なぜ日本は〈嫌われ国家〉なのか 世界が見た太平洋戦争 (角川oneテーマ21)

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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102477

作品紹介・あらすじ

未だに残るネガティヴ・イメージはいつ、誰が、何のために作ったのか?戦争が作った日本の負のイメージとは?世界がどのような目的で太平洋戦争に参加し、どのようにして日本及び日本人像を獲得していったのか、主要国ごとに解説。

感想・レビュー・書評

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  • 読了。

  • 日本がまともな戦略を持たないことを痛感させられる。
    諸外国の一般人は、日本人に対するイメージを第二次大戦までほとんど持たなかった。日本人イメージが確立したのが第二次大戦であり、そこには真珠湾と英捕虜の処遇などが大きく影響し、それは現代までつながっている。
    一方、独伊が日本の利用法に対して持っていた方針と、「わが闘争」の日本人に対する記述を削除された翻訳によって、日本人の多くがヒトラーの視点を知らずに同盟に至ったことも知った。

  • ●:引用
    ●第二次世界大戦は、明らかに意思を持った戦争である。民族的優位を保って世界制覇を考えたヒトラーに対しルーズベルトやチャーチルは民主主義を守るという意思を持っていた。そこに共産主義革命を世界に輸出して、全世界を共産主義体制で固めようするスターリンや、民族自決を掲げて中国統一を図ろうする毛沢東が加わる。(略)はたして日本はどれだけの意思があってこの大戦に加わったのかは曖昧である。(略)今、私たちは各国の政治指導者から一庶民まで、あの第二次世界大戦について、あなたの国は何のために戦ったのかと尋ねていくと、その答えが一貫していることに驚かされる。(略)なぜ、日本は太平洋戦争を行ったのかと、アメリカ人、イギリス人、中国人、ロシア人、あるいはアジアの他の国々の人たちに尋ねられたとき、その戦争目的を説明できないという弱みの中に、今なお日本という国が、あるいは日本人が正確に理解されていないということがあるだろう。
    ●この四カ国の四人の私と同年代の外国人たちは、それぞれ太平洋戦争観、日本人観というものを明確に持っていた。(略)彼らは私と同年代であり、戦争体験は辛うじてあるが、戦場体験などはない。だが、彼らの太平洋戦争観、日本人観には、実際に戦場体験を持った人たちの戦争観、日本人観が色濃く反映されているとの感を受ける。私たちはこれらの国のこの姿をどのように見るか、そのことも改めて考えてみるべきだろう。
    ●だが、アメリカ人は違う。特に第二次世界大戦を戦った元兵士たちにとっては、あの戦争は「よい戦争」であり、自分たちはそれを戦った英雄だという意識がある。だから隠さず話すのである。自分たちが戦場で体験した日本兵の残虐行為は、元兵士たちの口により日本と違ってアメリカ社会では八方向へ語られる。(略)彼らは自分たちの戦場体験を饒舌に、そして幾分誇張して周囲に話していった。戦場で日本兵は卑怯で、汚く、残虐である。それまで日本人に関して「フォーチュン」の記事程度の知識しかなかった一般のアメリカ人は、実際に日本人と接触し、命をやりとりした兵士の話を深く信じ、日本人に対するイメージを固めていった。
    ●ごく一般のイギリス人は、開戦時は日本についてはほとんど知らず、それが憎しみを持つようになったのは捕虜収容所での捕虜の扱いがイギリスで知られるようになってからだというのであった。この捕虜虐待に対する悪感情は、実は今もイギリス社会には残っていて、私たちはこのことについてやはり相応の史実を理解していないと、イギリス社会にあるわだかまりは続くといえる。
    ●そもそも汪兆銘がなぜ日本に協力したのか。それは日本の政策に賛成したわけではなく、中国の生きる道としてアメリカ、ソ連に加えて、もうひとつの選択肢である、日本と関係を持ったのだという。
    ●最初はほとんど日本語になっていないビラを撒く程度だったのが、わずか数年でここまでに至るほど、中国軍は日本軍の捕虜を教育して「日本軍の切り崩し」に協力させていたのである。これを見ても、中国の戦争観が日本より歴史的な教訓に裏打ちされていることがわかってもらえるだろう。
    ●1931年9月に日本が満州事変を起こし、さらに1937年7月に盧溝橋事件が起き、日中戦争に拡大していくが、毛沢東と蒋介石のエネルギーは、「国家統一」という悲願にすべてが集約されていた。このことを日本の政治、軍事指導者たちは見抜けず、結果的にその妨害役をえんじることになった。
    ●中国人と日本人とでは、政治的技術や政治的考え方、歴史的な時間の捉え方は、まったく質が違っていることに気づくのだ。日本は中国に軍事侵略を行うことで、あまりにも多くの歴史上の罪過を背負ってしまったのである。
    ●そもそもスターリンはなぜ、北海道を手に入れようとしたのか。その理由のひとつは、この制圧地域に東ドイツと同じ、ソ連に好意的な政府を作り、東日本社会主義人民共和国という空間を建設しようと試みたもだ。(略)北海道の分割・占領をあきらめたスターリンは、それではどうしたか。共産主義化する革命の根拠地を日本国内に建設することができないのなら、今度は革命を担う兵士をつくることに方針に転換した。日本軍兵士を革命戦士へと鍛え、彼らに革命を起こさせ、社会主義政権をつくる。これが、日本軍捕虜のシベリア抑留につながるのである。
    ●この当時の欧米の政治指導者は権謀術策の限りを尽くし、外交的な駆け引きを繰り返していた。それに比べると日本の政治、軍事指導者たちの外交戦略は、こうした複雑な国際情勢の中では実にウブでお粗末としかいいようがない。
    ●私が本書で言いたかったのは、かつての日本を見つめる目の歪みと、逆にそれを是認するかのような現代にまで通じている日本人像の徹底した見直しである。その手直しを早めに行うことで、つまり21世紀という時間帯の中にあって、正確に等身大の日本人像を確立していくために、さしあたり知っておくべきことを平易にまとめてみたのである。

  • 歴史観。それはそのままその国・民族をどう思っているか。きちんとその国民・民族に会っていない場合、相手国に抱くイメージはどうなるのか。報道されたもの、教育されたもの。
    日本は国として幼い。主体性の無さ。傑物がいる、いないというよりも、もっと全体的な幼さ、愚かさゆえの非合理的残虐さ。

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著者プロフィール

1939(昭和14)年北海道生まれ。現代史研究家、ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。1972年『死なう団事件』で作家デビュー。2004年個人誌『昭和史講座』の刊行により菊池寛賞受賞。2017年『ナショナリズムの昭和』で和辻哲郎文化賞を受賞。近現代史の実証的研究をつづけ、これまで約4000人から証言を得ている。『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『昭和史の大河を往く』シリーズなど著書多数。

「2018年 『昭和の怪物 七つの謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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