やさしい精神医学入門

  • 角川学芸出版 (2010年8月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784047034730

作品紹介・あらすじ

うつ病、統合失調症、発達障害。さまざまな誤解がつきまとう「心の病」を、豊富な症例とともに正しく捉えなおす。原因や症例、治療法、臨床現場や社会制度の問題点まで、精神医学の基礎を分かりやすく解説。

〈目次〉
はじめに

第一章 精神医学と精神症状
    十七歳での異変/精神医学の特色/客観的評価の難しさ/精神医学と脳/脳の障害/未解明な記憶の世界/脳研究の現状/臓器としての脳/精神症状の分類

第二章 精神疾患の分類
    『ミレニアム』/精神医学の悪用/障害年金と不正受給/障害という誤解/診断と病名の境界/原因別の三分法/内因性と心因性/伝統的な精神科診断

第三章 精神科における診断基準
    精神疾患の国際分類/ICD─10/ICD─10の特徴/DSM─4/DSM─4のカテゴリー/ケーススタディ

第四章 精神医学の歴史
    精神医療と収容/古代ギリシア・ローマ/魔女裁判/アサイラム/改革の始まり/責任能力/精神医学の成立/フロイトの帝国/向精神薬とDSM/日本の精神医療

第五章 統合失調症
    精神病とは何か/幻覚と妄想/幻覚の出現/心乱れて/精神科に入院/厳格な父親/入退院のはざまで/統合失調症の類型/非定型精神病とパラフレニー

第六章 躁うつ病とうつ病
    躁うつ病とは何か/成績優秀な知的青年/再入院と希死念慮/躁うつ病の治療/躁うつ病の分類/うつ病の多様性/うつ病と薬物療法/五十二歳の主婦/一番悪いのは彼女/うつ病とうつ状態/自分は癌に違いない

第七章 発達障害
    発達障害とは何か/自閉症/言葉が遅い子/アスペルガー障害/ド・ゴール大統領/抑えられない衝動性/ADHD

第八章 精神疾患と犯罪
    責任能力/精神障害と犯罪/責任能力判定の「慣例」/殺人事件/その車は俺の車だ/恐怖か殺意か/刺したけど死んではいない/「措置入院」の弊害/精神保健法から医療観察法へ

第九章 精神科とクスリ
    向精神薬/薬の副作用/抗精神病薬/興奮状態/幻覚妄想状態/抗うつ薬/新規抗うつ薬/SSRIの副作用/抗不安薬/睡眠薬/その他の薬物/薬物依存

第十章 精神科と医療費
    医療費の問題/医療崩壊/保険診療/疾患の重要性/適正な予算配分のために/DALY/うつ病のDALY
おわりに

感想・レビュー・書評

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  • 精神医学についての教科書的な内容だが、この本を読みながら感じたのは精神医学における「病気」と「障害」、これと似たような表現での「症候群」という言い方だ。本書では、うつ病における「障害」の取り扱いについても問題提起している。

    一部に例外はみられるが、基本的にうつ病は治癒が期待できる疾患であると著者はいう。

    ― 急性期の症状は重症となる場合も多いが、多くは完全に回復する。ところが、一部の患者はうつ病が慢性化し十分に回復しないという理由で障害年金を申請し、その中で少なからぬ数の患者は診断書に手心を加えてもらうことによって年金の受給に成功している。さらに納得がいかない点は、障害年金を受給しているにもかかわらず、一般の就職もしているケースである。これは、必ずしも違法とは言えない場合もあるようだが、障害年金の基本的な考え方に反する不正受給であることは明らかだ。

    精神医学における定義がこんな所にも波及して、著者は不快に感じている。実際に、このような杜撰な支給が横行しているのかは分からない。病気と障害、疾患、症候群とは何が違うのか。調べてみると、病気は、体の一部が正常に機能しなくなった状態。障害は、身体や精神の機能に長期的な制約がある状態。疾患は、病気とほぼ同義。症候群は、特定の病気によるものではなく、いくつかの症状が同時に現れる状態で、原因が不明であったり、複数の原因が絡み合っていることが多い。

    障害を定義するのは「長期的な持続性」らしい。うつは疾患や病気であって、障害ではないと著者はいうが、微妙な所だ。そもそも、精神疾患自体が、自己宣言によるものも含むので、短期か長期かもその本人の宣言次第で左右されてしまう。だとすれば、不正を見抜くには監視をするしかないのではないか。

    どんどん横道に逸れるが、似たような論点では精神疾患を抱えている場合の「責任能力」についての議論がある。被告人が精神障害を理由に無罪とされるためには、嬰児または野獣と同様に、理解力と記憶力を全く失いており、自分が何をしているかを知らない者であるということを証明しなければならないという基準は、後に精神科患者の免責の基準となり、「野獣テスト」として知られるようになったらしい。

    著者による誘導もあり、精神医学そのものよりも、その偽装可能性における問題について興味をもつ読書となった。

  • 借りたもの。
    精神医学の現場ではどのような治療が行われているか、を丁寧に解説する。
    その中で、投薬の必要性、重要性を説いている。
    精神医学がまだ未解明――よく言えばまだまだ発見の余地がある――学問であり、それ故に試行錯誤の連続であることが伺えた。

    精神医療の歴史についても書かれている。
    精神疾患の患者は治療の対象ではなく、管理(隔離、収容)する存在だった時代を経てから、有効な治療方法の模索、確立、待遇改善など……さらには精神疾患の患者による犯罪と責任能力の問題まで。

    投薬についての意思の考え方が見える点で興味深い一冊。
    安藤たかゆき『こころを病んで精神科病院に入院していました。』( https://booklog.jp/item/1/4040677382 )、杉山なお『精神病棟ゆるふわ観察日記』( https://booklog.jp/item/1/4800274443 )にも紹介されていたことの詳細である。

    併読した西多昌規『自分の「異常性」に気づかない人たち』( https://booklog.jp/item/1/479422236X )にもあった様々な障害に対し、どの様な薬物療法を用いるかが紹介されている。

    いとうせいこう『ラブという薬』( https://booklog.jp/item/1/4898154735 )でも言及されていた、内因性と心因性(p.57)の詳細を理解する。
    ただ、科学的な対処療法に重点を置いてはいるものの、「それで本当に治療できるのか?」と疑心暗鬼になるところがあった。
    症状を抑えるために投薬する……私はそのために疾患、障害と“せざるをえない”?可能性もあるのではないか?と読んでしまう。
    投薬に効果があるのは事実だが、個人差があるため投薬量を増やすケースがあった。それでも効果が目に見えてよくなるわけでな内容なので、素人は不安になる。
    のんた丸孝『縁距離な夫婦 躁うつといわれた嫁との20年日記 』( https://booklog.jp/item/1/4022141891 )の奥様は凄い量の服用に、自己判断で薬をやめてしまう。
    それに類似するケースも紹介されていたが、そうさせないための手段については何も書かれていない。

    メディアの投薬批判――行政や製薬業界への不信感――に対する、お門違いな偏見に憤っていた。(p.141)

    著者は体面によるカウンセリングに対して、保険がきかないことでの患者(クライアント)の負担が増すことへのネガティブな印象があるようで、私はそれも理解できる。とはいえ、意外と薬に頼らなくても改善するうつ病はあるだろうし……できれば『ラブという薬』に紹介されていたカウンセリングと投薬の二刀流について、その効果と可能性についてはどう考えているのか、知りたかった。

    本の最後には、実際の事件に基づいた模擬裁判員裁判の簡易的な内容も掲載。この内容は衝撃的だった。被告の妄想は客観的にロジックは無いに等しいが、当事者はそれを事実だと思い込んでいる。二転三転している自覚も無いため、罪の意識を持っているようで持っていない。
    判断が難しかった……

  • よかった。

  • 基礎的な考え方をはっきり示している点がよい。とても冷静で、難しい面にはほとんど突っ込まず、ちゃんと入門レベルで書かれている。ただ、どうも批判的な文章に思える。

  • 暇暇に読んでいたら、いつの間にか読み終わっていた。
    精神医学について、まとまった知識を得たような、得てないような、特別、勉強になったという感じはしなかった。
    もともと、一般の人向けの解説書なので、これを読んだからと言って、臨床に応用できるわけじゃないし、まぁ、そんなものかと一人で納得。

  • うつ病、統合失調症、発達障害―。人はなぜ「心の病」に陥るのか。その原因や症状にはどのような違いがあり、医療現場の最前線ではどんな治療が行われているのだろうか?回復可能な病までを「障害」と呼ぶ弊害、投薬治療に対する根拠のない批判、名前ばかりが一人歩きする「心のケア」など、多くの誤解がつきまとうさまざまな精神疾患を、豊富な症例とともに臨床医学の見地から解説。精神医学の基礎を分かりやすく学ぶ。

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著者プロフィール

昭和大学医学部精神医学講座主任教授

「2023年 『これ一冊で大人の発達障害がわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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