あれよ星屑 1 (ビームコミックス)

著者 :
  • KADOKAWA/エンターブレイン
3.92
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本棚登録 : 530
感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (182ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047295919

作品紹介・あらすじ

ちばてつや(漫画家)、激賞。「忌まわしい戦前、戦後の地獄の底をかろうじて生き残った日本人達の群像を、人間くさく、リアルに、魅力的に描いた作品。セリフや画面の隅々から、安タバコやカストリ焼酎、時には妖しい女の溜め息と化粧の匂いまで漂ってくるね」

敗戦から一年あまり。ぼろぼろに焼け落ちた東京で、酒浸りの暮らしをしていた川島徳太郎は、かつて死線を共にした戦友・黒田門松に再会し……。その非凡なる画力に、同業者からも熱烈な賛辞を受ける、異色の漫画家・山田参助が挑む初の長編作。闇市、パンパンガール、戦災孤児、進駐軍用慰安施設など、戦後日本のアンダーワールドの日常を、匂い立つような筆致で生々しく猥雑に描き出す、敗戦焼け跡グラフティ、開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 戦地から焼野原の東京へと戻ってきた黒田門松が、偶然、以前の班長だった川島と出会い、共に戦争体験を思い出しつつ闇市でスープ屋を開業する。

    しかし門松はパンパン嬢となっていたお吉と偶然出会ったことから、赤線屋の用心棒の仕事へと転職する。

    一方川島は復員船で知り合った金子に頼まれ、戦死した金子の弟の許嫁の菊子を探しに行く。しかし菊子は多額の借金を背負い、パンパン嬢として米兵を相手に仕事をしていた。金子は借金を肩代わりして菊子を身請けする。

    赤線店の用心棒をしていた門松は、そこの女たちと次々にまぐわっていく。女たちにとって門松は、女たちの共通の男であり、門松の話をすることで絆が生まれるのだ。ところが、門松が外の女郎屋で遊んできたことを知ると、浮気したと追い出してしまう。

    再び行動を共にした川島と門松。しかし仲良くなった子供が缶詰爆弾で死んだのをみて、川島は卒倒してしまう。

    戦争の話を書いたマンガは山ほどあるが、戦争直後を描いたマンガはあまりなかったような気がする。パンパン嬢になったお吉の「でも言いたいこともやりたいことも我慢して、空襲におびえて暮らした戦争中よりずっとましだわ」という言葉は、この時代を生きた人の本音をきれいに捉えられていると感じた。

  • 戦後漫画とは思えないタッチと雰囲気で、それが逆に生々しさを助長してるようで、面白かったです。
    班長殿の心がまだまだ読めませんなぁ…。

    早い内に続きを読みたい。

  • 「終わっちゃいねぇんですね、何もかも」

    一部業界では熱狂的な人気を誇る山田参助先生の長編連載。時代背景は敗戦直後の日本。アメちゃんにペシャンコに負けてなにもかもが潰れてしまった東京で、元将校の門松(バカ)と元上官の徳太郎(アル中。)が焼け野原を舞台に起こす珍騒動。「終戦」「闇市」「慰安婦」暗いテーマがコミカルなタッチでテンポよく進んでいく。けど場面が、台詞が、しっかりと響く。早く2巻を買わなければ~。

    ちなみにわたしが初めて山田先生の絵を見たのは西原理恵子先生の漫画の中でした。きゃあああああああ(編集者の叫び) ※ちなみにこの作品はゲイ描写は御座いません

  • 戦後の闇部分を描いて、次巻から戦中編て。ちゃんと一巻のはじまりを回収できるならいい漫画。そうでなけりゃ、ただのエロ。戦争に勝ってさえいれば、はじめて聞くセリフ。

  • またもすごい漫画を発見してしまった。。。と思わざるを得ない漫画。
    当時の空気感がこめられてる、なんて言うと当時を生き抜いた方々に怒られてしまいそうだが、登場人物たちの息づかいまでがリアルに感じられてしまうのはなぜだろうか。
    漫画の表現技法や無駄を省いた展開もすばらしい。

  • 山田参助…どこかで聞いたような……あ!サイバラさんの本で「絵が異様にうまいけどとにかく変態」て紹介されてた人だ!と気づいて購入。
    これはなかなかの当たり!こういう、バディとまではいかない絶妙な関係性も良い。そして時代(大戦直後)の、清潔感に欠ける生々しい空気のイメージも素晴らしい。
    続き楽しみ。

  • 終戦直後の東京の闇市に死に損ないの復員兵が二人。
    こんな時代から日本は復興していったんだなぁ…。

  • 敗戦後、焼け跡のバラック。
    それぞれの過去を背負いながら、あるいは生きようと、あるいは死ねずに、その日その日を暮らす人々の群像である。
    主人公は戦地で上官と部下であった男2名。班長であった川島は虚無を抱え、部下であった黒田は素朴で荒削りな生命力に満ちている。

    取り巻く人々もさまざまである。
    居酒屋のような店を営む菊子。
    親をなくし、仲間同士で自活する子どもたち。
    仕事と割り切り、客を取りながら、共同生活を送る娼婦たち。
    怪しい肉入りスープを売るスープ屋。
    戦争から戻ったら足を洗うつもりが、やはり事情があって裏稼業に舞い戻る男。
    父親が働きに行っている留守にタバコの吸い殻を拾って家計の足しにしようとする子ども。

    川島が隣家の子どもに読んでやる童話が叙情的である。
    飼い犬や仲間とともに戦後の混乱を逞しく生きる別の子のその後が描かれるのかも気になるところだ。

    ただ、自分には正直なところ、性描写がきつかった。米兵向けの慰安所のシーンもさることながら、男たちの「武勇伝」も(長くはないエピソードだが)しんどい。からりとしたパンパン4人娘はそうでもなかったのだが。

    絶望的な闇を孕む暴力と、夜空にきらめく星のような叙情。
    振れ幅大きく感情を揺さぶられる作品であることは間違いない。

    舞台はこの後、時間をさかのぼり、川島と黒田が知り合った中国大陸の戦地を描くことになるようだ。
    興味がないわけではないが、2巻が出た後、手を伸ばすには、いささかの覚悟が必要になりそうだ。


    *引っかかった点が1つ。明るい印象で登場する菊子。彼女にもつらい過去がある。これが描かれた後では、冒頭に菊子が川島に掛けるひと言がいささかちぐはぐであるように感じる。この過去に囚われながら、この過去を知る川島に、こんなこと、言えるかなぁ・・・?
    最後まで読み進めると違和感が消失するのか、なお残るのか、何とも言えないところだ。

    *このタイトルは何か出典があるのだろうか・・・? 1巻ではまだ、意味するところがはっきりわかるという感じではない。

  • 知らない時代、変わらない生と性と死。

  • 覚悟がないと。
    明るく前向きに生きるのも大切。

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著者プロフィール

漫画家。『あれよ星屑』(KADOKAWA/エンターブレイ ン)が2019年に手塚治虫文化賞新生賞、日本漫画家協会賞大賞を受賞。その他『ニッポン夜枕ばなし』(リイド社)など。

「2021年 『戦前尖端語辞典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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