あぁ、監督 ――名将、奇将、珍将 (角川oneテーマ21)

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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047101838

作品紹介・あらすじ

歴代監督・現役監督の戦術・人間性を徹底分析。組織は監督の器より大きくならず。

感想・レビュー・書評

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  • 野村克也という人物は、僕は監督でしか知らない。まずは東京ヤクルトの監督で優勝し、万年Bクラスで低迷していた阪神の上昇基盤を作り、そして楽天を勝てるチームに育て上げた知将。僕の知っている野村監督というのは、この3チームを渡り歩いた監督という姿。そして、なんといってもヤクルト時代に築き上げたID野球という分析野球の人というイメージがありました。

    僕が本格的にプロ野球を応援しだしたのは2009年シーズンからなので、当然、楽天におられたときの試合も観戦したことがあります。腹の出たおっちゃんという見た目な感じはそうでしたが、この本を読んでいると野村監督がどういう野球像を、そして監督像を描いておられたが、よく分かります。ヤクルトでも、阪神でも、楽天でも、ノムさんが入られる前は失礼ながらもBクラスをフワフワしている弱小球団だった。阪神時代は在籍中に結果は残せなかったけど、ヤクルトではリーグ優勝と日本シリーズ制覇、楽天でも万年下位だったチームをクライマックスまで連れて行った。メディアの取り扱われ方はいろいろあるかもしれませんが、単純に実績だけを見ても、なかなかの凄腕だということが分かります。

    分析野球というと、よく野球中継や野球ゲームにも出てくる、ストライクゾーンを9つに分割するという配球を映し出すのを「野村スコープ」というらしい。野球を”とりあえず何が何でも打て、そして投げろ”という精神論ではなく、それぞれの選手のクセを分析し、そしてそれに対応するようにプレーをするというID野球というスタイルは日本の野球界に大きなインパクトであったと思います。

    それにしても、この本には凄くいい言葉も書かれている。参考までに。

    野球は「間」のスポーツだからだ。ピッチャーが一球投げるごとに時間があく。そして、これが何を意味するかといえば、「このあいだに考えろ、備えろ」ということにほかならない。一球ごとに変化する状況の中で、どういう選択をするのがいちばんベストなのか。即座にそれを考え、準備する時間が与えられているのである。(p.160)

    サッカーのように動き続けるスポーツでない野球。こういう静止した時間のあるスポーツは、一般的に考える、考えてしまうところに強さ弱さが出るといいます。ここが野球の魅力でもあるんです。

    人間は、生涯学習である。その意欲をなくしたらおしまいだ。進歩も成長もない。「組織はリーダーの力量以上に伸びない」と私はたびたびいっているが、だとしたら、リーダーすなわち監督自身が力量を伸ばし、器を大きくしなければ、チームもそれ以上成長しない。(p.120)

    これは野球だけでなく、教育観や組織論にもつながってくる言葉。人間は日々成長する生き物。成長が止まったときが、”人”としての後退の時期なのかと思います。どんなに小さなことでも、どんなに小さな一歩でも、謙虚に学ぶ姿勢がいつも必要。そういうことを理解できる集団こそ、強いものはないということでしょう。

    折しも、WBCの合宿が始まりました。この本では2009年の前回大会直前に書かれており、当時も少しすったもんだで最終的に原監督に決まったことにノムさんのボヤキがあります(笑)。そのボヤキを跳ね返して、前回は連覇を達成した侍ジャパン。今回は果たしてどうなるのでしょうか。。

  • 野村さんによる歴代の名監督への分析と評価は面白かったです。
    野村さんが現役の監督時代、選手に感じる力を身に着けるように
    指導されておりますが、野球に限らず、すべての仕事に通じる指導法に
    思います。

  • とある事情から野村さんの考えを知りたくて、本書を読んだ。当初の思惑とは異なって、入れたい項目は見当外れだったものの、野村さんの考え方を知る事ができたのはシメたものだった。

    彼のプロでの成績の根幹や他の監督の評、そしてID野球と呼ばれた際にスコアラーを鍛えた話は非常にシンパシーを感じた。
    今のデータ分析に足りないのはこれなのだな。

    また、人を遺してこそ監督であるという話にはとても共感したし、その行き着く先が安岡正篤先生だったことで、心理的な距離が縮まった。(というか、まあ師事していた人が参照していた先が同じという事で距離が縮まったと思っただけ)

    プロ野球は広告モデルの依存のままに、多少は脱却しているものの構造改革はできていない。後継者不在の項目におけるぼやきはまさにシステム不均衡だろう。
    このような名物監督が減ったのは残念だが、それもまた時代なのだろう。

    ■目次
    まえがき
    監督には四つの敵がいる
    マスコミと監督

    第一章 監督の条件
    「監督業」に殺された蔭山さん
    なぜ名参謀は名監督になれないのか
    監督の器ー人望・度量
    貫禄と威厳
    表現力
    決断力
    名捕手が名監督になるわけ
    古田が失敗したわけ
    落合は名監督の器か
    監督の敵

    第二章 私が見た「名監督」たち
    選手が動かす六つのファクター
    恐怖と情感にあふれていた星野仙一
    怖さと情熱と科学の人、西本幸雄
    二流選手から名将になった上田利治
    ブレイザーに好影響を受けた、古葉竹識
    絶対的な指揮官、広岡達郎
    揃った戦力を使うのに卓越していた森祇晶
    人格者、王貞治
    親分・鶴岡一人
    革新性ももっていた鶴岡監督
    知将・三原脩
    ダンディな勝負師、水原
    六つのファクターをすべて持っていた川上哲治
    九連覇を支えた人間教育

    第三章 間違いだらけの監督選び
    迷走したWBCの監督選び
    人材不足が監督選考を難航させた
    間違いだらけの監督選び
    タレント性
    西武・渡辺監督と巨人・原監督の違い
    順番性
    短くなった監督の賞味期限
    監督養成システムの崩壊
    人材不足を象徴している外国人監督の増加
    なぜ知将が少なくなったのか
    限界を知ることの大切さ
    監督講習会を実施せよ
    WBCは勝てるか?

    第四章 野村流監督心得
    青天の霹靂
    ブレイザー・ヘッドコーチ
    「日本人は何も考えていない」
    チーム掌握の第一歩は意識改革
    監督は選手と距離を置くべき
    「死んだふり」で三位から日本シリーズへ
    コーチより評論家を経験すべき
    無意識に監督の仕事をしていた評論家時代
    監督は言葉を持て
    編成との意思疎通
    適材適所は才能に勝る
    スコアラーには「表現力」を問う
    一に準備、二に準備
    ほんとうの無形の力とは
    接線を制する四つの要素
    知力がぶつかりあった森西武との日本シリーズ
    「野村の考え」が浸透して勝ち取った日本一

    第五章 人を潰してこそ、真の名監督である
    財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を潰すと上とする
    監督の仕事は「人づくり」
    己を過信すれば成長は止まる
    無視・賞賛・非難
    人はプロセスでつくられる

  • データはあくまで参考で「過去」のものだからである。そこに「観察」と「洞察」を加え、「未来」を予測すること。それが本当の無形の力と呼ぶべきものである。

    財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上とする。

    「人間は、無視・賞賛・非難の段階で試される」という。箸にも棒にもかからない状態では、徹底的に「無視」。少し希望が見えてきたら「賞賛」。そして一人前と認められるようになったら「非難」する。そのようにされて人は成長していくのだと。

  • 野村克也氏が歴代の名監督を月旦評。
    出てくる人物が少し古いので知らん人には退屈なところもあるかもだが、努力家として知られる野村氏の姿勢がわかってよいと思う。今後、日本のプロ野球界でこれほどの人は出てこないのではないだろうか。

    安岡正篤著「活眼活学」を薦めているのが印象的であった。

  •  前著『巨人軍論』の続編的な内容。監督とは何か、監督に必要な資質とは何かについて述べた後、古今の具体例(自分が見てきた監督、憧れた監督、覇を競ったライバル監督、そして本書執筆現在の監督)を引きながら説明している。

     プロ野球に必要なのは、気力・体力・知力で、気力と体力があるのは当たり前。その二つがあることを前提にして知力で戦うのがプロの醍醐味だ、という圧倒的な正論にはぐうの音も出ない。著者が、監督して長嶋茂雄に敵意を燃やすのも、何となくわかる気がする(私は長嶋ファンだけど…。本書は長嶋に対する対抗心と「カンピューター采配」を認めない心理から、監督としての長嶋茂雄をほとんど無視するだけだったが、それが少し残念と言えば残念だった。ちなみに、長嶋巨人で日本一も経験した落合博満は、著書『采配』において、なぜ長嶋があそこまで四番を揃えたがったかについても私見を述べている)。

     本書でも人間教育の大切さについて繰り返し述べられており、著者自身が模範としたV9時代の巨人軍監督・川上哲治を盛んに称揚している。それは正しいことだと私も思うのだが、著者自身「私には人望がないようだ」とこぼすように、自らの人間性についても、もう少し涵養する余地はあったように思う。
     若い頃は褒めるのが下手で、選手をなかなか褒められなかったそうだが、それに加えて本書の中で「古田は年賀状一枚寄越さない」だとか「古田の人間教育には失敗したわけだが」などと書いてしまうところに、古田さん側の複雑な感情にも思いをいたしてしまった。というか、腹に据えかねてるとしても、こうやって本に書いちゃダメだと思う(笑)。
     あと、南海の監督を降ろされたことについて「鶴岡一派と反りが合わなかったからか」とあったが、当時はまだ愛人だった沙知代さんがチーム・選手へ口出ししたり著しい公私混同が見られたことが著者を大事にしていたオーナーの耳に入った、という要因もあるようで、さすがにこれは自著には書けないことだろうけど、これを踏まえて人間教育や組織論を述べているのだとしたら、別の意味で含蓄が深いように思う。

     著者の監督論の総論に当たる部分は一通りわかったように思うので、今度はもう少し細かい部分(「各論」にあたるデータ分析、ID野球の部分)を知りたいと思った。

  • 財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする。
    そう心がけたい。

  • 結構好んで読んでいる野村克也監督の著作。楽天監督時代に書かれたものであるが、相変わらず読みやすく最近はブックオフで105円で売っているので、大変良い。

    野村監督が考えている名監督の条件を中国のことわざを引用して、こう考えている。

    「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする。」

    このことはビジネスの世界でも納得である。数代にもわたって繁栄している企業は、初代の有力者が財と仕事を遺すだけでなく、有力な後継者を遺している。よくできたことわざだと感じた。

    また野村監督はほかの著書でも、まぐれの優勝はあっても、本当の実力がないと連覇はないと。そういう意味では、野村監督後のヤクルトと阪神の上位進出は安定している。特にヤクルトは古田は失敗してのは意外だが、この後宮本という選手がいる。意外に池山も楽天のコーチに入っている、後々はヤクルトに来るかもしれない。古田の復帰ももちろんあるだろう。人を遺した野村監督の功績は大きいと思う。

  • 財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする

  • 監督って深いね。

    我が愛するベイスターズの監督は、
    こりゃノムさんから見たら物足りないわけだ。

    でも、応援する側からしたら、
    今んところ十分すぎるくらいにやってくれてるんだけどね。

    とりあえず、2年で雰囲気を変えて、
    いよいよ本物の監督(白井かな?)が登場といったところですかね?

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著者プロフィール

元プロ野球監督、野球解説者

「2018年 『なにもできない夫が、妻を亡くしたら』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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