心臓に毛が生えている理由(わけ)

著者 : 米原万里
  • 角川学芸出版 (2008年5月発売)
3.63
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  • レビュー :26
  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046211552

作品紹介・あらすじ

ウィット、ユーモア、毒舌-。読者を笑わせ、裏切り、挑発しつづけた米原万里の、ラスト・エッセイ集。

心臓に毛が生えている理由(わけ)の感想・レビュー・書評

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  • 図書館より。
    「共産党員の父を持ち、幼少期をプラハで過ごし、少女時代にロシア語を学び、その後ロシア語同時通訳者としても活躍した」著者によるエッセイ集。
    その経歴ならではの、世界情勢や通訳の仕事についても書かれているし、一人の女性としての視点や飼っている動物のことも書かれていたりして、ピリリとした少しの毒も効いているおもしろいエッセイでした。

    米原万里さんって名前は知っていたけれど、読むのは初めて。
    文章を見ただけでとても聡明な女性だったということが伺える。思春期を海外で過ごしているからこその“自分の意見をはっきり言う”という武器も兼ね備えているように思えた。

    惜しくも夭逝してしまう作家さんってけっこういるけれど、この米原さんもその一人で、今ももし生きていたら今のこの情勢に対してどんな痛快なことを言ってくれるのだろう、と思ったりした。
    エネルギーに満ちあふれた女性。カッコいい。

  • 2000年〜2003年あたり、米原さんの晩年の短編エッセイー集。ロシア、東ヨーロッパ全てをひとくくりにして、「あっちの方」としか認識していない私に、そこには生い立ちが違い、民族も違う様々な国が存在し、そしてその国の中に個人があることを米原さんの本はいつも教えてくれる。日本語が美しいのも米原さんの書くものの特長だと思っていたら、本書の中で、「日本語が立派、非の打ち所のない日本語と言われる」が、「私の文章はぎくしゃくして恐ろしく硬い。自由自縦横無人に日本語が操れたらどんなにいいだろうかと憧れていた」と振り返っていた。そして「帰国子女の私にはまだきちんとした日本語が精一杯。それを崩せるほどまでには身についていない」と。この自己分析!改めてすごい人なのだと思う。

  • ロシア語通訳であり帰国子女である著者の、新聞に掲載されていた短いエッセイなど。

    わかりやすく軽妙な文章で読みやすく、面白かった。
    様々な文化的な背景が鮮やかに綴られるなか、どういう視点で世界を見ているか、著者の確固たる芯みたいなものを感じた。
    「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」に関わる部分もあってさらに楽しい。

  • 今更ながらに惜しい方を亡くしたものだ。同時通訳は、異なる文化に対して深い造詣を持ち、瞬時のひらめきでエスプリとユーモアを利かせたコミュニケーションを提供していく類稀なお仕事。さまざまなジャンルに理解がないと成りたたない商売。そんな胃がキリキリするような修羅場をかいくぐり、依頼主の信頼を勝ち得てきた素敵で有能なお人柄を再確認するエッセー集。

    彼女は素敵な人を紹介するのも旨い。いくつもの中から印象に残ったエピソード。

    スターリンの粛清により女性専用のラーゲリ(強制収容所)に5年間も閉じ込められていた人の話。
    ラーゲリ生活で苦しかったのは、過酷な労働でも、貧弱な食事でも不衛生でもなく、全ての情報を断ち切られ、本と筆記用具の所持を禁じられていたことだそうだ。
    そのような状態に居る女囚たちはどんなことで自分たちを救ったのか。
    俳優だった女囚が「オセロ」の舞台を独りで演じることから始まり、それぞれが記憶の中にあった本を声を出して補い合いながら話すこと。かって読んだ小説や詩を次々に読破していくこと。
    「悲惨な状況の中でも寝る時間を割いては行った「本のない朗読会」。アンナ・カレーニナに同情して涙を流し、詩の朗読を楽しみ、面白い物語に抱腹絶倒していたら、肌の艶や眼の輝きが戻ってきたのよ」だって!!

    娑婆にいた頃に心に刻んだ本が、生命力の源泉になったのだ。

    今、ある小学校では、日本の古典から小説、短歌・詩などを1年から6年まで暗記する授業があるそうだ。いつか「自らを助ける力」になる、人間らしい記憶を作っていくことは素晴らしいことだね。

  • 米原万里さんの最後のエッセイ集です。ロシア語を勉強する者にとって、米原万里さんはあこがれのマドンナであり、神様でした。
    後年、ウィットとユーモアと毒舌に満ち溢れ、それでいて深い感動がある、かくも沢山のエッセイを書くとは....想像にすらできませんでした。その米原万里さんが亡くなってはや2年、もう読めないと思うと寂しいです。「年賀状と記憶力」 や、「父の元へ旅立つ母」 と題された、母の告別式での挨拶が秀逸です。

  • 2015年12月28日読了

  • 聡明で博学でユーモアたっぷり。嘘つきアーニャの真っ赤な真実の誕生秘話や対談もあり。ロシア語通訳時代の話には笑い、母との話にはほろりとした。

  • 米原さんが亡くなってからもう7年経つ。生きていれば63歳。まだまだこれから円熟していく年齢なので、残念でならない。
    ここに納められているのは、最後の文章いろいろ。万里さんは永遠に、機知に富んだ、切れ味の鋭い作家として遺ることになってしまった。

  • 米原万里のエッセイは 物語のように
    展開していく。一つ一つのエッセイのわずかな文字の中に
    風刺や批判的な精神が 組み込まれている。
    なんという 編集力を もったヒトだろう。
    ほんとに、惜しいヒトを早くなくしたものだ。

    言葉の選び方が うまいし、直裁に えぐり出す。
    あぁ。このような文章が書けたらいいなぁと思うが、
    その芸当は なかなかできないだろうと思う。

    オホーツクの街の郵便局の対応。
    社会主義というものの官僚的な怠惰。職域思想。
    日本というのは 職域思想が少ないのだろう。
    『社会的に恵まれた居心地の良い境遇』それは日の当たる場所。
    頭寒足熱の日本的風習。
    死刑ではなく流刑にされることで起こる物語。
    ノヴァーリスの『青い花』⇒詩精神の礼讃。
    ウグイスをおとぎ話で養うわけにはいかない。
    一羽のツバメが春をもたらすものではない。
    ツバメが春をもたらすものではなく 春がツバメをもたらす。
    ヤギと羊の違いがわかる。
    自分に恋人を恵んでくれたのは、もしかしたら雪かもしれない。
    シンデレラは、継母にいじめられこき使われたが。
    ラーゲリビール。
    リッツァは言う。ギリシャの空は抜けるように青い。
    娑婆にいた頃心に刻んだ本が彼女らに生命力を吹き込んだ。
    未知と偶然があり、運と不運がある。
    ただ一度しか食べられないキノコがある。
    エサと料理の違い。茶碗は瀬戸物がよい。
    食欲は食べている最中にわいてくる。
    おのれの失敗を、建築家は正面で隠し、医者は土で隠し、料理人はソースで隠す。
    イギリスには300の宗教と3種類のソースがある。
    フランスには3つの宗教と300種類のソースがある。
    そばの歴史。4000年前インドで栽培を始めた。
    ギリシャから ロシアに入った。
    ナポレオンは 鶏肉が嫌いだった。肉とニンニクも嫌い。
    非物的関係の物的記号としての贈り物。
    日本の学習方法の結果としての羅列主義。評価の画一主義。
    その背景は 紙の存在がおおきかった。
    言い換えの美学。
    何をしゃべるのかと誰がしゃべるのか。その逆転。
    なのかなのかなぬかなのか。
    すばらしい という言葉の多様性。
    玉突き、油を売る、将棋倒し、お茶を挽く、お灸を据える。
    インスタントラーメンを省略するとインランとなる。
    恐怖と苦悩を思いやる想像力を呼び覚ます言葉のチカラ。
    本を読むにはTPOがある。
    謙遜を言う日本人と許容する日本人。
    ハムをとってくれないか、ぼくの子豚ちゃん。
    食に対する警戒感は 進化と退化の両方がすすむ。
    なぜヒトは花を愛でるのか?
    皇帝が殺されることによって。
    大きな理由には沢山の理由がある。
    ものがないことで、何ができるのか。
    若者たちから表情がなくなっていく。
    犬たちのコミュニケーション不足。
    犬はオオカミから進化した。理由はオオカミの脳が大きい。
    欲望から実現までの距離。生産と消費の分離と距離。
    ドラゴンアレクサンドラの尋問。
    ザクロの花は血の色をしている。
    サフランと貧血の関係。
    ゴミ捨て場が考古学を発展させる。
    地下に潜る。
    厳しい母親の毒舌回路と教育方針。

    言葉の感覚が鋭くていいなぁ。

  • 読むほどに、米原さんの聡明さが伝わってきて、心地よい。いったこともないロシアをやたらと身近に感じる。それから、特に、父親と母親にまつわるエピソードが興味深い。

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