私が源氏物語を書いたわけ 紫式部ひとり語り

著者 :
  • 角川学芸出版
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レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046532480

作品紹介・あらすじ

紫式部が宮廷生活を語る。数々の悲しい別れ、創作の秘密…。源氏物語の舞台裏が今、明らかに。源氏物語研究の第一人者が、資料を駆使して、その時代と人間模様を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 紫式部の一人称による自伝という形式の小説。
    「紫式部日記」という一級資料もあるので、それを基に、背景となる史実の解説を交えた内容。
    式部の人生経験が、源氏物語に詰まっているのですね。

    藤原氏という貴族の血筋を誇っていた式部。
    父親の家系には、もっと華やかな時代もあったのだ。
    清少納言と同じ受領階級などと思わないで貰いたいと。それ、現代の人に向けて言ってる?

    源氏物語は、式部の先祖が当時よりも主流だった過去の時代を設定して描かれているんですね。
    光源氏が天皇の皇子でありながら臣籍となった微妙な屈託もそのあたりから?

    源氏物語にこめた様々な思いが、ありありと描かれます。
    次々に大切な人と死に別れた人生。
    平均寿命の短い当時はそう珍しいことでもなかったでしょうから、自分ばかりが不幸のように書いているとも受け取れますが。
    よっぽど辛い思いをして、しかもそれを忘れずに反芻する性格なのが作家向き?
    遅く結婚した夫に早世されたのは、確かに短い縁でした。正妻でもなかったし‥
    その寂しさから書きついで行ったのが、のちに源氏物語としてまとまります。

    中宮彰子の女房(女官)として宮中に上がったものの、誰にも話しかけられずにすぐ家に逃げ帰ってしまった式部。
    気を取り直して?戻った後で、話しかけられやすく振舞ってみて、女房仲間に物語作者などどんなにお高くとまっているかと怖がられていたのだと初めて気づく。
    どうすればいいのか模索した経験を、娘に書き残そうと考えたり。
    娘は宮中で明るく過ごしていたようです。

    年若い中宮彰子の人柄にも、次第にうたれて敬意を深めることに。
    彰子が少女の頃、父の道長の権力を背景に鳴り物入りで入内したときには、肝心の天皇は中宮定子のほうを深く愛していた。
    何年も子が生まれない屈辱的な立場のままで、穏やかに暮らしてきた中宮彰子だったのです。

    作者は専門家なので、細かく正確に、しかも熱っぽく描かれていると感じます。
    真面目でプライドが高くこだわりの強い紫式部像は、あまり付き合いやすくはなさそうだけど、いかにもそんな人だった感じですね!

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      此れ面白そう、メモしておきます。。。
      此れ面白そう、メモしておきます。。。
      2014/03/05
    • sanaさん
      nyancomaruさん、
      これ面白かったですよ~!
      コメントありがとうございます☆
      レビュー書いてからお返事しようと思ってたら、すぐ...
      nyancomaruさん、
      これ面白かったですよ~!
      コメントありがとうございます☆
      レビュー書いてからお返事しようと思ってたら、すぐ書けなくて‥すいません^^;
      2014/03/09
  • 源氏物語を書いた紫式部の人生が、式部自身の一人称で紡がれていく、小説と自叙伝の間のような作品です。

    藤原氏なのに不遇な地位にいる一族のこと、屈折したプライドと諦め、親しい人たちを喪う度に襲われる哀しみと無常観、一人娘への無心の愛、宮仕えのつらさと立ち回り方など、彼女を取り巻いていた多くの現実が、紫式部日記や歌集などの豊富な資料を巧みに織り交ぜながらも、理知的で抑揚を抑えた彼女自身の声で語られて行きます。

    大学の先生による著作のためか、自然な気持ちの吐露、というよりも、少々理屈的で、硬い言い回しの部分もありますが、内気なのに実は尊大で誇り高い、アンバランスな部分もある感性鋭い女性の姿が丁寧にあますことなく描かれています。

    ですが、この作品で何よりハッとさせられたのは、主となった中宮・彰子の秘められた苦悩と、それに耐えながらも健気に努力し、毅然とした女性へと変貌していく姿を、強い敬意と愛情で、描いている点です。
    この部分は、源氏物語と紫式部の第一研究者と言われる著者だからこそ知り、書けた部分だなあ、としみじみ感じいってしまいました。彰子以外にも、幸せそうに見えて実は深い苦しみと悲しみを抱えながらも必死に生きている女性がこの物語には多く登場します。

    源氏物語が好きな人もそうでない人も、感性の鋭い女性による見事な捉え方には、どこかにハッとさせられ、学ぶ部分があるのではないでしょうか。

  •  誰もが一度は目を通したことがある源氏物語について、その背景や時代構成なども踏まえて分かり易く解説がされています。
     原文と訳も掲載されているので、今まで学習してきた文章からまた新しい発見ができるかもしれません。
     卒業研究で源氏物語を考えている方にも、知識を増やすためにオススメです。
    (教育学部・国語専修/匿名希望)

  • 紫式部のひとりがたり、という形式をとった、「源氏物語」が書かれた理由、そして、紫式部自身の心情にせまった、「伝記・紫式部」。

    読み終えて。偉大な物語というのは、えてして、作者の実像など求めないものなのかもしれないと思った。「源氏物語」は、たぶん大学入試なんかにでてこなければほぼ原文にふれることがない現代人にしたって、おおまなかところのあらすじは知っているのが、「常識」だ。かろうじて。では紫式部がどういう人物だったか、と問われて、ある程度の知識を示すことの出来る人間がどれほどいるか。逆説的には、「源氏物語の作者」レベルの知識しか必要とされていない、ともいえる。

    それでも紫式部にせまりたければ、わたしは森谷明子さんが紫式部をホームズ役に描いているミステリ「異本・源氏物語」をお勧めする。

  • 図書館で。
    読み始めるまで時間がかかりましたが読み始めたら面白くて一気読み…とまでは言えないけれどもするすると読み終えてしまいました。何故、源氏物語が時代を越えて読み継がれているか…その理由がわかるような気がしました。
    人の世って結局いつの世も変わらないんだなぁという所が。

    紫式部が幼いころに母を亡くし、姉を亡くし、姉と慕う幼馴染を亡くしさらに夫を亡くすという悲しみを経験した、という事は知りませんでした。母の代わりに姉を慕い、姉が無くなると年上の幼馴染を姉と慕ったけれども夫を亡くした時に人は誰かの代わりになることはできないのだ、と気が付くというのはナルホド、源氏とはそう言う物語だったのか…と改めて膝を打つ思いでした。

    源氏という姓も、生まれは高貴ながらも天皇の位に就くことは出来ない、という烙印のようなものだったと考えると光源氏が心の安らぎを女性に求めた…というのもわかるような気がします。

    そして昔から男性は出来る女性がキライというか苦手だったんだなぁとなんだか納得しました。自分の地位を脅かされると思ってイヤだったのかなぁ…

  •  世界で最も読まれている日本の古典『源氏物語』、その作者「紫式部」とは一体どんな人物だったのか。
     『源氏物語』に関する著書を多数出版している著者が、紫式部の心と人生を、紫式部の独り語りの形式でたどる一冊。
     多くの参考文献を下敷きにして、「源氏物語の天才作者」ではなく一人の人間、一人の女性としての紫式部の姿が浮かび上がる。

    ①幼馴染の「姉君」の存在とその別れ
    ②幼少時代の漢文素養と矜持
    ③宣孝との恋愛と喪失
    ④物語の創作
    ⑤宮中への出仕 ~彰子の女房へ~
    ⑥彰子の懐妊と「新楽府」の進講
    ⑦皇子誕生
    ⑧「女房」という仕事
    ⑨「枕草子」の力
    ⑩殿「道長」との関係
    ⑪その他 女房生活の雑多
    ⑫一条院崩御と弟の死
    ⑬賢后彰子と自分の死

     私は『源氏物語』は読んでいたが、それを書いた紫式部は「天才女房」ぐらいにしか認識していなかった。しかし本書を読んでみると「あぁ~分かる!」と共感できる部分が多く、紫式部も一人の普通の人間だったのだなぁと、初めて中古の古典文学の作者に親しみを抱くことができた。この独り語りの形式、別の古典文学の作者でも試みてほしい。『源氏物語』への視座が変わる、とても勉強になる一冊だった。

  • 今年は目論見よりも全然源氏本が読めなかったので、年末最後にせめて山本淳子さんの本で締めたいと思い手に取りました。

    この本は紫式部のひとり語りの体裁をとりつつ、源氏物語を書くに至った心境や背景などが丁寧に描かれた一応小説、なのかな?
    私自身は式部日記は読んだことがあるけれど(もちろん訳本)、式部集は読んだことがなかったし、その他引用されていた御堂関白日記などは存在さえ知らなかったから、それらの資料を総括し再構築してくれたことで、より紫式部という人間が理解出来たような気がしました。

    特に嬉しかったのは、清少納言が定子を心酔しまくっていたのに対し、式部はそれほどではないと思っていたものが、この本を読んで式部も彰子のことを敬愛していたことが感じらたことです。
    引っ込み思案なのに自意識が高く尊大で根暗、という私のイメージはそのままに(笑)、世の理不尽さ、身の扱いづらさ、心のつながり、などについて語られたことで、自身の経験が彼女の感受性の高さゆえ源氏物語という作品になっていったんだなあーということが分かり、しみじみしました。そこに彰子への愛も感じられたのが嬉しかった。

    あとは、漢詩の素養を生かした作中のエピソードなどは知らなかったことばかりで深読みできた気分です。

    やっぱり山本淳子さんは分かりやすい、すごいね!

  • 【状態】
    展示中

    【内容紹介】
    紫式部が宮廷生活を語る。数々の悲しい別れ、創作の秘密…。源氏物語の舞台裏が今、明らかに。源氏物語研究の第一人者が、資料を駆使して、その時代と人間模様を描き出す。

    【キーワード】
    単行本・源氏物語・紫式部・古典


    ++2+1

  • 紫式部本人が書いた「紫式部集」「紫式部日記」をもとにして、紫式部がひとり語りしていく形でとてもわかりやすく読みやすかった。こういう紫式部の背景があっての「源氏物語」あり、また「源氏物語」から波及していった紫式部の人生でもあったということを知った。未読の「紫式部日記」をはじめ「和泉式部日記」、まだ全段を読んでいない「枕草子」、果ては「白氏文集」、そして改めて「源氏物語」を再読したいと思った。

  • 『源氏物語』は私のすべて。

    小説としては消化不良。NDCからすると小説には入れないようだが。いわゆる紫式部のイメージ、すなわち、ちょっと鼻もちならない感じが出ているのは面白い。自分の思うままには生きられない、でも、割り切って生きることもできない。「世」の理不尽さ、逃れられない「身」、だからこそ大切にしたい「心」のバランスを取りながら、生きていく。紫式部にとって、『源氏物語』は、「世」と「身」と「心」のそれぞれを、それぞれに助けたものだった。

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著者プロフィール

大阪キリスト教短期大学准教授

「2018年 『実習の記録と指導案 改訂新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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