大人のための国語教科書 あの名作の“アブない”読み方 (角川新書)

  • 角川書店 (2009年10月9日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784047102149

作品紹介・あらすじ

国語の授業はなぜ眠かったのか? それは教師用指導書の「読み方」がつまらなかったからだ。定番の名作は、実はとても刺激的なのだ! 漱石研究の第一人者が切り取る、『こころ』や『羅生門』『山月記』の本当の姿。

みんなの感想まとめ

国語教育の常識を覆す新たな視点を提供する本書は、名作文学の隠れた魅力を引き出し、読者に多様な解釈の可能性を示唆します。著者は、教科書や指導書が示す解釈に疑問を投げかけ、特に『羅生門』や『山月記』などの...

感想・レビュー・書評

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  •  芥川龍之介の「羅生門」を取り扱った部分で、こんな解説をしている。

    【つまり、当時の都でいえば、律令制が法そのものだったわけです。その法を執行する最高権力者である天皇が、自分の身辺警護のために律令制の外にある武装組織をつくって都を支配しているというのはどうなのか――という問いかけがここに発生するわけです。太刀帯という名からもわかるように、下人が右手で抜いた太刀を持っている者たちが、その太刀で人の命を奪うと脅しながら権力闘争を遂行していることは合法なのか? その私的暴力装置が警察組織になっていて、果たして法に基づく善をもたらす体制なのか? そうした根源的な問いかけが、羅生門における下人と老婆とのやり取りからははっきりと浮かび上がってくるわけです。平安京では、天皇の眼差しが向いている方向に都が右と左に分けられています。そして、その眼差しの根幹には律令制があるはずなのに、天皇自身がそれを破った令外の官をつくって権力闘争に明け暮れているのです。その武装組織に束ねられている都の空間において、善と悪とを分ける基準などは存在するのだろうか。そう問いかけているのが『羅生門』という小説です。】

     で(だから)、下人の行方は誰も知らないというわけだ。
     出てくるコオロギかキリギリスが、ジャン・クリストフのことだったりとか、羅生門という短編は、大長編小説並に研究されまくっている。

  • 最近、授業で習った国語の教科書を、もう一度読み返したいと思います。
    あの時よくわからなかったことが、今では納得できるような気がするのです。

    その納得の仕方は、もしかすると教科書が指し示すものとは違うかもしれません。
    学校の授業で教えられることが必ずしも正論ではないのでは?という疑問を呈しているのが、この本です。

    まずは鷗外の『舞姫』。
    難しい文体に、怖じ気づきながら向かった記憶があり、その難しさに気を取られて、物語の筋は大まかにしか捉えられていませんでした。
    政治的サクセスストーリー、恋愛小説、どちらに重きを置いた話なのか。

    いろいろな説明がなされていましたが、最後に「ドイツでひとり子供を育てることになるエリスは精神障害者となった。家族は彼女の母のみ。そんな彼女から生まれた、アジア人との混血の片親の子供の将来は一体どうなるのだ」という指摘が一番ぐっと胸に来ました。
    はたしてその先のことまで、鷗外も考えていたでしょうか。

    漱石の『こころ』も採り上げられていました。
    今の教科書には、先生が自殺するところまでは掲載されていないのだそうです。
    Kの自殺、乃木将軍の自決に続く、自殺の連鎖を匂わせないところは、現実的に日本が自殺大国だからかの配慮でしょうか。
    ただ、そのシーンがないと、さらにわかりづらい物語になるような気もします。

    著者は、『こころ』を専門としているようですが、あの作品から同性愛的なものを引き出してきた読み方には驚きました。
    また、「私」が先生と対面できていたら、先生の自殺は免れえたという仮定も。

    実際に高校で教鞭をとっている国語教師が、教科書以外の解釈の是非について悩んだ末に、大学院で研究し直したことがこの本が執筆されることになったきっかけだということで、非常に学術的意識の高い内容となっています。
    タイトルからイメージされるような、軽い興味を満たす類のものではなく、真剣に日本の国語教育のあり方について問題提起をしている一冊。

    どの論も、これだという決定打には乏しく、あくまで読み方の一つを提示しているといった程度にすぎませんが、さまざまな読み方が可能な中で、一つの解釈を正解とする誘導的な教育方法に、疑問を投げかけています。
    これは、国語のテスト方法自体の見直しという抜本的改革が必要となるため、今後実現するかは不明ですが、確かに読書に百通りの解釈を認めるべきではないかとは思います。

    ただ、十代のやわらかい心で、直観的にとらえる印象が一番大切だと思うので、この本で指摘されているような大人目線からの細かな専門的解釈は、あまり入れない方がいいのではないかというのが、この本を読んでの私の意見となりました。

  • 森鷗外『舞姫』、夏目漱石『こころ』、芥川龍之介『羅生門』、宮沢賢治「永訣の朝」、中島敦『山月記』という、高校の現代文の教科書にとりあげられている五つの作品について、教科書および教師用指導書の示す解釈とは異なる読み方が可能であることを示すとともに、これらのテクストの解釈を一定の方向へと囲い込んでしまうような国語教育に対する批判をおこなっている本です。

    本書の執筆のきっかけになったのは、現役の国語教師であり著者のもとで学んだ前田英明が、教科書にとりあげられたテクストの解釈について生徒から異論が出たことです。この話を聞いた著者は、前田の直面している問題をとりあげなおし、じっさいに指導書の解説とテクストの解釈を対比することで、国語教育を脱構築するような試みをおこなっています。なお巻末には、前田英明による補講「現役教師による指導書の傾向と対策」が収録されています。

    国語教育に対する批判は、著者とともに長く漱石研究のフロンティアに立ってきた石原千秋もおこなっており、一部石原の問題意識とかさなるところもあります。ただし本書では、国語教育そのものの分析にはあまり立ち入らず、むしろテクストが多様な解釈に開かれていることをじっさいに示すことに力点が置かれているように感じます。

  • 国語教科書における近代小説の扱い方が、つまらないと批判する本。しかし、私は、国語で文学を扱うことに意味があるかどうかに疑問をもつ。5章あるうちの2章読んだが、つまらないので通読せず。

  • 面白かったです。

  • 高校生の頃に読んだ教科書の題材について、このような見方があったのかと驚かされる。
    ただし、「羅生門」の章を読んで思ったが、天皇制と絡めて考えるのは興味深い。ただし少々穿ち過ぎで、本当に芥川がそう考えて書いたのか疑問に思えるような部分もあった。

  • [ 内容 ]
    『舞姫』『こころ』、『羅生門』に『山月記』。
    習ったはずだが退屈だった記憶しかない…。
    当然だ。
    道徳的な正しい読みじゃつまらない。
    名作を読むことは、スリリングな冒険なのだ!こんな作品だったのか!と目から鱗の講義。

    [ 目次 ]
    予鈴 教師用指導書の世界への挑戦
    1時限目 裏切りよりも重き罪―森鴎外『舞姫』
    2時限目 先生の「愛」の告白―夏目漱石『こころ』
    3時限目 下人は天皇に物申す―芥川龍之介『羅生門』
    4時限目 修羅が書き付けた涙―宮沢賢治「永詠の朝」
    5時限目 虎よりも恐ろしき友―中島敦『山月記』
    補講 現役教師による指導書の傾向と対策
    放課後―教室に熱い議論を取り戻せ!

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • なんとまぁ、国語教師にはきつい本!
    『羅生門』『山月記』『舞姫』『こころ』『永訣の朝』
    どれももう何回も授業しましたよ。
    ぶっちゃけ、ここに書かれている指導書にしたがって・・・
    学校現場におけるジレンマが描かれています。

    もちろん、教師だって指導書に不満はある。
    なんでそんな解釈なのさと突っ込む時もある。
    でも、同じくらいこの本にだって疑問はある。
    万人が納得するパーフェクトな読みは難しいってことです。

    読みものとして『山月記』が一番おもしろかった。
    これはいつかネタにしてみたいと思います。

  • ひとつの刺激策として、飛び道具として。

  • これもまぁ、唯一神的な解釈ではないのであって。

    文学研究と国語は違うってことを、ひしひし感じます。

    点数をつけて評価するってとても難しい。
    達成度をはかることなしに、教育は成り立たないし。

    でも、誘導通りに読むつまらなさっていうのは、拷問レベルであって、つまらない読みをわたしは二度としたくないと思うのです。
    堂々巡り。

  • 2010/03/28:国語教科書の定番「舞姫」「こころ」「羅生門」「永訣の朝」「山月記」を題材に学校指導書の画一的な解釈で生徒たちを誘導するかのような現在の学校教育への批判と独自の深く掘り下げた読み方の紹介の本。

  • 本書は、国語教育における、小説の解釈方法について論じられています。

    ただし、大人である自分が、ここまで解釈できるかといえば、そうではなく、もっと深く読めるようにならなきゃなあと。

    そう思わされた本です。

  • 教科書で取りあげられている『舞姫』『こころ』『羅生門』『山月記』『永訣の朝』を例にとり、指導書に沿って展開することで、自由な読みを損なうばかりか、道徳的教材になり果てている危険性について指摘してあった。
    個人的には『山月記』の解釈が新鮮だった。進士の名を記す虎榜に着目し、役人になること自体が虎になることを意味し、李徴が官を退いた理由はそれに気づいたから、としている。また作品の中ではあまり問題視されない漢詩には袁慘の現在への痛烈な批判がこめられているとしている点などがおもしろかった。
    ほかには『永訣の朝』のふたわんのあめゆきの解釈に納得した。

    『羅生門』の引用部分に「聽」の欠字があったのは掲載時がそうだったせいだろうか?

  • 11月1日熊日で、平田オリザさんが、書評。

  • いまいちでした.なんで,文学の研究者ってこんなに強引な論理展開をするのだろう??この著者こそ,自分が導き出したい結論に向かわせようとするがために,論理が破綻している気がしました.
    いろいろな解釈をさせよう,という趣旨のことを主張しているにもかかわらず,教科書以外の解釈としては,自分の解釈しか載せないのも矛盾している感じ.もっと,他の研究者の解釈とかを「対等に」いろいろと載せてあればおもしろい本になっていたかもしれません.

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著者プロフィール

1953年東京都生まれ。東京大学教授、全国「九条の会」事務局長。主な著書に、『ことばの力 平和の力――近代日本文学と日本国憲法』(かもがわ出版)、『記憶せよ、抗議せよ、そして、生き延びよ 小森陽一対談集』(シネ・フロント社)、『あの出来事を憶えておこう 2008年からの憲法クロニクル』(新日本出版社)など。

「2018年 『手塚マンガで憲法九条を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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