ぼくがぼくであること (角川つばさ文庫)

  • 角川書店 (2012年4月12日発売)
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本 ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784046312235

作品紹介・あらすじ

超口うるさい母親とチクリ魔の妹……秀一はすっかり人生がイヤになっていた。「こんな家出てってやる!」いきおいで近くのトラックの荷台に飛びのった秀一だったけれど、なんとそのトラックがひき逃げをおこして!?

感想・レビュー・書評

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  • 教育に熱心すぎる母親と、母親の理想像から外れ問題児のレッテルを貼られた小学校6年生の主人公。
    強く叱責されても、抗えず別のところでストレスをはく、その結果、また叱られるという悪循環。

    あるとき、「こんな家出て行ってやる。」というと、母親から「家出すら出来ない。」とこき下ろされ、感情的に家出を敢行。それをきっかけに様々な出会いが少年を成長に導いた。

    家出をしたことで世界が広がった少年には、これまでの強権的な母親とは違う姿が見えるようになっていた。視点が変わると、物事が違って見える事をいろいろなエピソードから教えてもらえる。

    古い書籍なので、戦争の話しやら学生闘争やら昔の言葉が多い。

    めがねをかけたつり目の教育ママなんて流行らないとも思ったが、大人の浅さやエゴをうまく表現していて面白かった。現代でも通じるかな?

    雪崩のように災難が落ちてくる母親に同情的になったのだが、「それは自業自得だ」と他人事のように話しを締めくくる主人公たちの親子関係にも寂しさを感じた。。

    夏休みの読書感想文にいかがでしょうか。

  • 何かで書評を見て、面白そうだな、と小5の息子用に購入。タイトルからしても、自我が育っていく今の時期にちょうど良いのではないかと思い、一緒に読みました。
    1974年くらいに初版が出ていて、少し時代が古い。主人公の秀一の兄たちは、どうやら学生運動に少し足を踏み入れたりもしている。それを親が心配する場面などが出てくるので、「学生運動」や「反体制」について少し、息子に説明してあげる必要があった。主人公の秀一が親に反発して自立しようとする過程と、兄たちも学校や国の制度に疑問を持ち始めるということをリンクさせているのだろう。兄たちは家では母に従順で、いつも秀一は兄や妹と比べられ、叱られてばかりいる、という設定なのだが、そんな兄たちだって、何もかもに従順なわけではないのだ。
    さて、怒られてばかりの秀一は、ついに家出を決意する。で、軽トラックの荷台に飛び乗ってしまうんだけど、なんとそのトラックがひき逃げ事件を起こす。このあたりから息子も、えー!どうなるの?と、物語に引き込まれました!
    たどり着いた先はかなり田舎の、おじいちゃんと同世代の孫が暮らす家。両親はおらず、訳ありの家庭のようだ。そこの孫娘「夏代ちゃん」は、秀一と違って、自分のこと(宿題やそれ以外の勉強)だけでなく、家事も農作業も、何でもテキパキと自分でこなしている。自分がいかに甘ったれだったか気づく秀一。夏休みの間、その家で過ごした秀一は、少しずつ精神的に成長していく。
    さて、夏休みの終わりに家に帰った秀一には、家族(母)との対決が待っている。母は、秀一がついに家出までしたというのに、まだまだ全然改心していなくて、相変わらず秀一を支配しようとする。大切な夏代ちゃんとの手紙のやりとりにまで干渉してくる。それについては息子もかなり立腹していた笑。さすが令和の子ども(平成生まれやけどね)。人権感覚が育ってますね。
    秀一と母との激しいやりとりに、きょうだいも入ってきて家は大変なことになる。また、夏代ちゃんの家も、財産を狙う(しかもひき逃げもしている)正直(まさなお)が、夏代ちゃんを騙そうとしていて大変。
    最後までドキドキハラハラしながら読めて、面白かった。そして、家でも学校でも「ダメな子」と思われていた秀一が、自分のこと、大切な友達の夏代ちゃんを守ること、学校でも自分で問題を解決しようとすること、など、どんどんたくましく成長していき、少し大人に近づいていくのが読み取れた。
    10歳くらいの子どもがこれを読むことで、大人だからってみんながみんな正しいわけじゃないとか、表面的に言うことを聞いて、うまく受け流す技もあるとか、母親だって弱い部分があるんだとか、いろんなことが気づけると思う。

  • 1976年の作品らしい内容。学生運動で捕まったり、学校で立たされたりしている。母親もここまでヒドイ人いるかな?と思うくらい徹底してヒドイ。山中恒らしいとんでもない内容でおもしろいけれど、今の子が読んでどう思うのか気になった。

  • とても懐かしい本です。
    小学生の頃に読んで出会いって良いな〜と感じてました。

  • 読む本がなくなったので、うちの子のおすすめ本を借りて読む。
    うちの子が推薦するだけあって、ちょっとミステリーもあって面白い。
    主人公が、自分で考えて納得して前にすすんでいくのが気持ちいい。

    小学校高学年からおすすめ。

    2012/07/31

  • 表紙は今どきの絵柄ですが40年以上前の作品です。

    これは…母親の立場で読むと辛いです…
    こんなに嫌われないように気をつけないと…

  • 1969年に刊行され、その後出版社が変わりながらも版を重ねている名作。
    婿養子に入り母親の尻に敷かれっぱなしの父親。
    兄弟4人は全員優等生なのにただ1人出来が悪いと秀一(ひでかず)をいつも叱り、抑圧する母親。
    学校での秀一の素行をとことん調べあげ母親に密告する妹のマユミ。
    母親に押さえつけられ、妹に見張られて、自分のやりたいことがすべて否定され、奪われている様子に胸が苦しくなります。
    自分だけが勉強ができない、他の兄弟のようになれないことにもがき苦しみ、ある日、抑圧に耐えらえなくなった秀一は家出を決行します。

    その途中、ひき逃げを目撃したり、転がり込んだ山中の家が武田信玄の隠された財宝に関係する家で、住人のおじいさんと少女は何か事情をもっていそう。
    色んな冒険や事件が待ち構えています。

    学校と家という狭い世界で暮らしていた少年がおじいさんと少女に出会うことで新たな世界が見え、影響され、少年の心の中が少しずつ変化し、整理されていきます。

    一見、母親の敷いたレールを素直に走っているかのように思えた兄や姉も、きちんと自分の考え、主張を心の中で持っていたことも秀一は知ることができました。

    子どもだって親の庇護は必要ではあるけれど、親の所有物ではなく、いつまでも思い通りにはならない、ひとりの人間、一個人なのだ、ということを最後には教えてくれます。

    大人である自分も胸が苦しくなったりハラハラさせられたのです。
    子どもが読んだら…子どもの心にも激しい化学反応が起こるでしょうか。

  •  家でをめぐり起こる事件、友との関係、家族、いろんなことが起きる中で、主人公はどう決意したのか。おすすめです。

  • おススメ本に表示されたので読んでみた児童書。

    45年も前に書かれたお話。今とは時代背景が違い、小学生が廊下に立たされる等サザエさんやドラえもんの世界とも重なるが、今の小学生でも面白く読めるのではないかと思う。

    この話に出てくる母親は、今の時代で言うところの毒親で、普段小説を読むときに母親が出てくれば少しは共感する部分もある物だけれど、この話の母親には嫌悪感しか抱かなかった。

    最後の方まで問題は山積みのようだったが、最後はスッキリと解決し、読後感は良かった。

  • ダメな子のレッテルをはられ成り行きで家を飛び出した小学6年生の男の子。ついたところはおじいさんと女の子の住む田舎の家。夏休みの1ヶ月そこで過ごしながら彼は自分を省みる。家を離れてわかること、ひとりになってわかること。母親の言動がひどくて母親である私も全く母親目線にはならず子ども目線で読む。子どもに対して怖いくらいひどい大人。大切なものを守るために親とだって闘わないといけない時がある。自分が自分として生きるために。これはおもしろかった。子どもたちにもどんどんすすめたい。

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著者プロフィール

1931年北海道小樽市生まれ。児童読み物・ノンフィクション作家。戦時下を描いたノンフィクションに『ボクラ少国民』シリーズ(辺境社)、『アジア・太平洋戦争史』(岩波書店)、『戦時児童文学論』『靖国の子』(大月書店)、『新装版 山中恒と読む修身教科書』(子どもの未来社)などがある。

「2025年 『増補版 戦時下の絵本と教育勅語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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