アイルランドを知れば日本がわかる (角川oneテーマ21 A 101)

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  • 角川グループパブリッシング
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047101951

作品紹介・あらすじ

アイルランドからアメリカ、イギリス、日本を考える。資源小国としての大いなる生き方。最貧国から世界有数の豊かな国に。日本の"姿見"としてのアイルランドという国家。

感想・レビュー・書評

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  • ●アイルランドについて書かれた本は初めて読んだ。本書では、「日本のように奇跡の経済発展を遂げたアイルランド」といったように、日本とアイルランドの共通点についても述べている。

  • 日本とアイルランドの共通点。
    資源のない島国
    移民政策によるサバイバル
    英米両国との近さと独自文化の誇り
    古い文化への誇り

    弱きを助ける正義感
    ー見返りなしのODA、アパルトヘイトへの強固な対応
    国際機関でも国のサイズに見合わない存在感
    開かれた社会:移民受け入れ、流出

    アイルランドの課題
    ー都市化の進行とインフラ整備の遅れ
    ー経済的な歪みの発生
    ー家族や宗教の社会基盤の変質

    アメリカにおけるアイリッシュ差別、カトリックであることも原因
    イギリスとの不仲、選挙権を閉ざされていたからこそ投票率が格段に高い。
    警察官や消防士はアイリッシュ系


    イギリスとアイルランド問題は日韓問題に似てる。

    イギリスの外交:ちからでなく知力による仲立ち

    和解とは被害者がカタルシスを得るプロセス

    アイルランドは外資優遇している。
    1、特定の地域への投資に対して一定期間操業して雇用をもたらすことと引き換えに相当多額の補助金を提供する
    2、長期間にわたる法人課税の減免を認める
    3、その後も低い法人税率を維持する

    もともと地場産業が乏しいので外資が地場産業を圧迫するという懸念はなく、外資こそが雇用を生み、輸出の形で富を生むという哲学。

    外資への法人税率は12.5%(アメリカ国内の法人税率は30%台)→高付加価値で儲かる企業ほどアイルランドに進出する意欲がわく。

    いまやマイクロソフト、インテル、オラクル、SAPなどの主要企業が拠点をおく世界一のソフトウェア輸出国。

    日本企業は1958年にブラザー工業が進出しソニー、旭化成、NECなどメーカー進出が続いた。しかしアイルランドの経済発展で労働力コストが増大したため撤退企業もでた。
    現在ではその穴埋めのために金融やリース、医療機器薬品などの分野で新たな企業進出。

    アイルランドだけヨーロッパ中でこんなに法人税率が低いのはEC加盟当時に域内で最貧国だったから。しかし今は域内で最高水準の一人当たりGDPのため低い税率で外資を呼び込むのをやめたらどうかということになっているらしい。

    現在は自国産業の育成と自立的改革が進められている。英語を母国語とする教育水準が高い人材をいかしてハイテク部門の研究開発、さらには高度な金融サービスなどへの展開を推し進め、より付加価値の高い産業構造への転換をはかろうとするものだ。教育は大学まで完全無償。

    開かれた構造であるほど外部からの大波を受けやすい。

    先日ダブリンにいったとき、アイルランドの人にはなにか素朴さがみられ、強い政治参加意識があり、利他精神があると感じた。その理由はここにあるのかもしれないと感じた。

    でもやっぱり日本人が書く文章ってポリティカリーコレクトじゃないのでとても刺さる。レッテル的で差別を助長させそうな差別の描写などがかなり泣ける

  • 日本とアイルランド?関係なさそうじゃん。と思っていたけど、間違っていた。確かに似ているところ、見習うところ多いです。特にイギリスとの関係ね。というか、近隣の仲の悪い国とどう付き合うか、というところ。
    アイルランドの移民が世界に与える影響も想像以上に大きい。McとかO'とかアイルランド系なわけか。ほぉ。

    「和解とは被害者がカタルシスを得るプロセス」
    カタルシス:精神的浄化や鬱屈した心の解消や癒やし

    ウイスキーはwhiskyとwhiskeyの2種類があり、whiskyとつづるスコットランド産の安いウィスキーが横行したときに、アイルランド産の業者が自分たちの製品が良質であることを示すために、わざわざ「e」を追加して区別しようとしたからだ、らしい。

  • アイリッシュ系アメリカン、アイルランド姓の特徴、アイリッシュ系の多いビートルズのことなど、一般的によく知られている話題も多かったけれど、そのほか政治関連の話題が豊富で面白かった。特にカタルシスにまつわる記述とリスボン条約の背景にあった国民感情の部分が興味深かった。

    でも、アイルランドの負の部分は宴曲表現で少しだけ書かれている程度なので、アイルランドに住んだ事がある人にとっては多少違和感があるかも。

  • [ 内容 ]
    アイルランドからアメリカ、イギリス、日本を考える。
    資源小国としての大いなる生き方。
    最貧国から世界有数の豊かな国に。
    日本の “姿見”としてのアイルランドという国家。

    [ 目次 ]
    序章 “愛国”大使の私的アイルランド点描(“遠くて小さな国”アイルランド;破綻からの再生、そして繁栄 ほか)
    第1章 アイルランドを知ればアメリカが見える(アメリカの歴史に欠かせないアイルランド;アメリカ史に印されたアイルランド移民の足跡 ほか)
    第2章 アイルランドがわかればイギリスが見える(イギリス外交とアイルランド;歴史の古さでは、アイルランドはイギリスの上 ほか)
    第3章 日本の“姿見”としてのアイルランド(資源小国としての生き方;移民・外国人に対する接し方 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • アイルランドという国の理解に大変役に立つ。
    アイルランドを理解すると言うことは、英国やアメリカを理解する糸口になる。
    アイルランドと英国の関係を理解することで、日韓、日中外交正常化の糸口も見えてくるのではと、筆者はいう。
    少なくとも筆者の「和解とは、被害者がカタルシスを得るプロセス」という言葉には、日本の中国や韓国との向き合い方の参考になるし、それを真っ直ぐに受け止めなければいけないだろう。
    ジョン、ポール、ジョージ、ビートルズのリンゴを除く3人もアイルランド系。リバプールはアイルランド移民の多い土地だという。
    日本に国歌という考え方を教えた人も、小泉八雲もアイルランド系らしい。
    明治維新の日本が英国人と認識していた人々の多くは、アイルランドやスコットランド人が多い。彼らが日本にのこしてくれたものは大きい。

  • 今度イギリスに留学するという人がいたので、アイルランドの歴史
    をイングランドとともに語る。

  • 資源小国の大きな生き方を指し示す【赤松正雄の読書録ブログ】

     これまで私の読書録はすべて完全に読みきった本しか取り扱ってこなかった。それは自分に課したルールということに尽きる。それを今回に限って破る。なぜか。読み出してあまりに面白く、いち早く紹介したいと思うからだ。林景一『アイルランドを知れば日本がわかる』がそれ。映画『大脱走』から説き起こし、『風と共に去りぬ』や『タイタニック』などアイリッシュおなじみの映画話を随所でつなぎ、小説『アンジェラの灰』あたりで締めくくるといった手法は、真底私好み。それでいて勿論柔らかいものばかりでじゃない。米英日の三カ国を少なくとも分かった気分にさせてくれるとてつもなく楽しい本だ。  

     去年の1月に帰国するまで同国の大使で、今は内閣官房副長官補。しばしば会っていながら、全くこうした本を書いているとの素振りすらうかがわせなかったのは凄い。かつて、外務省の条約局長などをされているころから妙に気があったうえ、彼の地に赴任中に厚生労働副大臣であった私が訪れるとの縁もあり、アイルランド学のさわりを講義していただいたこともある。同国については、「知らない派」と「オタク派」にくっきり分かれるとの彼の見立てからすれば、私を前者から後者に変身させつつある張本人といえようか。

     今のところ私が最もひきつけられたのは、「英愛和解は日韓和解の姿見となりうるか」における「日韓和解に関する一私見」のくだり。アイルランドと英国の歴史的経緯を通じて、「被害者と加害者との和解というのは、結局被害者がどのようにカタルシス(精神的浄化や鬱屈した心の解消、癒し)を得ていくかというプロセスではないだろうか」との一連の指摘は実に示唆に富む。

     ただ、この著書のタイトルはむしろサブにして、『資源小国の大きな生き方』などといった方が良かったのではないかと思う。ともあれ、この本は日本の行く末を案じる全ての人に読んでもらいたい。

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著者プロフィール

1951年山口県出身。京都大学法学部卒業後、74年に外務省入省。
2005年から08年までアイルランド駐箚大使。
その後、大臣官房長、内閣官房副長官補を経て、11年から16年5月まで英国駐箚大使を務めた。退官後、執筆活動や講演活動で活躍している。
著書に、『アイルランドを知れば日本がわかる』(角川oneテーマ21)

「2016年 『イギリスは明日もしたたか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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