こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人 (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川書店
3.35
  • (5)
  • (10)
  • (34)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 125
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047100435

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • タイトルに「格差社会」とあるが、内容はそれとはあまり関係ない。
    本当の内容は、「現代日本の妬みの心理について」といった感じ。これがとても面白い。

    自分自身の幸せの条件を外的要因に依存していると、この変化の大きい世の中にぐらぐら揺さぶられて死にますよ、という話。
    他人と自分を比較して憂鬱になってしまうような人は、以下を心がけようと説く。

    1.勝ち組の「透明なあげ底」を妬むより自分の「見えない天井」(自分にはできないという思い込み)を破るべし
    2.緊急避難(楽そうな方への逃げ)はほどほどにすべし
    3.何をやっても長続きしないのは向いていないことをしているから
    4.勝ち組と同じ土俵にあがる必要はない(売春宿の門番の話が例に)

    後半では、「自分らしさ」という言葉がやたらと嫌われる理由について考察している箇所があって、これまた面白い。
    自分らしさ批判をしている本は多いけれど、擁護はめずらしい。

  • けっこう今の自分にピッタリ?な本だったと思う。勝ち組負け組み、人の目を意識せずに、自分の心の赴くままに、自分だけの価値観の中で生きられたらどれだけ楽だろう。結局は、自分が人生で何に重きを置くかが問題だと思う。

  • 「(地位、収入、資産など)外的条件は、良い方にかわっても悪い方にかわっても、多くの人は次第にそれに慣れてしまう」と著者は述べている。
    外的条件のなかでも、育ってきた環境や親の収入による教育の違いは見えづらい財産であり、この「見えないあげ底」に気づいていない人たちは、入試などの競争に勝ったのは自分の努力の結果だと考える。反対に、これらのあげ底が無いために競争に負けた人たちは、無念や無力感を抱く。
    格差社会を生き抜くためには、外的条件を求めることをやめ、自分にとって何が最も必要な幸せの条件なのかを見据えることが大切である。そのためには心の内に目を向け、自分らしさを求めることを著者は勧めている。
    前半の格差社会の心理を解く部分はよく理解できた。しかし後半の解決法の部分では、マズローの欲求段階説、仏教の唯識学(マナ識とアーラヤ識)、トルストイの言葉、西田幾多郎の言葉と様々な切り口で論が展開されているが、引用された一つ一つが深遠なため、理解が難しかった。

  • 冷徹とも言える本書の分析は心に刺さる。

    産まれながらの外的条件の差はれっきとしてあると論じる。
    外見の美醜、貧富、親からの愛を受けれるかなどがそれにあたる。
    人間の心理の深くまで形成し、埋めがたい格差があるのは真実だと解く。
    外的条件を求め目標設定して邁進すること自体は、高揚感を得られ幸せな状態だと錯覚しがちだが、そうではない。目標に向かう状態は有限であり、その高揚感もいずれは行き詰まる。
    またその目標とは社会に一方的に押し付けられている場合が多く、自分の本来の生きたい方向性と乖離している可能性がある。

    しかし、外的条件を求める努力を否定する訳ではなく、ある程度達成できるまで進み、その後は内省を通して自分らしく生きる方法を実現すべきだと解く。

  • 貧富の格差が広がる現代において格差が及ぼす心理的影響についてが主な内容である。その上で人間の基本的心理、及び、反応から現代人に蔓延る勝ち組か負け組の二分化についても述べている。感想として、自己肯定感の保ち方、幸福への捉え方による幸福度の違いについて大変参考になった。

  • 格差社会そのものよりも、「勝ち組の憂鬱・負け組のいら立ち」という視点でそれぞれの生き方を描いた本。

    負け組には優しいけれど、これを読んで果たして不平等感を感じずに前向きに生きられるかは?

  • 本書が出版されたのが2006年。当時は「勝ち組」「負け組」が流行語となり、堀江貴文氏らITベンチャーの成功者が時代の寵児としてもてはやされる状況にありました。
    それから6年の間に、堀江氏はライブドア事件で犯罪者とされ、さらにリーマンショックと東日本大震災で、日本の経済事情は大きく変わりました。勝ち組、負け組という言葉も聞かれなくなりましたが、それは経済事情の変化だけではなく、勝ち組は本当に勝ち組だったのだろうか、という疑問が多くの人の中に起こったからではないかと思量します。

    自分は、当時の言葉で言うところの「勝ち組」ではなかったでしょう。その後徳島から東京に転職し、埼玉に引っ越しましたが、収入はそれほど変化していません。ですが今は、自分は恵まれた側にいるのだろうと感じています。
    学歴もあったし、2度の転職を経験してなお、正社員として働き、自分の仕事にやりがいをもって取り組んでいます。結婚もして、(子供はいませんが)幸せな家庭を築いています。形の上では、自分が恵まれた側にいることは、否定しようがありません。その立場から、より立場がよくない人、具体的には非正規雇用者やワーキングプアと呼ばれる人々を、どのように見ていくことになるのか、逆に私が彼らからどう見られているのか、考えさせられます。
    個人的には、正社員と非正規雇用の間に壁を作りたくないし、ワーキングプアがなくなるような仕事のあり方、取り組み方を求めていきたいと考えています。また、「期限を定めない雇用契約」というものは全廃して、正社員も数年おきに雇用契約を更新するようにしていくべきでしょう。そして転職しやすい環境を作り、雇用の流動化を進めていくことで、正規雇用と非正規雇用の間の壁は取り払うことができます。

    本書でもあげられていましたが、制度上のそれよりももっと本質的な問題は、両者間のコミュニケーションの断絶と、それに伴う格差の固定ということになります。これらの問題は、恵まれた側からは見えづらいものですし、恵まれない側は現状にあきらめてしまい、向上心やモチベーションが生まれません。こうやって問題が表に出ないまま、格差が固定される状況が続いていくことになります。
    この問題の解決策は、実はそれほど難しくないと思います。恵まれた側が仕事でも技術でも、未来に通じる道を切り開くのですが、その道を自分たちで独占せず、恵まれない側の人々にも通ってもらうといった形で、すべての働く人を競争に参加させる、参加できる仕組みが必要かと思います。

    文章中、どういった立場の人々を批判しているのか不明確で、見えない敵と戦っているのではないかと思わしき記述もありました。いわゆる「勝ち組」が、自分たちの立場や権力をかさにきて、その他の人々を支配的に扱うようなくだりのところですが、そういった人々が実際にいたのでしょうか。それとも、この6年の変化が、彼らから支配力や権力を奪ってしまったのでしょうか。
    たった6年なのに、働く環境が大きく変わったのだといえるのかもしれません。もっとも、自分の周囲だけの事情で、自分がITベンチャー企業にいるという特殊性もあるのかもしれませんが、本書で指摘されるほど抑圧的な状況にはなく、むしろ働く側が自らの可能性を摘んでしまい、成長を拒否しているところが、2012年の日本を覆っている新たな問題だといえなくはないでしょうか。

  • 海原先生の著書は20代の頃よく読んでて、久し振りって感じだったのですが…過去に読んだ著書は如何にも女性向きという内容の物ばかりだったので、この本は新鮮でした。

    お互いの立場を知って思いやる事、格差を無くすのに一番必要な事ってまずそれに尽きると感じました。

    お金やモノを平等に与えた所で人同士が分け隔てなく繋がり合えるか?って言ったら、まず無理な様な気がする…。

    あと、『自分らしさ』という言葉について、なんか変な意味で一人歩きしていると思っていたのですが、この本で触れられていて、自分と同じ考えで嬉しかったです。

  • 図書館で借りた。

    勝ち組、負け組という分け方があるけれど、勝ち組にはいくら得ても満たされない思いがあり、負け組には運や環境により達成できなかった無念さがある。そのような感情とどう折り合いをつけるのかについて述べている。

    人はよい悪いを問わず、変化した環境にすぐ慣れてしまうのは何故かについての説明から入り、コミュニケーション不全の原因を探り、日本社会は努力が報われる社会かどうかを点検し、自分を縛っているものがあることについて触れ、自己実現とはどういうものかを解説している。

    自己実現が日本では意味を違えて広まっているということを初めて知った。いい加減で努力しないで自分の好きなことばかりしている、という印象を持つ人がいるらしいがそれは多数派なのか疑問を持った。

    日本式メディテーションとして家事などをしているときの無心の大切さに触れていた。わび、さびについての話も少しだけあった。

    所々、人について話していた内容が男、女に限定した話に飛躍する部分があった。「とぶことをおそれない」という節が特にそんな感じだった。

  • 診療内科医の著者からみた、今の日本人が感じる閉塞感の原因をまとめた本である。

    物質的豊かさ=幸せに結びつかない原因などは著者の見解に同意する部分もある。
    ただ、勝ち組、負け組といった表現内容や富と貧困、自分らしさなどは、レッテル貼り、事象の過度な一般化、全無思考に感じてしまう。
    本書では、内容を解り易くするために極端な表現を用いたのかもしれないが、逆効果に思えた。
    この本で負け組と定義される人でも幸せな人は沢山しるだろうし、学力的に才能を出す人もいるだろうし、やはり単純な区分は好きになれない。

全19件中 1 - 10件を表示

こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人 (角川oneテーマ21)のその他の作品

海原純子の作品

ツイートする