ヘンな論文

  • KADOKAWA/角川学芸出版
3.66
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本棚登録 : 673
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046533418

作品紹介・あらすじ

珍論文ハンターのサンキュータツオが、人生の貴重な時間の多くを一見無駄な研究に費やしている研究者たちの大まじめな珍論文を、芸人の嗅覚で突っ込みながら解説する、知的エンターテインメント本!

感想・レビュー・書評

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  • 予想よりずっとおもしろくて良い本だった。「ものの役にたたん学部はつぶしてしまえ」などという暴論に怒ったり心を痛めている人(私です)にとっては、心から共感できる一冊。

    何が良いと言って、理系文系問わず研究者という存在への敬意と愛がこもっていることだ。著者は、ワセダに学部5年・修士3年・博士6年、しめて14年も在籍した「日本初の学者芸人」だそうな。専門は日本語学。うわあ、これってすごーくジミでオマケにやたら根気のいる学問分野だよね。でもまあ、たいていの「学問」はいたって地味なものだ。華々しい成果をあげて脚光を浴びるのはほんのひとつまみ(握るほどもない)の方で、それだって長年の地を這うような研究の末だもの。

    ここで取り上げられてるのは、一見「なんじゃそりゃ?」と思うような「ヘン」な研究の論文だ。そのトホホな感じをおもしろおかしく書いてあるのかと思ったら(そういう面ももちろんあるが)、なにゆえに彼ら彼女らは、そのちょっと(かなり)変わった研究に情熱を傾けているのかを結構真面目に考えていくのである。研究者というのはどういう人たちかということについてこう書かれている。

    「美しい夕景を見たとき、それを絵に描く人もいれば、文章に書く人もいるし、歌で感動を表現する人がいる。 しかし、そういう人たちのなかに、その景色の美しさの理由を知りたくて、色素を解析したり構図の配置を計算したり、空気と気温を計る人がいる。それが研究する、ということである」

    確かにねえ。考えてみれば、わたしたちが当たり前のように思っているいろんな知識も、誰かが調べたり考えたり、営々と積み重ねてきた努力の末に獲得されたものだ。そりゃあ「それがわかったからってどうなんだ?」というたぐいのこともあろうが、いいじゃないの、そのこと一つ分世界はわかりやすくなったんだから。(とは言うものの、本書の三本目「浮気男の頭の中」論文名「婚外恋愛継続時における男性の恋愛関係安定化意味付け作業」は心の底からどうでもいいと思ったが)

    十三本の論文が登場するが、何と言っても圧巻は最後の「湯たんぽ」研究でしょう。執筆者の伊藤先生がもう本当にいい味わいなのだ。家政学の先生なのだが、工業デザイナーとしても一流で、国際浮世絵学会の理事まで務めているという方が、研究者としてのキャリアの最後にうちこんだのが「湯たんぽ」。いいなあ。湯たんぽってこれまで誰も注目してこなくて(そうだろうなとは思う)すごく謎が多いらしい。誰も大して感心しないのに、そんなこと気にもせず、先生は飽くなき探究心で湯たんぽを追い求める。学問ってこういうことだよね。

    「珍論文には、役得がないかわりに、純度の高い情熱が詰まっている」とあるが、本当にそうだと思う。研究の世界に身を置いていた著者ならではの視点が新鮮だった。論文紹介の合間にコラムが四本挟み込まれているのだが、これが一般人には縁遠い研究者の世界を簡単に紹介するものとなっていて、とてもわかりやすいのも良いところだ。たくさんの人に読まれるといいなあと思う。


    ・一本目の論文の研究対象は「河原町のジュリー」。70年代に京都で有名だった今で言うホームレスのおじさんのことだが、私は学生のとき実際に見たことがある。次の日バイト先で「ジュリーを見た」と言ったら、「きっといいことあるよ!」って言われた。実は京大出で金持ちっていう噂も確かにあったなあ。でも断じて言うが、絶対にジュリーには似てなかったから!
    ・一番「その気持ち、わかるなあ」と思った論文は、六本目「男子生徒の出現で女子高生の外見はどう変わったか - 母校・県立女子校の共学化を目の当たりにして」。「目の当たり」という表現に「チクショー」という気持ちがうかがえるような。
    ・「本の雑誌」7月号に著者のサンキュータツオさんが寄稿している。これもおもしろい。

  • 珍論文を集めることが趣味…というサンキュータツオさんが選りすぐった、珠玉の論文コレクションです。
    時々、仕事中につい二度見をしてしまう論文があったりしますが、なかなかじっくり読む機会を作れずにいたので、うはうはしながら本書を読みました。

    研究者たちが思い切り楽しみながら研究したんだろうな、という様子が行間から伝わってきます。
    堅苦しい論文そのままではなく、著者が茶々を入れつつ、わかりやすく読み下してくれているので親しみやすいということも本書のポイント。
    なによりタツオさんご自身の珍論文にかける情熱がすごい!

    個人的に一番楽しく読んだのは、公園の斜面に座るカップルの観察についての論文。
    これを学術的に表現すると、「傾斜面に着座するカップル」となるそうだ…じわじわおもしろい。
    そのほか、猫カフェ、湯たんぽ、浮気男の頭の中の検証…などなど、思わず身を乗り出してしまう楽しげな空気を醸し出す論文たちに、学術論文の幅の広さを実感させられたのでした。

  • いとをかし。書籍版「タモリ俱楽部」のようでした。北尾トロ氏に通じるものがあります。特に「カップルの観察」「あくび」「湯たんぽ」は興をそそられました。唯一ハッとしたのが、「コーヒーカップの音」でした。まさに論理的・科学的な思考を体得するための教科書のようで目から鱗の内容でした。続編もあるようなので読んでみたいと思います。

  • *図書館の所蔵状況はこちらをコピペしてね
    http://opac2017.lib.kitami-it.ac.jp/webopac/BB50109926

  • ・卒論の申請書出す前に読みたかったかも
    ・四本目の「あくび」はなぜうつる?を読み始めて4ページ目でなぜかあくびが
    ・ねづっちが出てきた(笑)

  • 変わったことに人生を費やしている人たちの話がまとまっていて、非常に興味深かった!

  • 12/8

  • キタコレ2017年 My本屋大賞No.1かも。『え~、そこ!?』と思うようなテーマに対しても、あくなき情熱を注ぐ研究者には畏敬の念を持たずにはいられない。『あくび』はうつるのか、湯たんぽの変遷、女子校から共学へ変更した場合の差など、なにそれと思いつつも興味をそそられるテーマが並ぶ。
    著者は博士号を持つ芸人さん。笑わせながらも研究者へのリスペクトが根底にあり、読んでいて心地よい。論文を書いた経験のある方にお薦め。

  • 問いをたてる。
    問いにまなぶ。

    どちらもしてきてないかも。

    覚える勉強じゃなくて、
    わからないことに
    立ち向かう方法を模索する、
    そういう面白さを知ってみたい。

    受け身だけじゃなくて。
    なにか表現して生きてみたい。1回だけでも。
    ほめられるとかじゃなく、
    自分の気持ちのままに。

    この人たちの仲間に入りたいってこと思った。

  • 図書館より。

    いや、面白かった。頭いいはずなのに、スッゴい研究するんだね。自分の事を振り返り... あんまりヒトのこと言えないとちょっぴり反省したり(笑)役に立つか分からないけど、科学的に証明することは、人間の性なのかもしれない。

    最後の湯たんぽの研究。あたかも、自分の手柄のように発表する輩が存在することに怒りと憤りを感じる。人生をかけた研究を、その人をないがしろにする神経が分からない。何でそんなことするんだろうね。

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