界仮説「見えない努力もいずれは報われる」の大嘘。
    「努力は報われる」と無邪気に主張する人たちがよく持ち出す根拠の一つに「一万時間の法則」がある。
    「モーツァルトは努力していた」→「努力すればモーツァルトになれる」ではなく、
    「努力なしではモーツァルトのような天才になれない」が、対偶の命題となる。
    努力したからといって必ずしも成功するとは到底言い切れないのは火を見るより明らかなのである。

    世界は公正ではない。
    そのような世界にあって尚、公正な世界を目指して闘っていくというのが私たちに課せられた責務である。
    「人目につかぬ努力もいずれは報われる」という考え方は人生の浪費につながりかねない。
    より合理的な消費・リターンを自分で見出さなければならない。

    15.ソクラテス「無知の知」
    →学びは「もう知っているから」と思った瞬間に停滞する。
    そもそも、「自分は知らないのだ」という認識を持てないと学習がスタートしない。
    「自分はわかっている」と考える人は知的に怠惰になってしまう。


    【引用】
    p3
    ・無教養なビジネスパーソンは「危険な存在」である。
    世界のエリート達の教育には、哲学を中心ときたリベラルアーツがますます重視されるようになってきた。
    なぜ「役に立たない学門」とされがちな哲学を、これだけプライオリティの高い学門として学んでいるのか?

    「無教養な専門家こそ、我々の文明にとって最大の脅威」。
    哲学を学ばずに社会的な地位を得た人は、文明にとっての「脅威」、つまり「危険な存在」である。


    p9
    ・弁証法
    ある主張「A」があったとして、それに反対あるいは矛盾する主張「B」があり、それが両者を否定することなく統合する新しい主張「C」に進化するという思考のプロセスを指す言葉。


    p46
    ・論考を二軸で整理する。

    問いの種類「What」と「How」
    ①世界はどのように成り立っているのか?
    =Whatの問い
    ②私たちはどのように生きるべきなのか?
    =Howの問い
    学びの種類「プロセス」と「アウトプット」


    p58
    ・論理だけでは人は動かない。
    アリストテレス「ロゴス・エトス・パトス」
    人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、「説得よりは納得、納得よりは共感」が求められる。
    論理的思考に優れたコンサルタントが苦戦するのは、「論理によって人が動く」と誤解しているから。

    ・「ロゴス」
    →ロジックのこと。論理だけでは人は動かないと指摘したものの、論理的に無茶苦茶な企てでは人の賛同は得ることができない。
    「論理」は必要条件なだけで、十分条件ではないということ。


    ・「エトス」
    →エシックス=倫理のこと。
    いくら理にかなっていても、道徳的に正しいと思えることでないと人のエネルギーは引き出せない!

    人は、道徳的に正しいと思えること、社会的に価値があると思えるものに自らの才能と時間を投入したいと考える。

    ・「パトス」
    →パッション=情熱のこと。
    過去の偉人たちが情熱を持って未来を語ったからこそ、世界は今あるように変わった。

    ・レトリック
    →弁論術。人を酔わせ、動かす力。ヒトラーの演説などが良い例。
    レトリックの危険性を知った上で、これを用いることができるかどうか。


    p63?
    ジャン・カルヴァン(1509~1564)
    「予定説」
    →努力すれば報われる、などと神様は言っていない

    16世紀に始まった宗教改革は、免罪符に対するマルティン・ルターによって口火を切られた。
    ルターの教えはドイツばかりかヨーロッパ全土へと広まっていき、やがて「プロテスタント」と呼ばれる大きな運動へとつながっていく。

    プロテスタントとは、「意義を申し立てる」、つまりは「ケンカを売る」という意味。
    この場合は当時思考が浸透していたローマ・カトリック教会が相手であった。

    ・予定説
    「ある人が神の救済にあずかれるかどうかは、あらかじめ決定されており、この世で善行を積んだかどうかといったことは、まったく関係がない。」
    仕事に置き換えると、「努力」をしたからとて「報酬」をもらえる人ともらえない人は予め決まっていると考えられる。

    たしかに、「努力→結果→評価→報酬」というシンプルかつ合理的な考えが、うまく浸透していないものだ。
    単純に努力するのではなく、予め決まっていると割り切った上で、施策を練ってみたほうがいいのでは?


    p70?
    ジョン・ロック(1632~1704)
    「タブラ・ラサ」
    ラテン語で「何も書かれていない石版」という意味。(「タブレット=板」の語源)
    生まれつきなどない。経験次第で人はどのようにでもなる。

    個人の素養はすべて生まれた後にどのような経験をするかによって決まる。
    すなわち教育によって人間は出来上がる。
    経験と学習によっていくらでも学ぶことができるという主張。


    p73
    フリードリッヒ・ニーチェ(1844~1900)
    「ルサンチマン」
    →あなたの「やっかみ」は私のビジネスチャンス

    ルサンチマンとは、「弱い立場にあるものが、強者に対して抱く嫉妬・怨恨・憎悪・劣等感などのおり混ざった感情」を指す。
    要するに、「やっかみ」である。
    イソップ寓話の「酸っぱいブドウ」のような話。

    ルサンチマンを抱えた個人は、その状況を改善するために次の二つの反応を示す。
    1.ルサンチマンの原因となる価値基準に隷属、服従する。
    2.ルサンチマンの原因となる価値判断を転倒させる。

    ・高級車、高級時計の市場で応用
    「最新のもの」を常に市場に送り出すことで、「古いもの」を持っている人にルサンチマンを抱えさせる。
    現代人は「平等性」について極めて繊細なセンサーを持っているため、ちょっとした差に対してもルサンチマンを抱えてしまう。

    ・ルサンチマンの転倒
    「高級フレンチなんて行きたいと思わない、サイゼリアで十分だ」
    単に「サイゼリアが好きだ」と言えばいいのに、それでは本人のルサンチマンが解消されないためにやっかんでしまう。

    ルサンチマンに根ざしたものなのか、より崇高な問題意識に根ざしたものなのかを私たちは見極めなければならない。


    フランシス・ベーコン
    「富を軽蔑するように見える人々を余り信用しないほうがよい。富を得る望みのない人々が、それを軽蔑するからである。こういう人々が富を得るようになると、これほど始末に困る手合いはいない。」


    p81
    カール・グスタフ・ユング(1875~1961)
    「ペルソナ」
    →私たちは皆「仮面」を被って生きている。

    ペルソナとは、一人の人間がどのような姿を外に向かって示すかということに関する、個人と社会的集合体とのあいだの一種の妥協である。
    恐ろしいのは、自分自身が「自分らしくない」言動をとるようになっていても、そのことに当の本人が全く気づかないところ。


    p87
    エーリッヒ・フロム(1900~1980)
    「自由からの逃走」
    →自由とは、耐えがたい孤独と痛烈な責任を伴うもの。
    多数の犠牲を伴って獲得した「自由」とやらは非常に高価な買い物であったが、その「自由」を手に入れた人々はそれで幸せになったのか?

    ・ナチスドイツで発生したファシズム
    「自由の果実」を味わった現代人が、それを投げ捨て、ファシズムの全体主義に何故あれほど熱狂したのか?
    自由のもたらす刺すような孤独と責任の重さに人々は疲れ果て、全体主義に傾斜することを選んだと、フロムは分析している。

    人は自分より上のものに媚びへつらい、下の者に威張るような一種「権威主義的性格」で成り立っている。
    その人たちに自由が与えられても、孤独と責任の重さが待っている。
    自由というものが突きつけている重荷に対して、私たちはあまりにも訓練されていません。


    p92?
    バラス・スキナー(1904~1990)
    「報酬」
    →人は不確実なものにほどハマりやすい。

    ・人は何故SNSにハマるのか?
    →それは、「予測不能だから」。
    ネズミとエサの出る箱の実験
    その行為による報酬が必ず与えられると分かっている時より、不確実に与えられる時の方がより効果的に強化される。

    ギャンブル、カジノ、ソーシャルメディア

    ・ドーパミン
    1958年にスウェーデンで発見された物資で、快楽物質であると考えられてきた。
    しかし最近の研究では、ドーパミンの効果は快楽を感じさせることよりも、何かを求めたり、欲したり、探させたりすることであることが分かっている。
    食べ物や異性などの物質的要求だけでなく、抽象的な概念、つまり素晴らしいアイデアや新しい知見などが含まれる。

    快楽に関与しているのはドーパミンよりオピオイドであることがわかっている。
    「欲求系=ドーパミン」により特定の行動に駆り立てられ、「快楽系=オピオイド」が満足を感じさせて追求行動を提示する。

    より大きな快楽を得るために、追求行動に欲求を高く持つ!


    p97
    ジャン・ポール・サルトル(1905~1980)
    「アンガージュマン」
    →人生を「芸術作品」のように創造せよ。

    ・アンガージュマン=エンゲージメント
    主体的に関わることにコミットする。

    サルトルといえば「実在主義」。
    実在主義とは要するに、「私はどのように生きるべきか」という「HOWの問い」を重視する立場だ。

    ・自分自身の行動
    私たちの行動や選択は自由であり、したがって「何をするか」や「何をしないのか」という意思決定について自分で責任をとる必要があります。

    ・「人間は自由の刑に処されている」
    私たちは「人生そのもの」を使ってある「企て」を実現しようとしているのであり、反対に私たちに起きることはすべてその「企て」の一部として受け入れなければならない。
    あらゆる選択が可能であるのに対し、それをせずに受け入れた以上、それはあなた自身の問題である。


    p101
    ハンナ・アーレント(1906~1975)
    ・悪の陳腐さ
    →悪事は思考停止した「凡人」によってなされる。

    ・悪とは、システムを無批判に受け入れることである。
    意図することなく受動的になされることにこそ「悪の本質」があるのかもしれない。

    ・思考停止してはいけない。
    多くの人は、現行のシステムがもたらす悪弊に思いを巡らすことなく、むしろそのシステムのルールを見抜いて「その中でうまくやること」をつい考えている。

    「現行のシステムを所与のものとせず、システム自体をより良きものに変えていくことに思考も行動も集中させる」生き方に思いを巡らすべきではないか?


    p106
    エイブラハム・マズロー(1908?1970)
    ・自己実現的人間
    →自己実現を成し遂げた人は、実は「人脈」が広くない。

    マズローの欲求5段階説
    1.生理の欲求
    2.安全の欲求
    3.社会欲求と愛の欲求
    4.承認(尊重)の欲求
    5.自己実現の欲求

    私たちの「広く、薄い人間関係」もまた、逆に依存して足を引っ張ってしまっていないか?


    p121
    ・アイヒマン実験
    非人道的な営みにも、多くの人が葛藤や抵抗感を示しながらも実験を続けた。
    「誰かに言われたから…」という責任転嫁が可能な状況だと、実に90%以上の人が実験を続ける。
    しかし、命令する側にちょっとした反対意見など、良心・自制心を後押ししてくれるアシストさえあれば、みな実験を取りやめたという結果もある。


    p144
    ・マキャベリズム
    ニッコロ マキャベリが著書「君主論」の中で述べた、君主としてあるべき「振る舞い」「考え方」を表す用語。
    どんな手段や非道徳的な行為も、結果として国家の利益を増進させるのであればそれは許される。といった内容。

    ・道徳<合理
    道徳や人間性とやらを言っていられない乱世でこそ映える論理。
    「よりよい統治のためには、非道徳的な行為も仕方がない」という事で、何も憎しみを買って権力基盤を危うくしろというわけではない。
    「不道徳たれ」ではなく、「冷徹な合理者であれ」ということ。


    p152
    ジョン・スチュアート・ミル
    「悪魔の代弁者」
    その人の判断が本当に信頼できる場合、その人はどうやってそのようになれたのだろうか?
    それは、自分の意見や行動に対する批判を、つねに虚心に受け止めてきたからである。
    どんな反対意見にも耳を傾け、正しいと思われる部分はできるだけ受け入れ、誤っている部分についてはどこが誤りなのかを自分でも考え、できれば他の人にも説明することを習慣としてきたからである。

    様々に異なる意見を全て聞き、ものの見え方をあらゆる観点から調べ尽くすという方法しかないと感じる。


    p163
    クルト・レヴィン
    「解凍=混乱=再凍結」
    変革は、慣れ親しんだ過去を終わらせることで始まる。
    「解凍」とは、今までのやり方を終わらせる、ケリをつけるという意味。

    「あの時代は良かったね」といつまでも過去を振り返り、とらわれ続けるようでは何にもならない。
    いかに「切るか」が重要!!


    p184
    ロバート・キング・マートン
    マタイ効果
    「おおよそ持っている人は与えられていよいよ豊かになるが、持っていない人たちは今持っているものまでも取り上げられるであろう」

    学校の教育も、会社の指導も一緒。
    私たちは「より費用対効果の高い人」に教育投資を傾斜配分してしまう傾向があり、その選別は初期のパフォーマンス結果によってなされる。


    p202
    ・反脆弱性
    「外乱や圧力によって、かえってパフォーマンスが高まる性質」のこと。

    反脆弱性は耐久力や頑健さを超越する。
    耐久力のあるものは、衝撃に耐え現状をキープする。
    それに対し、反脆弱性は衝撃を糧にしてしまう。
    予測の難しい時代を生きるにあたり、「反脆弱性」という概念は非常に重要視される。
    リスクをあらかじめ予測し、そのリスクに対応できるような「システム」を組めばいい。
    なぜなら、「脆さは測れるが、リスクは測れないから」だ。


    p228
    アダムスミス(1723~1790)
    ・神の見えざる手
    →「最適な解」よりも「満足できる解」を求めよ。

    「神の見えざる手」とは、市場による調整機能のこと。
    妥当性のない価格は、進化論でいう自然淘汰のプロセスによって排除され、やがて最も妥当と市場で認められた価格に落ち着きます。

    最適な解をオプティマルなアプローチによっていたずらに求めようとせず、「満足できる解」をヒューリスティックによって求めるという柔軟性が必要なのでは?


    p234
    ダーウィン「自然淘汰」
    1.生物の個体には、同じ種に属していても、様々な変異が見られる。(突然変異)
    2.そのような変異の中には、親から子へ伝えられるものがある。(遺伝)
    3.変異の中には、自身の生存や有利な差を与えるものがある。(自然選択)


    p262
    ・パラノとスギゾ
    パラノイア「偏執型」
    スギゾフレニア「分裂型」
    アイデンティティだなんだと一つのものに固執せず、ヤバそうだと思ったら「さっさと逃げる」こと!
    重要なのは、「危ないと感じるアンテナの感度」と「逃げる決断をするための勇気」

    誰もが羨む会社に所属している自分をアイデンティティの柱にしてしまいがちだが、その会社が「花形」でいられる期間はどんどん短くなっている。
    「自分」というものを崩壊させずに分裂させておくことができるか?
    まさに「パラノからスギゾへの転換」が求められる。


    p274
    ・差異的消費
    →自己実現は「他人との差異」という形で想定される。
    何もお金持ち達がフェラーリを買うという選択のみではない。
    「それを選んだ」ということと、「他を選ばなかった」ということで記号を生む。
    逆に言えば、なんらかの記号を持たない、あるいはあってもそれが希薄な商品・サービスは市場において生き残りにくい。


    p279
    ・公正世界仮説
    →「見えない努力もいずれは報われる」の大嘘。
    「努力は報われる」と無邪気に主張する人たちがよく持ち出す根拠の一つに「一万時間の法則」がある。

    「モーツァルトは努力していた」
    →「努力すればモーツァルトになれる」
    ではなく、
    「努力なしではモーツァルトのような天才になれない」
    が、対偶の命題となる。

    だから、努力したからといって必ずしも成功するとは到底言い切れないのは火を見るより明らかなのである。

    世界は公正ではない。
    そのような世界にあって尚、公正な世界を目指して闘っていくというのが私たちに課せられた責務である。
    「人目につかぬ努力もいずれは報われる」という考え方は人生の浪費につながりかねない。
    より合理的な消費・リターンを自分で見出さなければならない。


    p288
    ・ソクラテス「無知の知」
    →学びは「もう知っているから」と思った瞬間に停滞する。

    そもそも、「自分は知らないのだ」という認識を持てないと学習がスタートしない。
    「自分はわかっている」と考える人は知的に怠惰になってしまう。


    p294
    ・プラトン「イデア」
    →理想に囚われて現実を軽視していないか?


    p298
    「知は力なり」フランシス・ベーコン

    イギリス経験論哲学の開祖。
    演繹より帰納を重視する。
    「正しい知識とはむしろ、常に実験や観察といった経験からスタートするべき。」

    帰納…経験からもたらされる知識を重視し、結論を導き出す。
    演繹…一般化された法則から個別の結論を推論する。

    イドラ…ラテン語で「偶像」。思い込み。アイドルの語源でもある。
    4つのイドラが誤解を招く。

    1.種族のイドラ
    →自然性質によるイドラ。わかりやすく言えば、「錯覚」。

    2.洞窟のイドラ
    →個人経験によるイドラ。自分の受けた教育や経験・常識など、狭い範囲の材料をもとに決め付けてしまう。

    3.市場のイドラ
    →伝聞によるイドラ。いわゆるミスコミュニケーション。噂など。

    4.劇場のイドラ
    →権威によるイドラ。高名な学者の主張など、権威や伝統を不批判で信じることで生じる偏見のこと。

    自分の主張の根拠となる認識が、4つのイドラのどれかによって歪められていないか?
    確認する必要がある。


    p303
    「我思う、ゆえに我あり」
    ルネ・デカルト


    p310
    ・弁証法
    「真理に至るための方法論」
    「対立する考えをぶつけ合わせ、闘争させることでアイデアを発展させる。」

    命題(テーゼ)に対し、矛盾する反命題(アンチテーゼ)を提示する。
    この二つの命題の矛盾を解決する統合された命題「ジンテーゼ」を提示する。
    ジンテーゼは両者の矛盾を中立・両立・平定するカタチ。


    p323
    ・VUCA
    Volatility「不安定」
    Uucertainty「不確実」
    Complexity「複雑」
    Ambiguity「曖昧」

    単純でなく明確ではないものを明晰に把握する事は難しい。
    ソクラテスの「無知の知」で触れたが、短兵急に「わかったつもり」になることは大きな誤謬の元になる。

    ・エポケー
    私たちが持っている「客観的な世界像」はそもそと主観的なものでしかあり得ない。
    ならばその世界像を確信するのではなく、また捨て去るのではなく、いわば中庸的に中途半端な経過措置として一旦「保留する」という姿勢。


    p332
    ・ブリコラージュ「何の役に立つのかよく分からないけど、何がある気がする。」
    エジソンの蓄音機、ライト兄弟の飛行機など、多くのイノベーションは「結果的にイノベーションになった」に過ぎず、当初想定されていた通りのインパクトを社会にもたらしたケースはむしろ少数派なのです。
    その時点では何の役に立つのか分からないけど、「これはいつか何かの役に立つかもしれない」と考える予測能力は、コミュニティの存続に重要な影響を与える。

    ・ICUはアポロ計画がなければ実現できなかった?
    ICUは患者の身体に生命の影響を及ぼすような変化が起こったら、すぐにそれを遠隔で医師や看護師に知らせる。
    このシステムは、宇宙飛行士の生命や身体の状況を遠隔地からモニタリングして、何か重大な変化が起これば即座に対応する「アポロ計画」のような長期の宇宙飛行においての必要性から生じた技術。

    世界を変えるような巨大なイノベーションの多くは、「何となくこれはすごい気がする」という直感(=ブリコラージュ)に導かれて実現しているのだ。


    p338
    ・パラダイムの概念、定義
    「一般に認められた科学的業績で、一時期のあいだ、専門家に対して問い方や考え方のモデルを与えるもの」
    =常識、みたいな感じ。


    p348
    今ある世界は偶然このように出来上がっているわけではありません。
    どこかで誰かが行なった意思決定の集積によって今の世界の風景は描かれているのです。
    未来の世界の景色は、今この瞬間から未来までのあいだに行われる人々の営みによって決定される。

    本当に考えなければいけないのは、「未来はどうなりますか?」ではなく、「未来をどうしたいか?」という問いであるべき。
    未来というものは、予測だけではなくむしろそれをビジョンとしておもいえがべきものだ。

  • まえがきにもあるように、「実生活で役に立つか」を観点に書かれた、哲学者たちの考えの紹介。

    筆者は人事コンサルタントなので、会社、ビジネスに置き換えた場合の記述が腑に落ちる。

    多くの哲学者の考え抜かれた思考はさすがにビビッと、気づきが得られます。
    こんな貴重な考え方知らないでおいたらもったいない。
    と思える。

    あと、意外と知らなかったこと(例えば「マズローの理論は実証されている訳ではない。」など)も小気味よく書いてあるので、読み進めるスピードが上がります。

    一つ一つの章は短いが、本を読むとそれぞれの章がリンクしていて、現代の新しい考えがどのような変遷を経ているか、仏教、キリスト教の考え方の違いなど、思考が立体的に立ち上がってくる。

    まえがきが異様に力が入っていて、挫折しそうになったので、本編を先にガシガシ読んでからまえがきに戻ることをお勧めします。

  • いや、ほんとによかった。
    まさに武器になる、実生活に役立つ哲学の解説本。
    50のコンセプトが簡潔にわかりやすく掲載されているんだけど、そこは哲学。
    一気に読むものではなく、少しづつ咀嚼しながらゆっくり読めたい一冊。

  • なかなか面白かった!読んでみたい本が沢山できた。どの哲学者の思考プロセスも非常に興味深いし、結論についてもその質の良し悪しに関係なく面白かった。
    私のようなサラリーマンであれば、これらを現実にどう活用していくか、また何に慎重になるべきで何に囚われず大胆になるべきか、熟考の上行動に移していかなければならないとも思った。

  • まとめ ⇒

    哲学が使われている実用的な例を持ち出しながら、哲学を学べるので理解しやすく、入門書としても良かった。

    学び ⇒

    ・本当の意味で説得に必要なもの「ロゴス」「エトス」「パトス」
    -「ロゴス」…ロジックのこと。論理だけでは人は動かないが、論理は説得する上で必須。
    -「エトス」…エシックス(倫理)のこと。理にかなってても道徳的に正しいと思えることではないと人は納得しない。
    -「パトス」…パッション(情熱)のこと。話す本人が思い入れを持ち、熱く語ることで初めて共感が生まれる。

    ・アンガージュマンせよ
    -アンガージュマン…現実を全て「自分ごと」として主体的に良いものにしようとすること
    →人間は外側の現実と自分を別のものとして考える(特に日本人に多い)
    ┗例:戦争を「私の戦争」ではないから、と受け入れた結果徴兵される。デモや逃亡、自殺などで反発できたはずなのにしなかった。
    →また、自分の人生の選択を社会や組織に任せてしまう場合もある
    ┗例:就職人気ランキングの上位の企業ばかり受ける。
    →自己欺瞞に陥ることなく、人生に主体的にコミットしよう

    ・予告された報酬は創造性を破壊する
     ┗報酬が目的となり、行動や思考そのものに夢中になれない
    →「アメ」ではダメ
    →しかし、「ムチ」でもダメ
    →必要なのは何かにチャレンジさせる「不確実な何か」
    →人が創造性を発揮してリスクをおかすには「挑戦できる風土」が必要

    ・「分かり合えない人」こそが学びや気づきを与えてくれる
    -他者…分かり合えない人、意見が異なる人
    →他者は自分とは違う世界の見方をしている
    →ここで「分かり合えない」と否定するのではなく、対話することで学びや気づきが得られる

    ・学びは「もう知ってる」と思った瞬間に止まる
    ⚪︎達人への道
    ①知らないことを知らない
    ┗いわゆる「知ったかぶり」。自分が知らないということを自覚していない。
    ②知らないことを知っている=「無知の知」
    ┗ここで初めて学びの欲求や必要性が生まれる。
    ③知っていることを知っている
    ┗学習を重ね、自分が知っていることを自分で意識している
    ④知っていることを知らない
    ┗知っていることを意識しなくても自然に体が反応する
    →容易に「わかった」と思わないことが大事
    →「ゾクゾクするくらい分からなければ、分かっていない」

    ・「要は〇〇ってことでしょ?」は禁句にしよう
    ┗「知ったかぶり」の典型例
    →自ら新たな気づき、発見の機会を損失している

    NA ⇒

    ・ロゴス・エトス・パトスを意識して相手の説得をしてみる

    ・誰かや何かに任せず、自分で決断や行動をする

    ・政治や人に任せている活動に主体的にコミットする

    ・話が合わない人でも話をよく聞いて対話しようと試みる

    ・知らないということを意識し続ける

  • 知識や教養は、課題発見力につながるという指摘がとても有用だった。自由からの逃走で言われているように、自由というものは責任や孤独を伴うものではあるが、教養を得て課題を発見し、当事者意識と強いWillを持つことで生きる原動力を得ることができ、それによって自由を与えられても潰れずに生きていけると思う。ハンナさんの言うように、システムを無批判に受け入れると言う罪を冒さずに、生きる意味を見出して生きていくのであれば、常に高い当事者意識を持って、学びを止めずに進んでいくしかない。

  • 哲学を仕事に役立てたいと考えているビジネスパーソンにとってベスト哲学書。哲学をそれそのものとして解説するのではなく、ビジネスの現場に直結して説明されている点で解りやすく、とても役立ちます。

  • 哲学について知りたいと思うことは多々あるものの、いざ関連書籍を手に取ると難しくて、自分事化もしづらく、途中で興味を失ってしまうことが多々ありました。

    本書は過去の哲学について時系列的に0-100を紹介するのではなく、現代の社会において活用できる哲学の概念を取り上げています。
    取り上げた哲学の概念と現代社会における示唆や活用方法を紹介しているため、自分事化がしやすく、とても興味を持って読み進めることができました。

    哲学の歴史や各哲学者の関係性などは整理されていないですが、哲学の概念を知り、現代社会での生き方に活用したい方におすすめしたい一冊です。

  • 武器になる哲学

    哲学を学ぶ意義として、論考の結論とそのプロセスそれぞれに学びがある。
    本書は50の哲学を取り上げ、簡単な解説に加えているが、その内容以上に現代において著者がどう解釈しているかという視点が非常に学び深い。
    特に組織論やイノベーションに関心がある自分としてはある種味も蓋もないような部分も含め、本質的な指摘があり唸らされた。
    冒頭から「日本企業のイノベーションごっこは課題設定がない」という鋭い指摘で殴られた気分である。

    以下気になった章について抜粋。

    2. 予定説
    ・努力によらず救済されるか予め決まっているという予定説は因果論に反しやる気を奪いそうだが、これが資本主義の発展に貢献してきたと言われている
    ・労働と報酬が正確に相関したら人は働かない、なんの驚きも喜びもないから by 内田樹
    人事制度のあり方に示唆を与える。

    4. ルサンチマン
    ・やっかみの解消のため人は記号としてのブランド品を求める。逆に言えば常に新作を供給し新たなルサンチマンを生むことがビジネス戦略になる。
    ・ルサンチマンを抱えた人に価値の逆転を提案するのはキラーコンテンツになる。

    5. ペルソナ
    ・パーソナリティのうち、外界と接している部分をペルソナという、元来古典劇におけるお面のことを表しており、自分を保護するために形成された社会へのお面とも言える。
    ・人はいろんな仮面を使い分けて異なる組織を生き抜いてきたが携帯電話がこれに横串をさし、これを難しくさせている。

    7. 報酬系
    ・行為による報酬が必ず与えられると分かっている時よりも、不確実に与えられる時の方がより効果的に行為が強化される。不確実なものほどハマりやすい。
    ・ソーシャルメディアはその予測不可能性がハマる要因。

    9. 悪の陳腐さ
    ・悪とはシステムを無批判に受け入れること by ハンナアーレント。ユダヤ人の大量虐殺の仕組みを構築したアイヒマンは、思考停止しただシステムを回すことに執心した小役人によって引き起こされた。

    10. 自己実現的人間
    ・マズローの五段階欲求は感覚に合い理解しやすいが実証実験ではこれを説明するような結果もでずわ扱いは難しい。
    ・マズローは成功者15人について分析しているが、その中の一つとして孤立しがちで少数の人と深く付き合っていることごわかった。

    11. 認知的不協和
    ・意思が行動を決めると感じるが、実際は逆で行動に合うように遡及して意思が形成される、後から合理化する生き物。
    ・中国共産党は、アメリカ捕虜に共産党は敵だがいいところもある、というメモを書かせ、タバコやお菓子といったちょっとした褒美を与えた。すると、メモの内容に合うように思考を変えざるをえなくなり、ばたばたと共産党へ傾倒する捕虜が増えた。

    12. 権威への服従
    ・細分化されるほど責任の所在が曖昧になり転化しやすくなる。ミルグラムによるアイヒマン実験
    ・人は驚くほど権威に従順だが、少しでも反対意見、良心や自制心を後押ししてくれたら良心に基づいた判断をすることができる。最初に声を上げる人の重要性。

    14. 約束された報酬
    ・報酬が約束されると創造的な問題解決能力は著しく毀損される(ろうそく問題は報酬付きになると解く時間が延びてしまう)
    ・飴と鞭よりも、挑戦が許される風土、すなわちただ単に自分がそうしたいから、という風土ご創造性を発揮してリスクを冒すためのカギ

    16. 悪魔の代弁者
    ・自分の意見に反駁する自由を完全に認めてあげることこそ、自分の意見が行動指針として正しいと言えるための絶対的な条件。
    ・信用できる判断をする人は自分の意見や行動に対する批判を常に虚心に受け止め、様々な異なる意見を全て聞くことであらゆる観点から調べ尽くす方法しかないと感じている。
    ・どんなに個人の知的水準が高くても同質性の高い人が集まると意思決定の品質が著しく低下する。そこで求められるのが難癖をつける悪魔の代弁者。
    ・キューバにソ連がミサイル発車設備を建設しているという情報を知ったアメリカに戦慄が走り、ケネディは委員会を設置、そこでは立場を超えた語論を自分抜きで指示すると共に、徹底的に批判的に見る悪魔の代弁者を加えた。これが先制攻撃ではなく海上封鎖案の決定にいたたった重要な要素だったと考えられる。

    21. マタイ効果
    ・おおよそ、持っている人は与えられてより豊かになり、持っていない人は持っているものまで取り上げられる
    ・プロスポーツ選手は統計的ばらつきで説明できないほど4,5月生まれが多い、統計的に誕生月による人口の差はほとんどないにもかかわらず。学力テストの結果も同様
    ・最初に見込まれるとより資源を投入されるようになりより成長する

    23. 権力格差
    ・副操縦士から機長への昇格には通常10年かかり、過去の航空機事故の統計的割合としては、機長が操縦桿を握っている時の方が遥かに墜落事故が起こりやすい。
    ・意思決定の質を上げるには、意見の表明による摩擦の表出が重要。

    27. 一般意思
    ・議論が苦手だが空気を読むことに長けた日本人の性質を考えるとルソーの一般意志の概念をテクノロジーで実現することで洗練された新しい民主主義を実現できるかもしれない。
    ・しかしそのシステムを誰が運営するのかという部分で問題があり、権力の集中が起こるかもしれない。Googleのようにアルゴリズムがブラックボックスになると、その判断の正当性に疑問と倫理的問題も生まれる。

    33.パラノとスキゾ
    ・アイデンティティに関するパラノイア偏執型、スキゾフレニア分裂型
    ・パラノ型は住むヒト、スキゾ型は逃げる人 by浅田彰。移住ではなく逃げるつまり、明確な行き先がなくともヤバいから動くというニュアンス。危ないと感じるアンテナの感度と逃げる決断をする勇気が必要。
    ・自分が何をやりたいか考えるのは無意味て仕事はやってみないと面白いか得意かわからない。 by著者、天職は寝て待て

    24. 格差
    ・同質性が前提とされている社会や組織における小さな格差こそが大きなストレスを生む。身分が分かれてる人を比較しない。
    ・平等が大きくなるほど最小の不平等に人は傷つく、公正な組織を希求することの本質的な矛盾がある。下位の人に逃げ場がない。

    38. 無知の知
    ・最終段階は知っていることを知らない(忘れている)状態になり本人が言語化できない場合も少なくない
    ・人の話を要するに◯◯とまとめることには危険性を伴う。自分の視点で考える領域の最も浅い聞き方で、新たな気づきや発見が失われてしまう可能性がある。本当に自分が変わり成長するためには、安易に分かったと思うことを少し戒めても良いのでは無いか

    43. 構造主義哲学
    ・言葉によって思考をしているということは、言語体系が依拠する構造の影響を受けてしまうという立場。ソシュールが始祖
    ・言語の限界を知りつつもより多くの言葉を知り組み合わせることで把握できる世界が広がる

    44. エポケー
    ・私たちが持っている客観的な世界像はそもそも主観的なものでしかあり得ない。その世界蔵を過信するのでも捨て去るのでも無く、中途半端な経過措置として一旦保留にするという中庸な姿勢が今の時代求められる知的態度なのではないか。

    45. 反証可能性
    ・科学の条件は反省可能性である byカールポパー。反省可能性を持たないものが正しくないわけではないが、科学のフリをすることには問題がある。これはアート。

    46. ブリコラージュ
    ・南米マトグロッソの先住民族が、ジャングルで何か役に立つかもしれないと思った時に取っておく習慣がある。非予定調和的に収集し、いざと言う時に役立てる能力をブリコラージュ byレビィ・ストロース
    ・多くのイノベーションは想定された用途と異なる領域で花開いている。速記録の代替を考えていたエジソンの蓄音機、敵の動きの監視により戦争を終結させられると考え作られた飛行機
    ・用途市場を明確化しないと商業化が見えない、一方想定とは違うところでイノベーションが起きるというジレンマ。
    ・ジャブジャブお金をつぎ込んだらマウス、GUI、オブジェクト思考と素晴らしいアイデアを先駆的に開発したものの全く儲けられなかった。
    ・何か重大な知恵が生まれるかもしれないという曖昧な予感

  • 圧倒的名著
    マジで全人類に呼んでほしい
    面白すぎる

著者プロフィール

1970年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻、同大学院文学研究科美学美術史学修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ、コーン・フェリー等で企業戦略策定、文化政策立案、組織開発等に従事した後に独立。現在は「人文科学と経営科学の交差点で知的成果を生み出す」をテーマに、独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとして活動。現在、株式会社ライプニッツ代表、世界経済フォーラムGlobal Future Councilメンバーなどの他、複数企業の社外取締役、戦略・組織アドバイザーを務める。

「2023年 『新装版 外資系コンサルが教えるプロジェクトマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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