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- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784046528216
感想・レビュー・書評
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国語科のドアの「提出物入れ」に誰かがチロルチョコ二個入れた
千葉 聡
生徒が秘め持つ、光。その原型を見いだそうと奮闘する、国語科「ちばさと」先生。40代、歌人。横浜市立戸塚高校での5年間を、エッセーと短歌でつづった新刊は、緩急のバランスの良さが持ち味だ。
六人目の選手は〝声〟だ ディフェンスの声 ベンチから飛んでくる声
ある日、ルールも知らないのに、バスケ部の副顧問に指名されてしまう。せめて部員の気持ちを知ろうと一緒に走り込み、「ファイト!」と声をかける。とはいえ、体育会系のメーン顧問との力量差は歴然だ。だが、そんな「ちばさと」には、部員が抱える闇を、言葉で光に変える力があった。
「ちょっとだけ、一緒に散歩でもするか?」。口数がめっきり減った部員に、さりげなく声をかける。夏の夜の校舎で、体育座りをする2人。静かな闇に…「あっ」。たちまち蚊に刺され、部員は久々に高校生らしい笑顔を見せる。そんな「世界一とんでもない散歩」が、明日につながるのだ。
多忙な校務の中、何人かの生徒は、創作活動をやめちゃだめですよ、と励ましてくれる。その声に応えるかのように、巻末には、古今和歌集序文に「ちばさと」がピアノで曲をつけた楽譜も掲載。
答案をかかえて俺もくちぶえを正しく吹いた 成人後初
教育の現場では、書けることよりも書けないことの方がはるかに多いものだが、引用歌や自作の短歌が、そんな葛藤をソフトに補っている。現在の赴任校でも、「くちぶえ」にいやされているのだろうか。
(2014年5月11日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示