大正忌憚魔女 4 (MFC キューンシリーズ)

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  • KADOKAWA (2025年5月27日発売)
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Amazon.co.jp ・マンガ (202ページ) / ISBN・EAN: 9784046848741

作品紹介・あらすじ

大正時代の日本で暮らす小さな魔女の物語。
大正時代の日本と西洋の魔術。 異なる文化を繋ぐのは 嫌われものの魔女でした。

感想・レビュー・書評

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  • たくさん人と向き合って、あなたと涙を分け合った小さな魔女のものがたり。

    急いで話を畳んだ感じはありました。
    けれど「魔女」という善良な異物に対する群衆の拒否反応と同時にわかりあうことの大切さを訴えかけました。
    普遍のテーマに現実と理想の両面から向き合ってくれた、大変に真摯な作品でした。

    タイトルにも入る「魔女」をほかに変えると、現実にいる我々も生涯向き合わねばならない根深い問題に化けます。
    よって、問題の解決は一朝一夕ではいかないと明言しているのもフェアでした。解決法がたやすくは見つからないからこそ、問いかけていく価値はあると信じます。むしろ目先のわかりやすい解法に飛びついてはいけないのでしょうね。

    そういったわけでいよいよ最終巻、『大正忌憚魔女』四巻のレビューをお送りしていきます。
    既刊三巻分のレビューは先に投稿させていただいておりますので、閲覧によってなにかの助けになられれば。
    ちなみにここから先の記述は一切合切がネタバレになっておりますので、ご注意ください。

    ネタバレ抜きでの感想も考えましたが、本作の魅力を伝える上で片手落ちになってしまうので、それこそ避けることにしました。予防線を張っておきます。
    既刊全巻を読み終えた方のみが境目を越えることを推奨します。決して強制はできませんが、まずは一読した上でご自身の奇異や偏見の目、先入観を自覚した上で本当の問題に向き合っていただきたいのです。
    心のレンズは、人それぞれでピントが違う。私が提示する一つの考えは、模範解答であってはならないと考えるのです。

    ----

    まず三巻の引きで「あなたは半血の魔女だからそもそも生まれてはいけない存在なんだよ」と恐ろしいことを主人公の「夜迷」に言ってのけた純血の魔女「メロリ」でしたが……。
    笑顔という名の圧倒的無表情が恐ろしかったメロリは、きっちり本音を話してくれました。

    もっと言うなら彼女には内心に押し込めたさらなる本音があったのです。
    翳る表情も見せます。むしろ今の彼女は笑顔より哀しみの方が馴染んでいました。
    あれだけ恐ろしく見えた彼女も等身大で悩む人でした。蓋を開けてみればとても魅力的な方だったと思います。

    種明かしをしましょう。
    この作品における魔女は圧倒的な力を持つわけでなく、魔力を持った血族同士で固まっている小集団のようです。
    例に漏れず普通の人間による「魔女狩り」の脅威に追われて、内側に閉じこもっている傾向にあるのですね。
    さすがに閉じこもってばかりでは自給できないのか、都市部に店を出したりで魔術を広めて役に立ち人間たちの偏見の目を除こうとしているようですが……、今なお心ない人間の襲撃によって犠牲は絶えないようです。

    でも、そんな魔女社会自体も人間と魔女の間に生まれた子を忌み嫌って迫害しているというのだから、闇が深いです。
    理由は魔力が半端なため普通の魔女の足を引っ張ることと、人間社会との軋轢の原因になったという負の歴史からです。
    夜迷を魔女との因果がない極東の地・日本に送り出した理由も、使い捨ての道具なら惜しくないという理由からでした。

    これだけ聞くと魔女も大概と思えますが、彼女たちの視点によれば魔女は一方的に人間から迫害されてきたとされます。
    でも、人間社会とかかわらなければ立ち行かないようですし、若い魔女は人とのかかわりに積極的です。
    事実、欧州でも都市に出店した魔女の尽力により人間たちから白眼視や差別は徐々にではあれ、薄れつつあるようです。

    ジレンマですね。
    絶望して人間たちとの関係を断ち切るのも、希望とかかわりを捨てない選択にも、どちらにも分があるとあるわけです。
    そんな中で夜迷は自分のことをこの上なく愛してくれた両親を魔女狩りに殺されて、引き取られた魔女社会でもロクな扱いをされず侮蔑の目を向けられました。夜迷は本来なら人間と魔女、どちらも恨んでもおかしくない境遇にあります。

    けれど、夜迷は誰かを憎むことをしませんでした。社会に受け入れられようと、同じ魔女たちの居場所を作ろうと、何の伝手もない異郷で十にも満たないのに奮闘してきたわけです。その軌跡のことは読者みんなが知っています。
    両親に魔女として人々の助けになろうと語った理想を、傷つき裏切られ続けても捨てようとはしなかったのです。

    最後まで読めば、メロリが夜迷に面と向かって嫌いといった理由もわかるでしょう。
    だって彼女自身も幼いころは人間とのかかわりを望んで、魔術で笑顔をもたらしたいと願うひとりだったからです。
    なまじ白眼視されて石をぶつけられてばかりなら、希望を捨ててもよかった。なのに魔女と歩み寄る善良な人間は確かにいた。だから笑顔という名の仮面をかぶって心を殺す。無機質な人として振る舞わざるを得ない。それが真相でした。

    父親を失った自分では貫徹できなかった理想を、もっと小さな子が希望を捨てずにやり通そうとしている。
    当初のメロリは夜迷は危なっかしいやり方で魔女の偏見を強化したのだろうと、侮りが先に来ていたのかもしれません。
    ですが、無意識のうちに夜迷に対して苛立ちを覚えるようになったのかもしれません。
    でも、彼女自身はどぎつい差別発言をしてみせてもある程度フェアなスタンスを取っています。それに、夜迷を責める発言も合理性に基づくものであって、ほかの魔女たちのように彼女を負の感情の投げ捨て場にすることもないようです。

    だから思いの丈をぶつけ合い、夜迷が東京で積み上げたものを知ったことでメロリは思いを改めることができました。
    表面上は嫌いといいながらも、夜迷の実績と努力を認めて協力関係を築けるようになっていきます。
    いざ初出店はふたりの共同というエピローグに至ることができたわけですね。

    さて、レビューも中盤に差し掛かりましたのでここいらで一呼吸、祈りの言葉を置いておきます。
    大正時代という名の、都市化がもたらす開明の時代。
    近いうちに迫り来る軍靴の足音、厳しい時代の狭間にある凪、どうしても暗い影は拭えない時代にあって。
    確かな理想を貫けた、厳しくもあたたかい物語でした。魔女と人間とその狭間の少女達いずれにも幸多からんことを。

    魔女と人間のアレコレは単純にどちらがいい悪いで断罪して終わりではなくて、根が深い問題なのですよね。
    確かに本作の魔女は儀式や調合で変わった現象は起こせますが、空を飛んだり悪魔を喚べるようなものではない。
    現実の魔女術に連想を得た、邪さからは遠いのに悪いイメージを抱かれてしまった特殊技能者集団、そこに尽きます。

    その程度なのに、近現代になっても迫害の手が向くのは人間の業といえます。
    それでいて、狭間にいる一番弱いものに両種族の矛先が向くのは救いようがありません。でも、日本は欧州の業をそのまま引き受けるわけではありませんでした。受けた迫害も恐れの目線、それとせいぜい水をぶっかけられたくらいです。

    魔女にほとんど馴染みがないからこそ、海外の間接的な実体のない偏見が移入しただけだったためか。
    渡日したメロリが辛辣に評した日本は、夜迷の積み重ねを見てしっかり受け入れてくれました。
    現時点では住んでいる地域住民という狭い範囲ですが、それでも確かな第一歩です。

    無二の友人となれた「麟」とその師である「影藤」先生の熱情と理性、双方に基づく援護があったので幸運といってしまえばそれまでですけどね。ただ、別にいいじゃないですか。現実ならもっと救いようがなさそうですから。
    作中では大正のある年とのみ記されている作中年代は、それが史実をなぞるなら麟が最後に叫んだ通りに激動を約束されています。日本においては、人間と魔女を問わずにとても寒い出来事ばかりが起こります。

    でもそれでも、希望を捨てずに立ち向かおうという決意は確かに胸に届きました。
    よって、ラストエピソードで麟の両親を説得する一幕が意外とあっさり終わったのも、これまでとこれからの展開を考えれば納得でした。きっと、ふたりならこれから日本全体を巻き込むような理不尽に抗えるのだから。
    ゆえに小説家になるという夢は認めるから、代わりに偏見を向けられる魔女との付き合いを見直せという父の言葉は覆されました。夜迷の積み重ねた実績とこれからの激変を臨む麟の、ふたりのがむしゃらな言葉と涙に折れる形で。

    以上。
    全四巻を振り返ってみて、実に見事な漫画だったと評します。
    表面上はおとぎ話のような、絵本のような物語で、優しく語り聞かせるかのようなナレーションは心に沁みる。
    一見無垢だからこそシンプルでストレートなメッセージ、人の業の方もさらっと胸に差し込むことができたわけです。

    まだまだ描けることはあったでしょうし、麟の両親の説得がやや駆け足に思えたことも事実です。
    ただ、惜しまれつつも、「希望と絶望」がせめぎ合う容赦ない現実の一端と、それを受け入れた上で今に繋がる未来に向けた決意をきちんと示せた。このことが、本作をこれから先の未来に向けた標としてくれたように思えるのです。

    上述した通りに魔女関連の事情は思った以上にシビアで救いがなかったのですが、それでも本作らしい救いと歩み寄りの余地は残しています。一歩一歩歩んでいく、ひたむきな心に絆されたくなるのです。
    時に、魔女と人間を巡る構図は集団同士の相互不理解だったり、集団内で劣ったものに矛先が向くありさまなどやるせない話です。冒頭で述べた通り魔女をあなたにとって身近な誰かに置き換えても成立する話なのでゾッとさせられます。

    私の口から具体的に何かとまで言いませんが、「魔女」は純粋な犠牲者であるとも理性的でもあるとも限りません。
    けれど現実の「人間」も純粋な加害者ではないとしても、作中で描かれたほどに理性的で良識的とは思えません。
    現実のままならない側面を大正という今より厳しい時代からあらわにしながらも、やわらかな希望で包み込めたこの漫画は、確かに理想を描けています。

    その上で、本作が打ち出したメッセージは簡潔明瞭でした。
    偏見だけで語らず、その人自身を見ろ。自分の手で調べて考えろ。
    不満は溜め込まず吐き出したうえで、解決策を考えろ。とにかく考えて、正面からその人の目を見ろ。
    正負どちらであれ、正面から見つめ合うこと、あえて口を出さずに見守ること。

    顔の見せない群衆の心を動かす上で、まずは一対一の関係性から始めようというありようは最後まで一貫しています。
    そして、その前に私/あなたの心に最も身近で向き合うことで夜迷と麟は互いの心を救い合いました。
    なんでもない、でも特別な時間と思い出を共有してこれたからこそ、二人の少女は現実を乗り越えてこれたのです。

    ……ええ、この物語で描かれたのはまぎれもなく理想論ですね。
    でも、理想も訴えかけないことにははじまらないと小さな魔女さんは教えてくれました。
    思いの丈さえ相互に吐き出しきれれば共に生きられる、歩み寄れると信じることにします。まずは一対一、隣人の目を見ること、差し伸べられた手を取ることから世界はより良い方向に変わっていくのかもしれません。

  • 最終巻。

    夜迷ちゃんが立ち直ったり、
    夜迷ちゃんがメロリさんと対峙したり、
    夜迷ちゃんが露店を出したり、
    夜迷ちゃんが麟ママに拒絶されたり、
    夜迷ちゃんが雅鳳家に突撃したり、
    夜迷ちゃんが麟パパを説得したり、
    夜迷ちゃんと麟さんが海岸デートしたり。

    メロリさんって、なんだかんだで夜迷ちゃんの手紙をちゃんと読んでたってことだからなぁ。
    根が真面目なんだよね。
    日本なんて霊媒師が国を治めてたんだから魔女くらいは受け入れるよね、普通。
    都会ほどいろんな人間がいるから魔女にも慣れやすいんじゃなかろうか。
    横浜は港町なのに・・・うん、東京の隣りってだけだからかな!

    影藤先生の「魔女は嫌いだけど、それはそれとして理不尽は許さん」ってスタンスはカッコいい。
    頼れる大人がいる物語ってのは安心感があって良いよ。
    『機動新世紀ガンダムX』とかね!

    メロリさんの「もう1度だけ希望を持ってみる」までの心境の変化がアッサリしすぎてて不穏だなぁと感じた。
    でも、あらすじ的に麟の両親との問題が控えてるし、残りページ数的にメロリさん関係でもう一波乱やってる余裕はなさそうだとも思った。
    もしかすると麟の両親がメロリさんに対してやらかすのかも?なんて思ったりもしたけど、麟パパママも意外とアッサリと認めてくれて杞憂ではあったのだけど、少し拍子抜けでもあった。
    ちょっと勿体ない読み方をしてしまった。

    海岸弁当シーンの「うぉう うぉう うぉう うぉう」で吹き出しそうになったよ。

    大正時代は15年しかないけど、最終話も大正時代なのでホントに数年で店を持ったことになる。
    夜迷ちゃんが店を持つためにメロリさんがだいぶ頑張ってくれたんだろうな。

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著者プロフィール

漫画家。著作に『カラクリショウジョ』など。

「2019年 『頽廃の花売り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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