オスは生きてるムダなのか (角川選書 469)
- KADOKAWA/角川学芸出版 (2010年9月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047034693
作品紹介・あらすじ
38億年前、生物が地球上に現れて以来、生物の細胞系列は生き続けてきた。性が誕生すると生物は劇的に変化し、限りない多様性やあらゆる能力と引き替えに、「死ぬ能力」をも獲得する。一回の生殖で一生分の精子を貯める女王バチ、口が退化し寿命が3日しかないアカシュウカクアリのオス、個体で性別を変化させるミミズ…。生物によって異なる性の決定システムから、ヒトの性にまつわる話まで、生物の性の不思議に迫る。
感想・レビュー・書評
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池田清彦の本気モードか、いつものエッセイとは異なる学術的内容で知的刺激満載。雌雄の根源を求めれば、行き着く先は哲学か。序盤から考えさせられる。メスにとっては性が何のためにあるかわからない。性にはエネルギーと時間がかかるし、自分の遺伝子を100%残すならば単為生殖の方が適しているからだと。種で考えるか、個体で考えるか。
このデメリットを上回るメリットは、一般的には大きく2つ。1つは多様性を増大させる事。有名な例では、1845年のアイルランドでジャガイモがカビの感染によるポテトレイトブライトと言う病気に侵された時、ほとんどのじゃがいもがクローンだったために次々と感染が広がった。単為生殖ばかりだと、何かの病気が蔓延した時や環境が激変したときに全滅する恐れが強い。もう一つの目的は、遺伝子の修復。減数分裂により遺伝子を修復するが、修復した遺伝子を子供に受け継ぎ、種として生命を繋いでいく。
ミドリムシやアメーバのようなnのハプロイド細胞は原則的に死なない。2nのディプロイド細胞は死ぬ。コンディションが良いのに死ぬ理由はない。生物の起源から考えると「死なない」事が普通。「死ぬ」事により、細胞の能力を飛躍的に増大し、多細胞生物になり、複雑なシステムを手に入れた。個体が寿命を持つ根源的な理由は、おそらく子孫を残した後の個体は進化的見地からは生きていても無駄だ、と言うところにあるのだろう。また、寿命が長く世代交代の遅い生物は進化の速度が遅くなる。世代交代が早ければ、新能力を持った生物新機能を持った生物が出現する確率が高くなる。
つまり、種としての生き残りの為に、我々はセックスし、進化のために寿命を定めたのだ。決して個人の為ではない。個人のエゴのような生存戦略も、ルーツを辿ればそう明言できる。個人のエゴの究極形は、単為生殖、或いは不死ではないか。不死とは言っても寿命がないだけで、物理的、受動的に殺される事はある。捕食、殺害される確立は、種としての生き残りを選ぶ事で低減する。
自ら選択したはずの死について悩むのも、生存以外の余暇に悩むのも、種として役割を果たして満たされるはずの承認欲求も、そのように作られた人間のデザインによる。作られた、というより、自己選択的な形質による、という方が正しいか。本著により、利他的な遺伝子を見た気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2010/10/8 新刊棚で見つけて借りる すぐに 読み始める。 10/29 読み終わる。
ちょっと目を惹くタイトルだが、中身はまじめな! 生物学の本です。
単細胞生物から、複雑な生物まで とにかく不思議で面白いことがいっぱい。
増殖・複製、永遠の命、染色体、生物の性の巧妙さといい加減さ・・・。
本書に書かれていることを、部分的には聞きかじったりしていたが、
わかりやすくまとめられていて 目からウロコ 以上の 驚きです。
内容と著者は
内容 :
1回の生殖で一生分の精子を貯める女王バチ、個体で性別を変化させるミミズ…。
生物によって異なる性の決定システムから、性の起源、性のメリット・デメリット、
ヒトの性差の根拠と曖昧さまで、生物学的見地から語る。
著者 :
1947年東京生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。
構造主義科学論、構造主義生物学の見地から評論活動を行う。
著書に「38億年生物進化の旅」「そこは自分で考えてくれ」など。 -
遺伝子、特に性に関するものを取り上げている。
性がいかに多様であるか、またいい加減であるかがわかる。
趣旨は表題の通り。
いろんなパターンを列挙し、それについてわかっている範囲で解説もしめくれているので、トリビア的に知識として面白い。
多少古いかもしれず、偏った考えもなくはないが、エセ科学みたいなことはない。
覚えておきたいことの密度が高い本だった。 -
とっつきにくいが、読み進めるとなかなか面白い。
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オスが必要の種、メスだけで生きている種。動物学。
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まあ、ムダだよね。
しかし両性あるから面白い。
生き物って不思議で面白くて、時々ふざけてるな〜 -
「1分で分かる大学」で観て興味沸きました。
表紙の写真が面白い。
かっこいいオスを捕まえられないので独りでいるのである。
どんな言い訳やねん。 -
ヒトの言語は男と女の騙し合いの結果、発達したという説もあるくらいなのだ。
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生物の性を軸に進化や種としての繁栄についてかなり広い範囲のことを
ギュギュッと詰め込んで平易に書いてある本だった。
平易にといっても、飛ばし読みをしても「へ~」と思って読めるということで、ちゃんと理解しようと思うと、ひとつのチャプターごとにさらに深く調べながら読まないといけない位色々なものが詰め込まれている感じ。
今回は、飛ばし読みなので私の理解は「へ~」レベル。
著者については、進化をあまり目的論的に考えず、「偶然」や「たまたま」「ほかの重要な形質を獲得するための副産物としてそうなっている」
みたいな感じで考えている人なのかなあ、、と。
私が読んだいくつかの進化に関する本を書いた学者さんたちも、
適応的進化(ネオダーウィニズムというのか??)をあまり支持しないという感じだったから、最近の流行りなのか?日本の学者はそいう感じなのか?いずれにしも、テレビでも時々見かけるような人なので、わりと頭の柔らかい人なんだろう。
特に印象的で今でも覚えている内容(誤解しているものもあるかな?)
本当に内容が多岐に渡り、とても情報を整理しきれていない・・・
○人間では男性は遺伝子を伝えるだけで、細胞の仕組みはメス由来だということ。
男は情報、女は実態 だったかな? DNAという情報は男も伝えていくが、女性は生のシステムそのものをつないでいる。だからこの本にも書いてあったけど、アフリカに人類の起源となる女性(ミトコンドリア・イブ)がいたという説が出てきたのか~。
○種ごとに性別の決まり方はかなり違っている。
環境によって、オスメスを変化させる生き物も結構いる。体の大きさや水温など。また、細胞ごとにオスとメスが決まっている生き物もいる(ネズミだったかな??)※人間にも見られる両性具有とは違う。
○生物は死なないのがデフォルト。
(大腸菌のような生き物に寿命はないらしい。)
高等生物は死を発明したことで、進化できるようになった。
○人間の寿命は120年 細胞分裂しない、神経細胞の寿命がそのくらい -
タイトルから想像できるように、小難しいことをできるだけわかりやすく書こうとしてくれているけどやっぱり難しい。
結局のところ、作者は「オスはムダである」とか言っているような気もするし、言っていないような気もする。
そもそも、生きている途中で性転換をする生物がいるっていうことを知らなかった私でも、「へ~ぇ」と思いながら一応最後まで読み通すことができる作品です。
ちょっと生物に興味を持てそうです。 -
メスしかいない生物はあっても、オスしかいない生物はない。おーっ!そうだよね。生殖・クローン・性の役割などの仕組みがわかりやすく解説してあり、理解しやすい。性のあり方の多様性も刺激的な本。
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動物と性の進化について。他にも読みたい。図説生物で復習しないと。
同じような内容の本何冊も読んでる気がするけどすぐ忘れるみたい…