戦いの日本史 武士の時代を読み直す

  • 角川学芸出版 (2012年11月22日発売)
3.39
  • (1)
  • (12)
  • (6)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 97
感想 : 14
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (248ページ) / ISBN・EAN: 9784047035157

作品紹介・あらすじ

〈目次〉
はじめに
第一章 平清盛と源頼朝──治承・寿永の内乱──
一 清盛落胤説と武力
二 清盛と「平家」の本質とは
三 東の源氏と西の平氏
四 関東こそは約束の地
五 京と鎌倉と
六 朝廷の「中から」と「外から」
第二章 後鳥羽上皇と北条義時──承久の乱──
一 正当性を求める武士たち
二 果てしなき内部抗争の末に
三 七つの守護をもつ源氏
四 後鳥羽上皇の挑戦
五 実力と権威の戦い
第三章 安達泰盛と平頼綱──霜月騒動──
一 謡曲「鉢木」
二 御家人でありながら、御内人
三 「統治派」と「権益派」の出現と対立
四 「易しい教え」と「やさしい政治」
五 経済状況の変化がもたらしたもの
第四章 足利尊氏と後醍醐天皇──南北朝内乱──
一 建武政権の評価
二 鎌倉幕府が滅びた理由は
三 新しい武家勢力の台頭
四 分裂しながらも存続する天皇制
五 将軍権力とはなんだろうか
第五章 細川勝元と山名宗全─応仁の乱─
一 戦いの歴史
二 応仁の乱とは何か
三 それぞれの守護家の動向
四 嘉吉の変から応仁の乱へ
第六章 今川義元と北条氏康──駿東地域の争奪戦──
一 日本を二つに分けると
二 河東の乱と河越夜戦
三 「戦いと同盟」の実態を観察してみる
四 桶狭間の戦いとは何か
第七章 三好長慶と織田信長──戦国の畿内争奪の諸相──
一 京都の政体の位置づけ
二 それは政権なのか
三 長慶と信長の差異
四 信長は分かり易いのか
第八章 豊臣秀吉と徳川家康──小牧・長久手の戦い──
一 信長の「分かりにくさ」をもう少しだけ
二 秀吉と家康の戦い
三 秀吉の日本統一事業
四 秀吉による天皇の奉戴
五 家康の選択
おわりにとあとがきを併せて

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

武士の時代の歴史を新たな視点から探求する本書は、平清盛と源頼朝の対立を起点に、鎌倉幕府から戦国時代までの複雑な権力構造を解説しています。各章では、対立構造を中心に据え、歴史の重要な瞬間を描き出すことで...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 武士が誕生し台頭していくあたりから徳川幕府樹立までの、その時代時代を代表する一対の対立軸から、相対する二人を一組として合計八組とりあげて歴史を解読していく本です。武家がどのように力を得ていって覇者になっていくかがわかります。

    ご承知のように、古い武家は新しい武家に取って代わられながら時代は進んでいきますが、その都度、力を増して、最後には(徳川氏の時代には)日本全国を支配するほどのものとなる。それがどういった流れだったのか。資料に乏しいところや資料を疑うべきところを歴史学者の著者の推察や推測で構築しながら、ひとつの仮説的に解いていく体裁でした。

    義務教育から高校まで、歴史といえばもう決定した過去を暗記する学問、というふうに捉えている方は多いかもしれません。かくいう僕はほとんどそう考えていました。資料のあるところはその解読はずいぶん以前に完了していて、解釈も決まっている。資料がない部分はその近辺のわかっている(ものと決めている)情勢などから鑑みて埋めてやって、「○○だったのではないかと考えられている」などと短く終える。そういうものだと捉えていて、事件や改革など大きな点をちょっと知ってしまえば面白さは感じなくなり、その他の細かく暗記するところで面倒になる、と思っていた。とにかく、歴史とは解釈が終わったもので、地層のようにゆるぎないものだと理解していた。

    でも歴史は、現代でも解釈がいっぽうからもういっぽうへと急に大きく針がふれたりするんですよね。悪者とされていた人が、実はなんのことはない平凡な人だっただとかに変化するなどです。たとえば本能寺の変で織田信長を討った明智光秀は、僕が子どもの頃だった30年くらい前には、裏切り者で悪役の最たるものとされていた。有名なゲームですが『信長の野望』というシミュレーションゲームでの明智光秀の、隠しパラメータ「義理」が低かったりなどしました。表パラメータの忠誠心も低かったですし。でも、信長を討ったくらいだし、それ以前にも重用されていた武将だから政治力だとか軍事面での能力だとかは高かったです。それが今では、新聞記事で新資料発見なんてでたときに、謀反はやむを得ない理由があったっぽいだとか、黒幕がいて明智光秀本人は駒にすぎないだとか、いろいろな説がでてきて、人物像もそれぞれ異なる解釈がされていたりします。それは歴史小説という場で歴史を語るときには特にそうなのではないでしょうか。

    本書は、そういった歴史の解釈はアクティブに変化していくもので、まだまだ完成していないものなのだ(または、完成するものでもないものなのだ)というような立場で歴史を見ることをまず教えてくれます。その上で、著者一流の歴史の読解で論理的に納得のいく解釈を進めていってくれる。それがとてもエキサイティングなのでした。

    鎌倉時代、後鳥羽上皇と北条義時とを扱った章、この章でのクライマックスである大事件は「承久の乱」ですが、その時代の状況や「なぜ官軍の後鳥羽上皇が負けたのか」との疑問、その前後、そして人物像まで、丁寧な述懐にずいぶん引きこまれて読むことになりました。このような読書体験が、歴史は無機質な暗記モノなんかじゃなくて、考えるものとして学んだり研究したりできるものだぞ、という知見をもたらしてくれます。日本史という学問へのおもしろそうなイメージと親近感が生まれました。

    興味のある方のため、八つの対立は誰と誰かを記しておきます。①平清盛と源頼朝、②後鳥羽上皇と北条義時、③安達泰盛と平頼綱、④足利尊氏と後醍醐天皇、⑤細川勝元と山名宗全、⑥今川義元と北条氏康、⑦三好長慶と織田信長、⑧豊臣秀吉と徳川家康。

    最後になりますが、ちょっと独特な読み方をしたところについて書いていきます。「一日に一度は庭で生首をみないと気持ちが悪い」とそこらの人たちを切り捨てさせている武士がいて、そういう残酷さは珍しくないとあったんです。室町時代のはじまりの頃のこと。子どもの頃から犬追物(犬を追いかけて弓矢で射て殺す)をさせているし、人間ってどういうふうにも育つものなのだ、と思ってしまいました。たぶん、こういう残酷なことをしてもそこに葛藤を持たなくていいような成立の仕方をした社会にいれば、気に病むこともなくなるのかもしれないです。それはたとえば、今の心理学で定めるような「現代の人間像」って絶対ではないことを教えてくれます。戦場の苛烈さに違いはあるのですが、現代には兵士のPTSDの問題があります。現代のふつうに生活を送っているスタンダードな社会の考え方や価値観がつよくて、それらと板挟みになるからPTSDなどの精神的な病が起こるのかもしれないなんて思いました。

    鎌倉時代や室町時代つまり、武士の世。社会が暴虐に対してゆるくて、その暴虐を行使する位置にいる人々が共有する暴虐肯定の社会観が、武士の存在が幅を利かせるようになったがため、それがローカルなものというよりもひろく行き渡っていったから、武士という人間は病みもしないかったのか。その時代に飛んでいってみないとわからないことですけれども。でも、そういう社会でも苦しんで病んでる人がいたってことはあると思う。それがそこそこいるのか、例外の範疇かですが。

    「社会と個人のマインドは相互に影響を受けて揺れ動くものである」というふうに僕たちはイメージしやすいものですけど、心理的な規制って社会からも個人からもでてくるもので、個人が規制を感じてそのこころに生まれさせる葛藤を処理できなくなるから、人はこころを病むのかなと仮説的に考えちゃうところなのでした。武士の世においてその暴虐に対して民衆からは無言の抗議の空気は発せられたかもしれないけれど、民衆からの空気による規制はとるに足らないくらい弱く、暴虐を肯定し認める空気のほうがよっぽど強いために、武士は病まなかったのではないのかな。社会からの心理的な規制がゆるかった。出家する者もそれほど苦にしていない気がします、個人的にですが。悪い意味でもおおらかだったんじゃないか。

    というところですが、ひとつ知見を拾えましたね。規制はどうやらこころによくなさそうだ、と。自由をつよく望み、守ろうとする人は規制に対してそういうことをよく知っているのでしょうね。

    さてさて、話は日本史そのものに戻りつつ終わります。日本史はいちおう受験科目でしたし、10代のころは先に挙げた『信長の野望』や漫画『花の慶次~雲のかなたに』(原作の『一夢庵風流記』も読みました)などの影響で戦国時代だけならばそれなりに親しんではいました。でも、いまやまったく縁遠くなっていて、本書で久しぶりに日本史に触れて、実におもしろかったです。日本史初歩の方にも向いていると思いますよー。わからない人物や固有名詞はネット検索しながらでもオッケーですから。

  • 〈目次〉
    はじめに
    第一章 平清盛と源頼朝──治承・寿永の内乱──
    一 清盛落胤説と武力
    二 清盛と「平家」の本質とは
    三 東の源氏と西の平氏
    四 関東こそは約束の地
    五 京と鎌倉と
    六 朝廷の「中から」と「外から」
    第二章 後鳥羽上皇と北条義時──承久の乱──
    一 正当性を求める武士たち
    二 果てしなき内部抗争の末に
    三 七つの守護をもつ源氏
    四 後鳥羽上皇の挑戦
    五 実力と権威の戦い
    第三章 安達泰盛と平頼綱──霜月騒動──
    一 謡曲「鉢木」
    二 御家人でありながら、御内人
    三 「統治派」と「権益派」の出現と対立
    四 「易しい教え」と「やさしい政治」
    五 経済状況の変化がもたらしたもの
    第四章 足利尊氏と後醍醐天皇──南北朝内乱──
    一 建武政権の評価
    二 鎌倉幕府が滅びた理由は
    三 新しい武家勢力の台頭
    四 分裂しながらも存続する天皇制
    五 将軍権力とはなんだろうか
    第五章 細川勝元と山名宗全─応仁の乱─
    一 戦いの歴史
    二 応仁の乱とは何か
    三 それぞれの守護家の動向
    四 嘉吉の変から応仁の乱へ
    第六章 今川義元と北条氏康──駿東地域の争奪戦──
    一 日本を二つに分けると
    二 河東の乱と河越夜戦
    三 「戦いと同盟」の実態を観察してみる
    四 桶狭間の戦いとは何か
    第七章 三好長慶と織田信長──戦国の畿内争奪の諸相──
    一 京都の政体の位置づけ
    二 それは政権なのか
    三 長慶と信長の差異
    四 信長は分かり易いのか
    第八章 豊臣秀吉と徳川家康──小牧・長久手の戦い──
    一 信長の「分かりにくさ」をもう少しだけ
    二 秀吉と家康の戦い
    三 秀吉の日本統一事業
    四 秀吉による天皇の奉戴
    五 家康の選択
    おわりにとあとがきを併せて

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    鎌倉時代〜戦国時代までの各時代の様々な場面で対立構造を用いて、解説を行っている。
    対立構造は当時の権力者の対立や旧勢力や新勢力の対立、果ては既説と新説の対立と様々な対立についてを解説している。
    いままでは歴史を学ぶといえば、特定の視点からの解説が中心で視点が2つ以上存在する場合のみ、対立構造を意識していたように思う。最初から対立構造を前提としているのは初めて読んだかもしれない。
    本書を読み、感じたことは複数の視点を持つことの重要性と対立で生み出された結果が歴史に大きな影響を与えるということだった。これからは今までに読んだ内容を意識しつつ、新たな知識を入力していこうと思う。

  • 後鳥羽上皇の承久の乱は日本史で大きなエポックだった気がしてきた。
    武士の時代が確定したのはココだな

  • 歴史も科学と同じで、現象論だけを見ていると真実を見誤る。同じ武士の時代でも源平それぞれのインセンティブは表裏一体。「上洛」の理解の仕方ひとつで戦国武将の考え方は違って見えてくる。信長、秀吉、家康の違いを表現するのによく使われる「ホトトギス」。実はホトトギスって天皇のことだったのか?

  • 戦いを理解するには、次の3つを明らかにすることが必要だと述べています。
     ①相争うAとB,どちらが攻めでどちらが守りか。
     ②攻める側、つまり戦いを起こした側の目的は何か。
     ③戦いの目的が達成されたか否かを検証し勝敗を確定

    国際体制にも同じことが言える気がします。ウィーン体制の目的は何でしょう。ヨーロッパ中を巻き込む戦争の回避だったら、クリミア戦争まではそのような戦争は起こっていませんから、ウィーン体制の崩壊は1848年というのはいかがか、と思います。

  • 日本史は暗記ものではないよ!
    ということを伝えるべく書かれた本と言いますか。

    二つの対比によって、それぞれを浮かび上がらせる、という手法で書かれた本です。

    史料を文字通りにしかとらえないのでは、何も理解できないというのは、よか分かる気がします。
    踏み込んで考えないと、ただの年表なので。

    通説といわれるものと、違う解釈が多々出てくるので、
    とてもおもしろいのではないかと思います。

  • ≪目次≫
    はじめに
    第1章  平清盛と源頼朝―治承・寿永の内乱―
    第2章  後鳥羽上皇と北条義時―承久の乱―
    第3章  安達泰盛と平頼綱―霜月騒動―
    第4章  足利尊氏と後醍醐天皇―南北朝内乱―
    第5章  細川勝元と山名宗全―応仁の乱―
    第6章  今川義元と北条氏康―駿東地域の争奪戦―
    第7章  三好長慶と織田信長―戦国の畿内争奪の諸相―
    第8章  豊臣秀吉と徳川家康―小牧・長久手の戦い―
    おわりとあとがきを併せて

    ≪内容≫
    日本史中世の専門家が、武士の時代を2人ずつ対立関係で時代を見ていこうという大胆な試論。本郷さんの著書はとてもわかりやすいので、廉価な本が出ると手に入れています。しかし、内容はなかなかハードで、大胆な提案もちらほら。今回も史料を縦横無尽に使いながら、現在の歴史学の主流に棹さす提案が見られます。ただ、まったく新しいものは少なく、どこかで読んだようなものも…(たとえば、信長は天皇を利用する意図はなかったが、秀吉は必要だった、など)。
    霜月騒動や北条義時論などは、私の知らなかった(ただの勉強不足ですが)論点だったので、面白く読めました。

  • 鎌倉幕府の中頃から現れる「統治派」と「権益派」の出現と対立、は面白かった。統治派は為政者としての自覚を持ち始めた武士で、権益派はあくまで鎌倉幕府を武士の権益確保の機関とみなすもの。しかもこの統治派の考え方は、京都の朝廷でも同時に生まれていて、底流に浄土宗があるという。
    これはひじょうに分かりやすい上に、納得がいく。
    そしてこの考え方は、どの時代にも、どの社会にも共通するものである。
    卑近な所で言うと、会社とは何なのか、ということだとも言える。だから、たんに日本中世史というにとどまらず、システムと人のあり方というのの、ケーススタディであると言えるし、原題から見た中世の意味でもあるといえる。中世の白眉だと思った。

  •  資料を読み込んで再配置する歴史研究からもう一歩踏み込んで、「考える」歴史を試みる。
     鎌倉から応仁の乱あたりを主題にした章が最も興味深く読めた。戦国時代については細かいところで「それは踏み込んで言い過ぎでは?」と感じたところもあったけど。

  • 内容的には既出の研究だが、「対比列伝」形式になっている。「平清盛と源頼朝」「細川勝元と山名宗全」「豊臣秀吉と徳川家康」辺りはベタですなあ。
     でも、本郷先生の真骨頂はやはり東と西の中世日本の違い。なので、「北条重時と九条道家」「北条氏康と今川義元」「織田信長と三好長慶」あたりは、全体的な中世像との関連で生き生きとしている感じ。
     中世の始まりと終わりを清盛から家康までと設定しているのが何とも面白い。半日程度で読むにはもってこいの分量なのもよい。

全11件中 1 - 11件を表示

著者プロフィール

本郷 和人
東京大学史料編纂所教授、博士(文学)。専門は日本中世政治史。1960年、東京都生まれ。東京大学文学部国史学科を卒業後、同史料編纂所に入所し『大日本史料』第5編の編纂にあたる。同大学院情報学環准教授を経て、現職。『東大生に教える日本史』(文藝春秋)、『戦国史のミカタ』(祥伝社)、『NHK高校講座 日本史』(NHK Eテレ)、『謎解き! 伝説のミステリー』(テレビ朝日系)など、著書・テレビ出演多数。NHK大河ドラマ『平清盛』をはじめ、ドラマ、漫画、ゲームの時代考証にも携わるなど、歴史の魅力・面白さを積極的に発信し続けている。

「2025年 『図解 豊臣秀長』 で使われていた紹介文から引用しています。」

本郷和人の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×