パピヨン

  • 角川学芸出版
3.43
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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046211903

作品紹介・あらすじ

生涯を「死と死に逝くこと」の研究に捧げたエリザベス・キューブラー・ロス。ロスが残した「蝶」の謎を追い、田口はポーランドの強制収容所跡へと向かう。生と死をめぐるシンクロニシティのなかで、看取りという現実に直面しながらロスを追い求め、捉まえた「死」と「意識」とは。

感想・レビュー・書評

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  • 大好きだった祖母の名前が蝶。我が家では、とても親しみのある生き物。読むべくして読んだ本という気がする。おばあちゃまに会いたいな。

  • 死の研究しながら最後は孤独に死んだエリザベス・キューブラー・ロスの人生をたどりながら、著者は実生活でもアルコール依存症だった父を看取る体験をする。

    デビュー作以来、壮絶な家族状況を直接・間接に公表してきた彼女だが、今回の作品はいっそう胸に迫った。

    ひどい目に遭わされた父をここまで看たという猛々しい気持ちから、うらみつらみを昇華して「よく生きた」と父の生き方を肯定できるようになるまで、葛藤のなかで自分自身をみつめながら到達した思いは、ロスの思いと共振している。

    引用部分にもはっと打たれる文章が多かった。求めているものに出合えた感じがした1冊。

  • どこへ向かうんだろう。まー、タイトルがあるわけで、蝶に収束するのかなとか思いつつも、著者の家族に関わる部分は、いくつかの他の作品でも書かれておりますが、こちらは、ついにその最終局面なんではないかと思います。そこがあっての、前段と後段の世界的な著名人を追うところにつながるのかってのは、わかりませんが、一つの焼結を見せる本作、その家族への思いがたっぷりと書かれております。全面的に賛成も共感もできないのですけど、そういう風に思いを帰結させたってのもらしいのかななんて思わせてくれる結びだったと思います。

  • この本を読んだ後に読みたい本
    ◆エリザベス・キューブラー・ロス『ライフ・レッスン』
    ◆エリザベス・キューブラー・ロス『死ぬ瞬間』
    ◆アーヴィン・ラズロー『CosMos』
    ◆葦原瑞穂『黎明』

    田口ランディの著作を読むのは3作目で、過去に『コンセント』と『蛇と月と蛙』を読んだ。
    時間潰しに立ち寄った図書館でたまたま手に取ったのが、この『パピヨン』だった。
    『蛇と月と蛙』は正直内容をあまり覚えていないのだが、
    『コンセント』は共感できないながらも面白かったので、
    書棚にあった本作にも自然と手が延びた。

    著者がエリザベス・キューブラー・ロスに強く興味をもち、
    そこから父を看取った経験を語り始めるという展開の脈絡のなさには面食らった部分もある。

    しかし死を探求したロスに興味を持ったことと、肉親の死に直面していく著者の体験は
    必然的な関わりであったのだろう。読み終えて、たしかにそう感じられた。

    人に看取られることは一度きりだが、人を看取ることはきっと一度では済まない。
    普段「死」について人と議論する機会は滅多にない。そんなことを話題にしたら変人扱いされる。
    しかし誰しもに訪れる「死」や「看取ること」から目をそらさないために、またそうしたことに興味がある人には一読の価値があると言える著作だと私は思う。

    著者はもう亡くなっているロスについての手がかりを得るためポーランドまで取材に赴き、
    大きな成果もなく帰国したかと思えば、自身の父親が脚立から落ちて骨折するという「事件」が起こる。
    父親はアル中で、今でいう「モラハラ」そのもののような人間である。
    家族は振り回され、兄は自殺し、その後母親も病気で亡くなったそうである。

    「事件」によって入院した父親はアルコール依存症の離脱症状に苦しみ、
    同時にがんが発見される。そして唯一の肉親として、著者は死に向かう父と向きあうことになるのである。

    親に対するわだかまりのない人間がどれくらいいるのかわからないが、
    きっとほとんどいないだろうと思う。
    誰しも何かしら、大なり小なりマイナスの感情をもっているものだろう。
    著者はあからさまに父親から苦しめられ、当然父親を恨んでいる。
    その恨みが創作の原動力にもなり、反発しあいながら何とか「家族」であり続けていた。

    骨折とアル中とがんを同時に抱えて入院できる病院などそう見つからず、
    やっと手配できた精神病院で病状が落ち着いたかと思うと父親は
    病院や医師の悪口を言い始め、「このバカはもう死んでいいと思った」と著者は率直に書いている。

    著者が散々迷ってがん告知をしたことも、次の日には何故かきれいさっぱり忘れて周囲を困惑させる父親。
    父親にとっての「最善の場所」となるような病院、ケアセンター探しに奔走する
    著者の姿は、およそモラハラを受け続けたようには思えないほど愛があり、エネルギッシュである。
    医師から断りもなくモルヒネを投与され、ピースハウスに「父を大至急診ていただきたい」と泣きつくところは、
    父親を見捨てまいとする娘の愛と、家族を振り回してきた父親の激情的な性格を受け継いでいる様が見てとれるように思う。

    ピースハウスでは治療ではなく、緩和ケアしか行われない。
    確実に死へと向かい弱っていく父親をみながら、著者はロスを読み続ける。

    ロスはホスピスのさきがけとなるような、終末期患者の緩和ケアを研究・実践してきた人物である。
    医師でありながら次第に霊的な世界へと傾倒するようになり、実質的に医学会での席を失う。
    「死」にはやはり、西洋科学の唯物的な価値観では把握しきれないような霊的世界があるらしい。
    本作の題名である『パピヨン』、つまり蝶は魂のシンボルである。
    ロスは「死とは蛹から蝶が飛び立つようなものだ」と語ったという。

    終盤に著者が集めた「蝶体験」なるものが記されている。
    内容の多くは「死んだペットの代わりに蝶がやってきた」というようなもの。
    私はこの部分を読んで泣いてしまった。今現在飼い犬の介護をしているからだろう。
    私が子供の頃から、もう17年も生きてくれている。
    基本的に外飼いだったために、ほぼ寝たきりの今が一番寄り添う時間が多い。
    一年前は自分で歩けたことを考えると急速に弱っていて、一年後はもういない可能性もある。
    私に一番近い「死」はこの飼い犬の存在だ。
    たとえば葦原瑞穂『黎明』など、死を敗北とはとらえない本は何冊か読んだ。
    頭では、死んでも肉体が機能しなくなるだけでその存在の本質は不滅だと理解しているつもりである。
    しかしそれでも、今まで熱をもって生きていたものが冷たくなり動かなくなるというのは、
    想像しただけでも辛く、胸が締め付けられるものである。

    蛇足だが、本作から個人的に受け取ったメッセージがある。
    それは「ありのままの感情を表現していい」ということだ。とくに「怒り」。
    ロスのワークショップは、独自の方法で表現されなかった怒りを爆発させるものであったらしい。
    あらゆる感情をありのままに表現したとき、平安が訪れる、として。
    昨今「アンガーマネジメント」なる言葉もあり、怒りを表現することが悪であるような風潮がある。
    たしかに、怒りを人にぶつけ、人を傷つけることはしてはならないし、人からされたら不快であることは間違いない。
    しかし感情を抑圧してなかったことにしてしまうことで、失うものもきっとある。
    要は伝え方が大事なのだろう。
    同じことをこの本からだけじゃなく、人からもアドバイスとしてもらったばかりなので、
    大げさに言えばシンクロニシティかもしれないと思った。

  • 死について考える時に、死後のことを抜きにしては死ぬというのはこういうこと、と説明できない。ロスの死に対する説明は、本当にその通りなら少しは希望がもてるもののような気がする。

  • ポーランドでは子供のころから蝶の絵をかく。収容所でも子供らが描いた蝶の絵が多く残っていた。
    人は自分がしたいと思うことしかしない。それを知ることが重要だ。
    全てのことにイエスという。人生はそのための学校なのだから。
    私は大丈夫でない。あなたも大丈夫でない。だからそれで大丈夫。

  • 201306

  • 著者が「死の瞬間」の著者 エリザベス・キューブラー・ロスについて調べている時に父が末期の肺癌になる。父親は重度のアルコール依存症で病院でも問題を引き起こす。

    母も兄も亡くしている著者は一人で、父を看取る。
    父の態度に怒り、時には憎みながらも精一杯父の生を支える。
    過去に対する複雑な思いを抱きながら、懸命に父を看取った後、
    ロスについての調査を進めた。

    死後の世界について考える事は、身内を失った者なら誰しも経験があると思う。蝶にまつわる不思議な話にも心救われる気持ちがした。

  • 最期に父がけい子さんに遺したことばと、半年後の夢で伝えた言葉。
    この本の骨子だ。

  • たまたま、雑誌ですごくよい感想が載っていて、ちょうど認知症関係の
    本を読みたいと思っていたので買ったんだけど、残念賞。

    ロスの『死ぬ瞬間』は職業柄必読本で、すばらしいと思っている。
    だから、ロスの引用部分は納得できたし、感心できたが、ほかの部分は
    父親への思いや、医療従事者への偏見が強く、読んでいていやな気分になった。
    つまり、この本自体がよいのではなくて、ロスの言葉が評価されているだけではないか?と思ったりして。(ごめんなさい)
    田口ランディという人の文章は独特で、なんというか執念深いというか
    強すぎて私はあまり好きじゃない。

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著者プロフィール

作家。

「2015年 『講座スピリチュアル学 第4巻 スピリチュアリティと環境』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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