花びらは散る 花は散らない 無常の日本思想 (角川選書 488)

著者 :
  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047034884

作品紹介・あらすじ

人生は空しくてはかない。我々はこの感情を無常観と呼ぶ。だが、この無常というものを積極的に受け入れることで、現代にただよう「絶望」がもし払拭できるとしたら-。無常の思想を語学、哲学、文学、芸術、宗教から丹念にひも解き、「かなしみ」や「いたみ」を分かち合ってきた日本人独自の死生観とその背景にある精神の核心に深く迫る。日本思想史の新たな地平を切り拓く、東京大学退官記念「最終講義」全記録。

感想・レビュー・書評

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  • 3.11以後、どうにも心の収まりが悪くてメゲていた。いくつか本を読んだけれど、落ち込んだ気分の持って行き場がなかった。

    生老病死の苦界の中で「なぜ」と問う,とまどう私に少しだけ立ち居地を分からせてくれた。

    まだまだ読み込まなければと、思う。
    「おのずから」と「みずから」を学ぶことで、光明が見えて来るような気持ちになった。

  •  この著者の本は、少し前に本書の前著にあたる『「かなしみ」の哲学』を読んだことがある。

     本書は、著者が東大教授を定年退職するにあたって行った最終講義をベースにしたもの。それだけに論文のような厳密性はないものの、示唆に富む指摘が随所にある。

     とくに面白いのは、昔からの日本語の言い回しから日本思想の特徴を抽出していくところ。
     たとえば――。

    《日本語では、「おのずから」と「みずから」とは、ともに「自(ずか)ら」と「自」の字をもって表します。そこには、「みずから」為したことと、「おのずから」成ったこととが別事ではないという理解が働いています。
     われわれはしばしば、「今度結婚することになりました」とか「就職することになりました」という言い方をしますが、そうした表現には、いかに当人「みずから」の意志や努力で決断・実行したことであっても、それはある「おのずから」の働きでそう“成ったのだ”と受けとめるような受けとめ方があることを示しています。》

     もう一つ、時節柄強く印象に残ったのは、「悼む」は「痛む」からきている、という話。

    《「悼む」という営みは、自分が「痛い」と思うこと、そのことがまずもっての基本です。
    (中略)
     (亡き我が子を)「思い出してやりたい」というのは、たんに親自身の「慰藉」にとどまらず、その「思い出し」の中で死者をその人自身として受けとめてやることです。それがいかに「苦痛」であろうと、そうした生者の「いたみ」を通してしか、死者はその存在をこちら側に現すことはできないということです。》

  • 「おのずから」より出で来て「みずから」を流れ「みずから」であるがままに「おのずから」へと帰す。この世もひとの存在も有限であり無常である。それはあきらめであるが絶望ではない。
    別れるとき告げる日本語は「さようなら」。
    そうならなければならないなら。
    「そうならなければならないなら」別れゆく。何を諒承したのかは語らぬまま、受け入れて別れつながっていく。

    言葉は世界をつくる。
    日本語の構築する世界は、日本語を母語とする私には、心ふるえるうつくしさで、いま、さらけだされている。

  • 『おのずからとみずから』の前に、肩ならしに読んでみた。最終講義を中心にまとめられたそうで、具体的に噛み砕いて書かれているので、非常にわかりやすい。日本的、日本人的であろうとする時に、その拠り所となるべきは何か、その方向を示している。

  • 大学の教材でした。
    日本思想についてというと読みづらそうですが、
    タイトルの意味と「おのづから」「みずから」の章を読むだけでも人との出会いや今ここに在る自分について考えさせられます。
    哲学の講義で使用しましたが、ほかの分野にも繋がるような面白さがあります。

  • 請求記号:121.0タ
    資料番号:011403664
    「いのち」のイは息、チは勢力。すなわち「息の勢い」。

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著者プロフィール

竹内 整一(たけうち・せいいち):1946年長野県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程中退。東京大学名誉教授。専門は倫理学、日本思想史。日本人の精神の歴史を辿りなおしながら、それが現在に生きるわれわれに、どのように繋がっているのかを探求している。主な著書に、『魂と無常』(春秋社)、『花びらは散る 花は散らない』『日本思想の言葉』(角川選書)、『「やさしさ」と日本人』(ちくま学芸文庫)、『ありてなければ』(角川ソフィア文庫)など。

「2023年 『「おのずから」と「みずから」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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