- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047035201
作品紹介・あらすじ
言葉に「方言」があるように、漢字にも「地域漢字」や「地域よみ」が存在する。漢字学と日本語学の両方の視点で、中国生まれの漢字が、日本の風土とどのようにつながってきたかを、実例とともに解説、紹介。
感想・レビュー・書評
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公文書では、東大が東京大学、北大が東北大学、海大が北海道大学とあるが、公文書では略語は用いないような気がするが。
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見たことない漢字が沢山あって楽しかった。勉強になった。
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漢字の地域性について。その地でのみ使われている省略表現など。
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たまたま書店で見かけ、地元三河の内容があったことから即購入した。
言葉に「方言」があるように、漢字にも「地域漢字」や「地域音訓」が存在する。本書では、漢字学、日本語学両方の視点で、中国生まれの漢字が、日本の風土とどのようにつながってきたかを、多くの実例で解説、紹介。(本書裏表紙より)
漢字の話だけでなく、著者が各地を実際に訪れ、地域の人との交流なども綴られている。写真もあり、紀行文やエッセイのような趣もある。
愛知の地域文字を挙げてみる。
豊橋では「綺麗」の「綺」の字に「口」が余分に書かれていた。
「圦」(いり)という漢字は用水路やその入り口を意味し、三河地方特有の漢字らしい。そういえば見たことがある気がする。
尾張では「杁」(いり)が地域特有。
「寒い」を「さむい」と読むべきか「さぶい」と読むべきか迷うというエピソードも。漢字を見ると「さむい」と読んでるけど、普段確かに「さぶい」はよく言ってる!
姓や地名の「谷」は東日本では「や」が多く、西日本では「たに」が多いとか、「中島」は東日本では「なかじま」、西日本では「なかしま」とか興味深い(愛知はこれらが拮抗している)。
三河弁の「りん」について、日本語学の教科書にあるような、とか、りの音を明瞭に滑舌よくしゃべってる様子を驚いてる記述があって面白かった。教科書に載るとは誇らしい。他地域の方など、言いなれないと言いにくいものなのだろうか。
「覚わる(おぼわる)」を、皆方言と認識しないで使っている、と書いてあって方言なんだと初めて認識した。(確かに打ち込んでも変換してくれない)著者はこの言葉の発音にフランス語のような響きを感じて新鮮だったと述べている。方言は漢字にはならない、というイメージを持ちがちだけど、漢字交じりの方言もあるし、地域特有の読み方もある。
第二のふるさとの岐阜について特に触れられてなかったのが残念だった。自分的には「各務原(かかみがはら)」は特色があるように思っている。純粋に読み書きが難しいだけでなく、地元民は正しい読みを認識しながら「かがみはら」と読んでいる。こういうことが全国津々浦々で起きているんだろうな。
常用漢字表やJIS(第1水準から第4水準まである)による標準化が進み、電子機器の普及により漢字を書く機会が減り、方言漢字には逆風が吹いている。JISに漢字を追加しようとして役場に確認したらJISに載っていないから地名を変更してしまっていたエピソードなど、とても残念。平成の大合併でも多くの地名が消滅したとのこと。地域の歴史や文化を反映した漢字が消え、フィーリングしか求めていないような、思い付きによる新奇な地名が採用されていく。
方言同様、漢字にも地域によって違いがあるとは。今までそういうふうに考えたことはなかったのでとても新鮮だったし、目からうろこが落ちた。漢字検定を受けたこともあるし(2級だから決して大したことはないけど)、けっこう漢字が好きだと思っていたんだけど、意識としては「100%正解の正しい漢字があって、それを読み書きしなければいけない」という意識だった。この本を読み終えた今、「正解は一つだけではない。漢字の読み書きであっても多様性を認めるゆとりを持ちたい」と思うようになった。
今後どこかに出かけた時には看板などにも注意して、面白い漢字がないかも見てみたい。 -
漢字研究行脚・旅行記という側面も。読みも「方言」に含まれるという観点に納得。「杁」など、漢検1級配当外ながらJIS第二水準に入れられた意味についても理解できる。漢字好きには堪らない一冊。
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漢字で書けるものは方言ではない、と思っていたら大間違いだったという…
地域別(ベトナムまで!)に方言漢字を知ることのできる本。当然のものと思っている地元の漢字表記を見直すきっかけになるかも -
ことばに方言があるように、漢字にも地域差があり、地域特有な漢字があるほか、地域だけの音訓がある。本書は国字研究の第一人者である笹原さんが、足で日本の各地を回って書いたものであり、笹原さんが撮った写真も満載である。しかし、それにしてもこのタイトルはさすがである。方言の違いは論じる人が多いが、漢字にも方言性があることにはなかなか思いいたらない。さらに、音訓にも方言差があることは。後者についていえば、たとえば「谷」は関東では「や」、関西では「たに」が多く、「大谷」は関東では「おおや」だが、関西では「おおたに」に多く読まれるとか。藤は関東では「加藤、佐藤」のように「とう」読みが多いが、関西では「藤垣、藤代」のように「ふじ」が多いとか。漢字の清濁も、西と東では違い、「中島」は関東では「なかじま」、関西では「なかしま」と違う。ぼくの知っている中島さんは四国の出身で、もとは「なかしま」だったが、東京へ行ってみんなが「なかじま」と読むので、いちいち訂正するのが面倒くさくなって「なかじま」で通していると言っていた。また、字形でも函館では「函」の上が「了」を書いたり、京都とでは「京都」の「都」の四画目の斜め棒(はらい?)が短いものがあったりと、言われるまできづかなかった地方字形もけっこうある。漢字の好きな人にはたまらない本で、ぼくも先週、娘の挙式で訪れたハワイの海辺でのんびり横になりながら眺めていたが、最後は正直少々疲れてしまった。マニアックなのである。どこへ行っても漢字と離れられない著者はいいとして、いっしょに旅する家族はたいへんだろうなあと思った。(そういうぼくもそう言われる。遊びに行っても仕事が頭から抜けないと)著書の笹原さんの笹はよく「笠」と間違われるそうだ。ぼくも最初のころは笠原さんだったか笹原さんだったかあいまいだったことを思い出した。
著者プロフィール
笹原宏之の作品





