エンバーミング・マジック2 青春を殺す魔法 (2) (MF文庫J)

  • KADOKAWA (2025年3月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784046846396

作品紹介・あらすじ

魔法使いという特別な立場の僕たち。しかし、それ以前に学生である。
目前に迫る学園祭。
なぜか、僕とナギさんは実行委員会として働くことになるが、爆破予告に委員長への告白の協力、炎上騒動や、軽音楽部のトラブル……とてんやわんやな状態だった。
どこか浮ついた、それだけでない、異様な学生たちの熱狂には危うさが付きまとい――。

そんな中、ミコさんから学校に潜む「魔法売り」を探し出してほしいという仕事の依頼を受ける。
それは特別な魔法を無秩序にばらまいているという。

……魔法はなくなるべきだというのに。

学生たちの熱と魔法が複雑に絡み合う、現代を生きる魔法使いたちのジュブナイルファンタジー第2弾!

感想・レビュー・書評

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  • 『エンバーミング・マジック2 青春を殺す魔法』は、青春と魔法という一見相反する要素を用いながら、「選択が取り返しのつかない結果を生む」という現実を、最後まで誠実に描こうとした意欲作だった。魔法は希望や救済ではなく、行使する者に倫理と責任を突きつける装置として機能し、登場人物たちはその重さに抗いきれないまま、未熟な判断を重ねていく。その姿は痛々しくもあり、同時に強いリアリティを伴って胸に迫る。

    本作が優れているのは、青春を美化することを拒み、むしろ「若さゆえに避けられない過ち」や「善意が裏目に出る瞬間」を丁寧に描き出している点にある。正解のない状況で選択を迫られ、その結果に押し潰されそうになりながらも前に進もうとする姿は、ファンタジーの枠を越えて、現実の人生とも重なって見える。読後に残るのは爽快感ではなく、思考と感情の余韻であり、それこそが本作の誠実さを物語っている。

    一方で、シリーズがこの巻で打ち切りとなったことは、やはり惜しまれる。物語としてさらに踏み込めたであろうテーマや、深まるはずだった人間関係を思うと、未完の印象が残るのは否めない。しかし同時に、商業的な都合とは別に、この作品が描こうとした核心――青春が必ずしも救いではなく、時に人を壊すものであるという視点――は、すでに十分な強度をもって提示されているとも感じる。

    完結に至らなかったからこそ、この物語は読者の中で思考を続ける余地を残した。打ち切りは残念だが、それによって作品の価値が損なわれたわけではない。むしろ、安易な結論に回収されなかったことで、「青春と魔法の危うさ」というテーマは、より鋭く記憶に刻まれる。未完でありながら、確かな爪痕を残す一作だった。

  • 現実に夢を見ないように、魔法にも夢がない、だからふたりで少し大人になろうと決めた。

    本作『エンバーミング・マジック』は残念ながら全二巻コース、これで中途打ち切りのおしまいです。
    ただし、物語としては一巻で描かれた「ボーイ・ミーツ・ガール」を引き継いで主人公とヒロインの双方が決意を共にするシーンで終わっていました。転機という意味では悪くありません。
    物語の最小単位ともいえる、一対一の関係性できっちりまとまっています。

    一巻で、主人公たちの過去を掘り下げ「原点(オリジン)」に迫る構成の後、二巻では何をするのかと思いきや? 
    学園の日常から半歩外れた非日常――「学園祭の狂騒」を爆破予告のカウントダウンの焦燥と共に追っていきます。

    まず言うと、単独エピソードとしての完成度は高かったです。
    喪失や選択によって胸を刻んでいく痛み、そしてそれを越えていく愛しさと言ったところでしょうか。
    意外性の高い構成かと言えばそうではないものの、明暗に代わって躁鬱の落差が効いていたのでこれはこれで好きです。

    その一方で、相変わらず敵の魅力は乏しい上、後に尾を引いたまま完結に持っていった消化不良感はいただけません。
    そこは明確な減点として挙げておきます。
    ただ、作品を貫く退廃美や青春特有の捨て鉢な感情を鑑みると、雰囲気に沿っていました。むしろ敵に感情移入させたり、悪の魅力を発揮させる方向でキャラクターを立てるとテーマがブレるという判断もあったのかもしれません。

    また、今回焦点が当たる三名の個別エピソードによる加点が大きく入るので個人的には好きの方が上回ります。
    思えば、口絵に好きなもの/嫌いなもののプロフィール込みで三名のイラストが載っていたこと自体が盛大な目くらましだったんでしょうね。ミステリーと思っていたら、何の衒いもなかったのが逆に虚を突かれるポイントでした。

    これはもう答えを言ってしまっているようなものですが、ネタバレを恐れずに言ってしまってもいいでしょう。
    だってきっと、この物語はミステリーではないのですから。
    デザインは元より、挿絵すらないアイツのことを取るに足らないと思っていたのは間違いでした。鼻で笑いたい輩は、笑い飛ばせないくらいに不愉快でした。軽快なエンターテインメントを期待して読むのはやめておけばよかったのです。

    ついでに、口絵からして一巻の核心部分のネタバレが入るので二巻だけ読むのはおススメしません。
    いや、全二巻の小説で二巻から読みはじめる人はいないだろうといわれたらそうなんですけどね。
    当たり前ですけど、一巻の出来事を前提として物語は進んでいきますから。

    では手短に、結論からいきますか。
    ミニマムな世界の中での等身大の少年の痛みの記録としては最高峰だと感じました。
    アップテンポ激しい青春空間「文化祭」から生まれる汗と涙は健全かと思いきや、派生して生まれる躁の空気は不健全で、そこが胸に刺さります。
    その空間を裏方から主導する委員長「勝道カツヒサ」は、何が何でも文化祭を中止させまいという不自然なまでの決意から、強力な指導力を発揮します。成功のために不祥事すら握りつぶす彼の真意は、実際に読んで確かめてください。

    ……最悪に一歩届かなかった結末はこの際救いなのでしょうが、居心地の悪さが残ってしまったのは確かでした。
    カタストロフが生む破滅の昏さを描くにはシリーズものの二巻というタイミングはいささか早すぎます。ギリギリ阻止されたのは当然かもしれませんが、結果的には主人公独りが心の痛みを引き受ける形になりました。彼も損な性分です。

    とは言え、出し物の名を追っていくだけで興味が惹かれるセンスの良さに胸弾んだことあり、私はこの文化祭空間のことが好きでしたよ。水面下で進行していく不穏な計画が気にならないくらいに、青春してました。
    脇を固めるサブヒロイン「初鐘ノベル」&「月山がる」も、アッパー系とダウナー系でそれぞれ違った方向から作品を盛り上げ、微笑みをもたらします。合わせて、ここぞというタイミングでヒロインの本分を果たしてくれました。

    私個人の感性に訴えかける、キャラ立ちもネーミングセンスも申し分なし! です。

    ただ、それでも、やはりというか、このライトノベルは尖った作風だったのでしょうね。
    それと同時に、好きなものに対する熱情はヒロインや委員長の造形から、ひしひしと感じられましたけれど。

    虚像であろうとも、文化祭という、この一時でなければ手に入らない希望があると思い、願い、あがくというメッセージは確かに輝きました。その言葉を唱えた当人の行く先は無惨でも、それ自体は誰にも否定させやしないようです。
    それは同時に、切り捨てるでしかないモノに対して引き出される冷徹さも光るのかな、と思ったりもしました。

    そして、この巻では日常パートを下支えするであろう一般人クラスメート(前述の)ふたりと、当座追うことになって目先の問題を撒き散らす敵が提示されました。
    それらの登場により、全体のプロットを踏まえればシリーズ二巻目の役割はしっかり果たしています。
    本当に急遽続刊が出なくなったんだなと思えて、大変に無念でした。

    以上。
    敵の魅力のなさは冒頭でも前巻のレビューでも述べた通りです。
    主人公の「斬桐シズキ」は自責の念が強めで、早くも自身の限界を悟れている少年ですが、それは中途半端に大人になれているということでもあります。少年の熱か大人の冷徹さでいうなら、後者の素質ありといったところでしょうか。

    そんな彼も今回は、単純戦闘はともかくとして、敵との舌戦に負けたことで必要以上の敗北感が刻まれてしまいます。
    現時点で提示されてる敵は半端者って感じなので、大人の残酷な視点に立てばどうとでもなるものだと思いましたが。
    青春を越えて、「朱夏(人生の四季で二番目)」真っ只中の私に言わせれば雑魚ですね。塵(ゴミ)ですね。
    それだけにいらだちが募る。私なら速攻で片付けたいですが、葛藤を持続させるために逃がすのもわかる判断でした。

    シズキは大人というのがなんなのかはわからないにしても、それに近づいていく時期です。選択肢も大人の方から提示されます。彼の決断と苦悩を見守りたいですが、ここからの彼には葛藤を呑み込んで進んでいけそうな感触を抱けます。
    彼が覚悟を固めてしまえば、こうした少年と大人の間で宙ぶらりんな時期の中途半端な時期の魅力は遠ざかってしまうのかもしれません。他方では志半ばで倒れてもおかしくないくらいに、物語を支配する諦念は強いのですが。

    よくよく考えなくても、作中の魔法はロクでもないと魔法社会の構成員それぞれが断言しているシロモノです。
    ただし、そのカウンターパートとして現状の打破を掲げる敵も、読者を魅了する哲学を披露してくれたわけでもない。
    今のままでは駄目だから敵の主張も部分的に容れての第三の道を探すのが王道なのでしょうが、この作品の場合はそういう現実的な解決法を探るでもありません。現状維持の道のりに安住しそうなのが欠点であり、魅力です。

    いや、二巻時点で先行きがわからない時点で何を言っているんだという話ですが、終わってしまった以上は仕方がない。
    ここから作中の魔法世界と本格的に向き合っていく工程は必須になるとして、作者氏の描きたいもの、そして世界観の解像度がぼやけてしまわない意味でもここで終わっておく選択肢もありだったのでしょう。
    漠然とした輪郭の世界観だからこそ紡げる黄昏時の物語はあるのですから。

    美点と欠点が露骨に隣り合う中、この先は欠点が目立ち出す。
    なら打ち切りの感触が強くても傷口の痛みが愛おしい文化祭の余韻を糧に、パートナーと寄り添って終わればそれでいい。漠然としているけれど、「これはこれでなるようになるさ」という捨て鉢な期待に読者の心も委ねられますからね。

    最後に、本作でデビューとなりました「茶辛子」先生の今後の活躍を祈念いたします。
    イラストの「カラスロ」先生からもこの作品の空気に最大限合ったトワイライトでモノクロームな絵を提供いただけました。絵と文、双方の巡り合わせがないとここまでの出力に至らなかったと思うだけに、感慨深かったです。

    物語の基盤にあるのは魔法使いの斜陽の時代、タイトルを訳すなら魔法という名の遺体の保存処置、でしょうか?
    せめて見苦しくない最期を――、という誰かの願いに寄り添った名づけはまったく明るくなかったものの、軽快な会話と、それでも続いていくんだという諦念と裏返しの決意は堪能させてもらえました。

    私に言わせれば、劇中における魔法はそこまで重く考えなくても社会全体で分け合える負荷だと思いますが、それでも青少年の意気込みと、各々のスタンスでテキトーな大人をやれているおねーさんたちのことは好きでしたよ。
    それと、猫の魔法にはなかなかポテンシャルがありますし、猫耳ヒロインをごく自然な形で持ってくる設定には唸らされました。合う合わないが読者によってやや分かれる作品ですが、家入さんのかわいさだけは普遍だと信じたいですね。

  •  前回を彷彿とさせる暗く落ち着いた退廃的雰囲気、でも舞台が学校の文化祭ということで明るさが混じり合った、ダークな魔法のような不可思議な空気に仕上がってる。一元では断言できないなと思った矢先の伏線回収ゥ! ちょっと油断してたせいで完全に後ろから殴られた気分だったんですけどぉ! ちょっと作風もあってかショック度が相対的に大きかった。最近読んだ中でもトップレベルだったかもしれん。

     暗いだけではなくて魔法の使い方は見ててクスッとなったりと楽しかった。使い方もだけど詠唱もカッコいいんだよな。

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著者プロフィール

『ある化学者転生 記憶を駆使した錬成品は、規格外の良品です』(アルファポリス)、『いずれ水帝と呼ばれる少年 ~水魔法が最弱? お前たちはまだ本当の水魔法を知らない!~』(角川スニーカー文庫)などで活躍中のイラストレーター。

「2023年 『すべてはこの世界を楽しむために 元やりこみゲーマーは英雄の育て方を知り尽くしている 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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