天皇たちの孤独 玉座から見た王朝時代 (角川選書 404)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034044

作品紹介・あらすじ

『枕草子』に描き出された華麗な王朝世界。その中心にあるべき天皇が、実際にはないがしろにされていた。摂政・関白の専横、それに追従する廷臣たち。孤立する天皇たちの深い嘆きを聞く者はいたのか。当時の廷臣たちの日記によって、華麗なイメージとは裏腹な王朝時代の真実を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 天皇が本当に孤独だった。
    意外と権力もない。

  • 角田文衛に比べると、格段に読み易い、繁田信一の文章。ま、いつもこの人のネタは「小右記」ですが。どれだけ藤原実資が好きなの(笑)
    円融帝の前に一条帝が配置されていることで、時代が前後してちょっと混乱。時系列の方がとっつき易いです。

    摂関時代、天下の天皇家と言えども、結局は兼家やら道長やらに振り回される。政治力とは地位名声とは別物、かなり非情。ロクに物心もつかないうちに、即位だ元服だ入内だ譲位だ…って、大人の都合で。実の娘だって駒の如くよ〜!
    しかも、道隆vs詮子とか、親類縁者のごく狭い世界の人間関係の中だけに容赦ないし。


    円融帝って、母の安子が末妹を産死した時(964年)には5歳。長兄の冷泉が14歳で、次兄の為平が12歳。安子の同母兄弟は沢山いたのに、面倒を見てくれたのは登子と兼通だったのね(村上帝が登子を入内させたのは息子達の為ではないけどw。選子内親王は兼通/昭子女王の堀川殿で媓子と育ったらしい)。伊尹も兼家も知らん振りだったのか?祖父母(師輔と藤原盛子)も居ないしな。
    父方(村上帝)の同母兄弟…ったって、保明親王も康子内親王も朱雀天皇も、更に祖父母(醍醐帝と藤原穏子)も既に鬼籍。
    村上帝も3年後に崩御(967年)。長兄は即位、自分は9歳で立太子。次兄は元服時(965年)に源高明んちに婿入り。

  • 非主流派名門の不遇感の発露である「小右記」の記述を無批判に使用し、日記内では正論を吐いても事実においては権力者にひよることも(処世上当然)あったことに言及もしないし、大鏡や栄花物語などの「物語」を古記録と同等に扱っており、現代の歴史書としては、いかがなものか(一般向け読物だから尚更!)。
    兼家・道長というド主流(つまり実資の憤懣の主対象)の名に、地の文で枕詞のごとく「奸臣」をつけるのも、マトモな歴史家の態度とは思えない。そもそも平安時代の天皇制は、絶対君主制ではない。帝は独裁者ではない。まるっきり天皇の意を汲まないからといって大臣が一方的に悪いことにはならないだろう。
    また、東三条院についての記述で、「詮子のような皇后になれなかった妃が、いきなり皇太后になるなどというのは、王朝時代において、全く先例のないことであった。」(p.87)などとしているが、むしろ王朝時代は、皇后でなかった妃が、子が天皇となったことによって皇太后となった例が多くみられるのが事実である(文徳母から醍醐母の間など軒並み、つまり詮子以前に多く先例がある)。事実をねじまげてまで兼家流を悪と決めつける姿勢に鼻白まざるをえない。

  • 平安時代中期、枕草子で有名な一条天皇の前後の天皇にまつわる話。所々に系図がさしこまれ分かりやすいのですが、しかし藤原氏全盛の時代、天皇との血縁関係のややこしさに皇統っていったいなんだ?と考えさせられました。その昔の兄弟姉妹間の婚姻はないまでも、結構近親で繋がっていますね。
    皇族の方が短命だったり、性格に難ありなのもこれが原因では?と思ってしまいます。
    一条天皇母も寂しい環境になっていたのが意外でした。

  • 平安時代中期の円融、花山、一条天皇たちの孤独と苦悩。アクの強い外戚たちに翻弄される彼らの姿をわかりやすく描き出す。政治も詰まる所、相性や好き嫌いか。

  • 誰かと思えば、「殴り合う貴族たち」の著者ではないか。
    こういった再会は、とても嬉しい。

    「摂関政治」なる用語は、どなたも学生時代に聞き覚えがあるだろう。実権を貴族たちに握られたその時代、天皇や皇太子・上皇・妃などといった皇族がいかに軽く扱われていたか、という話である。
    本書では章ごとに1人の人物にスポットを当て、かれをめぐる当時の、本人にとってはおおむね愉快でなかっただろうエピソードを取り上げていく。わかりやすく、読みやすく、他章で主役になった人物たちとの関係も自然と頭に入ってくる。
    藤原道長に執拗に「奸臣」と枕詞をつけるなどやや叙述が主観的なのと(そこは読者に判断させてこそだろう)、相変わらず全巻を網羅する大系図が1枚なりと欲しかったのだけが玉に瑕。

    2012/1/13〜1/14読了

  • [ 内容 ]
    『枕草子』に描き出された華麗な王朝世界。
    その中心にあるべき天皇が、実際にはないがしろにされていた。
    摂政・関白の専横、それに追従する廷臣たち。
    孤立する天皇たちの深い嘆きを聞く者はいたのか。
    当時の廷臣たちの日記によって、華麗なイメージとは裏腹な王朝時代の真実を明らかにする。

    [ 目次 ]
    序章 ひとりぼっちの天皇たち
    第1章 一条天皇の憂鬱
    第2章 円融法皇の嫌悪
    第3章 東三条院藤原詮子の偏愛
    第4章 花山法皇の不満
    第5章 上東門院藤原彰子の困惑
    第6章 三条天皇の警戒
    終章 裏切られる天皇たち

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 〈所在:図書館(067200710994)〉

  • いつの時代も、トップとは孤独なものです。
    自民党の麻生太郎さんも言ってたけど、
    孤独に耐えることのできるもしくは楽しめる人でないとトップになんてなれません。
    その組織の規模に関係なく。
    そうゆう意味で、安部さんは弱かったと感じた。
    そうゆう意味で、小泉さんは強かったんじゃないかな?

  • 2007/09入手。
    この本もタネ本はこの著者のご専門である「小右記」。反主流派貴族であった藤原実資の目から見た「権力者(藤原摂関家)に弄ばれる歴代天皇とその一族」と言ったところ。
    けどこの両者、実は「祖父と孫」「叔父と甥」だったりするわけで。
    古代の大王(おおきみ)家から連綿と続く近親結婚が極まるのがこの時期。(何しろ「兄弟がそれぞれ母の妹達と結婚」ですから。そりゃ子孫も絶えるわ)
    でもここまでではないにしても、これに近い状態はつい50年前まで千年間続いてたわけですからね。

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著者プロフィール

1997年東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。2003年神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了、博士(歴史民俗資料学)。神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、同大学外国語学部非常勤講師。著書に『陰陽師』(中央公論社)、『平安貴族と陰陽師』『呪いの都 平安京』(以上、吉川弘文館)、『殴り合う貴族たち』『王朝貴族の悪だくみ』(以上、柏書房)、『天皇たちの孤独』(角川書店)などがある。

「2008年 『王朝貴族のおまじない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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