- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047280588
作品紹介・あらすじ
天才的な絵画の才能を持つ高校生の志波悠一郎。神経質かつ無愛想だが、美術に関することで感性が刺激されるととたんに感情のボルテージが上がり、情熱的になったり、怒ればヤクザが相手でも平気で怒鳴り散らすエキセントリックな性格の持ち主。おしとやかな態度とていねいな言葉遣い、まさに才色兼備なお嬢様の水無月沙羅。ところが対人関係における押しの強さは超一級で、両親が設立した美術コンサルタント会社の実質的トップに収まるほど。この二人が赴く先、今日も美術絡みの騒動の予感が!?
感想・レビュー・書評
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“「口ごたえするんじゃない!!」
完膚なきまでにやりこめられた北畠は、もう半べそだ。
そんな彼に、慈悲の微笑みと共に沙羅が歩み寄る。
「たいへん申訳ありません。彼の言葉はいろいろ失礼でしたわね?」
「あ……いや。まあ、ガキの言うことだし許してやるぜ」
救いの天使のような沙羅の言葉に、ようやくわずかに余裕を取り戻した北畠はもったいをつけて言う。
だがしかし、世の中には天使のような顔をしている悪魔もいるわけで、
「ですがこれは、困ったことになりましたわね。悠太郎君の言う通り、これだけ絵が傷んでしまっていますと、責任問題になりますわ」
「え……?」
「ただの過失ではすみませんわね。絵画に愛情を注いでらっしゃる北畠様のような方がこんな初歩的なミスをなさるわけはありませんから、故意に絵を損傷させたと判断されてしまうでしょう」
本心なのか、それともわざと言っているのかはその表情からは推し量れないが、沙羅の言葉は北畠にとって一番痛いところを狙いすましたようにえぐり続ける。”[P.102]
ヤクザに突っかかる辺りと怜子ちゃんが出てきた辺りが楽しかった。
“「二人とも、落ち着いてください」
悠一郎を椅子ごと助け起こし、英輔は言う。
「たぶん私たちは、君を助けることができるのです。ですがそのためには、君が私たちを信頼することが絶対に必要なのです」
「そんなことを言われても……その二つの話の関係がわかりませんよ、僕には」
「…………」
悠一郎を睨みつけ、沙羅は言う。
「……それは、これからわたくしたちがお話しすることが犯罪だからですわ!」
「え…………?」
「沙羅さん!」
あまりに唐突過ぎる沙羅の言葉。だが、慌てる英輔の様子は、そのまま彼女の言葉を真実だと言っているように聞こえる。
「犯罪って……どういうことだ?」”[P.167]詳細をみるコメント0件をすべて表示