- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047034419
作品紹介・あらすじ
鹿鳴館で踊った母をもつセレブの令嬢たち。明治後期に社交界デビューしたお嬢さまが、自分の才能や個性を生かせる道は限られていた。身分が高いほど束縛され、結婚相手も家格の釣り合いで決められてしまう。そのお嬢さまが頼れる武器は「美貌」。社会の矛盾に悩み、「良妻賢母」という理想に縛られながら、美を求めてお嬢さまたちは涙ぐましい努力をする。女性誌や新聞記事から明治のお嬢さまの本当の姿を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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明治時代の家族・皇族といった上流階級に属する女性について書かれた一冊。当時の上流階級の女性がどのような価値観の中で生き、どのような生活を送っていたのかを知ることができる。また、上流階級の女性についてのみならず、それを説明するにあたって当時の世情なども書かれているので、大変勉強になる。当時世間での、女性や結婚、家庭に対する価値観の違いを、読みながら現代と比較するのも面白い。また、世間の美人像の変化や女性の容姿の変化もこのあたりの時代なので、苦心し様々に工夫している様を想像するのも面白い。
本書には、当時の写真も数多く載っているので目でも楽しめる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
出身高校も、短大も明治時代からの女学校からの流れを汲んでいるので興味深く読みました。
成金の男性は富が有れば美貌の令嬢と結婚出来る。男性には妾が許され妻は籠の鳥。女性を物視する時代に生まれなくて良かったと思いました。 -
私は明治時代に生まれなくて、本当に良かった。
自由な恋愛も許されず、旦那は妾を持ったり娼妓と遊び歩いても当然なのに、女の不倫は姦通罪で逮捕されるとか、ありえない程の男尊女卑。
でも、女が人として扱われるようになったのなんて、人類の歴史の中でもほんの最近のこと。。。まだ女が人間扱いされていない地域だってたくさんある。
そんな世界では、到底生きていける気はしないな。
この本で、一番驚いたのが、妾を蓄える、という意味の「畜妾」という言葉・・・。ちくしょう、と読むそうです。
同じ家の中に、妻と妾が同居!とか、女中として雇っておいて主人が手を出す(拒む権利ないんだよね・・・?)とか、お給料を払って妾にする、しかも10代の女の子を!とか、そんな一方的なハーレムを堂々と作れたんだから、現代の男性たちがぶつぶつ文句を言うわけだ。 -
明治後期の上流階級の若い女性、具体的には1880-1890年代生まれで明治末頃までに結婚した女性の生活を、新聞や雑誌から読み解いた本。
彼女たちの生活では、結婚が最重要な目標だった。冒頭で紹介される、結婚を「あがり」にした双六が象徴的。10代後半は適齢期、学校は嫁選びの場。結婚で中退することが珍しくないため「入学時の人数の何分の一しか、卒業生はいなかったのである(p50)」。
女性たちは、より良い縁に選ばれるべく美容に工夫を凝らし、着物やアクセサリーを買う(第7章)。色白でほっそりした病的な美が理想とされた(p41)。では美人が一番得かといえば、一方では美人コンテスト入賞を不品行と見なされ退学処分になった1908年の事件(p53)もある。つまり本音とは別に、公の場で美人を競い合うこと自体は芸妓など玄人の女性のすることで、はしたないとする考え方があったことを著者は指摘する。
つまりこの時代、女性は素人と玄人にはっきり分断されていた。本書は前者のうちでも特殊な階級の女性をテーマとしているため「くろうと」側の知識には深入りしないものの、第4章で触れられる妻妾事情が、ある意味では両者の接点だといえる。
そういえば以前、遊郭に関する本([ https://booklog.jp/item/1/4391108895 ]と思うが、確かでない)で読んだ逸話を思い出した。上流階級の男性が、婚約者とのデートの後、高まった情熱を解消するため遊郭へ来る。婚約者は良家の令嬢だから婚前にみだりがわしいことはできないというモラルの一方で、玄人女性との関係はモラルに反しないのだ。
そういう社会で、女性かつ上流階級という二重の規範に縛られて生きた「お嬢さま」の生活は、現代人の目から見るととんでもなく窮屈で、羨ましい気持ちは起きない。けれども水中にいる魚が水の存在に気づかないように、当事者にはそれが当たり前で、その中でも現代の女性と同じように、メイクや食べ物や流行の話題にはしゃいでいたのだろう。 -
1880年から90年代生まれの明治のお嬢様に関して、女性誌や新聞記事から本当の姿を明らかにした一冊。束縛され、生き方を決められ…明治の女性の姿を見ると、本当の日本はこう、とか称賛されたり昔は良かったのにと嘆かれる意味が分からなくなる。ホント、一部の男性のみのためにある社会。今の世の中のほうが全然いいから。こんな世の中とか歌う人も多いけど!
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今も昔も、女性は変わらないということですかね。
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興味を持ち続けられるように書かれていて、最後まで楽しめた。
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面白かった。
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鹿鳴館で踊った母をもつセレブの令嬢たち。社会の矛盾に悩み、「良妻賢母」という理想に縛られながら、美を求めてお嬢さまたちは涙ぐましい努力をする。女性誌や新聞記事から明治のお嬢さまの本当の姿を明らかにする。
今では噴飯ものな驚くべき社会でした、明治。
えらく窮屈な時代ですが、いつの女性も美しくあろうとするのは変わらないのですね。 -
皇族・華族・上流階級の奥方様やお嬢様の生活を知る事が出来る一冊。
どちらかというと鹿鳴館デビューした母を持つ娘さん達の時代(明治中期~後期)の話。
明治の世になり、西洋諸国の文化がどんどん入って来て意識改革もどんどん進む。妾を持つのが当たり前の父と、一人の妻だけを愛する息子。世代によって考え方が異なってくるのが良く分かって面白い。
大正天皇の皇后様、徳川慶喜の娘、三菱財閥に嫁いだ官僚の娘さんなどなど、旦那様やお父様はよく本で読むけれど、その家族である女性達に目を向けたこの本は新鮮で面白かった。
参考文献も豊富で面白そう。読み倒したい。 -
籠の鳥は嫌だなぁと思いました。
お屋敷が広すぎて、台所から100m移動するうちに冷える料理しか食べないので猫舌であるエピソードとか
茶・琴・花・歌を幼少よりマスターしていないといけないとか
お箸は先から1cmしか汚さぬように食べねばならぬとか
私には無理ですし人権無くて嫌です -
家系の存続と家産の継続のために妾をもつという日本の風習は、諸外国との不平等条約改正のための文明国入りを目的に撤廃を目指したのであって、決して女性の人権を考えてのためではなかったのである。あくまで国益が優先されたのである。
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初黒岩比佐子作品。読みやすい。膨大な資料を当たっているにもかかわらず、非常によく整理されている。フェミ目線が入ると、もっとどぎついものになるのだろうが、その辺りのさじ加減が絶妙で、読みながらにたにたしてしまった。
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100年前から読モってのは一般女子の憧れとして存在していたのか。明治からこちら百数十年、女が自由になったと言われるけれど実際は後ろ指さされて蔑まれる範囲が少し狭くなっただけで「女性としての模範像」はそれほど変わらないまま刷り込まれているのではないか。それをどう捉えるかは人それぞれだけど、刷り込まれた模範像が絶対だと思い込んで息苦しくなっている女の子たちを見ているのは忍びない。明治のお嬢さまじゃないんだからもっと好きに生きていいのにね。現代も根強い「お嬢さま願望」が首をしめているのだと思うとくそくらえだ。
ところで本書P130、元侯爵浅野長武について「信長の妹お市を妻にした浅野長政の十六代目の子孫」と説明されているが、市を妻にしたのは浅井長政。こんな有名な史実の間違いにどうして気づかないんだろう。この一点で本書の資料的信憑性が揺らいだ。
他の記述は果たして全部、正しいのかしら。 -
P30~
乃木希典 学習院女学部教育方針
一、凡そ徳操の中でも、質素と云ふ事が、最も能く守らねばならぬ事である。
一、質素は価の多少にあらず。
質素といへば、単に価を多く費やさねばよい、人に貰つたものだからよい、安く買入れたものだからよいといふ訳ではない。たとひ廉価なものでも、質素の精神に叶はないものは、高価でも質素の精神に適つたものに比べて、遙かに劣るのである。
一、最も卑しむべく恐るべきもの。
無理に品物を廉く買はうとし、また貰うべからざるものを人から貰つて喜ぶやうなことは、最も卑しむべきである。又質素とは金銭のみの事ではない。特に彼の正しからぬ贈与を受け、又は価をねぎつて得た品を喜ぶやうあん、節義もなく節操も無いのは、最も卑しむべく恐るべきである。
質素を守る心のあるものは、不義のものをみかへりもせぬのが其の徳である。 -
華族・皇族を中心としたお嬢様の実態を描いていく。
実際のお嬢様の日記などが出てきたりして、本人たちがどのように考えていたのかも描かれている。
おもに、結婚の道具として育てられ、そのように生きるお嬢様たち。果たして幸せだったのだろうか。
妾腹にたいする認識が今と違うのはだいぶ面白かった。しかし、妾腹でも本妻の子として育てられ、そのあとを継ぐことが可能なのはよいのだけれど、妾のほうは、生涯めかけのまま、自身の生んだ子に蔑まれなければならないのはつらい。。 -
おもしろかった。すごろくとか。
特に後半のお嬢さまたち一人ひとりの一生。
あと看護師の評判が悪かったのか。 -
明治時代の環境と生活、ついでにお嬢様の様子も少し、といった内容です。
明治時代の知識が皆無に等しい私としては、明治の説明が多めで、とてもよく理解できました。ただ、途中でふと「お嬢様情報はどこ?」と我に返ったりしたので、「明治のお嬢様」情報がメインでがっつり、という目的の方は肩透かしをくらうかもしれません。
当時の写真もあり、読み物としてはとっても楽しめました。明治に木造12階の塔で8階までエレベーターがあったってすごい! -
維新後の華族(旧宮家・公家・大名家)のお嬢様について書かれた本
正真正銘の純お嬢様は、日常生活・恋愛・結婚
身につけて置かねばならぬ嗜みの多さ等々
何から何まで大変としか言いようがない!
さぞや不自由だったと思われる。
仮に自分が山ほどの富と名誉と引き換えにお嬢様生活をしろ、と
言われても断る。人生楽しくなさそうだし。
けど…このお嬢様たちはきっとそんなことは当たり前で
つまるとかつまらないとか、自由とか不自由とか
考えたことなかったんだろうな。
本物は幼いころから「ノーブレス・オブリージュ」の精神が
躾けられていて、そのように在ることは当然と思っているらしいので。
あと今でもこういう純お嬢様って存在しているのか
どうかが気になる。
「ノーブレス・オブリージュ」=
・身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ
社会的責任と義務があるという、
欧米社会における基本的な道徳観。
・高い地位や身分に伴う義務。
・もとはフランスのことわざで
「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞いを
しなければならぬ」の意。