- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047036253
作品紹介・あらすじ
伝統絵画と西洋画の接触が産み落とした、近代日本画という新たな表現。それは明治以後の画家たちに、近代とは、西洋とは、国家とは何かという不断の問いを突きつけることとなった。国家主義を揺籃とした明治期、皇国感情のなか成熟を迎えた大正・昭和初期、そして戦後に浮上する日本画滅亡論を超えて、日本画はどこへ向かうのか──。その成り立ちと多様性を時代ごとの様式の変遷から描ききる、圧巻の百年史。
【目次】
序 論
第一章 江戸時代
1.江戸後期 日本画のはじまり
2.幕末明治 プレ近代日本画
第二章 明治前期
1.明治十年代後半 1880年代
2.明治二十年代 1890年前後
第三章 明治後期
1.明治三十年代 1900年前後
2.明治四十年代 1910年前後
第四章 大正・昭和初期
1.大正期 1910-20年代
2.昭和初期 1920-30年代
第五章 戦中・戦後期
1.戦中期 1935-45年
2.戦後期 1950年前後
第六章 日本画とは何だったのか
1.近代と日本画
2.日本語と日本画
3.現代と日本画
年表
参考文献
あとがき
感想・レビュー・書評
-
近代日本画とは何か。それは簡単に定義できるものではないということを、この本を通して理解する。明治時代から戦後まで、各時代ごとに章を分けて、代表的な日本画家を取り上げながら日本画が何かということを説明している。それぞれの画家の作風を眺めていると、この絵のこの部分が日本画らしい、という唯一の特徴は見られず、わずか数十年の間に大きな変化がみられるのが面白い。
特に最終章が面白かった。明治維新後、日本が一つの近代国家として進みはじめた過程で生まれた日本画は自然発生的に生まれた作風ではなく、人々によって育てられた温室絵画であるという考えは興味深い。それは言われてみれば当然のことではあるが、「日本らしさ」というのはこうして人によって肉付けされていくものなのであるということは忘れがちである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前、小野竹喬がスタイルを変え続ける姿を画集で見たときに痛々しを感じました。日本の画壇にとって近代とは何だったのか?明治維新を経た国家が日本画に求めたものは、国家のそしてアジアの盟主であることのアイデンティティの発露でした。そもそも日本画というネーミングがイタリア画、フランス画という言葉が無いように奇妙なものかもしれません。本書にタイトルに対する答はありませんが、問題提起として価値があると思います。