空海の企て 密教儀礼と国のかたち (角川選書 437)
- KADOKAWA/角川学芸出版 (2008年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047034372
作品紹介・あらすじ
平安時代の8世紀、護持僧として天皇の身体を守り、さらには国家鎮護の加持祈祷へと密教儀礼を国家規模に推し進めた空海。密教の即身成仏の思想を国家との「入我我入」というかたちで密教と国家を結びつけ、宮内大内裏に密教道場の真言院を設立して天皇と国家の鎮護を祈祷した。国の中枢に注入したこれらの密教コードによって、空海がいかにして宮内祭祀と国家統治のシステムをつくりあげたか。壮大なスケールで構想されたその企てを描く。
感想・レビュー・書評
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現況;
空海については時々本を読んでみるのですが、そんな程度ではこの巨人の全貌をとらえることはできないのです。
いつか本腰をいれて取り組む機会があったらいいなと思っています。
気づき;
この本も例によって難解。現代の象徴天皇制との問題もからめて天皇制と空海のかんがえた密教システムが語られる。
政治的にもなかなかしたたかな人物であったことがうかがえる。
TODO;
☆「身密」とは「印」ムドラーのことをいう。ムドラーは、もともとインド舞踊における身体運動の一環をなすものだった。古代の代表的な演劇論であるバラタ著『ナーティア・シャーストラ』などによると、この手ぶり言語には31種の方手所作と27種の料手所作が区別され、それぞれの所作には固有の意味と言葉が記号化されている。
☆←先行する天皇の人間的不安への慰撫としての仏教(玄ぼう道鏡など)
・空海「密教コード」と「神道コード」の二元支配による天皇制の再構成
←それに対するアンチテーゼとしての宗教改革
親鸞、道元、日蓮など
☆多田富雄の新作能「一石上人」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
空海を特集したNHKのDVDを借りた。24歳の時に書いた「三教指帰」の実物を書家が検証するという。儒教、道教、仏教の優劣を論じ、我が国で初めて書かれた比較思想論だという。素晴らしい字だった。
以下、山折氏の著書を読んでのメモ書き。
日本人・・・古代的な霊肉二元論と中世に優勢となる心身一元論があざなえる縄のようにわれわれの死生観を彩ってきた。
坂口安吾の小説「道鏡」・・・孝謙女帝における愛欲と魂の分離というテーマ。
密教コードと神道コードの二元体制・・・空海こそ、このような国のかたちを構想した最初の人間。平安時代の国政を支えてきた根幹。