大正忌憚魔女 1 (MFC キューンシリーズ)

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  • KADOKAWA (2023年2月27日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (138ページ) / ISBN・EAN: 9784046821461

作品紹介・あらすじ

大正時代の日本で暮らす小さな魔女の物語。
大正時代の日本と西洋の魔術。 異なる文化を繋ぐのは 嫌われものの魔女でした。

感想・レビュー・書評

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  • けしてやさしくはないけれど、腕まくりしながら見届けたくなる小さな魔女のものがたり。

    本作『大正忌憚魔女』は大正時代の日本へ異国から単身旅立った、小さな魔女「夜迷」を主人公とした童話的な物語です。彼女は人々の奇異と偏見の目に晒されつつも、確かな理解者を得て日夜奮闘します。
    ただしタイトルに入るのは不思議なお話を意味する「奇譚」ではなくタブー視される「忌憚」の方でした。
    その名の通り、魔女が大衆から受け入れられることの難しさが、物語の冒頭から突きつけられます。

    奇妙さが心をくすぐる表紙絵からわかるように、欧州から持ち込まれた魔法は極東の地でも確かに息づきました。
    善良な夜迷は故郷の魔法を再現し、故郷と現地、世のため人のために尽力します。
    しかし、彼女のがんばりが魔女の悪評を裏付ける形になってしまうのは皮肉なことにほかなりません。誤解を跳ね返して受け入れてもらうのも並大抵のことではありません。夜迷の生活様式も魔女らしく、日本人とはややなじみません。

    ただし、展開が重苦しくならないための工夫も施されています。魔女に向けられる悪意や奇異の視線を絵柄で和らげ、理解者を得たことによる希望を垣間見せる筋運びと雰囲気づくりが絶妙に調和していました。
    夜迷を見守るように紡がれたナレーションはさしずめ、あなたは決して孤独ではないと教えてくれるかのようでした。

    それはというもの、夜迷が異国で得た協力者の女学生「雅鳳麟」の気風が良かったのです。
    彼女は、誤解があってもすぐに切り返して率先して頭を下げられる魅力的な麗人でした。頼もしさと竹を割ったような性格とさばさばとした言動が眩しかったです。学術肌で好奇心旺盛なのも、研究者である夜迷との相性を良くしています。

    対する夜迷は礼儀正しくて一生懸命なのですがおどおどとした少女でした。
    それは人の目をうかがうことに慣れていい子にならざるを得なかった裏返しとも言えて、なんとも切ないです。
    ただし、彼女は誰かを恨むことができる子ではありません。ここぞという時に大切な人を守るため踏み込める勇気を持っているので、物語の主人公を務める素質は十分といえるでしょう。

    補足すると、麟の方も我が意を通すあまり、孤高のスタンスを取りがちな気ままな少女です。
    互いの気負いと気後れがあり、言葉が噛み合わなくとも友を欲したのは麟も同じでした。
    よって、このふたりは早々に相互に思い合う関係になれます。出会うべくして出会った、素敵なお友達同士なのではないでしょうか。

    以上。
    本作のテーマは異邦人が誤解や先入観を乗り越え、いかにしてコミュニティに受け入れられるかというものです。
    相互理解は人類にとって普遍の課題ですが、人の心が十人十色なこともあって絶対的な解法はないのでしょう。
    そのため全四巻を通して夜迷と麟は確かに救われましたが、課題は残る形で締めくくられます。
    ある種、真摯でした。むしろ、大正に限らず「令和」を生きる我々の心にこそ、それら課題は残り続けるので。

    麟の紹介によって出会い、夜迷に力を貸してくれた作家であり師匠でもある「影藤硅」先生にせよ、集団と個人を区別して率直に意見を述べるタイプです。偏屈で仏頂面ですが道理をわきまえ、理不尽に抗うことができる頼れる大人でした。
    魔女が嫌いなら嫌いと面を向かって言ってのける影藤先生のスタンスは確かにデリカシーの欠如ですが、ある意味で誠実と言えます。理詰めで思案したうえで、まずは対処療法として夜迷への誤解を解くよう住民に提言を行ってくれました。

    先生の公平な立ち位置は、ふたりの少女と並んでこの作品のあり方を決定づけたと言ってもいいかもしれません。
    すべてが玉虫色では収まらない、ここにいると決めた以上は軋轢から逃れられない。
    だけど、目に見える人と人とのつながりは、顔の知れない大衆の心に立ち向かう上での糧になった。そういうことです。

    総じて、自由という新風が吹き込みつつも現代と比べれば遺風が残る狭間の時代ならではの趣の漫画でした。
    絵本のような画風である以上、大正時代の厳密な時代考証を避け、ぼかしてもよいと思ったのも確かです。
    ただし、描かれた範囲では路面電車など都市の華やかさと雑然とした下町の風景を共存させていて当時の雰囲気を巧みに切り取っていました。
    むしろ、当時の人々の意識を美化せず多少悪意は割増しながら、納得いくよう描く姿勢を積極的に評価したい所存です。

    また、雑貨店や骨董市のように思える、雑然とした中に確かに輝く宝物が見え隠れする絵柄は好みでした。
    へんてこりんとさえ評せる、奇妙な魔術の産物のビジュアルセンスも魅力的です。
    どう語るべきかは一巻時点の情報からではいささか足りませんが、厳しくも的を射た意見と優しい対処が歩を同じくしてやってくるので不思議とリアリティがあったりもします。

    さて、二巻からは大衆の視線はいったん脇に置いて。
    ここからは夜迷はもちろん、麟もまた、それぞれが向き合おうとしている問題にも焦点を当てていきます。
    しっかり者の彼女たちも等身大な少女であり、人並みの不安に涙することがあるのだと教えてくれました。
    そしてその上で前を向く希望ある姿を、きっと読者に向けて示してくれるでしょう。

  • つくみず先生の帯を見て前々から気になっていた漫画、やっと読みました。タイトルのまんま「大正」時代、人々に「忌憚」される、日本にやってきた最初の「魔女」の話。魔女はちっちゃい女の子(名前は夜迷)で、健気でひたむき。人のために日々研究に勤しんでいるが、日本人たちに異文化への恐怖と魔女への先入観で拒絶されている。こんな可愛い女の子が悪者なわけ無いだろ! いい加減にしろ!

    そこに現れた女学生の麟さんが、魔女の誤解を解こうと奮闘してくれる。麟さんは物事をちゃんとその目で見て善悪を判断したいという、自分の中の正義にまっすぐな女の子。ホントいい子。出会えて良かった。路面電車での「(いずれ)きみは見たこともないようなまぶしい笑顔で私のとなりにいるんだ/その日が楽しみだな」というシーンが良かった。かっこよすぎるだろ。ご飯奢ってくれたり、相談に乗ってくれたり、師匠に紹介してくれたり、何かとサポートしてくれる。大正といえば異文化もガンガン入ってきてる時代なわけで(それこそオムライス食ってたりとか)、この自由な風の中、きっと魔女も受け入れられる! と勇気づけてくれる。

    夜迷があってるのって普通にいじめであり、理不尽で可哀想なんだが、オロオロした絵柄と健気な性格でそこまでシリアスには見えず、そこに麟さんという希望がすぐに現れてくれるから、読んでいる間はそこまで鬱っぽい感じにはならない。ただ、それまで耐えてきたであろう日々を思うとかなり心苦しい。報われてくれ!! と強く思いました。

  • 日本に魔術を広めようと派遣されてきた魔女が、
    酷い差別を受けたりもするけど、
    頼れる人にも出会えて頑張る話。

    丸くて柔らかい絵で騙されそうだけど、だいぶ世知辛い世間に生きてる。
    なんなら夜迷は奴隷にされかけて麟は娼婦にされかけたりする。
    タイトルからして直訳すると「大正時代の遠慮しまくる魔女」なんだけど・・・不穏。

    影藤先生によってガキどもからのイヤガラセは減るかもだけど、あの名家の女子二人は性根から腐ってそうだから無理じゃないかな。
    まぁ、顔が描かれていないモブだからもう登場しないかもしれないけどね。

    ぶっちゃけ大正時代じゃ魔女なんていたら迫害の対象なんだろう。
    むしろ警察が偏見で逮捕したりしない優秀さが逆に不自然に感じる。

    カエルの卵って実際のところ食べられるんだろうか?
    あと、オムライスって日本発祥ではあるけど、大正時代に存在していたんだろうか?
    → 大正14年とのこと。

    ---

    夜迷(よまい):
    主人公。
    派遣されてきた魔女。
    西洋出身。
    研究熱心すぎて全てのモノが魔術の材料に見える。
    オムライスを持って帰って魔術の材料にするってどんな発想なんだ・・・。
    実は2話でようやく名前が出る。
    西洋出身なのに名前が漢字なのは、当て字なんだろうか?

    雅鳳 麟(がほう りん):
    たぶん小説家志望。
    家柄は不明だけど、名家の娘とやらからの扱いを見るに、めちゃめちゃ家柄が良いってワケではなさそう。
    金髪なのだろうか?

    影藤 硅(かげふじ けい):
    小説家。
    麟の先生。
    夜迷の家に物理的なイヤガラセをしていたクソガキでも名前と姿が一致するくらい有名な小説家。

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著者プロフィール

漫画家。著作に『カラクリショウジョ』など。

「2019年 『頽廃の花売り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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