少女入門 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)

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  • KADOKAWA (2023年6月22日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (172ページ) / ISBN・EAN: 9784046825278

作品紹介・あらすじ

『女の子になってしまった男の子』×2!?  鬼才・堀出井靖水が紡ぐ、笑いとときめきいっぱいの新感覚ラブコメ、スタートですっ!

感想・レビュー・書評

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  • 「恋」と「変」は似ているってのはありふれた言い方だけど、きっと楽しいですよ?

    「TSF(後天的性転換をテーマとした創作作品)」としての完成度のみならず、単純に漫画としてのクオリティが高い。その一点のみで推せる作品です。
    のちほど補足しますが、作者の「堀出井靖水」先生が2016年ごろに「Pixiv」等に掲載されていた習作が元になっています。それから別ジャンルでの連載を経てから改めて、企画を通したという経緯を辿ったようです。

    無料で読める習作の方も味は出ているのですが、いざ商業と出されたこちらは仕上がっていました。
    たとえば元が原石だとすれば、こちらはカットした上で磨き上げた上でジュエリーへと仕立て上げられたようなものです(※原石には原石の良さがあるというごもっともな反論は認めるとして)。

    とどのつまり、本作『少女入門』は表紙からわかるように「楽しい」作品なんです。
    なぜ楽しいか? と聞けばそれは、堀出井先生の活動遍歴(SNS「Twitter(X)」など)を追っていくだけでを察せられます。この場合、堀出井先生はとにかく引き出しが多い漫画家さんだと思うのです。
    ゆえに読者を楽しませようという目論見に忠実で、かつ突き詰めてやろうという気概を感じる次第でした。

    それに伴ってなぜこの漫画が楽しいのか、上手いのかを言語化してみることにします。
    時にはポップでキュートなデフォルメ絵を置いたかと思いきや――、ベタの利かせたはっきりした主線のもと、見栄を切るかのような力強いポーズとともにキャラがやってきます。なるほど目を奪われてしまいます。

    加えて、遊びのコマの置き方とデザインセンス、オノマトペに代表されるセリフ外の文字演出もふんだんに使用します。このことによりメリハリを利かせたうえでテンションの上げ下げを演出するわけです。
    カラーの使い方も上手い。ビビッドな色遣いが尾を引くので、モノクロだって色づいて見える気さえします。

    ゆえに一ページ一ページ、ひとコマひとコマが見逃せない。その一方で、いちいち個別に追わなくても自然と奔流に乗せてくれます。いい意味で考えなくて済む漫画づくりが光るのですね。
    技巧面だけでなく、かわいいところ、隠すからこそ生まれるフェティシズムなど作者ご自身の楽しい嬉しいに起因するパッションも上乗せされています。結果、作品の完成度を上げてきているのも嬉しいところです。
    (一例を示せばジャージ越しに隠し切れない存在感を放つ巨乳など。隠すからこそイイってヤツでしょう)

    なのでこのレビューでも小難しいあらすじの紹介は抜きにします。
    表紙に入る主役ペアの紹介のついでに、つらっと書いていくことにしますがお了承ください。

    かわい子ぶりっ子であざといキャラを作っているけど、後輩イジリに余念がなく裏表が激しい、ツインテロリぺたーんな「西波山」先輩(表紙:右)。
    平凡平穏思考の凡人に見せかけて、先輩のノリに打ち負かされまいと毒舌で辛辣な対応に終始する、地味系転じてダイナミック巨乳の男装系後輩こと「久納はじめ」くん(表紙:左)。

    物語としては以上二名の丁々発止なやり取りを軸に学生模様が展開していく、てなものです。
    ついでに冒頭に話を戻すと、先輩後輩なこの凸凹コンビは共通して元男子で現女の子だったりします。
    読者にはさっそく第一話から開示されるのですが、双方にとって周囲をひっくるめた認識(周知されているか否かなど)には差異があるようで……。そこを足掛かりにしながら物語は進んでいくようですよ。

    あと、一応補足しておくと久納くんの先輩への対応はガチで辛辣なんですが、あくまで西波山先輩の調子乗りのおちゃらけで吸収できる範囲内だったりします。よってハイテンションでコミカルな掛け合いになる、と。
    この遠慮なく、不躾で、だけど気心の知れあった対応が成立し合うのはあくまでこのふたりの間だからこそ――ということをごくごく自然に読者に飲み込ませるような作りになっているのが匠の技というものですね。

    繰り返すようですがこのふたり、ケンカしながら仲がいいを地で行くことを読者諸氏に向けてわかりきらせる悟らせるように話が組まれています。そのため説明がいらないのですよ。
    かと思いきや、わかりにくい会話の意図に関しては直後、補足説明を入れてくれたりもするんですけどね。
    別にわかりにくい漫画というわけではなく、そういった読みやすさには配慮もしてくれるようです。

    打って変わって、超ロングパスな会話の応酬が気づけた読者を楽しませたりしてくれます。
    (この回はなかなかに実験的でいい感じでした。)
    または単ににぎやかとは限らず、登下校風景に象徴されるしっとりとした無言の瞬間を切り取ったりできちんと青春の一ページを演出することから逃げなかったりします。

    総じて話の振り幅を広く取りながら、きっちり本筋を進めているので飽きさせませんね、
    振り幅ついでに言うと、脇を固めるサブキャラ陣についても触れますか。一巻でははじめの姉「れい」など多数が人となりを示すように顔見せを行っています。それも一話の時点でその多くがさらっとですが、端的に。
    この辺、習作とは一味違って世界を広げてくるんだよって作者から明示されたようでおおっとなりました。

    ついでに言っておくと、ここ第一巻ではれいお姉ちゃんが弟(妹?)のはじめくんのサポート役として活躍してくれたりもします。今後はその辺も含めた人間模様についても期待できそうです。

    以上。
    この漫画は丁丁発止の軽快で楽しいやり取りを基本とします。
    付随してコマを挟みページをまたいで、いろんな顔や表情や画風を立ち代わり入れ替わり見せてくれてます。
    なーらーばー、その中に恋する女の子の顔があっても、なんらおかしくはないということですね?

    読者諸氏は一巻にして表紙を飾る主役コンビがお互い素直になれないんだということ。
    そして早くも、元男子今女子同士の両片思いに発展していく過程を目撃してしまうと思います。
    第二話にして「デート回」という出し惜しみ抜きで距離を詰めてくる話の組み方もニクいところ。

    なのになかなかくっつかない。
    その辺のもどかしさすら、いとおしくなっていく。まさにラブコメの王道だと思います。
    ならばきっと読み終えた後は二巻の到来が待ち遠しくなるでしょう。

    それと〆に向かう前にひとつ、はじめくんについて語っておきたい。
    それは一話時点で男子時代とページをふんだんに使って描写してから、夏休みを挟んで女の子になった姿を見開きで見せてくる演出が圧巻だったという点です。習作を知っていてなお、私は引き込まれましたから。

    大まかな顔の造形自体は変わっていなくても、ちゃんと前後で男女の違いを描き分けてくるのも見逃せない。
    というか、自然と脳裏に焼き付けてくる。何度言ったかわかりませんが、匠の技です、素敵です。
    そこから私は疾風怒濤の漫画の面白さに押し流されてしまった――、というのは上述の通りでしょうか。

    なお、本作は性転換する病気が実在してある程度世間一般に周知されている以外は現実に即した世界観です。
    にもかかわらず、周囲の反応も含めた主人公ふたりの掛け合いだけで世界を楽しい方向に塗り替えてしまったようです。まさしく表紙そのままから受け止められる夢のような現実体験だと言えるのかもしれませんね。

    と。結論として私はこの作品は売れないと、続かないと人類の損失に繋がりかねない漫画だと断言します。
    それはいち「TS(性転換)」ファンとしてはもちろんのこと、漫画好きとしても言えることです。
    大げさに言ってしまっていることは事実ですが、それだけ声高に叫ぶ価値はあるのだと判断しました。

    そんなわけでレビューをご覧になられている過去現在未来の読者諸氏に向けて、ものっそ即物的な言葉を贈るとして。まずは「買いましょう」、買った後で考えればいいんですから。きっと楽しいですよ。

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