官僚とメディア (角川新書)

  • 角川書店 (2007年4月9日発売)
3.37
  • (12)
  • (32)
  • (63)
  • (3)
  • (5)
本棚登録 : 329
感想 : 53
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784047100893

作品紹介・あらすじ

耐震偽装事件に見る国交省とメディアの癒着、最高裁・電通・共同通信社が仕組んだ「タウンミーティング」やらせ事件・・・なぜメディアは暴走する官僚組織の支配に屈するのか?独自取材で驚くべき真実が明らかに。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 1

  • 前半は筆者自身の共同通信でのメディアという組織の体験記。自身のジャーナリストとしての矜持と会社組織のせめぎあいはそれはそれで面白い。
    後半になると、官僚の情報操作に踊らされる報道の数々に、暗澹たる気分にさせられる。特に、耐震偽造事件での、自身の責任を葬った国交省の情報操作は犯罪的だ。当時を振り返ると、自分もマスコミ報道通り「建設会社ぐるみの偽装」を信じてしまっていた。
    このところ、情報操作するまでもなく政官べったりのメディアも多く、状況は益々厳しくなったが、記者の皆さんには是非とも踏ん張ってもらいたい。

  • 2006年、共同通信の「安倍晋三関係施設の火炎瓶放火事件スキャンダル」のスクープ記事をもみ消したのは当時の編集局長、後藤謙次であった。詳しいことが知りたい方はお読みください。以上。

  • レビュー省略

  • 久しぶりに読み応えのあるメディア論。どれだけメディアが体制側と癒着しているのかよくわかる。世論誘導と言われても仕方がない。

  • 官僚とメディアのなれ合いをテーマに、共同通信の記事配信見送り問題から始まる。時代の空気のようなものに、知らないうちにメディアが気を使うようになっているのではないか。

  • メディアが組織の論理で、自然と権力におもねる様子が具体的に描かれている。
    NHKの番組改変問題、裁判員制度での最高裁と電通のやり口などは、職業倫理に欠けると言わざるを得ない。

  • 本書を読むと、現在のメディアを巡る問題状況-いやメディア自身だけに留まらず、それが関わる森羅万象を巡る問題状況と言ったほうがより適切か-が一つの揺ぎ無い構造の上に成立していることがいやが上にも痛感させられる。メディアが文字通り「媒介者」でしかない以上、その入力を掌握するもの=公権力がいかようにも動かすことができるというのは、あまりにも自明な、そして磐石な構図である。逆にそのような構図にも関わらずメディアが反権力であるという妄想が許された時代が牧歌的であったという気さえするほどだ。哀しいかな、権力の世襲を批判しようにも、今や政治記者の身分が三代に渡って世襲されるご時世なのだ。
    言論統制といえば今だに北朝鮮が例に挙がることが多いが、かの国のように「言論統制する事」を半ば公とするような仕組みは、メディアへの入力としての「情報」は統制できても、言論の基盤となる人々の意識を制御することはできない。比較してわが国は言論の自由がタテマエとなっているために、情報を統制することが意識=言論を制御することに直結する。 何でも言えるはずのメディアが黙っているということは、そこに何か言うべき事実が存在しないと見なされる。少なくとも国民はそう見るように馴らされている。
    魚住氏は元記者であり、かつての同僚たちの一片の良心に期待しているようだが、その点については異議がある。大企業の広告と公的機関の発表情報に牛耳られたメディア空間で、高額所得を保障された記者が垂れ流す記事が真実を伝えると考える方がどうかしているのだ。この簡単な事実に全ての人が気付くことからしか、突破口は開けない。

  • 特にメディアが信じられなくなる本。情報の裏付けとは非常に労力を伴うものであり、一般の人は政治問題や様々な事件について本や新聞でしかその情報を仕入れることはできない。その裏にどのような意図が隠されていようと、我々は提示された情報でしか判断できない。その情報が改竄はされていなくとも、判断の為の重要なセンテンスが隠されていたとしたら、もうどうすることもできない。誰のためのメディアなのか、今一度考えさせられる本。

  • うーむ、借り物なんだけど、イマイチ。

    「メディアは権力と癒着しているっ!」
    っていう例のアレ。

    姉歯の耐震偽装事件やライブドア事件など
    ホットなニュースをソースに官僚や検察が
    如何に情報操作をしてるのかって話しだけど。

    別にいまさら言われんでも、という感じ。
    10年前に読んだら衝撃だったのかな?

    そもそも大マスコミに何も期待しておりませぬ。
    ジャーナリズム教の方、敢えてどうぞ。

  • なかなか面白かったです。特に耐震強度偽装事件については、某ブログを通じて「悪のトライアングル」論を支持していたので、にわかにはこの本の記述を信用できなかった。
    でも、第6章「検察の暴走」を読んで、どれも信用できるかも・・と感じた。詳しいことを書くとこのブログがいろいろ面倒なことになりそうなので割愛するけどとても興味ある内容です。第7章では朝日新聞とNHK、第8章では最高裁判所を扱っている。参考までにカバーに書かれたPR文を以下に転載しておきます。
    官僚の暴走と、
    すり寄るメディアの深い闇
    ▲「組織」を優先するメディアの腐敗
    ▲官僚の情報操作に踊るお粗末報道
    ▲官僚を恐れ批判しないメディアの弱み
    ▲真実を求めて危険な橋を渡った記者の行方
    ▲最高裁・電通・メディアが世論誘導を共謀
    books70

  • 著者は、共同通信で20年ほど記者をするも、記事内容への上からの圧力、自主規制の強制が嫌になり退社、フリーのジャーナリストとなった人である。
    そのため実感を込めてメディアの問題点を取り上げているのがよく分かる。

    目次を見ると週刊誌の吊り広告のような内容だが、実際、月刊現代とアエラの記事をまとめた本であった(月刊誌だけど)。

    1.新聞の政治家へのすり寄り、外部からの圧力と過剰な自主規制。情報源(政治家、官庁)を怒らせたくないからそういうことになるらしい。

    2.姉歯の耐震偽装事件。
    姉歯建築士、ディベロッパー、建築会社、確認検査機関、コンサルタント会社らが結託して偽装していたような報道が大々的にされ、世論は大騒ぎ、警察も大がかりな捜査を開始する。
    しかしよくよく調べてみると、姉歯が一人で適当な計算書を作り、他の者は誰もそのことを知らず、気付かず、過失はあったとしても共犯はあり得ないということが分かる。
    警察は今更引っ込みが付かず、収まらないであろう世論に気兼ねもして、姉歯以外の人達を軽微な粉飾決算などで別件逮捕、新聞各紙はそのことを誉めそやす記事を載せる。
    結局、形骸化した建築確認システムを放置していた国交省の責任は問題にされずにウヤムヤのままであった。

    3.ライブドア事件。
    検察の国策捜査と腐敗、暴走、捜査能力の著しい低下。
    佐藤優の国家の罠と同じような話。
    大阪地検特捜部のデータ改ざん事件もあったし特捜はほんとにヤバイ…

    4.政治圧力によるNHKの番組改変事件。

    5.裁判所、電通、新聞社、共同通信が癒着して裁判員制度の広報を行っていた事件。
    サクラを集めてタウンミーティングを全国で共同開催、この事を広告ではなく記事として全国の紙面に大きく掲載+下段には裁判所の広告を掲載。
    裁判所は裁判員制度賛成へと世論を誘導したい、電通や新聞社は巨額の政府広報費が得たい、という関係。
    最近ネットで経産省のクールジャパン戦略に電通が噛んでると話題だが、こういったことは当たり前に起きているみたい。

    読みやすくて面白かった。

  • 言論の自由とメディアの多様性がいかに大切であるかを再認識した。

  • そういえば世間は事件の始まりには注目し、
    裁判所の終わりにも注目するけど、

    事件がひっそりと終わり、ほんとは何事もなかった時、無関心ですね。

    官僚もだけど、そんな特捜部に躍らされる僕らにも責任があるのだろう。

  •  「官僚とメディアコントロール」がタイトルでいいんじゃないかと。
     そんなに驚くべきとはないが、姉歯事件の内幕が興味を引く。
     結局著者も「メディア」というよりも「マスコミ」にいたわけで、緩いながらも問題的をしている作品。

  • 官僚とメディアの癒着は分かっていたけど、裁判所がメディアと癒着していたのには絶句した。その場面を読んでいる瞬間、時が止まった感じだった。それほど、私は裁判所を盲目的に信頼してたということか。

  • 官僚とメディアの凄まじい癒着と腐敗。

  • あげられた事例は、「さもありなん」という感じで、衝撃的なものはそれほどない。
    それだけ既成事実として官僚とメディアの関係はすでに成り立っているのだろう。
    筆者は、「それではダメだ」とジャーナリズムの腐敗を指摘する。
    心して報道を捉えていかなくてはならない。
    われわれもメディアに踊らされていては、同じなのだ。

  • 報道は悪のイメージを作り出し、そのイメージに乗っかって当局が罪人を作り出す。その結果、人々の目は最も肝心なところからそらされていく。
    著者は、メディアと権力の接点で起きている出来事を取材することで、「メディアは誰のものか」と問いかける。新聞やテレビを中心とするメディアは経営者や株主などのものではなく、無数の読者のものであるべきだ。

    メディアは多くの人々の身近な情報源であり、世論の形成に大きな影響を及ぼしている。それゆえ民主主義社会の中でメディアが果たすべき役割は非常に大きい。この本を読むと、そのようなメディアのあり方について再考させられる。

  • [ 内容 ]
    官僚の爆走と、すり寄るメディアの深い闇。

    [ 目次 ]
    第1章 もみ消されたスキャンダル
    第2章 組織メディアの内実
    第3章 悪のトライアングル
    第4章 官僚たちの思惑
    第5章 情報幕僚
    第6章 検察の暴走
    第7章 NHKと朝日新聞
    第8章 最高裁が手を染めた「二七億円の癒着」

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

全47件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

魚住 昭(うおずみ・あきら)
1951年熊本県生まれ。一橋大学法学部卒業後、共同通信社入社。司法記者として、主に東京地検特捜部、リクルート事件の取材にあたる。在職中、大本営参謀・瀬島龍三を描いた『沈黙のファイル』(共同通信社社会部編、共同通信社、のち新潮文庫)を著す。1996年退職後、フリージャーナリストとして活躍。2004年、『野中広務 差別と権力』(講談社)により講談社ノンフィクション賞受賞。2014年より城山三郎賞選考委員。その他の著書に『特捜検察』(岩波書店)、『特捜検察の闇』(文藝春秋)、『渡邉恒雄 メディアと権力』(講談社)、『国家とメディア 事件の真相に迫る』(筑摩書房)、『官僚とメディア』(角川書店)などがある。

「2021年 『出版と権力 講談社と野間家の一一〇年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

魚住昭の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×