光源氏が愛した王朝ブランド品 (角川選書 420)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
4.33
  • (7)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 52
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034204

作品紹介・あらすじ

『源氏物語』などの王朝物語には唐物といわれる舶来ブランド品が数多く登場する。陶磁器・ガラス・布・香料など、王朝生活を彩る美しい舶載品は高価で入手しにくく、入手できるかどうかは権力とのかかわりによって大きく左右された。物語の登場人物がどんなブランド品を使うか、誰にどういうブランド品を贈るか、地位や性格によって効果的に書き分けられた。ブランド品をキーワードに王朝物語世界を読み解く。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 著者の『源氏物語と東アジア世界』がとても刺激的で面白かったので、こちらも読んでみた。

    「王朝ブランド品」とは、沈香、瑠璃壺、秘色青磁器、唐綾、貂皮などの「唐物」とよばれる舶来品のことだ。
    「唐物」は『源氏物語』だけではなく、『竹取物語』『うつほ物語』『落窪物語』などの作り物語、随筆の『枕草子』、日記文学の『紫式部日記』など、王朝文学を代表する作品にも度々登場する。
    本書のタイトルは「光源氏が愛した」王朝ブランド品とはなってはいるが、『源氏物語』だけにはとどまらず、上記の作品、更には富と権威の象徴として「唐物」を所有していた平安朝の天皇や貴族たちについても触れながら、人々の憧憬を集めた舶来ブランド品を紹介している。

    と、なるとここで一つ疑問が湧いてくる方もおられるかもしれない。そもそも『源氏物語』や『枕草子』などの王朝文学は国風文化のなかで成立した作品であり、その時代に舶来品などあまりなかったのではないか?
    この辺りの疑問については本書でも説明はされているが、『源氏物語と東アジア世界』の方により一層詳しく記されている。とりあえずひと言で言うならば、国風文化とは鎖国のような時代の文化ではないということ。

    本書は「唐物」の意義をわかりやすく説明している。しかし私は本書で取り上げられた『源氏物語』に登場する「唐物」については『源氏物語と東アジア世界』で詳しく解説されていたため少々物足りなさを感じてしまったのも事実。本書をとっかかりにして、少しでも『源氏物語』の「唐物」について気になった方には『源氏物語と東アジア世界』はとても面白く読めると思う。

    そうは言いながらも『源氏物語』以外の作品や、当時、実在した人物と「唐物」、平安朝の交易などの説明では初めて知ることも多く楽しみながら読んだ。
    たとえば唐代の煉香から発達した薫物が平安朝のどのような場面で使われていたのか。
    ここでは村上朝で催され内裏歌合(天徳4年)や『うつほ物語』の犬宮の七日の産養の前日の場面などを例にあげている。そのなかで「竜脳香」という香が出てくるのだが、「竜脳香」とは、かの楊貴妃が匂い袋に入れて愛用したという伝説のあるもので、その伝説にまた好奇心がくすぐられる。
    『竹取物語』では、かぐや姫に求婚し「火鼠の皮衣」を求められた阿部御主人が唐商人の王けいに頼んでそれを手に入れようとするのだが、今でいえば輸入業者に頼むか、海外のブランドに何百万もかけて特注するようなものかもしれないという著者の言葉には、なるほどなと思いつつ思わずくすりと笑ってしまった。

    これからは『源氏物語』だけではなく、本書で紹介された作品をはじめとする王朝文学を読むときには、「唐物」についても注目していきたいと思う。

  • 『光源氏が愛した王朝ブランド品』河添房江(角川選書420) - 書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG(2008-5-22)
    https://booklog.kinokuniya.co.jp/booklog/imaiakira/archives/2008/05/420.html

    「光源氏が愛した王朝ブランド品」 河添 房江[角川選書] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200706000111/

  • 現況;
    気づき;
     導入部分はちょっとミーハーっぽいのですが、これは一般層にアピールするために、意図的にされたようです。

     写真も多く、なかなか興味深い内容でした。「秘色」とか、いろいろ文章で説明されるより、本物を見たほうがはやいですから。

     個人的には「紙」の歴史が興味深かったです。清少納言は「陸奥紙」をすっきりきっぱりしているとこのんだけど、紫式部はこれを無風流なものとみなし、男をやんわり断るために使ったりするなど。

     たぶん直接会ったことはなかったのだと思うけれど、性格がまったく合わない人たちだったようです(笑)。

     それから、「ガラス」にも興味をもっていて、由水常雄氏の『ローマ文化王国‐新羅』も読んでました。この時代、中国のガラスとイスラムガラスが来朝していたこと、両者のガラス制作上の技法の違いなど参考になりました。

    追記;
     清少納言の言ってる、「陸奥紙に太い筆で、筆の太さを出さないように書いたものが素晴らしい」というのは
    藤原行成の手紙なのではないでしょうか?! 行成が書いた書なら、紙はどうでも素晴らしいに決まっているような。それとも行成くらいになると、陸奥紙に適した書き方をしたかもしれないですけど。

    TODO
    ○叔母に贈る。→済

  • 平安時代におけるブランド品……唐物……が、当時どのようなイメージを持っていたのかを「源氏物語」扱われ方から探った一冊。平安時代と一括りにしてしまいがちだが、その中でも流行廃りがあるというのが面白い。

  • [ 内容 ]
    『源氏物語』などの王朝物語には唐物といわれる舶来ブランド品が数多く登場する。
    陶磁器・ガラス・布・香料など、王朝生活を彩る美しい舶載品は高価で入手しにくく、入手できるかどうかは権力とのかかわりによって大きく左右された。
    物語の登場人物がどんなブランド品を使うか、誰にどういうブランド品を贈るか、地位や性格によって効果的に書き分けられた。
    ブランド品をキーワードに王朝物語世界を読み解く。

    [ 目次 ]
    唐物は王朝生活の必需品
    平安の交易ルートその一―渤海国交易
    平安の毛皮ブーム―黒貂の皮衣
    まぼろしの陶磁器―秘色青磁
    平安の交易ルートその二―大宰府交易
    紫式部の情報源
    美しきガラス器
    平安のフレグランスその一―『うつほ物語』と『枕草子』
    平安のフレグランスその二―『源氏物語』の世界
    舶来の紙の使いみち
    舶来ブランドのコスチュームその一―男性の衣装
    舶来ブランドのコスチュームその二―女性の衣服
    平安のインテリア
    舶来ペットの功罪

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 内容紹介:「源氏物語」などの王朝物語には唐物といわれる舶来ブランド品が数多く登場し、登場人物がどんな品を使うか,誰にどういう品を贈るか、地位や性格によって効果的に書き分けられた。ブランド品から王朝物語世界を読み解く。(TRC MARCより)

    資料番号:011035623
    請求記号:913.3/ ム
    資料区分:一般書

  • 2024年1-2月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00242799

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

昭和28年生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。東京学芸大学教授、東京大学大学院客員教授、一橋大学大学院連携教授。著書に、『源氏物語表現史』(平10 翰林書房)、『性と文化の源氏物語』(平10 筑摩書房)、『源氏物語時空論』(平17 東京大学出版会)、『源氏物語と東アジア世界』(平19 NHKブックス)など。

「2012年 『久保田淳座談集 暁の明星 歌の流れ、歌のひろがり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

河添房江の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×