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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784047035065
作品紹介・あらすじ
幕府討滅計画=承久の乱で知られる後鳥羽上皇は、なぜ『新古今集』の撰集にあれほどの心血を注いだのか。幕府の「武」に対し、これを圧倒する文化統治として「和歌の力」を位置づけた上皇の足跡と史実を描く。
〈目次〉
はじめに
1 激動の時代を経て
一 神器なしの王位
1 僥倖と欠落と
2 母乳をめぐる争い
3 天皇の成長
二 自立への道
4 入内争い
5 法皇の死
6 親政の展開
三 政治の激変
7 武家の上洛
8 脱兼実に向けて
9 親政から院政へ
2 王と和歌文化
四 後鳥羽院政
10 後鳥羽院政の展開
11 公武の衝撃
12 王の歌
五 百首歌を詠む
13 和歌をめぐる環境
14 通親を超えて
15 正治初渡百首
六 和歌を詠む喜び
16 定家と上皇
17 歌への意欲
18 光と影
七 勅撰集を見据えて
19 能力を見極める
20 勅撰和歌集の勅撰に向けて
21 撰集への動き
3 勅撰和歌集の構想
八 文化統合
22 院三度百首歌
23 和歌所の開設
24 熊野御幸に向けて
九 撰集の開始
25 熊野御幸と定家
26 撰者の指名
27 仏教界の嵐
十 目標を定める
28 撰集の指標
29 新たな和歌空間
30 水無瀬恋十五首歌合
十一 壁にあたる
31 千五百番歌合の達成
32 時代の変わり目
33 続く不幸と立ち直り
4 新古今和歌集の成立
十二 撰集の山場
34 和歌書の活動
35 関東の異変
36 俊成九十歳の賀
十三 新古今和歌集の成立へ
37 幕府と朝廷の関係
38 和歌所の撰集
39 編纂の最終段階
十四 新古今和歌集の奏覧
40 真名序の成立
41 奏覧と竟宴
42 仮名序と義経
おわりに
参考文献
感想・レビュー・書評
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『新古今和歌集』の奏覧がなされる1205年までの後鳥羽院の半生をたどった評伝です。
本書の刊行に先だって、著者のもとで学んだ田渕句美子が、おなじ角川選書から『新古今集―後鳥羽院と定家の時代』(2010年)を刊行しており、やはり『新古今和歌集』の成立に焦点をあてて、後鳥羽院と藤原定家の人物像をえがき出しています。それに対して、本書は後鳥羽院の「評伝」として書かれたということで、田渕の本とは異なる観点から後鳥羽院のすがたがえがかれていることを期待して手にとりました。
ただ一読した印象では、両者の立っている位置にそれほど大きなへだたりはなかったように感じました。著者は、文化と政治のかかわりに踏み込んだ丸谷才一の『後鳥羽院』(2013年、ちくま学芸文庫)に言及し、「承久の乱は、おそらく世界史におけるただ一つの文化的な反乱ではなかったろうか」ということばに対して、「鋭く本質をついている」と評しています。また本書の「おわりに」では、『新古今和歌集』編纂をはじめとする後鳥羽院のおこなった文化的事業の意義について、「後鳥羽が広く列島の文化的な統合を図ろうとする意図があった」と語っています。
本書では、このような観点から後鳥羽院の半生がたどられているのですが、著者は「ことに歴史家にとって苦手な和歌という壁がある」と語っています。しかし、多く引用される和歌の鑑賞に立ち入らずに後鳥羽院の文化的事業の意義を示すことは、著者をもってしても困難な課題だったのではないでしょうか。後鳥羽院の治世における政治と文化のかかわりの実態が、なかなか鮮明に見えてこないもどかしさを感じてしまいました。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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