「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか (角川oneテーマ21 A 42)

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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047100190

感想・レビュー・書評

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  • 「クール・ジャパン」という言葉が作られ、マンガ・アニメを中心とする日本のサブカルチャーに対する国策的な期待が高まっている現在の状況を、著者は歴史的な視点から批判しています。また第2部では、各種の経済指標を読み解くことで、サブカルチャーの市場規模は期待されるほど大きなものではないことを示そうとしています。

    日本のサブカルチャーは、「アメリカ」と「戦争」という2つの影によって、その出生を規定されていると著者は考えます。1930年頃から、ベティ・ブープやミッキーマウスなどのアニメーションが受容され、そのブームに追随する形で、田河水泡の『のらくろ』などのキャラクター・ブームが生まれます。こうしたハリウッドないしディズニーの様式を取り入れることで、「キャラクター」という概念が初めて日本のサブカルチャーの中に成立することになりました。

    その後、戦時下において国策としてのマンガが盛んに描かれるようになります。これらのマンガを特徴づけているのは、兵器をはじめとする科学的リアリズムです。著者は、今日のオタク的な視点の起源をここに見いだすことができると論じています。その中で著者は、記号的な「死なない身体」を持つキャラクターに「死」を付与するという試みをおこなった手塚治虫に注目します。こうした手塚の問題意識は、キャラクターが「成長」することの困難に直面した梶原一騎の劇画や、キャラクターの中に私小説的な「私」を持ち込んだ『ガロ』系のマンガに引き継がれ、やがて記号的な身体に呪縛された少女に訪れる性的な成熟の葛藤を描いた二十四年組の少女マンガ家たちによって大きく開花させられることになります。

    しかし、こうした手塚以降の問題意識は現代のサブカルチャーには受け継がれていないと著者は批判します。吾妻ひでおのロリコン・マンガは、手塚的な記号的身体を持つ少女が性器を隠していることを明るみに出すという、ぎりぎりの批評性を持っていました。そうしたわずかな批評性までもが欠落したとき、キャラクターに対する「萌え」を中心価値とする現代的なサブカルチャーが誕生したと、著者は論じています。

  • 難しかったけど、漫画の技法と時代の相互的変遷がよくわかった!前半でたっぷり書かれています。
    後半はアニメや漫画の海外進出について。
    なんとまぁ喧嘩ごしな本のタイトルだなぁと思ったけれど、後半まで読むとしっくりきた気がしま。

  • 至っていつもの大塚英志。
    日本のアニメが海外で通用しているという幻想をぶち壊す一冊。

  • [ 内容 ]
    日本のまんが/アニメの発端は、戦前のハリウッド、ディズニーの模倣、戦時下の統制にあった。
    戦前のまんが入門、戦争と透視図法、大城のぼる「火星探検」、手塚治虫「勝利の日まで」、萌え市場、産業としてのサブカルチャーまでを徹底分析。
    今また戦時下にある、まんが/アニメの本当の姿とは何か―。

    [ 目次 ]
    第1部 まんが/アニメから「ジャパニメーション」へ(日本のまんが/アニメは何処から来たのか;戦後/手塚/手塚の継承者たち)
    第2部 国策の中のジャパニメーション(市場規模から見るジャパニメーション;産業構造から見るジャパニメーション;ナショナリズムから見るジャパニメーション)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  日本のデジタルコンテンツビジネスを国が支援するという体制や現在の業界の現状に批判的な立場から論説していく新書。
     大半の世の中のビジネス書が、これらの動きを肯定的に捉えていることに対し、この本の内容は、現在の状況に異を唱えている。
     関連する論文を書く、また現在のデジタルコンテンツに関連するビジネスの現状を知るためには必要な一冊。

  • わかる。
    サブカルチャーとしては、マイノリティやアンチテーゼとしてある訳だから、国策や政治が絡んでくる時点で盛り上がる訳がない。

    第2部の産業構造や流通からの見解が特に説得力があって面白かった。確かに国策で論じる人たちよりも創作に対する愛情は圧倒的にあるだろう。

  • 主張の仕方が回りくどいです。
    でもお役所というのはこういう言語しか伝わらないとこなのかもしれません。

    あと、この著書の中で触れられている。かなり大雑把に読むっと身体性を持ったキャラクターがポルノの対象になるという理論は少女の危うさと全く同じなんですね。それに気づいた少女漫画家たちの語る性はだからあんなに力があるんですね。納得です。

  • 国家の戦略にマンガとアニメを利用されるのに反発する結論部分には全面的に賛成する。ただ、そこに持っていくまでの論理展開に肉付けが十分とは思えないので(新書版では難しいのだろうが)、なるほどと思うのとそうかなと首をひねるのと、両方。

  • アニメ・オタク論について、いつも鋭く手厳しい評論を展開する大塚さん、ここでもその手腕は冴え渡っています。 ジャパニメーションの起源を、漫画、アニメ文化の歴史から忠実に、仔細に検討し、漫画アニメを日本文化と言い切る世論にメスを入れる。
    そして、国策としてジャパニメーションを標榜しようとしている日本にも厳しい苦言を呈する。
    内容は多く、深い。 読みこなすにはかなりの苦労を労するが、漫画・アニメ手法の起源などを探りたい人にはお勧めの本。

  • 面白い。でも読みにくい。マンガ評論が以外に面白いことが分かった。成る程ね。

著者プロフィール

大塚 英志(おおつか・えいじ):大塚英志(おおつか・えいじ):1958年生まれ。まんが原作者、批評家。神戸芸術工科大学教授、東京大学大学院情報学環特任教授、国際日本文化研究センター教授を歴任。まんが原作に『アンラッキーヤングメン』(KADOKAWA)他多数、評論に『「暮し」のファシズム』(筑摩選書)、『物語消費論』『「おたく」の精神史』(星海社新書)、他多数。

「2023年 『「14歳」少女の構造』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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