大局観 自分と闘って負けない心 (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102767

作品紹介・あらすじ

考え抜いても結論がでなければ「好き嫌い」で決めていい。年齢を重ねるごとに強くなる「大局観」の極意を公開。60歳、70歳でも進化する勝負の法則、直感力・決断力・集中力を極める。

感想・レビュー・書評

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  • 今井むつみさんの『学びとは何か』からの流れで読みました。
    今井さんが触れておられた「認知」テーマの内容は分量的には少なかったように思え、「認知」の独学のつもりで読むと、ちょっと違うかなと思いました。

    とはいえ、この本は羽生さんが40歳の時の著作のようで、今の自分には響くところが多々ありました。
    もう若くはない、けれどまだ先には長い道のりがある中で、どのように仕事や人生と向き合っていくか。
    参考になるエピソードや将棋に関する格言、色々な方の著書の引用等が盛りだくさんで、とても勉強になりました。

  • 棋士、羽生善治さんの本。
    自己啓発とは少し違うが、概ねそのジャンルに当たる。

    情報が多く、これからは選択肢は多くなった分、失敗したときの後悔が増す。(あの時、あっちを選んでいれば......等)
    将棋の世界では「何を捨て、何を残すか」を迫られる。そんな時に大局観が育っていれば大きな流れを見て、考えられる限り最善の手に絞り込むことができる。
    世界は否応なく変化し続けている。自分が勝っている時、うまくいっている時に方向転換は難しいが、負けている時は方向転換し易い。確かに......長い目を見れば、勝っている時こそリスクが最も高まるのは頷ける。
    話はツキ(運)、ゲン、AI、格言、チェスと幅広くなってゆく。

    最後には、「目標を立ててやってきていない。人生は突き詰めてはいけないと思う。何のために闘うのかは、七十歳になってからじっくり考えたいと思う」だって!?そうなんだ(笑)脱帽です......読んでいて何故か、私はニヤっとしてしまった。

    この人は底知れない。

  • 当代きっての勝負師が体得した大局観とは何か

    ・「大局観」とは具体的な手順を考えるのではなく、文字通り大局に立って考えることだ。パッとその局面をみて、今の状況はどうか、どうすべきかを判断する。

    ・将棋の対局中では、どのように考え次の決断を下すのか。「直感」、「読み」、もう一つが「大局観」である。

    ・情報と知識の洪水のなかで、「大局観」では「終わりの局面」をイメージする

    気になったことばは次の通りです。

    ・若い頃は危機意識もなく、何も考えずに冒険ができた。

    ・勝ちに不思議の勝ちはあり、負けに不思議の負けはなし

    ・リスクをとらないことが最大のリスクだ

    ・部分的に見るだけでなく、全体的な認識を小まめにすることが、リスクを取るときには必要不可欠なようだ。

    ・相手を真正面から見ることは、現実を見据えることであり、逃げることなく挑戦することを意味する

    ・集中力を高める三つのトレーニング法
     ①何も考えない時間をもつ
     ②一つのことをじっくり考えることに慣れる
     ③時間と手間のかかることに取り組む

    ・とにかく毎日、練習を続けることが肝心だ。

    ・勝負の世界では、自分で決断をして局面を打開し、全責任を負わなければならない

    ・教える時に肝心なことは、教わる側は何をわかっていないかを、教える側が素早く察知することだ

    ・一方的に入ってきた知識は一方的に出ていきやすい 自分で体得したものは出ていきにくい

    ・法則性のないものは記憶しにくい

    ・真面目にコツコツと積み重ね、真面目に不必要な物を捨てるという作業を繰り返してゆく先には、深遠な真理があるのではないかと考えている。

    ・小泉純一郎談「人生には、上り坂もあれば下り坂もある。そしてもう一つ、”まさか”という坂がある」

    ・今再び、”野性のカン”が必要な時期に来ている

    これが結論???

    ・対局に臨んだら、その時その時の局面で、自分ができることを精いっぱいやるだけだ。

    目次は以下の通りです

    はじめに
    第一章 大局観
     1 検証と反省
     2 感情のコントロールはどこまで必要か
     3 リスクを取らないことは最大のリスクである
     4 ミスについて
     5 挑戦する勇気
    第二章 練習と集中力
     1 集中力とはなにか
     2 逆境を楽しむこと
     3 毎日の練習がもたらす効果
     4 教える事について
     5 繰り返しの大切さ
    第三章 負けること
     1 負け方について
     2 記憶とは何か
     3 検索について
     4 知識とは
     5 直感について
     6 確率について
     7 今にわかる
    第四章 運・不運の捉え方
     1 運について
     2 ゲンを担ぐか
     3 スターの資質
     4 所有について
    第五章 理論・セオリー・感情
     1 勝利の前進
     2 将棋とチェスの比較
     3 コンピュータと将棋
     4 逆転について
     5 ブラックスワン
     6 格言から学ぶこと
     7 世代について

  • いつも注目している羽生善治名人の考え方の一端を覗える新書。
    物事を合理的に突き詰めて考えるというよりも、人生の総合力を問われる見地にて選択・判断を下すということである。そのためにはリスクとのつき合い、挑戦する勇気、感情、ミスを犯した場合など人生を鍛える言葉に満ちていて、超一流のアスリートの言葉だけになるほどなあと思える部分は多い。
    自分として特に共感した部分は、選択肢を広げ過ぎず、あえて可能性を落とせという話と、「合成の誤謬」の話です。前者はいわゆる仕事がデキる人のバロメータの1つだと自分も思っていたので、賢い人はそうなんですよね。後者は、合理的な判断の積み重ねが必ずしも成功につながらない局面が世の中的にも自分の周りにもあることなので、自分としても最近着目しています。
    ただ、本として本書はどうかというと、ひとつひとつの話はよくわかるのだが、例え話がハズしているように思えることが多々あるのと、話の要点がぽんぽん変わるので、論理的に理解しようとすればするほど混沌としてきてしまいました。(笑)まあ、天才の真髄を活字で理解しようとすることが無理ということなんだと逆に思いましたけど。なので評価は本としての評価点にしています。
    加藤九段の繰り返しの話と、坂田三吉の端歩が「今にわか」った話は面白かった。
    最近は渡辺竜王などの新世代に押され気味なのが心配であるが、これからも新たな境地でもって大いなる壁となって頑張ってほしい。

  • 羽生さんの本、結構面白い。将棋だけのネタではなく生き方を語ってる。今まで、目標を持ってなくて生きて来たと言うのが意外。

  • 羽生善治の「決断力」(角川oneテーマ21)がとても良かったので、続編である本作も迷わず、読んだ、と言っても10年前の話。そして、メモがあったので、そこから書評にしてみる。書籍も手元にあるが、敢えてメモから。

    「集中力を高める3つ」として羽生善治が挙げているのは、
    ・第一 何も考えないでボーとする
    ・第二 一つのことをじっくり考えることに慣れる
    ・第三 時間と手間のかかることに取り組む 

    としている。手間のかかることの例として

    紫式部「源氏物語」
    山岡荘八「徳川家康」

    を読むことを挙げている。

    そして、最も良いパフォーマンスは、リラックスして落ち着いて楽しんでいる状態の時に、充実して活き活きと取り組むことで発揮され、その時は疲れも少なく、効率も上がり、内容も優れる、とある。

    目標設定では、義務感や強制の気持ちが強くなると、やる気が落ちるケースもあると述べている。

    目標設定の基準として、キーワードとなるのは「ブレイクスルー」である。

    毎日練習を続けることを一日も休まず、というのはとても大事な心がけであるし、結果も出したいところ。

    忘れることも大事。忘れるから生きて行ける。


    書籍は「決断力」の方が「大局観」よりも優れている。どちらも手元に置いておきたい重要本なので、折に触れ読んでみたい。

  • <まとめ>
    ★選択肢が多い事は、迷いにつながる
    ★決断の早さが良いとは限らない
    ★「好きなこと」に熱中する
    ★「続けること」は偉大な才能である
    ★情報は生鮮食品と同じ
    ★少しずつでも着実に前に進むこと
    ★積み上げるのは簡単でも、捨て去るのは難しい

  • 言わずと知れた将棋棋士、羽生さんの著書。
    新書だけれども、エッセイ的な感じでさらりと読める。棋士としての考え方がいろいろとつづられているが、将棋に限らず仕事やプライベートでも同じような状況や思考になることはあるなと思いながら読んだ。
    たとえば、複数の選択肢をシミュレートして、どちらもうまくいきそうにない場合、最後に思いついた別の選択肢がやけにうまくいきそうに見えることがあるが、これは「なかなか決断できず苦しんでいる状況から、一刻も早く抜け出したい」という心境が生み出している錯覚であることが多いという台詞。身に沁みます。。。
    情報過多の時代に、消費ばかりの「情報メタボ」にならずに、供給サイドにも軸足を置いて需給バランスを保つ、ということもそのとおり。ただ、供給にはエネルギーがいるので、言うは易しの行動なのだが。
    そしてこの本にはまだ藤井聡太は出てこない。

  • パラパラと、印象的な言葉を。

    •以前は才能は一瞬のひらめきだと思っていたが、今は十年、二十年、三十年と同じ姿勢で同じ情熱を傾けられる人のことだと思う

    •どの世界でも、教える行為に対して、教えられる側の依存度が高くなってしまうと問題である

    •勝つことだけを優先していると、自分の将棋が目の前の一勝を追う将棋になってしまう。今はいいが、将来を考えると「よくないな」と気づいた

    •いつも自分に有利な局面ばかりということなどないし、その逆に、いつも悪い局面ばかりということもない。だから必要以上に楽観することも悲観することもないし、瞬間的な出来事に一喜一憂することもないと思う

    •サルトルは「他者から見られることはものに変化してしまうことだ」と述べている。ものにならないためには、投企として、そのまなざしを向け返すのだという

    •ブレイクスルーの重要性。努力によって自信と安心が得られる。

  • 自然体な人の自然体な文章。アバターの「すべてのものを借りて生きている」例は面白かった。リスクはとるべし。失敗はするべし。失敗から学んでいく。ずっと同じところ、同じやり方にとどまっていると、数年後、使い物にならなくなるぞ!

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著者プロフィール

1970年9月27日、埼玉県所沢市生まれ。1982年、関東奨励会に6級で入会。1985年12月、プロ四段に。1989年、19歳で竜王獲得。これが初タイトルとなる。以降、数々のタイトルを獲得。1996年には、当時の七大タイトル(竜王・名人・棋聖・王位・王座・棋王・王将)全冠独占の快挙を成し遂げる。2017年に、八大タイトル戦のうち永世称号の制度を設けている7タイトル戦すべてで資格を得る、史上初の「永世七冠」を達成した。タイトル獲得は通算99期、棋戦優勝45 回(ともに2022 年6月時点)。主な表彰として、2007 年特別将棋栄誉賞(通算1000 勝達成)、2018 年国民栄誉賞、同年紫綬褒章。さらに2022年、史上初の通算1500勝を達成し、特別将棋栄誉敢闘賞を受賞。将棋大賞は最優秀棋士賞など多数受賞。

「2022年 『改訂版 羽生善治のこども将棋入門 中盤の戦い方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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