不完全な時代 科学と感情の間で (角川oneテーマ21)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
3.82
  • (3)
  • (12)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 105
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102958

作品紹介・あらすじ

世界にユビキタス革命を起こした著者による指針なき「不完全社会」への処方箋。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 思索

  • ユビキタス、ネットワークの思想と技術は、法治主義と民主主義のコンセプトと分かち難いというか、当然の帰結のように思う。正しく情報を得ながら、常に正しいわけではないという不安に向き合いながら、最も確からしい判断をして、その結果について諦観する。その姿勢が「科学と感情の狭間で揺れ動く不完全な時代に対してどう向き合うか」(はじめに)である。

    ヨーロッパの大規模プロジェクトは手を動かす(開発)フェーズに移行するまでが長いが、哲学的議論をしっかり行なってコンセンサスを形成し、関係者の誰でもが技術的な質問にも対応できるほど浸透してから行なうので着実に進む。また、概念を咀嚼して新しいネーミングも与える。EUとして目指すものを明確にしながら、日本・米国とも違うプロジェクトの新しさを示している。例えば「ユビキタス」は、「IoT」になった。「Internet of Things」の略だが、ここでいうInternetは「モノを結ぶインターネットのような次世代ネットワーク環境」という意味であり、今私たちが一般に使うインターネットとは別物の概念を示している。

    <blockquote>「間違った薬を飲もうとすると、その薬から携帯電話に『私を飲むと危ない』と電話がかかってくる」というイメージ説明を、私が最初のころ委員会でしていたのだが、それを素直にネーミング化した感じだ。 p128[more]

    「分かりやすく解説」は、結局問題の単純化であり、予定調和し一つの単純な答えに至る。それに対してサンデル教授の本が「分かりやすく『難しい』と示してくれる」というのは、その問題がなぜ単純でないかを理解させてくれるということだ。 p41

    しかし、そもそも社会は複雑な問題に溢れている。それを単純化してはいけない。難しい問題を難しいと理解し、なお咀嚼する知的体力が、今日本に求められているのである。 p43

    情報が本質の処理については、やりたいことはどのようなことも既存技術の組み合わせだけで―――それこそ、フランスのスーパーの社員が自作できるところまで、現代の情報処理技術は進んでいる。そのときにコストを決めるのは、実は技術ではなくて、やり方を買える「勇気」だ。/イノベーションに大事なのは、技術力でもマーケティング力でもない、やり方を変える「勇気」だ。そして、現代の情報通信技術がもたらしたのは、そういう勇気を助けるプロセス設計の自由なのである。 p58

    「欲求は必ず方法を見つける」/各国の文化や制度により「方法」のディテールは異なっても、社会のもつ「欲求」自体が似ていれば結果は似てくる。/そしてインターネットが使えるような人々や組織の間では、良くも悪くも、その欲求はいくつかのバリエーションにどんどん収斂する傾向があるようだ。しかも、その収斂に要する時間もどんどん短くなっている気がする。/「ミーム」という仮想的名文化遺伝子を想定して、人間社会の文化の変化を進化論的に説明する考え方がある。その伝でいくと、伝達時間と伝達範囲の制限により今まで地域に縛られていたミームが、全世界をフィールドとして交配し競争を繰り返し進化するようになったというのが、グローバリゼーションの必然的な結果だといえるだろう。そこで起こるのはミクロな分化とマクロな同質化の同時進行。

    見果てぬ夢である「正しさ」に向けて、少しでも近づこうプロセスが科学の本質であり、「より正しく(らしく)世界を記述できたか」ということが唯一の評価軸である。/しかし、その次の技術以降になるとすべて「〜と〜」という複数の評価軸を持つことになる。科学プラス応用が技術だが、その評価軸は「リスクとベネフィット」。その応用を実現するとどんな問題が生じどんな効用があるかということを考えなければならない。 p220
    </blockquote>


    【目次】
    1.教養と実用
    2.制度と技術
    3.感情と合理
    4.世界と日本
    5.国家と個人
    6.文化と科学
    7.努力と保障

  • <図書館の所在、貸出状況はこちらから確認できます>
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=280455

  • 新聞のコラムに掲載されていたものをまとめた1冊。震災直後に書かれたこともあり、科学と社会をテーマにした指摘が並ぶ。コラムのまとめだけに、本書では一貫してまとまった提言をされているわけではないが、科学を活かすには社会制度設計が重要など、なるほどと思わせる内容が並んでいる。

  • 前半にある科学リテラシについては完全に同意する内容.ただ,教育において科学的な基礎と文化的な基礎に優先順位をつけるのは難しいそうだ.どちらを押す陣営の言い分も理解できる.

    その他,坂村先生なので情報系のネタや世界的な情勢の話が多く,いろいろな話題が面白い.

  • フランスのあるスーパーマーケットのセルフレジ化による経営の黒字化が興味深かった。日本ではセルフレジは高コストなシステムであるが、フランスのそれは簡素なシステムで実現できてしまう国民性の違い。この点が非常に面白かった。

  • 非常に面白かった。
    考え方にハッとする本。

  • トロンで有名な坂村健氏の随筆集のような内容。

    数章あるが、内容はそれぞればらばら。
    感想を書くとネタばれするので、あまり書きません。

  • 時代の流れを独自の視点から切り取った本。情報で膨張した、歩けば問題に直面する社会で生きるための示唆が詰まっている。少し偏りを感じる部分もあるが、広く浅く時事ねたをカバーしており、非常に面白く読めた。

  • 「はじまり」と「おわりに」に要素の詰まった本でした。
    本編は主題を色々な切り口、テーマから例示した内容って感じです。
    これから読む方は是非「はじまり」と「おわりに」を読んで、
    この本の主題を掴んで読み始めることをお勧めしますよ。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京大学大学院 情報学環 教授・工学博士
コンピュータアーキテクト(電脳建築家)。
IoTの原型となるオープンなコンピュータアーキテクチャ「TRONプロジェクト」を1984 年に開始。カメラ、モバイル端末、家電などの組込みOSとして世界中で多数利用されている。さらに家具、住宅、ミュージアム、ビル、都市などへの広範囲なデザイン展開を行っている。
2002年よりYRP ユビキタス・ネットワーキング研究所長を兼任。2009年より東京大学大学院情報学環 ユビキタス情報社会基盤研究センターセンター長を兼任。
2017年4月から東洋大学情報連携学部INIAD学部長就任予定。
IEEE Life Fellow, IEEE CS Golden Core Member。2003年紫綬褒章、2006年日本学士院賞、2015年ITU150周年賞受賞。


「2016年 『オープンIoT―考え方と実践』 で使われていた紹介文から引用しています。」

坂村健の作品

不完全な時代 科学と感情の間で (角川oneテーマ21)を本棚に登録しているひと

ツイートする