フリードリヒへの旅 (角川叢書 43)

  • 角川学芸出版 (2009年9月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784047021433

作品紹介・あらすじ

風景を素材とした内省的で静謐な崇高の美を謳うドイツ・ロマン主義の画家フリードリヒ。その作品を訪ね歩き、モチーフとなった現場に立ち、重なり合う共感をベースとして、画家の足跡と芸術性を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • ≪樫の森の修道院≫ 

    本書は、この一枚の絵を画集で見て魅了され、この絵を描いたカスパー・ダーヴィト・フリードリヒの足跡を追う旅を重ねた著者の渾身の一冊。

    ≪樫の森の修道院≫は、廃墟となった修道院へ棺を運ぶ葬送の列を描いている。

    この絵を見た著者は、こういう絵があることを知らなかったことに焦燥感を抱いたと記している。

    それほどまでに、この一枚の絵は著者を魅了させたのだ。

    著者の小笠原さんは、竹久夢二美術館などに勤務されていた学芸員の方である。夢二関連の著作も出されており、日本美術を専門とされている。
    その小笠原さんが、ドイツロマン主義の巨匠のフリードリヒの足跡を追うために何度も渡欧し本を上梓されたその生き方に憧憬を感じる。

    著者は画集で≪樫の森の修道院≫を発見した年に、早速、渡独をし、実物を見ている。そのときの旅が著者がヨーロッパの土を踏んだのがはじめただと書いてらっしゃるので余程突き動かされるものがあったのだろう。画家の故郷を訪れ、廃墟の修道院にも立つ。その後も何度も渡欧し、著者は自分を魅了した画家の軌跡を追う。

    ≪月を眺める二人の男≫ この絵は2005年に来日している。 この絵はドレスデン絵画館が所有するフリードリヒの作品のなかで最も有名な作品であり、政治的意味合いも内包する絵である。

    この絵をひとたび目の前で見ると、怪しく不思議な魅力に吸い寄せられてしまう。

    二人の男性はフリードリヒ自身と愛弟子だといわれている。彼らが着ている服は作品を読み解く上でのキーワードのひとつとなる。

    フリードリヒの作品というのは、対象を背後から描き、絵を見るものは画家と同じように何かを見る。この絵においては月だ。私たちは二人の男 フリードリヒらと共に月を見るのだ。

    フリードリヒの生い立ちや人生は本書に詳しいので、著者が旅を重ねつつフリードリヒの世界観に触れていくさまを読書によって堪能するとよい。

    ≪窓辺の女≫も2005年に来日している。この絵もとても美しい絵である。描かれている女性は画家の妻。

    この絵を真似てサルバドール・ダリは同じ構図の絵を描いた。

    フリードリヒの絵を見ているとフェルメールに影響を受けているといわれるハンマースホイの絵も思い出す。醸し出す静謐と描き方に類似性を感じる。

    ベックリンの≪死の島≫は、廃墟の修道院ではなく、海に浮かぶ小島に棺を運ぶ舟が描かれ、ドイツではとても人気があった。ベックリンの≪樅の木のある高原≫や≪聖なる森≫もフリードリヒの≪樫の森の修道院≫に似た静謐を感じる。

  • [ 内容 ]
    風景を素材とした内省的で静謐な崇高の美を謳う、ドイツ・ロマン主義の画家フリードリヒの絵画。
    独特の宗教観と世界観が表出されるこれらの作品群を文字どおり訪ね歩き、画家の足跡を追いつつ、モチーフとなった現場に立ち、鑑賞者としての感動と重なり合う共感をもとにその崇高の美に寄り添い、みずからの感性をよりどころとして、その高い芸術性を言葉を尽くして描き出す。
    一九世紀前半の激動の時代を生きたフリードリヒの絵画にひたすら向き合うことで、画家の生涯と絵画の深い精神性に迫る、渾身の美術評論。

    [ 目次 ]
    1 「二〇世紀ドイツにおける芸術の一世紀」
    2 ベルリンから北へ
    3 カスパー・ダーフィット・フリードリヒ
    4 悲劇の誕生
    5 エルベ河渓谷
    6 ドイツ・ロマン主義
    7 島の断崖
    8 氷の海
    9 黄昏
    10 冬をよぎる人

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著者プロフィール

1949年東京都生まれ。東洋大学文学部卒。京都で日本画、現代陶芸を扱う画廊に勤務。東京に移転し、弥生美術館、竹久夢二美術館にて学芸員、及び成蹊大学非常勤講師を務める。退職後、フリー・キュレター、美術エッセイストとしても活躍。

「2020年 『ケチじょうずは捨てじょうず』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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