角川短歌ライブラリー うたの人物記 短歌に詠まれた人びと

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  • 角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046526052

作品紹介・あらすじ

短歌に詠まれた古今東西の人生模様。三十一文字できりとられた個性的な人々の生を、エスプリとユーモアに富んだ語り口で読み解く。知的好奇心をくすぐる短歌エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  •  夕暮れのプラハの街を足ばやに役所より帰るフランツ・カフカ  ──玉城徹
     ミケランジェロに暗く惹かれし少年期肉にひそまる修羅まだ知らず ──春日井健

     タイトルの通り、人名を詠みこんだ短歌を紹介するエッセイ集。目次を見ると、科学者、作曲家、政治家、スター、詩人e.t.c.とバラエティに富んでいる。

     小池光さんは歌人で、そもそも私は彼の短歌が好きでこの本を手に取った。そして、あまりに簡潔にして要領を得た、それでいて想像力豊かな文章に驚く。たとえば、ニュートンを説明するこんな文章。

    「ニュートンはその物理学の原理いわゆるニュートン力学を記述するのに、適当な数学がなかったためまず微分積分学という数学の体系を打ち立てた。茶碗を作るためまずロクロを発明したごとくであり、小説を書くためにまず口語文を発明したごとくである。」

     ニュートンの業績がいかにすごいか、根本的なレベルの違いがよくわかる。私はこういう文章が大好きだ。

     短歌を題材にしつつ詠まれた人物の略歴に淡々と触れ、その印象を語ることに重きが置かれているので、短歌になじみがない人でもとても楽しく読めると思う。そのうえで、短歌と言う短い詩形に固有名詞、その最たるものとして人名が詠まれることの面白さを味わえばよいのでは。

     国境(くにさかひ)追はれしカール・マルクスは妻におくれて死ににけるかな ──大塚金之助
     リヴアイスのジーンズ試着してゐたら三島由紀夫が腹切つたのだった ──島田修三 

  • 孤独な長距離ランナー円谷孝吉に涙し、斎藤茂吉のこれまで知らなかった側面に思わず微笑み、あらためて定家の凄さに感嘆し、塚本邦雄の意外な軽妙さを知った本。

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著者プロフィール

1947年宮城県生まれ。1972年東北大学理学部大学院修了。学生時代より短歌をはじめ、歌集に『バルサの翼』(現代歌人協会賞)、『廃駅』、『日々の思い出』、『草の庭』(寺山修司短歌賞)、『静物』(芸術選奨文部科学大臣新人賞)、『滴滴集』(斎藤茂吉短歌文学賞)、『時のめぐりに』(迢空賞)、『山鳩集』(小野市詩歌文学賞)など。評論エッセイ集に『茂吉を読む─五十代五歌集』(前川佐美雄賞)、『うたの動物記』(日本エッセイスト・クラブ賞)など。平成25年度紫綬褒章受章。現在、読売新聞歌壇ほか選者。仙台文学館館長。

「2015年 『石川啄木の百首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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