死体は悩む―多発する猟奇殺人事件の真実 (角川oneテーマ21 C 137)

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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047101104

作品紹介・あらすじ

学校内のトイレで女子高生が産んだ胎児の死体、乳房や陰部を切り取られた死体、樹海の白骨死体が教えてくれること…etc.2万体の死体を検死した著者が多発する理由なき猟奇殺人事件の深層を抉る。

感想・レビュー・書評

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  • 様々な事件や事故、病気等で日々多くの人々が亡くなっている。凡そ4000人弱の人が日本の1日あたりの死者数で近年は長らく少子化が進んだこともあり、生まれてくる人数の2500名を大きく超えて、1日あたり1500人程度人口が減っていく計算だ。死亡者の大半は犯罪や事故ではなく病気や老衰であろうが、中には自殺などもあり、特に高齢者の自殺は増加している。
    本書はそうした人が亡くなった際に、死因を特定する職業として、監察医の著者の体験や監察医の必要性についての著者の考えを記載している。死体は語ると言われるが、死者の見た目(外傷)からだけでなく臓器や骨などの状態から死因を特定していく職業が監察医の役割だ。わかりやすくドラマなどでは殺人犯が死体を自殺に見せかけるなど、犯罪を隠すための手段として死体に細工するが、監察医がそれを医学的検知から暴いていく、そうした職業である。
    事実、筆者の経験などからは、そうした事件性を帯びた死者であっても、実際には他殺によるものとして発見される事がしばしばある様だ。
    焼死体、飛び降り自殺、轢き逃げなどは死因を明らかに語ってくる(死者の訴え)ものがあり、特に自殺した死体の凄惨さや、水没しした人の死後の状態などは、あまり食事前や食事中に見ない方が良いだろう。
    人は生まれた瞬間から、死へのカウントダウンを始めている。不老不死の薬でも無い限り、誰しも直面する死。自分も予定では、最期老衰でこの世を去ると思っているが、果たしてその様な最後を無事に迎えられるだろうか。中々こうした職業の人達の世話になりたくは無いが、いざという時は私の死者としての声は間違えずに聞いて欲しいものである。

  • 昭和の死体と平成の死体の違いが興味深い
    犯罪の低年齢化が激しい
    令和の死体はどんなのになるのか


    人は必ず死を迎える、この先経験豊富な監察医が増えることを願いたい

  • 既に退官済みの元検死官の経験と知恵に基づく死体論。
    一般的な印象や感覚とは違う、経験豊富な作者だからこそ書ける内容で、なるほどと思うことが多かった。
    たとえ水死体と焼死体でも、生前に何があったのか死体は雄弁に語るという。
    実際に記憶に残っているいくつかの事件についても言及しており、興味深いポイントがいくつかあった。
    死体の話ではあるが、さらっと読める。

  • あなたが誰かに殺されたとする。
    しかし、監察医や法医学者、警察医などがそれを見抜けなかったために病死として扱われてしまえば、事件として浮上することもなく、犯人は自分がいつか逮捕されるかもしれないという危惧を抱くこともなく、笑いながら毎日を過ごしていくことを許してしまうことになる。

    昭和の時代の死体は雄弁だったという。
    「私は病死ではない。殺されたのだ」「殺害方法はこうだった」
    被害者の死体を検死・解剖し、死体の発する“声”に耳を傾ければ、おのずと犯人像や動機が見えてくる場合が多かった。
    しかし平成の世では“動機のない殺人”が横行し、その被害者の遺体は何を語っていいか判らずに沈黙する。
    死体は語らず、また、死体の声を聞き取る技術を持つ者がいない時代になってしまっているのだ──。


    いくつもの殺人を見逃してしまう結果を生む現在の日本の体制、経験・知識・予算不足が蔓延する現場、変質する犯罪の実態。
    元東京都監察医務院長として2万体の死体を検死した著者、上野正彦氏が現代社会に向けて警告する書。
    氏は断言します。例えどろどろに腐敗しようと、焼け焦げようと、水中に沈めようと、ばらばらに切り刻もうと、死体は多くのことを語ってくれると。

    『何の証拠も残さずに、人の命を奪うことなどはできないのである』

  • 死体は雄弁である。

    昭和を現役に30年間監察医を務めた著者の経験則から記述される、様々な死体の言葉と真実。

    昭和と平成での死体の在り方の移り変わりから始まる。
    様々な事件、事故、自殺によって生み出された死体の遺す声から導き出される真相からは、犯人像が割り出されることもある。

    入水・縊死・樹海・飛び降り・飛び込み自殺における死体の損傷や経過の詳細が記述されていたが、どれも惨たらしいものばかりだった。

  • 元々そういう文章を書く人ではあったけど、これは特に感傷的というか科学とは違う視点で死体を語る部分が多かった。
    良く言えば長年の経験から得られた含蓄有る言葉ということになるのかもしれない。ただ率直な感想としてはありふれた老人の放言。主観的でロマンチシズムでやや一人よがりな部分に目を瞑れば面白いし言葉遣いも平易で読みやすい。

  • とりえず溺死は嫌だ

  • 事実は小説より奇なりっていうんでしょうかね〜。読んでて身体がかゆくなってきたorz
    やっぱり、人間まともに死ねてこそ幸せですね。
    自殺イクナイ。何より片付ける人に迷惑です。



    これは余談なんですが、やたら韓国を持ち上げるような書き方が多いのが気になったんですが、実の親が子供を殺すようなことはないのも、地下鉄で若者が率先して席を譲るのも素晴らしいけど、レイプとか性犯罪もかなり多いと聞きましたが…

  • 「死体は語る」からトーンは変わっていないし、情報も昭和のものなので鮮度は割り引かれるが、それでも内容の独自性は秀逸。「最近の殺人は昔と違う」なんて繰言みたいだが、作者が言うと説得力が違う。

  • 昔から法医学に興味があったので、一度この方の本は読んでみたかったのだけど…。

    このサブタイトル、いらなくね?正確なタイトルではないよね。

    でもこれ読んだら、老衰とか眠るように死にたいなぁってつくづく思いました。

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著者プロフィール

昭和17年、和歌山県生まれ。京都大学法学部卒業。職業:弁護士・公認会計士。●主な著書 『新万葉集読本』、『平成歌合 新古今和歌集百番』、『平成歌合 古今和歌集百番』、『百人一首と遊ぶ 一人百首』(以上、角川学芸出版。ペンネーム上野正比古)、『光彩陸離 写歌集Ⅲ』、『ヨーロッパの大地と営み 写歌集Ⅱ』、『ヨーロッパの山と花 写歌集Ⅰ』(以上、東洋出版)

「2016年 『万葉集難訓歌 一三〇〇年の謎を解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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