江戸図屏風の謎を解く (角川選書 471)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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本棚登録 : 39
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034716

作品紹介・あらすじ

江戸城内をゆく山王祭礼が描かれた「江戸天下祭図屏風」。紀伊徳川家上屋敷が大きくクローズアップされたこの屏風は、いつ、誰が、何のためにつくったものか。描かれた建物や人物、画面構成などを絵画史料として分析・読解し、つくられた時期は明暦大火後、折りしも紀伊徳川家が慶安事件(由比正雪の乱)の嫌疑を受けていた頃と推理する。さらに時代背景と伝来などの推理から、屏風に秘められた謎をスリリングに解明。

感想・レビュー・書評

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  • 黒田日出男氏の江戸図屏風が描かれた時代や作者に関しての考察をまとめた新書「江戸図屏風の謎を解く」を読了。

    江戸図屏風の書かれた時代を考証するポイントは明暦の大火で焼け落ちたと言われている建物が書かれている訳だが、それらの大火前の建物で描かれたものを詳細に調べるなかでさそれらが単純に大火の前に描かれたのか、大火の前の江戸を思い出し記憶に残すために描かれたものであるかといったかなり微妙な考察が展開されていく。

    結論はさておき、同じ江戸図屏風の書かれた時代を論じた他の学者達の論点の弱いところをズバズバと切り裂いて行き持論が絶対正しいとはとはエビデンスの欠如から絶対言わないのだが、俺の案が正しいのだといわんばかりの他者の論じたものを記し捨てて行く様は壮快に感じるくらいでどんどん読み進める事が出来た。

    作者に関しての考察は描かれた時代の考察よりさらにオタクの領域のに踏み込んでいるかのような展開だ。絵を読み説くと江戸の描写の中で目立つのが赤坂の日枝神社から御神輿がでて武士や市民が楽しんで見物している様が描かれている中ブ部分であり、描かれた大名屋敷の中で中央に描かれかつそこで見物する人間が詳細に描かれていることから、この建物の主を紀州藩初代藩主徳川頼宣と考えその隣に描かれてその正妻瑤林院(加藤清正の娘)と後々生き別れになる際に妻に渡した絵であるまで推察する論の展開は見事なのだが、あまりに強引であるためちょっとその信憑性を疑いたくなってしまうほどだ。かなり思い込みの部分から類推している部分もあるので多分だがこの論が学会などで認められた論ではないのとはおもわれるが、痛快な分析の展開は非常に楽しく読めた。

    たまには小説以外の本も面白い。新書もう少し読もうかな。

    そんな明暦の大火前後の江戸の情報、その時代の屏風絵の事、当時の祭りの様子などを学ぶ事の出来る角川選書の一冊を読むBGMに選んだのがDavid Matthewsの"Waltz for Debby". 本家エバンスのバージョンと違った解釈もなかなかだ。https://www.youtube.com/watch?v=65julAt-LWk

  • 6d4

  • 卒論に関わりそうなので読んでみた。屏風から歴史を読み解こうとする比較的新しい試み。読み物としては非常におもしろい。

  • 本圀寺に屏風伝来…納得する。
    「伊賀の影丸」の由比正雪を思い出す。

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著者プロフィール

1943年生まれ。東京大学名誉教授。文学博士。専門は日本中世・近世史、絵画史料論・歴史図像学。著書に『源頼朝の真像』『国宝神護寺三像とは何か』『洛中洛外図・舟木本を読む』『豊国祭礼図を読む』『江戸図屏風の謎を解く』『江戸名所図屏風を読む』(以上、角川選書)、『岩佐又兵衛と松平忠直 パトロンから迫る又兵衛絵巻の謎』(岩波現代全書)、『増補 姿としぐさの中世史 絵図と絵巻の風景から』(平凡社ライブラリー)など多数。

「2020年 『岩佐又兵衛風絵巻の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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