子どもの力は学び合ってこそ育つ: 金森学級38年の教え (角川oneテーマ21 A 73)

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  • / ISBN・EAN: 9784047101166

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  • 著者の金森先生は「情操教育の最高峰」と呼ばれる。なるほど、心に染み入る言葉がこれでもかと出てくる。もう一度再読したい。

    <目次>
    第一章 国家は子どもに何を求めているのか
    第二章 教師の指導力不足は本当か
    第三章 子どもの生活と内面世界はどうなっているか
    第四章 いじめをどのように克服するのか
    第五章 本物の学力とはなにか
    第六章 親は子の成長とどう向き合うか
    第七章 生き抜くための土台づくり

    <メモ>
    第一章 国家は子どもに何を求めているのか
    “2006年、教育基本法が「改正」された。実際には「改悪」と呼びたい内容であるが、この「改正」に導くために槍玉に挙げられたんが、「子どもの学力低下」「子どものモラル低下」「教師の指導力低下」であった。しかし、38年間、教師として現場で子どもたちや同僚と過してきた経験と実感から、こうした「低下」は、意図的に作り上げられたものだとしか思えない。つまり、あたかも教育現場だけに全ての問題があるように見せかけて、教育基本法を変えて、戦争をする国づくりの道具にされたということだ。”

    第二章 教師の指導力不足は本当か
    “過去も現在も指導力にさまざまな問題があるのは確かだが、教師にとって指導力を発揮しにくい状況が教育改革によってつくり出される傾向が、年々強まっているといったほうがよい。現場では、教師が子どもたちと接する場が奪われていく一方なのだ。”
    ・子どもとふれあう時間の減少
    ・フェスティバル文化の激減
    ・職場の共同性も弱めた
    教師の指導力と一言で言うが、教職独自の専門的力量を大きく左右するのは、人間性と社会性であると私は考えている。(48)
    ・チョウとガと人間はつながっている
    ・子どもが発見し伝えあう
    ・子どもの夢中をテコにする
    ・教員免許更新制

    第三章 子どもの生活と内面世界はどうなっているか
    “学校は、間違いなく現代社会の中に存在し、社会が抱える問題を繁栄している。現代社会の中の学校という特殊な社会で、子どもたちはそれぞれの想いを抱えて懸命に生きている。同じ時代に生きる者として、子どもの内面世界をしっかり捉えておかなければ、大きな間違いを生み出すことになりかねない”
    ・ストレス・不安をため込む
    ・習い事にも評価の目
    ・家庭も学校化する
    ・心の防波堤がなっくなっている
    ・子どもの心の中に「本当」がある
    ・不幸だと決めないで
    ・多くの子が家庭に悩み
    ・大人はキャッチャーに徹する
    ・SOSを無理に語らせない
    ・子どもが心を拓くとき
    ・事の重さを受け止める

    第四章 いじめをどのように克服するのか
    “まず大事なのは、私たちが目の前にいる子どもたちをどう捉えるかということだ。いじめやトラブルを解きほぐす視点は、人間をどう見るかと同じことであろう。”

    「教育ってそんなに難しく考えないでいい。毎日、一人ひとり全ての子の名前を五回程度しっかり見つめ、呼んであげることを大切にしたら、子どもは認められ、愛されていることに安心し、がんばることができる」(91)
    いじめを生む5つの要素
    ・学習やスポーツが競争や勝ち負けとして扱われ、必ず評価の対象になっている点
    ・学校というのは同年齢の集団であり、何をやっても単純に比較される集団
    ・人と人とが激しくぶつかりあって失敗を繰り返しながら、失敗が当然の権利として認められる社会
    ・一度に、一斉に、同じようにが強く求められる社会。遅れたり、特別だったりするとどうしても攻撃を受けやすい。
    ・子どもたちというのはまだまだ抑制や自立心が弱い集団

    子どもの関係性は遊びから
    今、学校の課題は関係性を育むことだと捉えている。実は、学校に大人が、親が、一番期待しているのは学力ではなく、友達とうまくやっていける力、社会性を身につけて欲しいということだとさまざまな調査ではっきりしている。(104)
    体をぶつけて仲良くなる(105)
    学校というところを教師たちは、勘違いしていることがある。指示、許可、判断のすべてが教師に集中している。(中略)私の学級は原則すべて仲間に言う。(107)

    第五章 本物の学力とはなにか
    “「子どもの学力が低下した」と盛んに言われている。しかし、そう言っている今の大人たちの学力は、果たして本当に高いのだろうか。今の大人たちは、小中学校や高校、そして大学での学びを通して、学力を身につけたと言えるのだろうか。そもそも、学力とは、何を意味するのか?”

    今、授業という学びあいの中で、ひとりひとりの持っている心や生活を織り成すということが不十分すぎるから、いじめや自己否定感を強めている。(中略)
    学校というのは実はその学びあいこそが、最大の使命ではないか。いじめ対策は道徳教育の強化ではなく、毎日学ぶ授業を通して、子どもたちの中に人間を見るしなやかさ、奥行き、深さ、多様さというものを育んでいくことが必要だと想っている。(136)
    「学力とは、自分と自分を取り巻く世界を読み解き、それを自分のことばで表現し、他者に伝え、交流する力だ」自著『希望の教室』(138)
    僕たちって、毎日、膨大ないのちをもらって、生きているt想っていたが、そうじゃない、「生かされているものなんだ」ということに気づく。(141)
    いのちのリレー(143)

    第六章 親は子の成長とどう向き合うか
    “わが子が生まれたばかりのときには、どの親も「元気で幸せになってほしい」と願うだろうし、この願いがすべてであったはずだ。しかし、現実社会の中で、親の願いは揺れ、膨らんでいき、ときには過剰な期待となって子どもに重くのしかかる。子どもは抱えきれない願いをあまり要求され続けると、いつかは行き詰る。余分な重石をすくいとってくれる受け皿は、子どもにも親にも必要なのだ。”
    ・台所は学びあいの場
    ・共同の子育てを
    ・登山・キャンプ・読書など
    第七章 生き抜くための土台づくり
    ・いざという時の判断力

    2012.11.04 図書館で見つけて図書館で借りる。
    2012.11.07 読書開始。
    2012.11.08 読了

  • 小学生くらいでもう一度読みたい

  • 教育とは本当に多岐に渡る分析や見方があるなあと実感した。興味を抱く点は、この著者がいかなる経験を積み重ねて自らの黄金律に至ったかということ。正誤は無かろうが、持論と異なるその背景にはどんな事象が存在したのか。
    ちょっと徒然なるままに書いた印象が強い。子どもの興味をテコに、という言葉は素晴らしいと思った。草舟のごとく、子どもの興味という水流を一定の方向に乗りこなせる技量が必要なんだな。
    それ以外の言及に関してはちょっとクエスチョンマーク。現場偏重な気がしなくもない。教員の指導力低下、子どもの学力低下は間違いなく起きている現実である。仮に教育委員会や文科省が迷走していたとしても、それは陰謀でも小細工でもサブリミナルでもない。原因はあろうが、確実に起きているんだと思う。誤魔化すな。

  • 金森先生の考え方が素敵
    教育の根本を考えられる一冊

  •  金森さんは2007年まで石川県金沢市の小学校で勤めていました。だから,本書は退職後即書き下ろされた本というわけです。
     「いのちの教育」「デス教育」「ハッピークラス」として日本的に有名になった実践の下になる考え方が随所に語られています。
     教師論,指導論,子ども観,保護者観,そして教育観と社会を見る目など,「これだけ確かな目で見,考えて実践していたんだなあ」と感心しました。そして,わたしもマネできるところはさっそく明日からやってみよう!と思いました。
     引用にも書きましたが,「基礎・基本は現実の文脈の中にこそある」のですから,教師としての指導法の基礎・基本も金森実践の中にこそあるのでしょう。私たち読者がそれを学び取ったとき,その基礎・基本を生かして自分の実践を作り上げていけるのだと思います。

  • 1章は読み飛ばしたが、それでも十分に内容は理解できる。
    大人はキャッチャーに徹し、子どもに考えさせて、子どもたちが学習を作っていく。教師は子どもとともに学ぶ存在なんだと思った。

    大人が判断をして、子どもに与えることは簡単だ。しかし、子どもが判断をしないと、子どもが将来大人になって、判断を求められたときに対処できない。

    大人は、子どもの判断の機会を奪ってはいけないのだ。

    学びあいのなかで、子どもが子どもに伝え、深め合っていく。
    コミュニケーション能力が希薄だと言われる現代の教育にこそ取り入れるべき手法なのではないか、と感じた。

  • とっても金森先生らしい。人と人だけではなく、世界のすべてがつながりの中で生きているという教育観と、それを口先ではなく形にした具現力は見事。
    どうしたら、子ども達の胸のうちを受けとめる「キャッチャー」になれるのだろうか。保護者からクレームを受けたことがない(ゼロではないだろうが...晩年、名物教師になってからはゼロもありえる)あたり、金森先生だからできるんだという、よくある諦めを引き出してしまいそう。

  • 今までの金森先生の本よりも、普段の金森先生の教育がみえる本かも。
    学級のみんなで、一人一人を大切に認め合い、その中で学習していくスタンスは変わらず。
    これは究極の理想なんだけど、いざ担任になるとなかなか実現できない。
    でも、この本含め、金森先生の本を読んでいると、担任として何をすればいいのか、何が大切なのか少し分かってくる気がします。

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著者プロフィール

1946年石川県能登生まれ。金沢大学教育学部卒業後、教職につく。石川県内の八つの小学校を経て2007年3月退職。2008年4月より北陸学院大学人間総合学部幼児児童教育学科教授。上越教育大・金沢大学非常勤講師。石川県民教育文化センター所長。日本生活教育連盟全国委員・石川サークル副委員長。金沢家庭裁判所委員。劇団文化座友の会理事。1989年、妊娠7ヶ月のお母さんを招いた「性の授業」を実践し「いのちの授業」に取り組む。1990年末期がんの患者さんと共に「デス・エデュケーション」を初めて日本の小学校で実施する。1997年第29回中日教育賞。1989年第10回教育科学研究会賞。NHKスペシャル「涙と笑いのハッピークラス 四年一組命の授業」は2003年第30回日本賞グランプリを受賞。2004年第25回バンフテレビ祭「グローバルテレビジョン・グランドプライズ」受賞。2007年第30回石川テレビ賞受賞。

「2009年 『金森俊朗の子ども・授業・教師・教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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