ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方 (角川oneテーマ21 A 125)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047102576
感想・レビュー・書評
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題名のとおり「経済政策」の入門書。本著は理論的な整理を平易にしているため、世の中にでている経済評論をもう少し高い地点から考えてみたい人にはおすすめである。たとえば、規制改革や年金制度、量的緩和政策などなど、これらはパッケージとして行われる政策であり、単独では存在していないことがこの本からよくわかる。巷の本は、年金や規制改革などを個別に取り上げているモノが多く、全体像がみえにくい。そのようなことから生じる偏見への予防接種や治療薬にこの本はなると思う。
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今は経済について何も知らないが、現在の日本の経済政策を考えたい!という方におすすめの本。経済学の基本的な理論から、現在の経済政策について考えるポイントを、時折飯田先生の私見も交えて説明している本です。
何も知らない状態からこの本を一冊読むだけでも、「経済政策を考え方はどのようなものか、今はどのような事が問題で、どのような方向に解決していけばいいのか」という事が何となくわかるのではないかと思います。
これを読んで本格的に経済政策を考えたいと思うようになったら、この本の兄貴分の本である、岩田・飯田『ゼミナール経済政策入門』に進むことをお勧めします。 -
気鋭のエコノミスト飯田氏の著作。
本書は構造が大変わかりやすく作られているのが
何より素晴らしい。
まさに「ゼロから学ぶ」という表題を体言する
ものとなっている。
「はじめに」で語る
"世界は分けなきゃわからない:だから問題を分割する"
というシンプルなメッセージに集約される。
経済政策とその効果を「成長」「安定」「再分配」の
3つに分類して話を進める。
そして、「終わりに」で
「無味乾燥な理論」と「熱い(だけの)提言」の間を
目指して書いたことがまたメッセージとして載せられているが、
私はそれに頷けた。
本書のコアは「日本を幸福にする」というポイントだろう。
著者は、この「幸福」という一見あいまいで、使うものの
エゴをまるだしにできる危険な用語と定義について、
一章を使って自身の見解を説き、またありがちな批判についても
反論を述べている。
これによって、本書全体にシマリが生まれている。
いわば「正しく批判を受け止めます」というフェアネスがあるのだ。
あとは筆者の意見として、4章の再分配のところで、
所得移転政策としての年金は、もう人口構成のアンバランスからして
成り立たないだろう、と言っているのも印象に残った。
私もそう思う。結局、日本が発展途上国時代に未来をなんも
考えずに作ったものをいまだに使い続けているなんて
無茶もいいところだ。
ただし年金は破綻させられないだろうから、支給年齢をどんどん
引き上げ、額を減らし、ヤスリで削るようにしていくんだろう。
今からの世代は、それを覚悟した上で年金を払うしかないのかねぇ。 -
「極東ブログ」
本書は第一章で国民の幸福の視点を定めた後、経済政策の三本柱として成長政策、安定化政策、再配分政策を示し、その組み合わせが重要だとし、第二章以降は、三本柱にそれぞれの章を充てている。その意味で本書の構成は非常に簡潔で、経済政策としての幸福という概念、そのための三本柱の組み合わせ、そして三本の各論という構図でできている。
各論の前になるが、本書の特徴でもあるのだが、さらりと重要な命題もちりばめられている。特にこの三本柱の組み合わせについて、「ティンバーゲンの定理」、「マンデルの定理」そして「コンティンジェンシー・プランの存在」という原理性への言及が貴重だ。おそらくこの三点だけでも一冊の書籍になるくらいの重要性があると私には思えた。
「ティンバーゲンの定理」は「N個の独立した政策目標達成のためには、N個の独立した政策手段が必要である」ということで、まさに民主党政権はその反面教師のようなものだった。おそらくこの政権は、理想の政治概念から個々の経済政策が魔法の杖の一振りで導かれるというナイーブな幻想をもっていたのだろう。残念ながら、個別の政策は医薬品のように個別の副作用を伴うし、だからこそそれに対応した「マンデルの定理」も関連する。
「コンティンジェンシー・プランの存在」については、本書をいわゆるエッセイ的な読書として読むなら、知識を得るという以上に、著者の思想や主観が多少見える部分でもあり興味深い。著者の飯田氏はこれを「真正保守主義の原則」と呼んでいることの陰影でもある。
日本の軽薄な言論風土では、「真正保守主義」というだけで右派であるかのようにバッシングされがちだが、内実は「政策に間違いがあれば引き返せるようにする」という素朴な意味合いである。しかし「その引き返す」という考え方には、引き返すべき日本国民による国民社会という理念も含まれているのだろう。こうした点と限らないが、微妙な主観性が本書の独自の魅力ともなっている。
第二章は成長政策、第三章は安定化政策、第四章は再配分政策と議論は明晰に進むのだが、経済学的な知識にベースを置く技術論と、経済学というより政治理念的な部分には交差性も感じられ、特に第四章の再配分政策にはその印象が濃く、理念的な先行から実質的な経済政策への乖離が多少見られるように思えた。
別の言い方をすれば、例えば「実践 行動経済学 --- 健康、富、幸福への聡明な選択(リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン)」(参照)のほうがより具体的な議論を展開している分、精密な議論になっている。本書でも、具体的でかつ社会コンテキストを反映した展開があればより明確になるだろうと思えた。セイラーの書籍の対象はあくまで米国社会なので、日本社会であればどうかという議論を識者に期待したいところだ。
経済政策として通常議論されがちな、財政政策と金融政策については、第三章の安定化政策に分類され、バランスよくまとめられているが、この分野だけでも大きなテーマであり、例えば「マンデル=フレミング効果」などさらりと触れられているにとどまっている。こうした個別の財政政策と金融政策については、政策研究者の高橋洋一氏による著作(参照・参照)も参考になるだろうし、別書に譲ってもよかったかもしれない。
本書を読みながら一番考えあぐねていたのは第二章の成長戦略についてだった。異論があるわけではない。むしろ、どれも同意できる内容なのだが、読み進むにつれ懸念のような思いが漂う。なぜなのか。
経済成長には、「資本(経済学的な意味で)」「労働力」「技術」の要素があるが、重要なのは「技術」である。技術といってもIT技術というような個別の技術より、付加価値の知的・プロセス的な源泉と言い換えてもよいだろう。その基本だが、こう説かれている。 -
学んだこと。
経済政策の三つの分野。
経済成長政策、安定化政策、再配分政策。
創造的破壊の理論は、一国の経済ではなく、特定の産業分野に体して有効である。
日本の年金制度は再配分政策になっていない。
電力の上下分離は、成長政策である。 -
「ゼロから学ぶ」と題されてる通りわかりやすい。「経済的な幸福度を高める事」=「GDPの向上」が経済政策の目標であるとし、その為には成長政策・安定化政策・再分配政策の目標を理解し、バランスをとる事が重要だと主張している。それぞれの政策の説明も簡潔かつ明瞭で、理解しやすい。ただあくまで入門用なので、更なる理解のためには他の本を参考にする必要がある。
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#kindle
この知識をどう使えば、日本をより良い国にすることに貢献できるだろうか、と考えられる本。「先生」の熱意が伝わる。 -
経済政策とは、成長政策・安定化政策・再分配政策からなっているので、その観点で考えると今の経済政策に抜けているものが分かるよねということ
アベノミクスは成長政策・安定化政策が比較的強めなのだと思う -
読みやすさ、取っつきやすさに関して飯田さんの著作はすばらしい
今作も例外なく、
経済政策や経済について「?→!」に変えてくれる一冊となっている。